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高齢者の社会的役割と様々な変化
2022/12/19
人は年を重ね、いずれは「高齢者」と呼ばれる年齢を迎えます。
令和2年の厚生労働白書では、2040年に高齢者となった男性の約4割が90歳まで、女性の2割が100歳まで長生きすると推計されています。
平均寿命が延び超高齢社会が進行している日本において、高齢者の社会的役割とはどのようなものでしょうか。
目次
高齢者のイメージ
現在は65歳以上が「高齢者」、75歳以上が「後期高齢者」と呼ばれています。
高齢者と呼ばれる年齢に達し、家族の立場が「おじいちゃん」や「おばあちゃん」になったとしても、若々しく活動的な「アクティブシニア」と呼ばれる高齢者の方も多くなっています。
実際に厚生労働省の調査でも10~20年前と比較して、加齢に伴う身体・心理機能の変化の出現は5~10年遅延し、65~74歳の前期高齢者にあたる人では、心身の健康が保たれており活発な社会活動が可能な人が大多数であるという結果があります。
高齢者の様々な変化
加齢に伴い高齢者の心身にはいろいろな変化が生じますが、高齢者の生活環境も変化します。
生活環境の変化は高齢者の心身にさまざまな影響を及ぼす可能性があり、疾患の引き金ともなることもあります。
しかし加齢に伴う身体機能の変化には個人差があり、身体機能・精神機能の維持や変化は、高齢になるほど個人差は大きくなります。
身体機能
人の体は加齢に伴い、体を構成する細胞の働きが低下したり細胞の数が減少することで、生理的な機能が低下します。
身体の変化で最もわかりやすいのはその外観で、白髪や脱毛、皮膚のしわ、しみ、たるみなどは一般的に誰にでも生じる可能性のある変化です。
また視力や聴力の低下も比較的早期から生じる感覚器の変化ですが、これらは他者にはわかりにくく、本人が自覚する変化といえます。
他にも睡眠や恒常性の維持、臓器機能など、一般的には年齢を重ねていくほど、生命を維持するために重要な働きに変化が及ぶ可能性があります。
社会的立場
現在は終身雇用によって定年まで同じ会社で働き続け、定年後も継続雇用によって同じ会社で働き続けることも可能となっていますが、退職は高齢者にとって単に収入が減少することだけではなく、大きな生活環境の変化といえます。
定年を迎える年齢の人は、年功序列によって年齢とともに役職など社内での立場が高くなっている人も多く、そういった人は退職によって毎日通う場所が無くなったり、それまでの社会的立場を喪失することで、心身の機能に影響を及ぼすことがあります。
家庭内の役割
家庭内の役割は、就労とも大きくかかわっています。
それまでは経済的に家族を支える立場だった人も退職して仕事から離れることで、主な役割が家事や介護、小さな子どもなど家族の世話などに変化しています。
内閣府の調査では60歳代の5割以上、女性に限ると7割以上が家事を担っているという結果があります。
家庭内で担っている仕事や役割は、健康維持や生きがいとなることもあり、さらに家事によって残存能力の維持や、それまでは気づかなかった潜在能力を再発見できることもあります。
高齢者を取り巻く状況の変化
高齢者を取り巻く状況は、戦後から現在まで大きく変化しています。戦後、ほぼ一貫して増加し続けていた総人口は、2008年(平成20年)にピークに達し、その後は減少に転じています。
生産年齢(15~64歳)人口は減少を続け、平寿命が延び、少子化が進んでいることで高齢化は急速に進展し、2060年には約2.5人に1人が高齢者となる見込みです。
このような人口構造の変化は高齢者の生活環境にも大きく影響しています。
世帯構成の変化
厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、高齢者のいる世帯は約30年前と比較して2倍以上に増加しています。
また約30年前、65歳以上の高齢者がいる世帯はそのおよそ半数近くが三世代同居であったのに対して、現在は高齢者の単独世帯、高齢者夫婦のみの世帯が半数以上となっています。
