高齢者の食欲不振とは?8つの原因と改善方法を徹底解説

2025/10/28

高齢者の食欲不振には、消化機能や認知機能の低下など、さまざまな原因があります。加齢による身体の変化や病気などが影響し、食欲が減少したり、食事への興味が薄れたりすることが多いです。

そこで本記事では、高齢者が食欲不振になる原因や、その改善方法、さらに改善に役立つ具体的な食事例を解説します。

「高齢者の食欲不振で対応に困っている」「食欲不振の改善方法が知りたい」という方は、ぜひ最後までお読みください。

高齢者が食欲不振になる8つの原因とは?

高齢者の食欲不振の原因は主に8つあります。原因は人によってさまざまあるので、どれが当てはまるのか確認してみてください。

 

1.消化機能が低下している

高齢者は加齢により消化機能が低下し、食欲不振に陥る場合があります。食べ物を吸収する力が弱くなると、食べ物を吸収する力が弱まると、脳が「十分に栄養を取れている」と誤認し、食欲が低下してしまうのです。その場合、主に以下のような症状が現れます。

  • 悪心
  • 胸やけ
  • もたれ感

このように、消化機能が低下したことでさまざまな症状が現れると、食欲不振になってしまいます。

 

2.活動量が低下している

高齢者は若い世代と比べて活動量が低下するため、必要なエネルギー量も減り、食欲不振になる場合があります。国土交通省の調査によると、64歳以下の外出率は87%だったのに対し、65歳以上では52%と大きく低下することが判明しました。

出典1:高齢者の生活・外出特性について

活動量が低下すると必要なエネルギー消費量も減るため空腹を感じづらくなり、食欲が低下してしまいます。

日頃から外出の機会を増やしたり、外出できない方は室内で体を動かしたりして、活動量を維持しましょう。

3.噛む力・嚥下機能(飲み込む機能)が低下している

食欲不振になる原因の一つに、噛む力や嚥下機能の低下があります。噛む力が弱まると固いものや噛みづらいものを避けるようになり、食事の楽しみが減ってしまうでしょう。

また、飲み込みにくさから食事への不安や疲労感が生じ、食事を控えてしまう方もいます。

噛む力や嚥下機能の低下は、加齢による身体の変化として多くの高齢者に現れる現象です。

 

4.病気にかかっている

高齢者の食欲不振は、病気が原因で起こることも少なくありません。

  • 胃がん
  • 胃腸潰瘍
  • 肝硬変
  • うつ病

などの消化器や精神疾患は、食欲を低下させる代表的な病気です。

消化器系の疾患では胃もたれや吐き気など、うつ病では気分の落ち込みなどにより食欲が低下することがあります。

病気による食欲不振は、健康状態の悪化を知らせる重要なサインといえるでしょう。

 

5.ストレスがある

ストレスも高齢者の食欲不振を引き起こす原因の一つです。強い不安や緊張が続くと、胃腸の動きに関与している自律神経が乱れ、食欲が低下してしまいます。

その結果、胃もたれや胸やけなどの症状が現れ、食事が思うようにとれなくなってしまうのです。

心と体は密接に関係しているため、ストレスによる食欲不振は自然な反応といえるでしょう。

 

6.嗅覚や味覚が低下している

嗅覚や味覚の低下は、加齢によって起こる症状です。国立長寿医療研究センターは、「加齢により味覚が低下し、食欲にも影響する」「嗅覚低下はあまり自覚されないが、検査により無自覚な症状の変化を早期発見できる。味覚と同様に食欲などに密接に関連する」と述べています。

出典2:感覚器外来(国立長寿医療研究センター)

味覚や嗅覚が低下すると、「何を食べても同じような味に感じる」「美味しいと感じにくい」などと、自然と食事量が減ってしまうこともあるでしょう。

このように、嗅覚や味覚の低下は、高齢者の食欲不振を引き起こす原因となっています。

 

