介護福祉士がかかわる加算と算定方法について詳しく解説

2024/01/30

介護福祉士の資格は、介護に関する仕事のなかで唯一の国家資格です。

介護福祉士の有資格者であることは、介護について一定以上の専門知識と経験があることを証明することにもなります。

今後さらに加速する高齢社会に向けて、介護職員の需要はさらに拡大すると考えられています。

そのような背景から、国が行う介護職員の処遇改善を図るための対策の一環として、介護福祉士に対する加算が設けられています。

介護施設において経営の安定化や収益アップを図るには、介護職員の処遇改善が不可欠です。

この記事では、介護福祉士がかかわる加算やその算定方法について解説します。

介護福祉士という仕事に関してもまとめていますので、その重要性について改めてご確認ください。

介護福祉士がかかわる加算の種類

介護福祉士がかかわる加算の種類

介護事業所などにおいては、介護福祉士の配置や勤続年数によって算定できる加算が設けられています。

介護福祉士が在籍することにより、介護サービスの質を向上させたり、介護職員のキャリアアップを促進したりすることを目的としています。

ここでは、介護福祉士がかかわる5種類の加算について解説します。

①サービス提供体制強化加算
②介護職員等特定処遇改善加算
③訪問介護における特定事業所加算
④日常生活継続支援加算
⑤福祉専門職員配置等加算

①サービス提供体制強化加算

サービス提供体制強化加算とは、事業所内の介護福祉士の資格を持っている職員の割合や勤続年数などを勘案し、質の高いサービスを提供する体制にある事業所を評価するための加算です。

サービス提供体制強化加算には(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の3種類があり、介護サービスの種別によって算定できる種類や単位数、算定要件が異なります。

ここでは、いくつかの介護サービスについて、介護福祉士がかかわる算定要件のみを取り上げます。

(a)訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護のサービス提供体制強化加算
(b)通所介護・地域密着型通所介護、通所リハビリテーションのサービス提供体制強化加算
(c)短期入所生活介護、短期入所療養介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院のサービス提供体制強化加算

(a)訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護のサービス提供体制強化加算
訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護のサービス提供体制強化加算について、(Ⅰ)~(Ⅲ)ではそれぞれ以下の算定要件が設けられています。

「介護福祉士が60%以上または勤続10年以上の介護福祉士が25%以上」であること
「介護福祉士が40%以上または介護福祉士、実務者研修修了者、基礎研修修了者の合計が60%以上」であること
「職員中の介護福祉士が30%以上または介護福祉士、実務者研修修了者、基礎研修修了者の合計が50%以上または勤続年数7年以上の者が30%以上」であること

(b)通所介護・地域密着型通所介護、通所リハビリテーションのサービス提供体制強化加算
通所介護・地域密着型通所介護、通所リハビリテーションのサービス提供体制強化加算について、(Ⅰ)~(Ⅲ)ではそれぞれ以下の算定要件が設けられています。

「介護福祉士70%以上または勤続10年以上の介護福祉士25%以上」であること
「介護福祉士50%以上」であること
「介護福祉士40%以上または勤続7年以上の者が30%以上」であること

(c)短期入所生活介護、短期入所療養介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院のサービス提供体制強化加算
短期入所生活介護や短期入所療養介護などのサービス提供体制強化加算について、(Ⅰ)~(Ⅲ)ではそれぞれ以下の算定要件が設けられています。

「介護福祉士80%以上または勤続10年以上の介護福祉士35%以上」であること
「介護福祉士60%以上」であること
「介護福祉士50%以上または常勤職員が75%以上または勤続7年以上の者が30%以上」であること

②介護職員等特定処遇改善加算

介護職員等特定処遇改善加算は、これまでの介護職員処遇改善加算に加えて、経験・技能のある介護職員に重点化して、さらなる処遇改善を目的とした加算です。

算定要件や単位数は該当する介護サービスの種別によって異なり、加算の計算方法や配分ルールが決められています。

介護職員特定処遇改善加算(Ⅰ)を算定するには、介護福祉士の配置等要件を満たすことが必要です。

介護福祉士の配置要件は、サービスの種別によって、サービス提供体制強化加算や特定事業所加算、入居継続支援加算などの算定が条件となっており、それらの加算に設けられた介護福祉士の配置を満たしていることが求められます。

③訪問介護における特定事業所加算

訪問介護における特定事業所加算は、介護福祉士などの人材が在籍し、質の高い介護サービスを提供するための体制を整えた事業所を評価するために設けられた加算です。

特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅴ)まで種類があり、それぞれ所定の単位数と算定要件は異なりますが、介護福祉士の配置がかかわるのは特定事業所加算(Ⅰ)と(Ⅱ)のみです。

特定事業所加算(Ⅰ)と(Ⅱ)では、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・訪問介護員などが「介護福祉士の占める割合が30%以上である」または「介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者の占める割合が50%以上である」こと

・全てのサービス提供責任者が「3年以上の実務経験がある介護福祉士である」または「5年以上の実務経験がある実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者である」こと

