介護職のストレスの要因と、その対処法について解説

2024/01/29

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介護職は高齢社会の日本を支える大切な仕事ではありますが、「体力的にきつい仕事」「精神的につらい仕事」「お給料が少ない」など、世間的には未だにマイナスなイメージがぬぐい切れません。

そのため、介護現場は働く場所として敬遠されることも多く、人手不足は深刻な状態となっています。

1人あたりの負担がさらに増加すると、長時間労働、ひいては休職や離職といったケースが増えるおそれがあります。

自身の心身の健康を守るためにも、介護職にとって何がストレスに感じるのか、要因を分析し対処法を身につける必要があります。

この記事では、介護職のストレスの要因と、その対処法について解説します。

介護職がストレスを感じる理由

介護職がストレスを感じる要因については人によって様々ですが、ここでは公益財団法人介護労働安定センターの「令和4年度介護労働実態調査」1)をベースに分析していきます。

職場の人間関係

人間関係のストレスはどのような仕事においても生じる可能性がありますが、人手不足や労働条件などの職場環境の悪さが問題となっている昨今の介護現場では人間関係によるストレスを抱えている人が多いのが現状です。

「令和4年度介護労働実態調査」によると、介護職の離職理由の第1位が「職場の人間関係に問題があったため」となっており、総回答数の27.5%を占めています。

具体的には、「部下の指導が難しい」が 20.3%で最も高く、次いで「自分と合わない上司や同僚がいる」が 20.2%、「経営層や管理職等の管理能力が低い、業務の指示が不明確、不十分である」が 19.7%、「ケアの方法等について意見交換が不十分である」18.6%となっていました。

介護現場では、介護職以外にも多くの専門職が関わっており、目標が同じであっても職種や立場によって視点が異なるため、価値観の違いが生じやすく、妥協点を見出すことが難しいことがあります。

また、同じ介護職であっても、年齢や職歴も様々な人が働いているため、コミュニケーションの難しさや相性の悪さ、価値観の違いなどから人間関係に悩まされることも多くあるでしょう。

さらに、近年介護現場では人手不足を解消するために外国人の労働者を受け入れるケースが増えており、外国籍労働者の割合が緩やかに高まりつつあります。

これにより、一緒に働く上で言語や生活習慣等の違いに戸惑い、同調査結果によると42.8%の人が「コミュニケーションがとりにくい」と回答しています。

このように、介護現場では対利用者との関係だけではなく、同僚や他職種など様々な人たちと交流や連携を図っていく必要があることから、人間関係の軋轢は大きなストレスの要因となることは言うまでもありません。

体力的な負担

高齢者の入浴や排泄、移乗介助など、介護は人の体を支えることが必要な動作があるため、介護者の体に負担が多い仕事ではあります。

「令和4年度介護労働実態調査」によると「労働条件等の悩み、不安、不満等(複数回答)」のアンケートで「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」と答えた人は全体の29.8%にも及んでいます。

慢性的に足腰に痛みを抱える介護職員は多く、片山らの「介護職員における腰痛の頻度、特徴、画像診断の研究予防対策」2)によると、介護業務に従事する152人中、9割もの人が「腰痛がある」と回答しています。

介護の仕事では、食事介助に伴う腰のひねり動作や、おむつ交換や体位交換に伴う中腰、前かがみ姿勢など介護の仕事では腰痛の危険因子となる体勢や動作が避けられません。

利用者の介護度が上がる程、介護者の体への負担は大きくなることから、通所系や訪問系サービスよりも介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの入居系サービスで働く人の方が、身体的負担を訴える人の割合が高くなっています。

また、介護施設や夜間対応型の事業所では夜勤があり、日勤だけ働くよりも日中と夜間の交替勤務をする方が心身に大きな負荷がかかります。

交替勤務をすると生活リズムが不規則となるため、体内時計が乱れ、睡眠障害を引き起こしたり、様々な病気のリスクが上がったりします。

体内時計が乱れると自律神経にも影響を及ぼし、体のだるさや動悸などの身体症状のほか、イライラしやすくなる、感情がコントロールできないなどの精神的な症状もみられることがあります。

