- トップ/
- こだわりケアワークブログ/
- 訪問介護の特定事業所加算とは~優秀な人材の確保と高品質なサービスを!
訪問介護の特定事業所加算とは~優秀な人材の確保と高品質なサービスを!
2024/01/30
訪問介護における特定事業所加算とは、介護福祉士などの人材を確保し、質の高いサービスを提供している事業所を評価するための加算です。
このような体制の構築だけでなく、重度の利用者を受け入れている事業所に対する評価区分も設けられていることが特徴です。
本記事では、訪問介護における特定事業所加算について、概要や算定要件、2021年度の介護報酬改定における変更点について解説しています。
なお、介護加算にはさまざまな種類があります。介護加算についてはこちらの記事でまとめていますので、よろしければ併せてご覧ください。
目次
訪問介護の特定事業所加算について
特定事業所加算とは、介護福祉士などの職員により、質の高い介護サービスを提供している事業所を評価する加算のことです。
これらは「体制要件」や「人材要件」として、条件が定められています。
また、「重度者要件」として重度の利用者を受け入れている場合にも、評価の対象となります。
訪問介護における特定事業所加算の目的は、地域における介護サービスの質向上です。
国の定める一定の要件を満たしたうえで、届出を行うことで適用可能となります。
2021年(令和3年)度の介護報酬改定による変更点
訪問介護の特定事業所加算における、2021年度の介護報酬改定による変更点は主に3つです。
①特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅳ)に加えて、「特定事業所加算(Ⅴ)」を新設
②算定要件の一つ「定期的に開催する会議」については、テレビ電話装置の活用も可とする
③「訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上であること」を要件として新設
そのほか、事業所を適切に評価する観点から、勤続年数が一定期間以上の職員の割合も要件として加えられるようになっています。
また、さまざまな社会背景を踏まえて、会議におけるテレビ電話の利用も認められることとなりました。
【5つの区分】特定事業所加算が加算される割合
特定事業所加算には(Ⅰ)~(Ⅴ)の5つの区分が設けられており、それぞれ算定率が異なります。
訪問介護における算定率は、以下のとおりです。
区分 | 算定率 |
特定事業所加算(Ⅰ) | 所定単位数の20%を加算 |
特定事業所加算(Ⅱ) | 所定単位数の10%を加算 |
特定事業所加算(Ⅲ) | 所定単位数の10%を加算 |
特定事業所加算(Ⅳ) | 所定単位数の5%を加算 |
特定事業所加算(Ⅴ) | 所定単位数の3%を加算 |
特定事業所加算の算定要件
訪問介護における特定事業所についての要件は、以下のとおりです。
全部で12個の項目が設けられていますが、大きくは「体制要件」「人材要件」「重度者対応要件」の3つに分類されます。
【体制要件】
体制要件の項目は、次の6つです。
①計画的な研修の実施
すべての訪問介護員等ごとに研修計画を作成し、研修を実施または実施を予定していること。
▼研修計画の作成にあたって定める内容
・職員の資質向上のための研修内容の全体像
・研修実施のための勤務体制
・訪問介護員等について、研修の目標・内容・研修期間・実施時期 など
②会議の定期的開催
訪問介護員等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること。
▼会議を開催するときの条件
・おおむね1か月に1回以上の頻度で行う
・サービス提供責任者が主宰し、すべての訪問介護員等が参加する
※いくつかのグループに分かれて開催すること、テレビ電話等のICTを活用することも可。
会議においては、利用者に関する情報や、サービス提供にあたっての留意事項の伝達などを行う必要がある。
▼利用者に関する情報・サービス提供にあたっての留意事項とは
・利用者のADL・意欲
・利用者の主な訴えや、サービス提供時に関する特段の要望
・家族を含む環境について
・前回のサービス提供時の状況
・その他サービス提供にあたって必要な事項
③文書等による指示及びサービス提供後の報告
サービス提供責任者が、利用者に関する情報や留意事項を、文書等で訪問介護員等に伝達してから開始すること。
※対面で文書を手交する方法以外に、FAX・メール等による交付も可。
④定期健康診断の実施
すべての訪問介護員等に対して、健康診断等を定期的に実施すること。
▼定期健康診断を行うときの条件
・非常勤の訪問介護員も含めたすべての訪問介護員等を対象とする
・1年に1回以上実施する
・費用については事業主が負担する
⑤緊急時における対応方法の明示
指定居宅サービス等基準第29条第6号に規定されている、緊急時等の対応方法が利用者に明示されていること。
▼文書への記載内容
・事業所における緊急時の対応方針
・緊急時の連絡先
・対応可能時間 など
⑥サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修を実施すること。サービス提供責任者の資質向上のための研修内容および研修実施のための勤務体制の確保を定める必要がある。
【人材要件】
人材要件の項目は、次の4つです。
⑦訪問介護員等の総数の割合が、次のいずれかを満たすこと。
・介護福祉士が30%以上