④日常生活継続支援加算

日常生活継続支援加算は、認知症で居宅での生活が困難となったり、重度の要介護者や施設に入所の必要性が高い人を積極的に受け入れることを目的とした加算です。

対象となる事業者は、厚生労働大臣の定める施設基準に適合していると認められ、都道府県の指定を受けている介護老人福祉施設や特別養護老人ホームで、より質の高い介護サービスを提供するために介護福祉士を配置し、入所者の尊厳を守り生活を支援していることを評価します。

算定要件には「介護福祉士が常勤換算で、利用者6人に対して1人以上であること」が必要です。

⑤福祉専門職員配置等加算

福祉専門職員配置等加算は、放課後デイサービスや児童発達支援事業所などの事業所において、福祉の専門職を配置することでサービスの質を向上させる取組みを評価するための加算です。

福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)があり、要件はそれぞれ以下のとおりです。

「放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所において児童指導員もしくは障害福祉サービス経験者として常勤で配置されている従業者のうち、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士または公認心理士である従業者の割合が35%以上である」こと
「放課後等デイサービスおよび児童発達支援事業所において児童指導員もしくは障害福祉サービス経験者として常勤で配置されている従業者のうち、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士または公認心理士である従業者の割合が25%以上である」こと
「直接支援職員の非常勤を含む全職員のうち、常勤職員の割合が75%以上である」こと
または、
「直接支援職員(放課後等デイサービスや児童発達支援の場合は、児童指導員、保育士または障害福祉サービス経験者)の全常勤職員のうち、勤続3年以上の常勤職員が30%以上である」こと

介護福祉士とは

介護福祉士は国家資格であり、社会福祉士及び介護福祉士法によって「介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術を持って、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう。」と位置づけられています。

介護福祉士の資格には有効期限がなく更新の必要もないため、一度取得すれば一生使える資格です。

介護福祉士の仕事

介護福祉士の主な仕事は介護業務ですが、その対象は必ずしも高齢者に限りません。

障がい者や児童福祉の分野において、介護や支援を行う仕事もあります。

職場は多岐にわたり、訪問介護事業所や老人ホーム、グループホーム、身体障がい者療養施設、医療機関などが挙げられます。

介護の知識や技術を有する介護の専門資格として介護が必要な人の生活を支援し、医療との連携にも重要な役割を担う仕事です。

介護福祉士になるには

介護福祉士になるにはいくつかの方法がありますが、介護福祉士の国家試験を受けるためには一定の受験資格が必要です。

養成施設ルート
大学や専門学校など2年以上の養成施設を卒業後、国家試験を受けることができます。
養成施設を卒業した場合、実技試験は免除されます。

福祉系高校ルート
福祉系の高校を卒業後、国家試験を受けることができます。
このルートでも実技試験は免除されます。
ただし特例高校などでは実務経験などが求められ、この限りではありません。

実務経験ルート
3年以上の実務経験後、実務者研修または介護職員基礎研修などを受講し、国家試験を受けることができます。
実務経験を積むルートにおいても、実技試験は免除されます。

認定介護福祉士とは

認定介護福祉士は、介護サービスの種類にかかわらず、多様な利用者の生活環境やサービス提供形態などに対応して、より質の高い介護の実践や介護サービスのマネジメント、介護と医療の連携強化、地域包括ケアなどに対応するための考え方や知識、技術などを習得した介護福祉士のことです。

認定介護福祉士になるためには、認定介護福祉士養成研修を受講する必要があります。

認定介護福祉士養成研修の受講要件は、以下のとおりです。

・介護福祉士の資格を取得後、5年以上の実務経験を積むこと
・介護職員を対象とした現任研修を100時間以上受けること
・研修実施団体の課すレポート課題、または受講試験において一定の水準の成績を修めていること

介護福祉士の処遇改善で期待できること

介護福祉士にかかわる加算はさまざまで、算定することで介護施設における収益増が見込まれ、介護職員の処遇改善が図れます。

介護職は、ほかの業種と比較すると依然として賃金が低いことや、ハードワークなイメージがあることから、人材不足が続いている状況です。

介護福祉士の雇用によって職員の質を高め、加算により収益アップすることは、経営を安定化させるうえで有効です。

また、雇用の安定化や介護人材の確保にもつながります。

このような取組みにより、介護職員の処遇改善や労働環境改善を行い、高品質かつ安心して介護を受けられる社会の実現に貢献することが可能です。

介護福祉士がかかわる加算とは

日本は世界にも類を見ないスピードで高齢社会が進行し、2042年には高齢者数がピークを迎えると予測されています。

それに対して介護職員は不足しているという実状があり、介護事業所における人手不足の深刻化が懸念されています。

現在、介護福祉士の配置を評価するためにさまざまな加算が設けられています。

これにより、介護職員の賃金水準を上げて離職を防ぐことに加え、介護福祉士に対する処遇改善により介護の専門性を評価し、介護福祉士の配置を増やしていくことが必要です。

また介護サービスの質を一定以上に高めていくことも、介護福祉士に対して加算を設ける目的といえます。

本記事を参考にしていただき、介護福祉士にかかわる加算について理解を深めていただければ幸いです。