定年の延長
2013年に「高年齢者雇用安定法」が改訂され、65歳までの雇用確保が義務付けられました。
その内容は、定年年齢を定める場合は60歳以上としたうえで、「65歳まで定年を引き上げる」「定年後も65歳までは継続雇用する」「定年の廃止」のいずれかの措置を実施するというものです。
これによって本人が希望すれば、最低でも65歳までは働き続けることができるようになりました。
地域の人間関係の希薄化
内閣府の実施した調査では約30年前、60歳以上の人の6割以上は、近所づきあいがあると回答しています。
しかし現在では、近所づきあいがあると答えた人は約3割に減少しており、特に都市の規模が大きいほど地域の人たちとの交流が少なくなっている傾向があります。
また高齢者で近所づきあいのある人は、単身世帯よりも三世代同居の人の方が比較的高く、賃貸住宅や集合住宅よりも、戸建ての持ち家の人の方が近所づきあいがある人が多いという調査結果もあります。
いずれの場合にも、近所の人や地域の人たちと親しくつきあっている高齢者ほど、健康状態が良い傾向があります。
高齢者の社会的役割
現代の高齢社会においては、高齢者が就労を継続することに加えて、積極的に社会活動や学習の機会を持つことが求められています。
社会の変化に対応するため、新たな知識や技術を習得したり、年齢や性別にとらわれず他の世代とともに生きがいを持って活躍できるように、高齢者の社会活動を促進する動きがあります。
就労
令和4年高齢者白書では自営業やパートタイムなどを含めて、65歳以上の高齢者の3割以上が収入を伴う仕事をしているという結果があります。
また収入の伴う仕事をしている人の方が、収入の伴う仕事をしていない人よりも、「生きがい」を感じていると回答した人の割合が多くなっています。
今後は少子高齢化の急速な進展によって、労働力人口は減少することが予測され若年就業者が減少していくため、豊富な経験や知識を持つ高齢者が本人の望む限り年齢にかかわらず働くことができるよう、定年の延長や継続雇用によって65歳までの雇用確保が義務付けられました。
高齢者の再就職援助や、高年齢者の働きやすい職場づくりのために、事業主に対する各種助成金制度やハローワークによる高齢者の再就職支援など公的な支援策の他、シニア世代を対象とした転職サイトなども増えています。
ボランティア活動
収入を伴う仕事をしなくなってから、高齢者の活躍の場となっているのがボランティア活動です。
身近な例として、道路や公園などの美化活動、通学路の見守りや防犯パトロールなどの活動を高齢者が行っている地域があります。
これらの活動はこれまで自治体や警察などが担ってきた役割でもあり、これを高齢者が代替することは、社会への貢献意欲やいろいろな人の交流が生まれることで、高齢者の生きがいにつながるだけでなく、高齢者が地域社会を支えることにもなり、地域住民にとっても大きなメリットであるといえます。
趣味
高齢者の中でも年齢が高くなるほど、趣味を持っている人は生活の満足度が高いという調査結果があります。
自分の好きなことに夢中になれることに加えて、趣味の活動を通じて外出したり、友人との交流を楽しむ機会が増えることがその要因と考えられています。
高齢者の趣味は多岐にわたっており、スポーツや旅行など外出を伴うものから、読書や手芸、園芸など自宅で行うものまでさまざまです。
中でもパソコンやインターネットの使用を趣味としている高齢者は多く、ITが現在の生活に浸透していることが現代の高齢者の特徴といえます。
趣味を突き詰めていくことで指導的立場になって地域で活動したり、起業する高齢者も増えており、高齢者が新しい役割を作り出すきっかけにもなります。
高齢者の変化と社会的役割
高齢者は自分自身の心身の変化に加え、周囲の環境も変化していきます。
その中で高齢者が担う社会的な役割は多岐にわたりますが、どのような形であっても高齢者が持っている経験や知識、能力を活かし、社会の一員であることを意識して生きがいを持って活躍することは、高齢者自身だけではなく、地域や社会全体にも良い影響や好循環を生み出すと考えられています。