ICFの書き方や介護現場での活用法、6分類などを徹底解説

2022/12/20

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介護現場では、さまざまな健康状態や生活環境にある人たちを相手に、それぞれに適したサービスを提供する必要があります。

利用者やその家族のニーズに応じたサービスを提供するためには、一人ひとりの特徴を把握することが求められます。

そこで有効なのが、ICF分類です。6つの分類をもとに利用者の特徴を知ることで、個人に合わせたきめ細やかなサービスの提案・提供が可能になります。

本記事では、介護現場におけるICFの活用法と、ICFの書き方について記載例とともに解説します。

ICFとはどんなもの?

ICF とは、「生きることの全体像」を示す「共通言語」だとされています。

人の「生活機能」と「障害」に関する状況を明らかにし、さまざまな専門分野や異なる立場の人々の間で共通理解を促すことを目的とします。

この生活機能とは、「生きていくうえでの生活すべて」です。健康状態をはじめ、社会参加する環境や人間関係などすべてが該当します。

ICFは医療や介護の現場で用いられることが多く、患者や要介護者のおかれた状況を理解し、よりよい生活を送るためのサポートにつなげられます。

ICFの特徴

ICFは、その人を取り巻く状況をあらゆる視点から明らかにし、それらをさまざまな立場の人たちの間で共有しやすくすることを目的に用いられます。

そのため、ICFには以下のような特徴があります。

背景因子の視点を取り入れている

・「参加」を重視している
・構成要素間の相互作用にも考慮している
・障害だけではなく、生活環境全体を捉える視点を持っている
・中立的な用語を用いている
・共通言語としての機能を持っている

ICFを介護現場で取り入れるメリット

「ICFの書き方はどうするのか」「どうまとめたらよいのか」など、全体像をまとめて書き出す作業は、はじめは難しい作業かもしれません。

しかし、ICFの書き方を知りきちんとまとめることで、今まで把握できていなかったような、利用者の全体像が理解できるようになります。潜在的なニーズや効果的な介入方法を理解することにもつながります。

ICFの6分類と書き方

ICFの6分類と書き方

ICFの6つの構成要素は、以下のとおりです。

・健康状態
・心身機能・身体構造
・活動
・参加
・環境因子
・個人因子

上記のように構成されており、複雑に絡み合うように、人の生活機能と障害を捉えています。ここでは、それぞれの特徴や書き方について解説します。

健康状態

「健康状態」とは、人が抱えている病気や怪我、変調などを指します。そのほか、肥満や高血圧、ストレス状態なども該当します。

ICFの書き方としては、病名や症状、服用中の薬などをまとめます。病気はひとつとは限らないので、そのほかの病気の有無を確認することも重要です。

主治医の先生や、通院の頻度なども書き出します。

心身機能・身体構造

ICFにおける「心身機能・身体構造」は、生命の維持に直接的につながる体の機能を指します。

具体的には、以下のとおりです。

心身機能:手足の動き、視覚・聴覚、精神状態 など
身体構造:手足の関節の構造、靭帯、胃・腸、皮膚など体の部位

このような身体の状態が、日常生活にどの程度支障をきたしているのかを確認します。

活動

「活動」とは、日常生活の全般を指します。

食事や着替え、入浴に加えて、屋外・屋内での移動なども含まれます。そのほか、仕事や家事、趣味、娯楽に関する行動も該当します。

ICFの書き方のポイントは、利用者が実際に行っている状況を見ることです。そして、どの程度自分でできるのかを確認します。

参加

ICFにおける「参加」は、社会的・文化的・政治的・宗教的な集まりに参加するなど、広い範囲での関わりです。地域での役割や、家庭内での役割も含まれます。

趣味や人との交流の有無を確認することが、ICFの書き方のポイントです。

入院中の場合は書き方が難しいかもしれませんが、例えば「隣のベッドの方と自ら話している」「車椅子で中庭へ散歩に行く」といったことが「参加」の行動に該当します。

環境因子

「環境因子」は、大きくわけて「物的環境」「人的環境」「社会制度的環境」の3つがあります。

物的環境:階段や段差などの構造、道路や交通機関などの周辺環境、手すりや車いすなどの福祉用具
人的環境:家族や友人など
社会制度的環境:日本国憲法などの法律、医療保険、介護保険などの制度

これら3つに沿って環境因子を記載していくのが、ICFの書き方のポイントです。

個人因子

「個人因子」とは、その人の特徴を指します。

具体的には、次のような項目が挙げられます。

・年齢
・性別
・BMI
・民族
・結婚歴
・学歴
・職歴
・価値観
・ライフスタイル
・興味・関心など

個人因子に該当するものは、多岐にわたります。価値観やライフスタイル、興味・関心などはその人の個性にあたるため、重要な因子となり得ます。

ICFの書き方【記載事項と記載例】

ICFの6分類 記載事項 記入例
健康状態 疾病や外傷、体調など ・高血圧と糖尿病の既往歴
・関節リウマチで、朝方にこわばりあり
心身機能・身体機能 心身の機能状況
体の部位の状態
【プラス面】
・皮膚状態:良好
・精神状態:穏やかに過ごせている
【マイナス面】
・運動機能:右片麻痺あり
・痛み:荷重時痛あり
活動 日常生活を営むために必要なADL(日常生活動作) 【プラス面】
・食事:普通食で箸を使用して自立
・排泄:自立
【マイナス面】
入浴:シャワー浴は一部介助が必要
歩行:車椅子が必要、自室のみ杖で自立可能
参加 地域・家庭の中での役割 ・近隣に住む家族とよく話す
・日中はベッド上でテレビを見て過ごすことが多い
環境因子 物的環境
人的環境
社会制度的環境
物的環境:自宅がバリアフリーになっていない
人的環境:近隣に家族が住んでおり生活援助が依頼できる
社会制度的環境:介護保険あり(要介護2)
個人因子 その人固有の特徴
年齢、性別、民族、生活歴、価値観など
・60代後半
・男性
・65kg
・158cm
・高卒
・専業主婦
・障害受容良好
・前向き

 

ICFを介護現場で取り入れる

介護現場でICFをどう取り入れるのか

これまでの介護現場では、利用者が抱える障がいを把握して、それに対して直接的な治療やリハビリを行うことが中心でした。

ところが根治できない病気や怪我の場合、このような考え方では、いつまでも利用者の生活が充実したものになりません。

そこで、ICFに基づいた捉え方をすることで、利用者やその家族が求めるサービスの提供が実現可能になります。

潜在的ニーズの理解や、利用者のQOL向上につながる点でも効果的です。

ICFでより良い生活をサポート

ICFの構成要素である「健康状態」「心身機能・身体構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」は複合的な関係で成り立っています。

ICFを活用すると、利用者の生活機能や障害など全体像が把握できて、誰が見てもわかるようになります。

ICFではその人の生活すべてを確認するため、利用者がより良い生活を送るためのサービスが提供できます。

介護に携わる人は、ICFの目的を理解し、書き方を知ることで、サービスの質を向上させましょう。