介護の仕事は本当に3Kか

2023/02/02

アイキャッチ

介護職は労働環境が厳しいイメージがあり、「3K」と呼ばれる仕事のひとつといわれます。

およそ10年前と比較すると介護職の養成施設数は減少し、労働環境のマイナスイメージから介護の仕事を志す学生は減少しています。

介護の資格を取得しても介護の仕事に就かない学生もいて、介護現場に新卒の職員が入職しない現状は、介護職員の不足に拍車をかけています。

介護の仕事が3Kと呼ばれる理由について考えてみます。

3Kとは

3Kは一般的に「きつい・汚い・危険」の頭文字をとったもので、労働環境が厳しい職業に対して使われます。

1980年代末頃から使われるようになった言葉で、当時のバブル経済の中では華やかな職業に就きたいと考える人が多く、地味で体力的にも精神的にも負担が大きい職業は敬遠されるような社会の流れの中で生まれました。

近年は職業によって「帰れない」「厳しい」「給料が少ない」などの言葉と入れ替えて使われることもあります。

4K、5K

介護の仕事は「きつい・汚い・危険」の3Kにさらに「給料が少ない」を加えて4Kと呼ばれたり、給料が少ないことに起因して「結婚できない」を加えて5Kなどとも呼ばれることもあります。

3K、4K、5Kにはそれぞれ明確な定義があるわけではないので、職種や職場によっても言葉を入れ替えて使われることがあります。

いずれにしてもネガティブな言葉ばかりなので、介護の仕事のイメージダウンにつながっています。

いろいろな職業の「K」

介護の仕事以外にも「3K労働」と呼ばれる職業はあります。建設業や清掃業、医療職などでも使われることがあります。

「きつい・汚い・危険」の3Kをベースに、職業によって「帰れない」「厳しい」「給料が少ない」などの言葉を組み合わせ、現在ではいろいろな職業に使われています。

多くは肉体的・精神的に厳しい職業に対して使われますが、特に人員不足や労働環境を改善する動きがみられない職業や職場について使われています。

介護の仕事の3Kとは

介護の仕事における3Kは主に「きつい・汚い・危険」といわれていますが、それぞれどういったところが「きつい・汚い・危険」にあたるのでしょうか。

介護の仕事における「K」について挙げてみましょう。

きつい

介護職は、体力的にも心理的にも「きつい」と感じる場面は確かにあります。

自分よりも体が大きかったり、体重が重い高齢者の移乗介助や入浴介助など、体力を消耗する作業は日常的で、慢性的な腰痛などを訴える介護職員が多いのは事実です。

また職場によってはシフト制の勤務や夜勤などによって不規則な生活となり、睡眠不足や自律神経の乱れによって体調不良を引き起こしやすい環境であるともいえます。

さらに高齢者の中には、その人生経験から気難しく対応が難しい人がいたり、認知症のある高齢者の対応では、心理的に疲弊する場面もあります。

汚い

排泄介助は日常的であり重要な仕事のひとつですが、介護の仕事が「汚い」といわれる主な理由であると考えられます。

トイレに誘導することで排泄できる人から定期的におむつ交換が必要な人もいますが、いずれの場合も排泄は人にとって不可欠であると同時に尊厳にもかかわるデリケートな行為のひとつなので、業務としてただ排泄物を処理するだけではなく、いろいろな配慮が必要です。

また排泄と反対の行為ともいえる食事の場面でも、食べこぼしや口に入れた食べ物が出てきてしまったり、体調によっては嘔吐することもあります。

それらを適切に処理することは、食事の衛生面や感染予防の観点からも介護職の重要な仕事のひとつですが、「汚い」と感じて敬遠する人も多いのかもしれません。

危険

高齢者は細菌やウイルスに対する抵抗力が低下していることがあり、インフルエンザやノロウイルス、近年では新型コロナウイルスなどの病原体に感染するリスクが高く、集団感染も起こりやすいといえます。