・介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、ホームヘルパー1級修了者が50%以上
⑧すべてのサービス提供責任者が、次のいずれかを満たすこと。
・3年以上の実務経験を有する介護福祉士
・5年以上の実務経験を有する実務者研修修了者もしくは介護職員基礎研修課程修了者、ホームヘルパー1級修了者
※サービス提供責任者の実務経験は、資格取得前の期間も含め、介護に従事した期間を指す。従事する場所については、在宅や施設を問わない。
⑨サービス提供責任者を常勤で配置し、かつ、規定する基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置していること。
⑩訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上であること。
【重度者対応要件】
重度者対応要件の項目は、次の2つです。
⑪前年度または前3か月で、要介護4・5の利用者、認知症(日常生活自立度Ⅲ以上)の利用者、喀痰吸引等の行為が必要な利用者が合わせて20%以上いること。
⑫前年度または前3か月で、要介護3〜5の利用者、認知症(日常生活自立度Ⅲ以上)の利用者、喀痰吸引等の行為が必要な利用者が合わせて60%以上いること。
特定事業所加算Ⅰ~Ⅴの算定要件
ここでは、特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅴ)の算定要件をまとめています。前述した算定要件の内容と併せてご確認ください。
▼特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅴ)の算定要件と加算率
算定要件 | 特定事業所加算 | 特定事業所加算(Ⅰ) | 特定事業所加算(Ⅱ) | 特定事業所加算(Ⅲ) | 特定事業所加算(Ⅳ) | 特定事業所加算(Ⅴ) | |
算定率 | 所定単位数の20% | 所定単位数の10% | 所定単位数の10% | 所定単位数の5% | 所定単位数の3% | ||
体制要件 | ① | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
② | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
③ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
④ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
⑤ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
⑥ | 〇 | ||||||
人材要件 | ⑦ | 〇 | 〇(※) | ||||
⑧ | 〇 | 〇(※) | |||||
⑨ | 〇 | ||||||
⑩ | 〇 | ||||||
重度者対応要件 | ⑪ | 〇 | 〇 | ||||
⑫ | 〇 |
▽特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件
所定単位数の20%を加算
⇒要件①~⑤、⑦、⑧、⑪をすべて満たすこと
▽特定事業所加算(Ⅱ)の算定要件
所定単位数の10%を加算
⇒要件①~⑤をすべて満たし、かつ、⑦または⑧のいずれかを満たすこと(※)
▽特定事業所加算(Ⅲ)の算定要件
所定単位数の10%を加算
⇒要件①~⑤、⑪をすべて満たすこと
▽特定事業所加算(Ⅳ)の算定要件
所定単位数の5%を加算
⇒要件②~⑥、⑨、⑫をすべて満たすこと
▽特定事業所加算(Ⅴ)の算定要件
所定単位数の3%を加算
⇒要件①~⑤、⑩をすべて満たすこと
訪問介護の特定事業所加算の留意点
特定事業所加算(Ⅲ)と(Ⅴ)については併算定が可能ですが、それ以外の区分は併算定できません。
また、算定要件の「定期的に開催する会議」をテレビ電話装置により実施する場合には、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」や、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守することが求められます。
特定事業所加算で期待できること
訪問介護において特定事業所加算を算定すると、安定した経営維持が可能になります。
また、特定事業所加算に加えて定処遇改善加算の取得を行うことで、収益アップが期待できます。
すると、事業所の職員の待遇改善が図れるため、職員の定着率アップにもつながります。
特定事業所加算を算定するには、研修の充実や細かい申し送りを行うことが求められるので、利用者に対するよりきめ細かなサービスの提供が実現可能です。
安定した経営体制であることや、職員の離職率が低いことは、サービスの質向上に効果的なので、事業所のイメージアップにつながることも大きな利点だと考えられます。
地域の介護サービスの質向上に貢献
特定事業所加算は、すべての事業所に加算されるものではなく、一定の要件を満たしていると評価された事業所に対してのみ加算されるものです。
そのため、加算を取得することは質の高い介護サービスを提供している事業所だという証明にもなり得ます。
経験や知識が豊富な職員により、利用者やその家族のニーズに応える訪問介護サービスを提供することで、地域における介護サービスの充実に貢献できます。
それはまた、事業所の安定経営にもつながる点でも有効です。