考え方の不一致

職場の責任者の運営方針や上司の考え方などが自分の考えと異なる場合、自分が理想とする介護ができないことでストレスを感じることがあります。

「令和4年度介護労働実態調査」で離職経験者のうち、直前職が介護関係の仕事であった労働者に直前職をやめた理由をたずねたところ、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」と答えた人は22.8%で第2位という結果となっています。

この理由は第1位の「職場の人間関係に問題があったため」という離職理由の次に多く、介護職にとって施設の理念や運営のありに対するストレスは大きいものだと考えられます。

具体的にストレスとなる点の1つは、理念と現実に大きな乖離があることです。

例えば、理念では「利用者中心のケア」を掲げているのに、実際の現場には人手不足や時間の制約といった問題があると、その理念を実現するのは困難と言えるでしょう。

また、経営方針が明確でない場合や、経営者や管理職が理念を具体的な行動や指導に反映させていない場合は、スタッフは自分の役割や目標を理解しにくくなります。

これは、自分の仕事に対する満足度やモチベーションが低下する可能性があります。

さらに、職場全体に理念が浸透していないと、スタッフ間での価値観のずれや摩擦が生じやすくもなり、ストレスの要因となることが考えられます。

利用者との関係

高齢者の方は人生の大先輩であり、戦中~戦後の日本を生き抜いてきた尊敬に値する方々です。

それだけに中には厳しい方もいて、最善を考えて行った仕事にも関わらず理不尽に怒鳴られたり、介護を拒否されたりすることもあります。

また、厚生労働省の「平成30年度介護現場におけるハラスメントに関する調査研究 報告書」によると、利用者本人からこれまでにハラスメントを受けたことのある職員は、サービス種別により異なるものの4~7割となっています。

このことから、利用者から身体的暴力や精神的暴力等のハラスメント被害を受けたことがある職員が多くいることが分かります。

さらに、その中でこれまでに利用者からハラスメントを受けて仕事を辞めたいと思ったことがある人は2~4割となっており、利用者との関係の善し悪しは介護現場で働く人にとって大きなストレス要因となることは明白です。

「令和4年度介護実態調査」のハラスメント調査では、利用者やその家族から受けたことがあるセクハラ・暴力等についてたずねたところ、「暴言(直接的な言葉の暴力)」が 20.8%で最も高く、次いで「介護保険以外のサービスを求められた」が 15.2%、「暴力」が 10.5%となっています。

この問題の背景には、利用者と施設側は対等な契約関係にありながらも、時代とともに利用者の権利意識が強くなってきており、介護士がハラスメントを受けやすい立場になっていることが考えられます。

厚生労働省は、介護現場のハラスメント対策のために、ハラスメント対策マニュアル及び研修の手引きを作成・周知しています。

しかし、実際にマニュアルの活用・研修の実施を行っている施設は半数以下であり、介護業界全体のハラスメント対策への意識はまだまだ乏しいと言わざるを得ません。

給料と仕事量が見合わない

令和4年度「介護労働実態調査」によると「労働条件等の悩み、不安、不満等(複数回答)」のアンケートで「仕事内容のわりに賃金が低い」と答えた人は全体の41.4%にも及んでいます。

通常月の税込み月収は、「200 千円以上 250 千円未満」が 26.0%で最も高く、次いで

「150 千円以上 200 千円未満」が 19.7%となっており、平均月収は 214,501 円となっています。

法人格別でみると、平均月収は地方自治体が 252,446 円、医療法人が 233,147 円、社団法人・財団法人が 222,475 円、社会福祉法人が 220,968 円となっています。

政府は、介護職員の賃金の低さから介護人材の流出が続いていることを受けて、2022年2月から介護職員の給与についての待遇改善を行い、月額9000円程度賃上げしました。

これにより介護士の給料は上昇傾向にあるものの、国税庁の『平成28年民間給与実態統計調査結果』によると、介護士の平均年収は約378万円で、全産業における平均年収よりも50万円近くも低くなっているのが現実です。

当然、給料が低いと生活の安定性に影響を及ぼすため、ストレスが大きくなり、働くモチベーションが低下することに繋がります。

将来への不安

「令和4年度介護労働実態調査」によると、離職経験者のうち、直前職が介護関係の仕事であった労働者に直前職をやめた理由をたずねたところ、「自分の将来の見込みが立たなかったため」と回答した人は15%となっていました。