7.認知機能が低下している

高齢者の食欲不振は、認知機能の低下によっても起こります。記憶力や判断力が衰え、食事の時間を忘れたり、食事に集中しづらくなってしまったりすることがあります。

また、食事をすること自体を忘れてしまうため、食欲が出ないという方もいるでしょう。認知機能の低下は食に対する関心が薄れ、食欲不振を引き起こす原因となってしまいます。

 

8.薬の副作用が影響している

服用している薬の副作用によっても食欲不振は起こります。苦みのある薬剤は味覚障害を起こす場合があり、一部の解熱鎮痛薬(ロキソニンなど)は胃痛などを引き起こすことがあります。

そのため、食事の風味を損なったり、胃腸の調子が悪くて食欲が低下してしまうことがあるでしょう。

新しい薬を飲み始めたら、体調の変化には注意して生活してください。

高齢者の食欲不振時に無理に食べさせようとするのは逆効果

高齢者の食欲がないと、「もっと食べてほしい」と思うのは自然なことです。しかし、無理に食べさせようとしたり、「もう食べないの?」といった声かけを繰り返すと、プレッシャーとなって食事が苦痛になってしまうこともあるでしょう。

その結果、「食べなければならない」という義務感が生じ、さらに食欲が低下してしまう場合があります。

食事は本来、楽しい時間であるべきものです。無理に促すのではなく、原因を探りながら、本人のペースを尊重して見守っていきましょう。

高齢者の食欲不振による3つのリスクとは?

高齢者が食欲不振になると、起こり得るリスクが3つあります。リスクを知り、改善に役立ててください。

1.低栄養になる

食欲不振が続くと、栄養不足に陥るリスクが高まります。厚生労働省の調査では、高齢者で低栄養傾向の方は男性12.2%、女性22.4%であり、男女ともに特に85歳以上でその割合が高くなっています。

【低栄養傾向の方の割合(65歳以上、性・年齢階級別)】

出典3:高齢者の低栄養予防(厚生労働省)

食事量が減ると、身体を作っているたんぱく質やビタミンなどの栄養素が不足し、筋力や免疫力の低下を招きます。

その影響で、転倒や感染症を起こしやすくなり、生活の質が低下することも少なくありません。低栄養は高齢者の健康のみならず、生活全体に影響を及ぼすといえるでしょう。

 

2.筋肉量が減る

高齢者は筋肉量が減少していく傾向にあります。東京大学高齢社会総合研究機構の調査では、サルコペニア(骨格筋や身体機能が低下した状態)に陥っている高齢者は年齢とともに増え、80代になると大幅に増加することが判明しました。

 

【サルコペニアの有病率(柏市の65歳以上の方が対象)】

出典4:高齢者の筋肉減弱(サルコペニア)およびフレイル(虚弱)に関するデータ(厚生労働省)

 

食事量が減ると筋肉を作るたんぱく質が不足するため、サルコペニア(骨格筋や身体機能が低下した状態)やフレイル(介護状態と健康な状態の間)を助長する可能性が高まります。

食欲不振は筋肉量が減り、歩行困難や転倒を招く原因となるおそれがあるため、食事は適量を摂取するのが望ましいです。

3.骨折しやすくなる

高齢者の食欲不振は、骨折のリスクを高める原因にもなります。食事量が減ることで、骨を形成するカルシウムやビタミンDなどの栄養素が不足し、骨が弱くなってしまうからです。

そのため、軽い転倒でも骨折につながる危険性が高まります。高齢者の骨折は、寝たきりの原因になることもあるため、極力避けなければなりません。

食欲不振は骨折のリスクを高め、高齢者の日常生活に大きな影響を与えるといえるでしょう。

高齢者の食欲不振の改善方法8選

高齢者の食欲不振には改善方法が主に8つあります。原因に合った改善方法を見つけて、対策をしていきましょう。

 

