地域包括ケアシステムを例えた「植木鉢モデル」とは?

2022/12/19

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地域包括ケアシステムは、その仕組みを植木鉢に例えて説明されることがあります。

地域包括ケアシステムの構築に必要な要素を、それぞれ植木鉢の受け皿、鉢、土、葉に見立て、高齢者が住み慣れた地域で暮らしていくための地域包括ケアシステムのあるべき姿を表しています。

地域包括ケアシステムの「植木鉢モデル」についてご紹介します。

地域包括ケアシステムとは

地域包括ケアシステムとは、要介護状態になっても住み慣れた地域で、最後までその人らしい生活を続けることができるように、地域の中で助け合う仕組みのことです。

それぞれの地域の実情に応じて介護保険制度と医療保険制度の両分野から、高齢者を地域で支えていくことを目指しています。

地域包括ケアシステムの要素

地域包括ケアシステムは住まいを中心に、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域を単位とすることを想定し、必要に応じて医療、介護、介護予防、生活支援を一体的に提供します。

これらの要素はそれぞれがお互いに関連しているため、相互に連携を持つことが重要です。

住まい

高齢者の生活の場であり地域包括ケアシステムの土台となる要素です。

自宅の他にもサービス付き高齢者向け住宅なども含まれます。単純に住宅を提供するだけではなく、賃貸住宅や施設に入居する際の手続きにかかわる支援なども含みます。

住まい

医療

急性期病院や回復期のリハビリテーション病院、かかりつけ医や地域の連携病院などを指します。

慢性疾患などの持病や日常的な医療はかかりつけ医や連携病院が担い、緊急性のある治療や入院治療が必要な場合には急性期病院などと、役割を分担して対応します。

この役割分担を柔軟に行うためには、関係機関同士で情報を共有するシステムが必要です。

介護

大きく分けて在宅系のサービスと施設・居住系のサービスがあります。

在宅系のサービスは主に自宅を訪問して行う訪問介護や訪問看護など、在宅での生活を支援するサービスです。

施設・居住系のサービスは、特別養護老人ホームや老人保健施設、介護医療院などの施設や、地域密着型の小規模多機能型居宅介護などもあります。

在宅系のサービスと施設・居宅系のサービスは、途中で切り替えることも想定されるため、介護と医療も情報を共有して相互に連携することで在宅生活をスムーズにします。

介護予防

介護予防サービスを積極的に利用することで、要支援の方々も安心して快適な在宅生活を送ることができます。

介護予防サービスは実質的な家事や外出の援助のほか、地域での交流や社会参加の機会を提供することも、介護予防の一環として重要です。

生活支援

地域の実情に応じた生活支援を行うことで高齢者の方々が住みやすい環境を作ります。

自治体や住民の地域活動、ボランティア、NPO法人などが主体となってカフェやサロンなどの運営、配食、買い物、見守り・安否確認など、日常生活に欠かせないサービスを提供します。

これら生活支援は専門的な知識がなくても支援できることも多いため、地域住民の積極的な協力によって、より安全で安心な地域づくりができます。

植木鉢モデル

植木鉢に植えられた植物は、土や鉢などのしっかりした土台があってこそ元気にすくすくと育ちます。

地域包括ケアシステムの植木鉢モデルは、5つの構成要素の関係を植木鉢に植えられた植物に例えて表したもので、お互いに連携しながら有機的な関係を担っていることを示しています。

受け皿・鉢・土

地域包括ケアシステムに重要なのはその土台作りです。植木鉢や土がしっかりとしていなければ、植えた植物はよく育ちません。

地域包括ケアシステムの前提となる「本人や家族の選択や心がまえ」は鉢の受け皿に例えられ、受け皿の上の鉢は地域包括ケアシステムの基盤となる「住まいや住まい方」を表します。

鉢の中に入っている土は「介護予防や生活支援」を表しており、これらの土台がしっかりとしていることで地域包括ケアシステムが健全に構築されると考えられています。

「医療・看護」「介護・リハビリ」「保健・福祉」など専門サービスは、それぞれ植物の葉に例えられています。

本人や家族の選択と心がまえ(受け皿)を前提に、プライバシーと尊厳の守られる住まいと住まい方(鉢)が提供され、安定した生活を送るための介護予防・生活支援(土)があればこそ、専門職による医療・看護、介護・リハビリ、保健・福祉(葉)が効果的に役目を果たすと考えられています。

地域包括ケアシステムの「4助」

地域包括ケアシステムの推進において、4つの「助」が大切といわれています。

地域の中で暮らす高齢者のニーズに応えるためには自助・共助・互助・公助の4つを連携させることが重要と考えられており、植木鉢モデルにも通じます。

自助

自助とは自分自身を助けることです。

健康を維持するために運動や食事に配慮したり、家族以外の他者との交流の機会を持つなど、高齢者自身が介護予防に積極的に取り組む、自発的な行動が必要です。

自分で自分をケアするという心構えが大切であり、「4助」の基盤になるともいえます。

互助

互助は家族や友人、近隣住民など近しい人と支えあうことです。

人と人とが自発的に助け合うことで、家族の協力の他、ボランティア活動や地域の活動、近隣住民同士のかかわりも含まれます。

高齢者に限ったことではありませんが、自助だけでは限界があるため、周囲のサポートは欠かせません。

共助

共助は制度化されている相互扶助のことです。介護保険や医療保険の他、年金などの社会保険制度があります。

家族など周囲のサポートする側の負担が大きくなり過ぎた場合には、共助を利用しましょう。共助は制度化されており、権利として支援を受けることができます。

公助

公助は行政による一般財源で行われる事業のことです自助、互助、公助では対応できない問題を抱えた人に対して生活保障を行うものです。

高齢者福祉事業、生活困窮者への生活保護、人権擁護、虐待対策などが含まれます。

地域包括ケアシステムの課題

地域包括ケアシステムは2014年から本格的に運用が始まった取り組みであり、各自治体は2025年に向けて地域の自主性・主体性に基づいた地域包括ケアシステムを構築することになっています。

地域の特性を反映したものであり、地域独自の地域包括ケアシステムを作り上げることが必要ですが、現在もその認知度は決して高くなく、地域による格差が生じていることも現状です。

課題1:地域の現状把握

地域に暮らす高齢者のニーズや支援が必要な人の数を把握するとともに、地域の中でボランティアやNPO法人など、支援する側の人材を確保していくことが必要です。

課題2:地域ケア会議

地域包括ケアシステムでは、市区町村で「地域ケア会議」を開催し、地域内の関係者が課題を共有し、より良いケアについて検討します。

課題3:施策の実行と見直し

地域の現状を把握し、地域ケア会議で具体的な解決策を決定したら、それらを介護保険事業に盛り込んで実現させていかなくてはなりません。

さらに実行後は適宜見直しを行い、修正の機会を設けることも必要です。

地域包括ケアシステムを例えた「植木鉢モデル」とは?

地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域の中で最後までその人らしい暮らしをしていくために、地域で総合的なサービスを提供する仕組みのことです。

「植木鉢モデル」はこの地域包括ケアシステムを植木鉢に例えてわかりやすく説明したものですが、その構築に当たってはいくつかの課題もあります。

栄養分を含んだ土の入った植木鉢の中で、植物が元気に育っていくように、地域包括ケアシステムも「団塊の世代」が後期高齢者となる2025年をめどに、地域の自主性・主体性に基づき実情に合った地域包括ケアシステムを作り上げていくことが求められています。