介護業界で将来の見込みが立たないと感じる理由には、慢性的な人手不足や、高齢化社会の進行、賃金の問題、キャリアパスの不明確さなどがあります。

「キャリアパス」は、言い換えると「昇進路線」であり、キャリアアップまでの過程や、そこに至るまでの道筋といった意味を持ちます。

キャリアパスは、企業観点では「人材育成」のために、従業員観点では「モチベーションの維持・向上」のために重要なキーワードです。

キャリアパスを明確にすることによる一番のメリットは、「働く意義」が明確になる点にあります。これは、日々の業務へのモチベーション向上につながります。

しかし、介護業界では明確なキャリアパスが確立されていない場合が多く、自身の将来の見込みが立たず、不安に感じる人も多いのが事実です。

人手不足

日本は少子高齢化が進行しており、介護を必要とする人々の数が増え続けています。

しかし、それに対応するための人材や資源が不足しているため、将来的には更なる人手不足やサービスの質の低下が予想されます。

人手不足の状態が続くと、スタッフ1人あたりの業務の負担が増大し、過重労働により心身に多大なストレスがかかります。

「令和4年度の介護労働実態調査」によると、労働者の労働条件・仕事の負担に関する悩み等において、「人手が足りない」が 52.1%で最も高くなっています。

介護保険サービス系型別でみると、居宅介護支援以外は「人手が足りない」が最も高く、施設系(入所型)は 70.4%も占めています。

労働者の労働条件に関する悩みは賃金よりも人手不足が 10 ポイント以上上回っていることからも、人手不足は介護現場で働く人の大きなストレスとなっていることがわかります。

ストレスの対処法について

ストレスの感じ方には個人差があり、イライラしたり気分が落ち込んだりなど精神面に不調を感じる人もいれば、倦怠感や睡眠の不調など体調面に表れる人もいます。

まずは客観的にストレスの原因が何なのかを探ってみましょう。

 平成27年から労働者が50人以上いる事業所では年に1回のストレスチェックが義務化されています。

ストレスチェック制度には、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知することで、自らのストレスの状況について気付きを促す目的があります。

また、検査結果を集団的に分析して職場環境の改善につなげることにより、労働者がメンタルヘルスの不調に陥らないよう未然に防止する目的もあります。

参考:厚生労働省職業性ストレス簡易調査票(57 項目)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/dl/stress-check_j.pdf

ストレスの原因を根本的に解決できれば一番良いですが、解決が難しいことの方が多いかもしれません。

自分のストレスに早期に気づき、ストレスをうまくかわして、溜め込まない方法を考えてみましょう。

1.やりがいをみつける

介護の仕事は、食事・入浴・排泄など生きるために欠かせない活動をサポートし、介護を必要としている人の日常生活を支えるため、他の職種にはない「魅力」や「やりがい」があります。

介護職員の多くがやりがいを感じる時は、利用者を笑顔にできた時、利用者やそのご家族から感謝の言葉をもらえた時などが挙げられます。

介護のやりがいを感じられないときは、初心に返り、なぜ自分がこの仕事を選んだのか考えてみましょう。

介護の仕事は、時には困難も伴いますが、人や社会の役に立つ大切な仕事であり、大きなやりがいと充実感を味わうことができる仕事でもあります。

仕事をしていると、嫌な場面が記憶に残りがちですが、1日に1つでも良かったことや嬉しいと思ったことなどを見つけ、プラスの感情にも注目するようにしてみましょう。

2.人に話す

人間は社会的な生き物であり、他人とのコミュニケーションを通じてストレスを軽減することができます。

「令和4年度介護労働実態調査」によると何か悩みがある場合に相談できる担当者や「相談窓口」の有無についてたずねたところ、「ある」が43.5%、「ない」が 33.1%、「わからない」が 21.1%となっており、およそ半数の人が職場に相談できる人や窓口がないことがわかります。