1.手で食べられるものを用意する

食欲不振の改善法として、手でつまんで食べられる料理を用意する方法があります。箸やスプーンを使うのが負担になったり、上手に使えなくなったりすると、食欲が低下する可能性があるからです。

おすすめの主な料理は以下です。

  • おにぎり
  • サンドイッチ
  • ひと口サイズのおかず(ひと口コロッケ)など

自分のペースで気軽に食べられる工夫は、食欲不振を改善する一つの手段といえるでしょう。

 

2.好きな食べ物を用意する

食欲不振の対策として、好きな食べ物を取り入れることも効果的です。栄養も大切ですが、好みの味や香りは、自然と食欲が増すきっかけになります。

厚生労働省の栄養改善マニュアルでも、「食べたい」「美味しい」と思うものをまず食べる

と述べています。

出典5:栄養改善マニュアル(厚生労働省)

好きな食べ物を食べることは、食事を楽しくする大切なポイントです。積極的に取り入れてみてください。

 

3.少量ずつ盛り付けて小出しする

高齢者の食欲不振には、少量ずつ盛り付けて小出しにする工夫が効果的です。一度に多く出すと「食べきれない」と感じてしまい、食欲が低下することがあります。

また、わんこそばスタイルで提供したところ食事が進んだとの研究発表もあります。

出典6:食事に課題のある認知症高齢者への看護(厚生労働省)

食事を無理なく楽しめる工夫が、食への意欲を高める秘訣となるでしょう。

 

4.食べやすいように調理方法を工夫する

高齢者が食べやすい調理法は、食欲アップの鍵となるでしょう。硬い料理や大きすぎる具材は食べづらく、食欲が落ちる原因になります。

 

おすすめの主な調理方法は以下のとおりです。

  • 食材は加熱をして柔らかくする
  • 繊維が多い食材は隠し包丁をして柔らかくする
  • 刻みや一口大など、嚥下状態(飲み込みの状態)にあった大きさの食事を提供する

このように、高齢者が無理なく食べられるような調理方法を工夫してみましょう。

 

5.食事環境を見直す

食欲不振の対策には、食事環境の見直しが大切です。孤食(1人で食べる)が続くと孤独感から食事への意欲が下がるため、なるべく家族や友人と一緒に食べるようにしましょう。

また、食事の時間を毎日一定にすることも重要です。厚生労働省の栄養改善マニュアルでは、少しの量でも同じ時間に食べることで、その時間になると空腹を感じるようになりやすいと述べています。

出典7:栄養改善マニュアル(厚生労働省)

食事環境が日々の食生活を営む土台となるため、できることから取り組んでみましょう。

 

6.食事へ意識を向ける

食事中は食事そのものに意識を向けるようにしてみましょう。特にありがちなのが、テレビを見ながらなどの「ながら食べ」です。食事に集中できなくなってしまい、食欲の低下につながる可能性があります。

食事は心身を整える大切な時間です。香りや彩りを感じながらじっくり食べることで、食事の楽しみが得られます。

 

7.口腔内を正常な状態に保つ

高齢者の食欲不振を防ぐには、口腔ケアが重要です。口の中が乾燥していたり、歯や義歯のトラブルがあると、食べづらさや痛みで食欲が落ちてしまいます。

歯磨きを習慣にし、義歯の方は適切に清掃を行いましょう。

また義歯の当たり感、むし歯などは食欲が低下する原因となるため、歯科受診をしてください。

口内環境を整えると、食事が食べやすくなります。口の健康を守りながら、食事を楽しめるようにしていきましょう。

 

8.かかりつけの医師に相談する

食欲不振が続く場合は、かかりつけの医師に相談してみてください。胃腸などの消化器系の病気や薬の副作用が原因で、食欲が落ちている可能性もあります。

医師の診察を受けることで原因を把握し、薬の変更や治療など、適切な対応が取れます。早めの受診が、食欲不振の改善や健康維持につながるといえるでしょう。

 

