ボディメカニクスで介護負担を軽減して腰痛防止!8つの基本とは?

2023/02/21

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介護に携わる方の多くが抱えている問題の一つに、腰痛があります。

介助するうえで体に負担がかかるのは仕方のないことだと諦めてしまっていませんか?

“ボディメカニクス”を活用することで、介助にかかる力を低減させることができます。

ボディメカニクスとは、身体の動きや力学などの知識を活用した技術のことです。

今回は、介護負担を軽減するのに有効な、ボディメカニクスについて紹介します。

ボディメカニクスについて

ボディメカニクスとは、人間の身体構造や動き、力学の知識などを活用して、介助に必要な力を小さくする技術のことです。

介護従事者が抱える悩みとして、腰痛をはじめとした体への負担が挙げられます。

ボディメカニクスを取り入れることで、力任せにしなくても無理なく体の向きを変えたり、体を起こしたり、体を移動させたりすることが可能です。

介助による負担が軽減され、腰痛予防にもなります。

ボディメカニクスのやり方【8つの基本】

ボディメカニクスのやり方【8つの基本】

ボディメカニクスとは、筋肉や骨、関節などが動くときに作用する力学を活用したものです。

ボディメカニクスを活用して介護すると、介護者の負担が軽減されることはもちろん、スムーズな介助によって、被介護者にも楽になるというメリットがあります。

ここでは、ボディメカニクスの実践方法を8つに分けて解説します。

①支持基底面を広くする

支持基底面とは、何かを支えるときの底の面積です。この部分を広くとることで、身体が安定しやすくなります。

介助を行うときは、身体を安定させることで、転倒や怪我が防止できます。

介護者がふらついていると、被介護者は不安を感じてしまうため、安定した動きをすることを意識しましょう。

②重心を低くする

身体を安定させるためには、重心を低くすることも大切です。

腰痛予防の観点からも、重心を低くするときは腰からではなく、膝から曲げて腰を下げることがポイントです。

膝から曲げることで、骨盤が安定するため楽に移動できるようになります。

③相手の体になるべく近づく

相手の重心を自分に近づけるほど力が伝わりやすくなり、より小さい力で動かせます。

そのためには、自分の身体を被介護者になるべく近づけるようにすることがポイントです。

身体に安定感が出やすくなり、適度な力を加えやすくなります。

④上下ではなく水平に移動する

持ち上げる動作は、重力により大きな力が必要となります。そのため、介助を行うときはなるべく上に持ち上げる動作を避けるようにします。

上下ではなく水平に動かすようにすると、少ない力で移動させることが可能です。

⑤てこの原理を応用する

支点・力点・作用点を利用した、てこの原理を活用することで介助動作がスムーズになります。

例えば、ベッドを支点として、膝をつきながら介助することも一つの方法です。

肘や膝などを支点にして力を加えることで、通常よりも小さな力で動かせます。

なお、ベッドに膝をついたりするときは、被介護者に一声かけてから行うようにしましょう。

⑥被介護者の体を小さくまとめる

被介護者の身体を小さくまとめて介助することも、より小さな力で動作を行ううえで有効です。

身体が広がった状態よりも、摩擦が小さくなるためです。

体の向きを変えるときやベッドの上で体を動かすときなどに、胸の上で腕を組んでもらったり、両膝を立ててもらったりすると、介助しやすくなります。

⑦身体を捻らない

身体を捻らないことも、腰を傷めたり腰痛を悪化させたりすることを防ぎます。

とくに移乗時には、身体を捻ってベッドから車いすへ移乗させてしまう方が多いのではないでしょうか。

この動きは、腰を傷める原因となります。移乗時などは、片方の脚を進行方向に向け、身体ごと方向転換することがポイントです。

⑧身体全体を使う

介助するときには、全身を使うことも大切です。一部分に大きな負担がかかるのを避け、かかる力を身体全体で分散させることができます。

例えば、移乗するときに身体ごと方向を変える、ベッドの足元に降りている身体を上げるときにも身体全体を使って動かすといった方法です。

ボディメカニクスを実践するときに必要なこと

ボディメカニクスを実践するときに必要なこと

力任せに介助を行うと、介護する側・される側双方の負担が大きくなります。

被介護者に不安や痛みを与えてしまう可能性もあるため、ボディメカニクスによる介助方法は、介護従事者が身につけておきたい知識やスキルの一つです。

ボディメカクスの基本を理解したら、実践に移りたいところですが、ボディメカニクスをより効果的に行うためのポイントもあります。

プラスαのポイントを抑えておくと介助がより楽に、スムーズになります。

常に声かけをしながら介助する

介助するときは、これから何をするのか言葉で伝えることが大切です。

これから何が行われるのかわからない状態で、身体に触れられたり動かされたりするのは、被介護者の不安やストレスにつながります。

常に声かけすることで、被介護者が安心できるうえ、心の準備をしてもらうことでより身体を動かしやすくなります。

例えば、「身体を起こしますね。」「ここに手をかけてもらっていいですか?」などと、常に声をかけるようにしましょう。

自分でできることを尊重する

被介護者が自分でできることについては、なるべく自身で行ってもらうことも必要です。

介助にかかる負担が軽減できるほか、被介護者の身体機能の維持・向上にも有効です。

すべて介護者がやってしまうのではなく、少しでもできる動作がある場合はそれをしてもらうようにしましょう。

例えば脚の力が残っている方の場合、車いすへの移乗時に自分で立ち上がってもらったり、なるべく手すりや歩行器を使って歩いてもらったりするなどです。

もちろん、危険だと思われる場合や、被介護者がストレスに感じる場合には、無理にやらせることのないようにしましょう。

ボディメカニクスが活用できる介護場面

介護の現場において、ボディメカニクスはさまざまな場面で活用できます。

ここでは、立ち上がる・座る・歩くといった3つの場面での活用方法を紹介します。

立ち上がる

立ち上がりは、歩行や移乗時などで行われる動作です。

立ち上がりを介助するときのボディメカニクスのポイントは、介護者の足を開き、支持基底面を広く取って、身体を密着させることです。

そうすることで、介助者側の身体が安定しやすくなり、小さい力で立ち上がりをサポートできます。

>座る

座る動作では、膝を曲げて一緒に腰を下ろしていくということがボディメカニクスのポイントです。

座るときに、腰だけを曲げたり、腕を引っ張り座らせようとしたりすると、被介護者に恐怖心を与え、座る動作が困難になります。

被介護者を少し前かがみにさせながら、介護者も一緒に腰を降ろしていくことで、安心かつ楽に座っていただくことができます。

歩く

歩く動作について、例えば片手での手引き歩行の介助でボディメカニクスの技法が活用できます。

片手で手引き歩行するときには、身体を密着させることがポイントです。

重心が近づくほど身体が安定するため、歩行時には身体を密着させましょう。歩行介助が楽になるほか、転倒予防にもつながります。

ただし、比較的スムーズに歩行できる方の場合、身体を密着させることで逆に邪魔になることもあるため、個々の状況に応じた方法が必要です。

ボディメカニクスを活用して、介護者・被介護者の負担を軽減させましょう

ボディメカニクスは、人間の身体機能や力学の知識を用いた介助技術です。

ボディメカニクスを活用することで、介護者の身体的な負担が軽減できるほか、被介護者も安心して、楽に介助されるといったメリットがあります。

人間本来の身体の構造や機能を活かす介助技法なので、介護以外にも、日常生活のさまざまな場面で活用できます。

またポイントを押さえればすぐに実践できるため、介護従事者も、被介護者のご家族の方も、ぜひ身体の動かし方を意識して取り入れてみてください。