職場に相談できる人や窓口がない場合は、話を聴いてくれる家族や友人などの身近な人や、相談機関や専門家にアドバイスを仰ぎましょう。

悩みやストレスを誰かに聴いてもらうことで、3つの効果があることがわかっています。

・カタルシス効果
カタルシスとは「浄化」を意味します。悩みや不安を言葉にすることで、無意識のうちにマイナスな感情が浄化される効果のことです。これまでため込んでいたストレスを外に出すことによって、カタルシス効果が生じ、心がすっきりします。

・バディ効果
「バディ」は「仲間」を意味します。話をして聞いてもらえたという感覚は、人を孤独感から解放します。悩みを持つ人のほとんどは孤独感を抱えています。自分の話をしっかり聴いてくれる相手がいることで、自分は一人ではないと感じ、安心感が生まれます。

・アウェアネス効果
アウェアネスとは「気づき」を意味します。自分の話を聴いてもらっているときに、話をしながら何か気づいた、という経験があるかもしれません。話をしているうちにだんだん頭の中や心の中が整理されていき、思わぬ気づきが生まれることがあります。自己理解が深まる、つまり自分のことがもっとよくわかるようになります。

相談機関一覧
①「職場の人間関係がうまくいかない」「仕事が合わずに悩んでいる」など仕事のストレス、職場の悩みを相談したい。

・労災病院「勤労者心の電話相談」労災病院勤労者予防医療センター又は勤労者予防医療部は全国30ヶ所の労災病院に併設されており、このうち19ヶ所において、勤労者の心の電話相談、電子メールによる相談(1ヶ所)等のメンタルヘルス対策の支援を実施しています。

・都道府県労働相談情報センター(各都道府県で名称が異なります。)
http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/soudan-c/center/(東京労働相談情報センター)

・女性と仕事の未来館
http://www.miraikan.go.jp/

・女性のための相談室(こころの相談):電話 03-5444-4155

②不安な気持ちを誰かに聞いてほしい。

・いのちの電話

困難や危機にあって、誰ひとり相談できる人もなく、自殺などのさまざまな精神的危機に追い込まれる人たちが、再び生きる喜びを見出すことを願いつつ、よき隣人として活動しています。

(東京いのちの電話HPより)全国に52箇所開設されています。

③労働条件・雇用・退職・解雇・均等待遇について相談したい。

・労働基準監督署
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/location.html

・ハローワーク
http://www.mhlw.go.jp/kyujin/hwmap.html

・都道府県労働局雇用均等室
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/roudoukyoku/index.html

・都道府県労働相談情報センター(各都道府県で名称が異なります。)
http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/soudan-c/center/(東京労働相談情報センター)

・日本司法支援センター(法テラス)
http://www.houterasu.or.jp/

④職場のハラスメントで悩んでいる。

・都道府県労働局雇用均等室
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/roudoukyoku/index.html

・財団法人21世紀職業財団
http://www.jiwe.or.jp/

・女性と仕事の未来館
http://www.miraikan.go.jp/
女性のための相談室(こころの相談):電話 03-5444-4155

3.休む

不規則な勤務体制で働くことが多い介護職は、生活のリズムが乱れやすく、休日も心身がしっかりと休まらないこともあります。

疲れたと感じたら、有給休暇を利用して体を休め、気分をリフレッシュする時間をとりましょう。

「有給休暇」は、労働基準法で定められた労働者の権利の一つで、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇です。

「働き方改革関連法案」の成立に伴い、2019年(平成31年)4月1日から、年次有給休暇が10日以上付与される全ての労働者に対し、毎年5日間、時季を指定して有給休暇を取得させることが義務付けられました。

この義務を違反し、年5日の有給休暇を取得させなかった場合や労働者が希望する時季に年次有給休暇を与えなかった場合などには、労働基準法第120条1項に基づき、違反者1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。

人手不足で休みづらい雰囲気の職場も多くありますが、自分の健康と仕事のバランスを考え、必要なら上司や人事部門に相談しましょう。

また、心身の不調などの理由から通院している場合は病状によって休職が効果的なこともあります。

具体的な状況については、直接医師に相談することをお勧めします。

4.笑う

笑うことには、幸せホルモンのエンドルフィンを分泌させたり、自律神経のバランスを整え、ストレスを軽減させたりする効果があります。

また、ガン細胞を攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞が活性化し、免疫力を正常化させる効果もあります。

