【自立支援促進加算】寝たきり予防を目的として介護報酬に新設

2023/02/02

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2021年(令和3年)度の介護報酬改定では、高齢者の寝たきりの予防など、自立支援や重度化を防止することに対する「自立支援促進加算」が新設されました。

特別養護老人ホームや介護老人保険施設等において、医師等が全入所者を評価し、リハビリや機能訓練などに取り組んだことへ評価されるものです。

本記事では、高齢者の寝たきり予防を目的とする自立支援促進加算について、概要や算定要件、必要な取組みの流れなどについて解説します。

自立支援促進加算とは

自立支援促進加算とは、介護保険施設において、利用者が尊厳を保持し、個人の能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、支援計画に基づく必要な取組みの実施を評価するための加算です。

医師が全ての入所者に対して、医学的評価やアセスメントを実施することが求められます。

さらに、医師や看護職員、介護職員、介護支援専門員その他の職種の者が、医学的評価やアセスメントおよび支援実績に基づき、特に自立支援のための対応が必要とされた者について、生活全般において適切な介護をするための包括的な支援計画を策定すること、個々の入所者や家族の希望に沿った特別な支援を実施することも必要です。

「特別な支援」について

自立支援促進加算のために必要な、介護現場における「特別な支援」とは、以下を指します。

・尊厳の保持に資する取組み
・本人を尊重する個別ケア
・寝たきり防止に資する取組み
・自立した生活を支える取組み
・廃用性機能障害に対する機能回復・重度化防止のための自立支援の取組み など

「寝たきり」について

「寝たきり」について

自立支援促進加算は、高齢者の寝たきりの予防をはじめ、自立支援や重度化を防止することを目的として新設された加算ですが、「寝たきり」とはどのような状態を指すのでしょうか。

寝たきりの定義は、「何らかの原因で寝ている状態が6か月以上継続し、基本的に1日中寝たままで過ごしている状態」とされています。

寝たきりの状態は、身体機能や内臓機能の低下に加えて、精神面への影響も大きいことから、高齢者のQOL向上のためにも予防が必要です。

自立支援促進加算の対象サービス

自立支援促進加算の対象となる介護サービスおよび単位数は、以下のとおりです。

・介護老人福祉施設
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・介護老人保健施設
・介護医療院
単位数
自立支援促進加算 300単位/月

利用者の尊厳の保持や自立支援・重度化防止の推進、廃用や寝たきりの防止等の観点から、上記の介護サービスにおいて、すべての利用者への医学的評価に基づく日々の過ごし方等へのアセスメントの実施、日々の生活全般における計画に基づくケアの実施に対して評価されます。

自立支援促進加算の算定要件

①医師が利用者ごとに自立支援のために特に必要な医学的評価を入所時に行う。また少なくとも6月に1回は医学的評価を見直し、自立支援に係る支援計画等の策定等に参加していること。
②医学的評価の結果、特に自立支援のために対応が必要であるとされた者ごとに、医師や看護師、介護職員、介護支援専門員、その他職種の者が共同して自立支援に係る支援計画を策定、支援計画に従ったケアを実施していること。
③医学的評価に基づき、少なくとも3月に1回は利用者ごとに支援計画を見直していること。
④医学的評価の結果等の情報を厚生労働省に提出し、当該情報その他自立支援促進の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。
(CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用)

参照:厚生労働省『令和3年度介護報酬改定の主な事項

支援計画の各項目について

入所者・家族の希望も確認しながら、入所者の尊厳が支援に当たり十分保持されることに留意しながら、各支援を行う必要があります。

・寝たきりによる廃用性機能障害を防ぐために、離床、座位保持または立ち上がりを計画的に支援する。
・食事は、本人の希望を尊重し、自宅等におけるこれまでの暮らしを維持できるようにする。
・排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用する。
・入浴は、特別浴槽ではなく、一般浴槽での入浴とし、回数やケアの方法についても、個人の習慣および希望を尊重する。
・生活全般において、入所者本人や家族と相談し、可能な限り自宅での生活と同様の暮らしを継続できるようにする。

支援計画に基づく必要な取組み

支援計画に基づく必要な取組みについて

ここでは、高齢者の寝たきりを防止するための、支援計画に基づく取組みについて解説します。

①定期的なアセスメントの実施・実行
②ケアプランの策定
③CHASEを活用したPDCAサイクル

これら3つについて、計画や実施、効果検証を繰り返しながら行います。

① 定期的なアセスメントの実施

すべての利用者について、リハビリテーションや機能訓練、日々の過ごし方等に係るケアなどの実施によって利用者の状態が改善できるかなど、医的アセスメントを所定の様式に準じて行います。

なお「日々の過ごし方」については、離床時間や座位保持時間、食事・排せつ・入浴の場所や方法、社会参加的活動等が該当します。

② ケアプランの策定・実行

ケアの内容などについて、会議を実施します。

医師やケアマネジャー、介護職員等が連携して会議を実施し、①のアセスメントをふまえて、リハビリテーション・機能訓練、日々の過ごし方等について、所定の様式に準じて計画を策定します。

その後は、計画に基づいたケアを実施する必要があります。

③ CHASEを活用したPDCAサイクル

ケアを実施したのちに、CHASEを利用して厚生労働省へデータを提出し、フィードバックを受けます。

計画の見直しなどに活用し、PDCAサイクルを推進します。

このあとは、また①定期的なアセスメントの実施へ戻り、繰り返していきます。

厚生労働省”CHASE”とは

厚生労働省”CHASE”は、利用者一人ひとりのサービス内容、状態などの情報が蓄積されたデータベースです。

心身状態の変化や改善の関係性についての情報を収集し、介護サービスの質、介護ケアの効果についてのエビデンスを蓄積することを目的としています。

国の運用するデータベースには、”CHASE”のほか”VISIT”もありますが、これらは”LIFE(Long-term care Information system For Evidence)”として、一定的に運用されることとなっています。

LIFEで情報を提出する際の流れ

①新規利用登録:LIFE公式ページより新規登録を行う
②厚生労働省からのハガキを受領:ハガキにLIFEへのログインに必要な情報が記載されている
③初回ログイン・IDの設定:ハガキに記載された内容をもとに、初回ログインとIDの設定を行う
④利用者情報登録:LIFEの画面から各利用者の氏名や保険者番号などの必要情報を入力する
⑤LIFEへの提出:必要な情報の登録と提出を行う

利用者の寝たきり予防を

2021年度の介護報酬改定により、介護保険施設で自立支援促進加算が新設されました。

すべての利用者に対して月300単位を算定できる大型加算ということで、施設経営の観点からも重要な加算になると注目を集めました。

寝たきりを防ぐなど、高齢者が可能な限り「これまでの生活」を継続できるよう、介護施設では個別支援計画を立てて、多職種連携のPDCAサイクルが機能する体制を構築する必要があります。