介護職の仕事の平均年収はどのくらい?上がる方法とは?

2023/02/02

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少子高齢化が進み、2054年には75歳以上の人口がピークを迎えると予測されているにもかかわらず、介護業界の人手不足は解消されていません。

介護の仕事は業務内容に対して年収が低いというイメージがあり、介護の仕事を志す人が減少している要因のひとつともなっています。

介護の仕事の年収は本当に低いのか、介護従事者の平均年収の実情をみてみましょう。

介護従事者の年収の実態

さまざまな職業の年収についていろいろな調査が行われており、それぞれに異なった結果や統計の数値が出ています。

厚生労働省が実施した令和3年度介護従事者処遇状況等調査では、介護従事者の給与についても調査が行われており、今回は主にこの調査結果をもとに介護従事者の年収をみていきます。

介護職の平均年収

常勤の介護職員の平均月給は31.7万円で、その内訳は平均基本給の額は18.7万円、平均手当額が8.1万円、平均一時金額が4.8万円という結果です。

平均月給を令和2年と比較すると約7000円増加しており、実労働時間は0.3時間減少しているので、介護職員の月給は改善がみられたことになります。

年収には月給に加えて賞与(ボーナス)の支給が含まれ、賞与の支給額は基本給の3.5か月分が平均といわれていますが、勤続年数や施設の種類、資格などで大きく異なり、さまざまな条件によって支給額の幅は大きいと考えられます。

仮に賞与の支給額を平均基本給の3.5か月分で計算すると年間約65万円となり、年収はおよそ445万円となります。

国税庁の調査では令和3年の給与所得者の平均年収は443万円なので、介護職員の平均年収は日本の平均年収とほぼ同等といえます。

しかし厚生労働省による令和3年賃金構造基本統計調査によると、介護職員の賞与の支給額は平均が約53万円という結果もあり、条件によって年収額は日本人の平均年収を下回ることもあると考えられます。

介護事業所の種類による年収の違い

介護事業所の種類によって平均給与額には差があります。

介護老人保健施設では平均給与額は34.5万円、通所介護事業所では27.8万円となっていますが、令和2年度と比較すると、全ての事業所で1万円前後の増加がみられています。

事業所の種類による賞与額をみてみると、公益財団法人介護労働安定センターが令和元年に実施した調査では、約7割の事業所が常勤の職員に対して定期的に賞与を支給しているという結果が出ており、経営状況に応じて支給しているという事業所を含めると9割以上の事業所が賞与を支給しているという結果でした。

しかし事業所の種類によって平均賞与額にも差があり、特別養護老人ホームの平均賞与額は約79万円、グループホームでは約38万円となっています。

特別養護老人ホームや介護老人保健施設など規模が大きい入所施設の方が、通所系や訪問系の事業所に比べて賞与額は高い傾向があるようで、賞与額は年収に大きく影響すると考えられます。

年齢による年収の推移

29歳以下から10歳ごとに年齢を区切って年収を見ていくと、介護事業所全体では、男性は40歳代で約35.6万円、女性は50歳代で31.6万円と最も平均給与額が高くなっています。

介護事業所の種類によっては、平均年収が最も高くなる年代は異なっていますが、いずれの事業所でも、20歳代から平均年収は上がっていき、男女とも40歳代から50歳代で最も年収が高くなり、60歳以上になると大きく減少がみられて、ほぼ20歳代の年収に近い額となっています。

職種による年収の違い

介護事業所には介護職員のほかにも、いろいろな職種が勤務しています。

多くの介護事業所で常勤として勤務している職種として看護師、リハビリ担当職種、生活(支援)相談員、ケアマネジャーなどで年収を比較してみると、最も多いのが看護師で23.7万円、次いで理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、機能訓練指導員などで23.0万円、ケアマネジャー22.1万円、生活(支援)相談員21.9万円となっています。