細菌やウイルスに感染している人の排泄物や嘔吐物には病原体が含まれている可能性が高いため、それらを処理する介護職員は感染症に罹患するリスクが高くなります。

また高齢者の体を支える身体介護は体力的な負担が大きく、同時に高齢者の転倒などによる事故を防がなくてはならないため、介護職員自身がケガをするリスクがあります。

さらに高齢者の中には認知症や精神疾患などが原因で暴力的な行為がある人もいて、入浴や排泄介助など、本人が嫌な介助を行う場合は特に暴れて抵抗したり、物を投げられたりすることでケガにつながる恐れもあります。

3Kに対する対策

介護の仕事の人員不足は慢性化しており、その要因には「3K」のマイナスイメージがあるといえます。

しかし介護業界では3Kに対しての対策をとっており、改善されつつある現状もあります。

国も介護職員の不足を喫緊の課題と捉え、厚生労働省などでも介護の仕事のさまざまな課題改善について働きかけています。

「きつい」への対策

介護職員の体力的な「きつさ」への対策として、「ボディメカニクス」があります。

「ボディメカニクス」は、人の体の関節や筋肉、骨などが動作するときの力学的関係を利用し、最小限の力で行う介助技術のひとつで、介護職員の身体的負担を軽減できます。

また腰痛予防のためのベルトなど全介護職員に支給している職場もあります。

さらに厚生労働省では介護現場に、リフトや体の動きを感知するセンサーなど介護ロボットの導入を促進しており、介護職員の負担軽減に役立っています。

「汚い」への対策

排泄物や嘔吐物などの処理は、近年は特に感染症予防の観点からも、マスク、ディスポーザブルグローブ、専用エプロンなどを着用し、場合によってはフェイスガードなども使用して行います。

適切な方法で処理することによって、短時間で汚物に触れることなく排泄物の処理を行うことができます。

「危険」への対策

新型コロナウイルスの流行によって、感染症への対策は介護現場にとっては重要な課題となっています。

高齢者に感染が拡大することを避けるには、まず職員が感染症にかからない事が重要であるため、予防接種などは積極的に施設内や嘱託医などで実施していることが多くなっています。

さらにそれぞれの感染症について実践的で正しい知識や対処方法を身につけることができます。

施設内での事故については高齢者と職員の安全のため、過去の発生事例をもとに対応や対策を速やかにとり、同じような事故をくり返さないようにします。

高齢者からの暴力行為の対応についても同様に、介護職員だけではなく、嘱託医や看護師、生活相談員、ケアマネジャーなど他職種の目線から対応方法を検討して統一することで、危険を回避することができます。

介護の仕事の3Kの変化

介護業界では、3Kといわれる課題の解決や、マイナスイメージ改善のためにさまざまな対策がとられています。

職場単位だけではなく、厚生労働省など国の施策としても介護職員の処遇改善や介護ロボットの導入促進などの対応がされています。

最近は「価値(のある)・感謝(される)・感動(できる)」仕事であるとして介護業界の「新3K」が作られています。

価値のある仕事

介護職は高齢者やその家族の健康や尊厳、安全な生活を守る仕事です。

超高齢化に加えて少子化や核家族化が進んでいる日本においては、社会全体を支えるために必要な仕事であるともいえます。

感謝される仕事

介護職は、毎日の仕事の中で「ありがとう」の言葉を言われる機会がとても多い仕事です。

職員は仕事としてやっている介助でも、高齢者やご家族からは「ありがとう」と感謝の言葉をいただけます。

忙しい業務の中でも「ありがとう」の一言と笑顔はやはり嬉しく、毎日の励みになります。

感謝される仕事

感動できる仕事

高齢者はみなさん、いろいろな経験をされてきています。

生活に役立つ豆知識を教えてもらえたり、何気ない日常会話の中にも、自分では気づかないような考え方やものの見方を学べる事もあります。

またリハビリに専念していたり、若い頃のように思い通りにならない体で懸命に生活している姿には、感動的な場面も多く見られます。

介護の仕事は本当に3Kか

介護職は「きつい・汚い・危険」の3Kの仕事と呼ばれ、肉体的にも心理的にも大変な職業のひとつではありますが、それ以上にやりがいのある仕事でもあります。

超高齢社会の日本にとって介護職は無くてはならない仕事であり、業務内容や給与面についてはさまざまな改善策もとられています。

さらなる職場環境の改善が進み介護の仕事の素晴らしさが多くの人に伝わって、3Kが新3Kに入れ替わることを願います。