心身に健康をもたらすのは心の余裕を失うと笑うことが少なくなりがちです。

お笑い番組を見たり、親しい人と話をしたりなど、日常生活に「笑い」をうまく取り入れて、健康で楽しい日々を送りましょう。

5.緊張を細切れにする

1日の中で緊張が続いているなと感じたらトイレに立って深呼吸する、軽く体操をして筋肉の緊張をほぐすなど、気分転換を図りましょう。

緊張状態になると呼吸が浅くなりがちになるため、深呼吸をすることで心と体をリラックスさせることができます。

可能であれば休憩時間に好きな音楽を聴いたり、好きな香りを嗅いだりするのも効果的です。音楽やアロマテラピーにはリラクゼーション効果があります。

また、室内に籠りきりにならないように時々外の新鮮な空気を吸いに行ったり、日光を浴びる時間を作ったりすると良い気分転換になります。

これらの方法を試してみて、自分に合った方法を見つけることが大切です。

6.片付け・掃除をする

散らかっていると集中力が分散し、疲労感やストレスを感じやすくなります。

片付けや掃除は結果が目に見えるため、達成感を感じやすく、ストレスの解消に効果があります。

自宅だけでなく、職場の作業スペースや休憩スペースも整理整頓し、落ち着ける環境を整えましょう。

7.仕事に関係のない趣味を持つ

仕事と離れた趣味を持つことは気分転換になり、ストレス解消につながります。

趣味を持つことにより自分の人生に楽しみをプラスして、日々の生活を精神的に豊かにすることにもつながるでしょう。

また、仕事以外のコミュニティーに所属することで、新たな人脈を作ることができ、違った視点や知識を得ることができます。

異なる業界や専門分野の人々とも交流することで、視野が広がり個人の成長にも役立ちます。

8.自然を親しむ機会を多く持つ

散歩やハイキングをしたり、キャンプや自然のアクティビティーを楽しんだりなど、自然の中で過ごす時間を持つことで、日常生活から離れてリラックスすることができます。

木から発せられるフィトンチッドと呼ばれる香り成分にはリラックス効果があり、ストレス解消に大変有効です。

また、鳥のさえずりや川のせせらぎなどの自然の音は、「1/fゆらぎ」という特性を持っています。

これは、音の強弱や間隔が一定でなく、予測できない不規則なゆらぎを持つことを指します。

この1/fゆらぎは、人間の心地よさやリラックス感に深く関わっており、愛情ホルモンであるオキシトシンの分泌を増やす、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制することがわかっています。

9.適度に運動をする

適度な運動は気分を明るくし、前向きな気持ちを引き出します。

これは、運動をすることで感情や気分のコントロールを司るセロトニンというホルモンが分泌されるからです。

反対に、ストレスホルモンのコルチゾールは抑制されるため、運動後にはリラックス効果が得られます。

また、運動をして適度に体が疲労することで睡眠の質が向上することもわかっています。

運動は、体調を考慮して無理せず自分ができる範囲で続けることが大切です。

10.ストレス解消をタバコやお酒に頼らない

タバコやお酒を摂取すると、一時的にドーパミンという物質が分泌され、心地よさや安心感を得られる、と思っているかもしれませんが実はそうではありません。

タバコやお酒で分泌されたドーパミンの効果は一時的であり、摂取をやめると逆にストレスを感じることがあります。

これは、タバコやお酒がないと気が休まらない、たばこが切れるとイライラするといった新たなストレスを生み出す元凶になります。

ストレス状態から逃れたい、という気持ちからタバコやお酒に頼ってしまうと、いつしか量が増えてしまい、場合によっては依存症となって心身の健康を損ねてしまうことになります。

