【介護報酬の仕組み】加算等の届出が必要なケースとは

2024/01/30

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介護サービスを提供した介護事業者には、その対価として介護報酬が支払われます。

「基本報酬」「加算・減算」から成り立つ介護報酬は、介護事業者にとっての主な収益です。

そのため、加算等の届出については正確に行う必要があります。

さまざまな介護サービスの算定要件を把握し、適切に届出等を実施することが、事業所の安定経営にもつながります。

本記事では、介護報酬の構造をはじめ、加算等の届出が必要なケースについて解説します。

介護報酬の構造とは?

介護報酬について

引用:厚生労働省『介護報酬について

介護保険法に基づく介護サービスを提供する事業所では、その対価として介護報酬を算定して収益を得ます。

介護報酬の構造については、「基本報酬」「加算・減算」の2つに分けられます。

介護事業者が利用者に介護サービスを提供し、管轄の市町村等へ加算等の届出を行うことで、介護給付費が支払われる仕組みです。

介護報酬の「基本報酬」と「加算・減算」

介護報酬における「基本報酬」と「加算・減算」の概要は以下のとおりです。

介護報酬の構造 概要
基本報酬 介護サービス種別ごとに、サービスの内容や提供時間、利用者の要介護度などによる単位数が定められている
加算 それぞれの加算に設けられた算定要件を満たして届出を行うことで、基本報酬にプラスして算定できる項目
介護福祉士など有資格者の配置
専門的なサービスの提供
人員配置
中重度者の受入れなど
減算 基本報酬を算定するためのサービスの一部が不足している場合などに、基本報酬をマイナスするために定められた介護報酬の項目

介護保険請求の流れ

介護事業者は、利用者に対して介護サービスを提供し、その対価として介護報酬を得ます。請求先は、利用者と国民健康保険団体連合会(国保連)です。

国保連を通じて市町村等に請求する報酬金額については、介護報酬全体から利用者負担を除いて算定することになります。

介護報酬の請求は1か月毎に行う必要がありますが、国保連への報告は伝送(※)が一般的です。

毎月10日が締め日となり、報告内容が認められれば翌々月25日に介護報酬が支払われるという流れです。

※電子データを専用ソフトで送信する方法

3年に1度実施される介護報酬改定

3年に1度実施される介護報酬改定

介護報酬の改定は3年ごとに行われます。とくに利益率の高いサービスについては、報酬が引き下げられやすい傾向にあることが特徴です。

介護事業者の運営は介護報酬に左右される部分が大きいため、どのような改定が実施されるのか毎回注目を集めます。

直近では、2021年(令和3年)に改定が行われました。

2021(令和3年)度介護報酬改定の改正ポイント

2021年度の介護報酬改訂における改正ポイントは、以下のとおりです。

改正ポイント 取組み例
感染症対策や自然災害発生時時に、必要なサービスが提供できる体制の構築 「感染症や災害への対応力強化」
「業務継続に向けた取組みの推進」など
2025年を目処に「地域包括ケアシステム」の構築を目指す 住み慣れた地域で、利用者の尊厳を保持し、必要なサービスが提供されるような取組みを推進する
利用者の自立支援・重度化防止 リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組み等の連携および強化
介護人材の確保・介護現場の革新 「介護職員の処遇改善や職場環境の改善」
「テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和」に関する取組みの推進
介護保険制度の安定性・持続性の確保 「評価の適正化・重点化」
「報酬体系の簡素化」などの推進

加算等の届出が必要なケースとは

加算等の届出が必要なケースとは

介護報酬を得て安定経営を目指すためには、加算等の届出を適切に行う必要があります。

介護報酬において、加算等の届出が必要なケースは次のとおりです。

①事前の届出が必要な加算の適用を受けようとするとき
②加算の要件に該当しなくなったとき
③届出済の内容に変更があったとき
④指定申請をしようとするとき
⑤法改正等に伴い届出事項が追加・変更となったとき

届出が必要なケース①事前の届出が必要な加算の適用を受けようとするとき

加算を算定しようとするときには、加算算定月の前月15日までに提出が必要です。

15日までに行われた届出については、翌月の1日から算定可能になります。

16日以降に届出が行われた場合には、翌々月の1日から算定可能です。

届出を行う際には、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」や「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」、加算の根拠がわかる書類などの提出が必要です。

管轄の市区町村や介護サービス、加算項目によっても届出の期日および届出に必要書類が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

届出が必要なケース②加算の要件に該当しなくなったとき

加算等の基準に該当しなくなったときには、速やかに届出を行う必要があります。

加算の算定は、基準に該当しなくなった日から算定できなくなります。

きちんと届出せずに請求を行った場合は、支払われた介護給付費は不当利益となり、市町村等への返還が求められるため注意が必要です。

加算の取り下げや、人員欠如による減算等が判明した時点で、すぐに届出を行うようにしましょう。

届出が必要なケース③届出済の内容に変更があったとき

指定事業者は、介護保険法施行規則に定める届出済の事項に変更があったときには、変更内容について都道府県知事に届出を行う必要があります。

変更届を行う際は、以下の書類を提出します。

・変更届出書
・付表
・添付書類

届出内容に相違がないようにするためにも、変更があった際には速やかに届出を行いましょう。

届出が必要なケース④指定申請をしようとするとき

「指定申請」とは、介護事業を展開するにあたって、都道府県や指定都市、中核市、市区町村などに届出を行い、介護保険法に基づく介護事業者としての指定を受けることです。

届出をしたら、人員基準や施設基準、運営基準などの要件を満たしているかに加えて、過去5年以内に指定の取り消し処分を受けていないかなどがチェックされます。

以下の内容を事前に確認しておくと、手続きがスムーズになります。

・担当がどこか(都道府県、指定都市、中核市、市区町村)
・役所のどの部署へ届出が必要か など

届出が必要なケース⑤法改正等に伴い届出事項が追加・変更となったとき

前述したとおり、介護報酬の改定が3年に1度実施されます。

改定によって介護報酬の加算について算定要件が変更になることがあるため、介護報酬の加算等に追加や変更が生じた場合には届出が必要です。

確実に加算を算定するため、また意図せず法律違反とならないようにするためにも、加算等に変更が生じた場合にはきちんと届出を行うようにしましょう。

▼2021(令和3)年度介護報酬改訂に伴い届出が必要な項目例

・生活介護
重度障害者支援加算(1)(2)
常勤看護職員等配置加算(3)(新たに(3)を算定しようとする事業所のみ)

・短期入所
地域生活支援拠点等
共同生活援助

・夜間支援等体制加算(4)(5)(6)(夜間支援等体制加算1を算定する事業所のみ)
医療的ケア対応支援加算
強度行動障害者体験利用加算

・施設入所支援
口腔衛生管理体制加算

・就労継続支援B型
ピアサポート実施加算(就労継続支援B型サービス費(2)または(3)を算定する事業所のみ)

スケジュール管理と正確性が大切

介護事業所へ支払われる介護給付費は、国保連と市区町村等、2か所での審査を通過する必要があるため、支払いまでに1か月半以上の期間がかかります。

不備や誤りがあった場合には返戻され再提出が求められるので、期間内に間に合わないケースもあります。

また、加算を算定しようとするときや加算の要件に該当しなくなったときにも、市区町等への届出が必要です。

介護事業所の運営においては、主たる収入となる介護報酬を適切に請求すること、加算の届出を行うことはとても重要です。

そのためにも、徹底したスケジュール管理と届出内容の正確性を心がけましょう。