介護従事者の年収は上がりにくい

介護職員処遇改善加算など国の施策があっても、なかなか収入が増えていかないと感じている介護従事者が多いことは事実です。

介護の仕事の年収が上がりにくいことには、いくつかの理由が考えられます。

基本給が低い

介護従事者は基本給が低い傾向にあります。

これは介護職員だけではなく、看護師やケアマネジャーなどの専門職も同様で、他業界と比較すると基本給は少ないのが現状です。

資格手当や夜勤手当、その他の手当ての上乗せがありますが、基本給が低いことは賞与に影響するため、年収は上がりにくいといえます。

収入源が介護報酬である

特別養護老人ホームなど経営母体が社会福祉法人の場合、社会福祉法人は営利を目的としないため、事業活動で得た利益は基本的に法人の活動目的のために利用されます。

主な収入源は介護報酬であり、業績による変動は少なく安定しているといえますが、基本給や諸手当の水準は低い傾向があります。

民間企業が運営する介護事業所の場合は、利用料や管理費、食費などは自由に設定できますが、主な収入源は社会福祉法人と同じく介護報酬であるため、介護サービスについては独自に価格を設定することができません。

それぞれの事業所で大きな利益を上げにくいため、介護従事者の年収も上がりにくいといえます。

介護従事者の社会的地位

これまで介護は家族が担うものであり、職業としてではなく家事の延長のようにとらえられてきました。

子育てと同様に、介護もその専門性が認知されにくく、現在でも「誰にでもできる」と考える人が多いことも事実です。

介護福祉士は介護や福祉の専門職の中で唯一の国家資格ではありますが国家資格の中では合格率は高く、比較的取得しやすい資格であることも社会的地位が向上しにくい要因のひとつになっているかもしれません。

今後、介護従事者の専門性がより高まり、その価値が認められていくことで年収も上がっていくことを期待します。

介護の仕事で年収を上げるには

介護の仕事の給与を上げる国の施策として「介護職員処遇改善加算」があります。

平成21年に実施された介護職員処遇改善交付金を前身として、介護職員(利用者に直接介護サービスを提供する職員)の安定的な処遇改善を図るための環境整備と賃金改善を目的として作られた加算です。

平成24年度から「介護職員処遇改善加算」として介護報酬の加算となり、以降は介護報酬改定の際に算定要件や単位数の見直しが行われ、令和3年度の介護報酬改定において月額およそ9000円の手当てが支給されることとなっています。

このように国や職場が行う処遇改善策の他にも、自分から年収を上げるためにできることもあります。

夜勤回数を増やす

介護施設の中には夜勤のある職場も多くあり、夜勤者には通常の給与に夜勤手当が発生します。

夜勤の勤務時間帯や勤務体制などは職場によって異なるため確認が必要ですが、夜勤回数が多いほど夜勤手当も多くなると考えられます。

常勤ではなくパート勤務でも日勤よりも夜勤の方が時給が高く、夜勤専従の職員を置いている職場もあります。

資格をとる

一般的には資格をとることで資格手当が付きます。

初めは無資格や、介護職員初任者研修の受講で介護の仕事に就いたとしても、実務経験を3年以上積み、実務者研修もしくは介護職員基礎研修などを受けることで介護福祉士の受験資格が得られます。

さらに介護福祉士などの国家資格を所有し、通算5年以上かつ900日以上の実務経験を有する人はケアマネジャーの受験資格が得られます。

勤続する

定期昇給のある職場であれば、長く働くことで給料は上がっていきます。

厚生労働省が実施した令和3年度介護従事者処遇状況等調査では、介護施設や介護事業所の7割以上で定期昇給を実施、または実施予定という結果があります。

5年、10年と働き続けていけば給料は上がりますが、昇給回数や昇給率は職場や職種によっても異なるので、職場で給与規定などを確認してみるとよいでしょう。

また同じ職場で働き続け、介護リーダーや介護主任などの役職に就くことで昇給も期待できます。

事業所の種類を変える

前述したように、介護事業所の種類によって月給にも賞与にも差があります。

規模の大きな入所系の事業所の方が、中小規模の通所や訪問系の事業所と比較すると、年収は多くなる傾向があります。

しかし事業所の種類が同じであっても資格手当や夜勤手当など、諸手当の有無や金額もするので、職場を変える際には月給や賞与の回数、金額のほか、諸手当についても確認する必要があります。

介護の仕事で年収を上げるには

『介護の仕事の平均年収』まとめ

介護の仕事の年収は、事業所の種類や年齢、勤務年数、資格の有無によって幅が広いことがわかりました。

いずれの場合も、業務内容に見合った適正な年収を得られることは、介護業界の人手不足を解消するためにも必要なことです。

介護の仕事の需要はより高まるので、社会的な処遇改善を期待するとともに、年収を上げていくためにも介護の仕事の専門性を高めていきましょう。