したがって、ストレス解消のためには、タバコやお酒に頼るのではなく、健康的なライフスタイルや趣味、適度な運動など、より健康的な方法を見つけることが重要です。

11.環境を変える

仕事内容や人間関係がストレスとなっている場合は、環境を変えることで心身の不調が改善する可能性があります。

職場によっては配置換えや異動が可能な場合もあるので、上司に相談してみましょう。

また、環境を大きく変えるために「転職」を考えてみるのも良いかもしれません。

転職は、自分のキャリアや生活の質を向上させるための一つの手段であり、決して「逃げ」や恥ずかしいことではありません。

人々が転職を選ぶ理由は様々で、より良い給与や福利厚生、キャリアアップの機会、働きやすい環境、自分の価値観に合った職場などがあります。

また、現代の労働市場では、転職は一般的なものとなっており、多くの人々が複数回の転職を経験しています。

したがって、転職を考えているなら、それはあなたが自分のキャリアに対して積極的で、自分の可能性を追求している証拠でもあるのです。

介護職のメリットについて

デメリットばかりがクローズアップされがちな介護職ですが、今一度介護職を続けるメリットについても考えてみましょう。

・需要が高く、就職や転職がしやすい
厚生労働省の試算では、2025年には約32万人の介護職員が不足すると見込まれています。

その後も高齢者人口は増加していくため、さらに介護職員の不足は深刻化します。

当面、介護職員の需要がなくなることはなく、就職や転職がしやすい業界であることは確かです。

社会福祉法人や医療法人は社会的信用も高いので就職先として安定しているといえます。

・年齢や性別、学歴を問わない
介護職は性別だけでなく、様々な年齢の方が働いており、ライフステージの変わりやすい女性にとっても働きやすい環境です。

・自分に合った働き方ができる
介護職には正規雇用の他にパートや派遣などいろいろな雇用形態があり、常勤で夜勤がある職場もあれば、パートで在宅を訪問するなど短時間だけ働くことも可能です。

デイサービスのように日中の定時勤務や社会福祉協議会のように公務員に準ずるような働き方ができる職場もあります。

・資格を取得することでキャリアアップが可能
介護士の仕事は、資格取得によってキャリアアップでき、収入アップにつなげることもできます。

介護士のキャリアアップにはステップがあり、研修の受講や国家資格の取得など、自分のやる気次第でケアマネジャーや施設の管理者を目指すこともできます。

・身近な人の介護に経験が役立つ
高齢化が進行しているわが国では、誰もがいずれ、介護が必要になる時が来ます。

介護が必要になった高齢者への社会福祉制度は充実していますが、そのどれもが自動的に付与されるサービスではなく、本人または家族が申請する必要があるものです。

介護職の経験があると、社会福祉制度のサービスについての知識や人脈を利用して、自分の親や配偶者などの介護に役立つ時が来るかもしれません。

介護職のストレスの原因と対処法

高齢社会のわが国を支える介護職は、慢性的な人手不足であり多忙な中でも少ない人員で利用者の安全を守る必要があるため、勤務中は緊張や集中が続きます。

職場の同僚や上司、さらには利用者との人間関係に悩むことも多く、心身ともにストレスの要因が多い仕事であることは間違いありません。

介護職は高齢者を支援するための大きな社会的役割を担う立場でありながらも、給与水準が一般よりも低いことや社会的評価が低いことなど、介護職が感じるストレスの要因は複雑に絡み合っています。

人によって感じるストレスの種類や程度は異なるため、1つのストレスの解消法が全ての人に適しているわけではありませんが、自分に合ったストレスの解消法を複数持っている人の方がストレスに対処する能力が高いと言われています。

ストレスを抱え込み、心身に不調を感じた場合は、一人きりで悩まずに周囲の人へ相談することが大切です。

時には医療機関や社会の相談窓口などの手を借りることも必要かもしれません。

介護職はやりがいのある仕事ではありますが、自分を犠牲にしてまで他人のためならなくても良いのです。

心身共に健康であり、自分らしくいられる場所や仕事に価値を見出しましょう。

 引用

1)公益財団法人介護労働安定センター,令和4年度介護労働実態調査
https://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2023r01_chousa_cw_kekka.pdf

2) 片山良仁, 加藤文彦, 伊藤圭吾,他:介護職職員における腰痛の頻度,特徴と画像診断.日本職業・災害医学会会誌 66(5) 368-376,2018

3)厚生労働省,平成30年度 介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947359.pdf

4)厚生労働省, 令和2年度介護現場におけるハラスメントに関する調査研究
報告書 ,https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947335.pdf