高齢者の食欲不振を改善する具体的な食事とサポート方法7選

食欲不振を改善するには、柔らかいもの、のどごしの良いものなどが有効です。食欲不振を改善するために、高齢者に合った食事を提供しましょう。

 

1.柔らかい煮物

高齢者の食欲不振時には、柔らかい煮物を取り入れてみましょう。野菜や肉、豆製品を一緒に煮込むことで、たんぱく質やビタミン、ミネラルをバランスよく摂取できます。

 

おすすめの具材は以下のとおりです。

  • 脂肪の少ない肉
  • 大根
  • にんじん
  • かぶ
  • 玉ねぎ

消化の良い、繊維の柔らかい食材を選ぶと消化もしやすいため、負担なく栄養を取り込めます。柔らかい煮物は、体に必要な栄養を取り入れるのに適した副食です。

 

2.あんかけ(とろみ)

食欲がない高齢者に提供する料理には、あんかけを取り入れてみましょう。のどごしが良くなり食べやすくなります。

 

例えばチャーハンの場合、普通のチャーハンよりあんかけチャーハンのほうが食べやすく、見た目も豪華に見えるため、食欲もわくでしょう。

このようにあんかけ料理は食事を食べやすくし、食事を楽しむきっかけづくりにも役立ちます。

 

3.アイスクリーム

食欲不振の高齢者にはアイスクリームをおすすめします。アイスクリームは口腔内の温度で簡単に溶け、のどごしも良いため負担が少なく食べられます。たんぱく質や脂質も含んでおり、栄養価が高いです。

ただしすぐに溶けて液体になるため、嚥下状態(飲み込みの状態)が悪い方は摂取を控えたほうがよいでしょう。水分をとろみ剤なしで摂取できる方で食欲不振の方は、アイスクリームを試してみてください。

 

4.ピューレ(果物の缶詰をミキサーにかけたもの)

果物の缶詰を使ったピューレも食欲不振の方に向いています。のどごしも良くさっぱりしており、噛まなくても摂取できるからです。

作り方は簡単で、果物の缶詰をシロップと一緒にミキサーにかけ、冷蔵庫で冷やして完成です。水分も多く含まれているため、水分摂取にも役立ちます。

彩りも良いため、楽しみながら食べられるでしょう。

 

5.お粥・パン粥

食欲不振の方には、お粥やパン粥も適しています。噛む力や嚥下機能(飲み込み機能)が低下していても食べやすく、胃腸への負担が少ないのが特徴です。

また、出汁や牛乳で栄養を補えるのもメリットです。体に優しいお粥やパン粥は、食欲不振の高齢者の主食になるでしょう。

 

6.果物

果物も食欲不振の方にはおすすめの食材です。彩りが良く自然な甘さでさっぱりしており、食欲を沸かせます。

また、

  • 水分
  • ビタミン
  • 食物繊維

を手軽に摂取できるため、栄養補給にもなります。特にバナナやみかんなどは手で皮をむけば食べられるため、手軽で負担も少なく食べられるでしょう。

 

7.プリン・ゼリー・ヨーグルト

ゼリー・プリン・ヨーグルトも、食欲不振の方には適しています。のどごしが良く、少量でもエネルギーやたんぱく質を補給できるのが特徴です。

種類も豊富なため、好みの味や風味を選べば、さらに食べやすく、楽しみながら摂取できるでしょう。

 

このように高齢者の食欲不振には、消化機能や活動量の低下を始め、さまざまな問題が隠されています。

改善のためには、高齢者が食べやすい食事を用意する、少量ずつ盛り付けをして提供するなどの対策が必要です。

 

また、食欲不振に適した、

  • 柔らかい煮物
  • あんかけ
  • お粥・パン粥

といった食事を、栄養バランスを考えながら毎日準備・提供し続けるのは、大変なご負担ではないでしょうか。

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