入浴介助加算の通所介護における算定要件、個別の計画作成について

2024/01/29

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入浴介助加算は通所介護サービスにおいて、適切な設備や人員を備えたうえで、利用者に入浴サービスを提供した場合に加算されるものです。

令和3年(2021年年)度の介護報酬改定では、利用者の自立を促し自宅で入浴できる能力を支えていくといった観点から、入浴介助加算についても見直しが行われました。

今回はその改定内容をふまえて、入浴介助加算の概要や算定要件、個別入浴計画の作成について解説します。

入浴介助について

「入浴介助」とは、自力で入浴が困難な方に対して介助を行うことを指します。

介護サービス利用の有無にかかわらず、高齢者の多くが入浴介助を必要としています。

入浴介助には身体に直接触れて行う介助だけではなく、見守り程度で入浴が可能なケースもあります。

例えば腰痛などがある方については、シャワーチェアや簡易式手すりなどの福祉用具等を利用することもあり、厚生労働省ではそのような介助について「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.8)」の中で、いくつかの具体例を挙げています。

https://www.mhlw.go.jp/content/000773560.pdfより引用)

<参考:利用者の状態に応じた身体介助の例>

※ 以下はあくまでも一例であり、同加算算定に当たって必ず実施しなければならないものではない。

○ 座位保持ができるかつ浴槽をまたぐ動作が難しい利用者が浴槽に出入りする場合

利用者の動作 介助者の動作
シャワーチェア(座面の高さが浴槽の高さと同等のもの)、浴槽用手すり、浴槽内いすを準備する。
シャワーチェアに座る。
シャワーチェアから腰を浮かせ、浴槽の縁に腰掛ける。 介助者は、利用者の足や手の動作の声かけをする。必要に応じて、利用者の上半身や下肢を支える。
足を浴槽に入れる。 介助者は利用者の体を支え、足を片方ずつ浴槽に入れる動作の声かけをする。必要に応じて、利用者の上半身を支えたり、浴槽に足をいれるための持ち上げ動作を支える。
ゆっくり腰を落とし、浴槽内いすに腰掛けて、湯船につかる。 声かけをし、必要に応じて、利用者の上半身を支える。
浴槽用手すりにつかまって立つ。 必要に応じて、利用者の上半身を支える。
浴槽の縁に腰掛け、浴槽用手すりをつかみ、足を浴槽から出す。 必要に応じて、浴槽台を利用し、利用者の上半身を支えたり、浴槽に足を入れるための持ち上げ動作を支える。
浴槽の縁から腰を浮かせ、シャワーチェアに腰掛ける。 必要に応じて、利用者の上半身や下肢を支える。
シャワーチェアから立ち上がる。

入浴は身体を清潔にするのはもちろんのこと、血流を促進して筋肉の緊張や疲労を緩和させたり、臓器の機能を高める効果も期待できます。

また心身のリラックス効果や、職員による皮膚状態の観察なども重要な目的です。

入浴には転倒や意識喪失などのリスクも伴うため、通所介護で介護サービスとして実施する場合には、高い専門性が求められるサービスといえます。

入浴介助加算について

「入浴介助加算」は、通所介護(デイサービス)や通所リハビリ(デイケア)において、利用者の観察を含む入浴介助を実施した場合に加算されるものです。

数ある介護サービスの中でも高いニーズがあるものということで、算定基準については一定の線引きが設けられています。

次に算定の対象となる介護サービスの種類と算定できる単位数について解説します。

入浴介助加算が算定できる介護サービスの種類

加算対象となる介護サービスは、次のとおりです。

・通所介護
・通所リハビリテーション
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護

入浴介助加算が算定できる介護サービスの種類

単位数

入浴介助加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。それぞれの算定要件を満たした場合に所定の単位が算定できます。

入浴介助加算(Ⅰ)は、前記の介護サービスの種類にかかわらず40単位/日です。

入浴介助加算(Ⅱ)は、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護では55単位/日、通所リハビリテーションでは60単位/日が算定できます。

入浴介助加算の算定要件

入浴介助加算(I)・(II)について、それぞれ算定要件を見ていきましょう。

入浴介助加算(I)の算定要件

入浴介助加算(I)における算定要件の主な内容は、以下のとおりです。

・入浴介助を適切に行うことができる人員および設備を有していること。
・通所介護計画に基づき、入浴介助を行うこと。

これらの要件は、令和3年度介護報酬改定以前と同じ内容です。

入浴介助加算(II)の算定要件

入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件は以下のとおりです。入浴介助加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できません。

・入浴介助を適切に行うことができる人員および設備を有していること。
・医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員、その他の職種の者(医師等)が利用者の居宅を訪問し、浴室での利用者の動作及び浴室の環境を評価していること。
・利用者の居宅の浴室が、利用者自身又は家族等の介助により入浴を行うことが難しい環境にある場合は、訪問した医師等が、居宅支援事業所の介護支援専門員・特定福祉用具販売の福祉用具専門相談員と連携し、福祉用具の貸与・購入・住宅改修等の浴室の環境整備に係る助言を行うこと。
・利用者の居宅を訪問した医師等と連携の下で、機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して、利用者の身体の状況や訪問により把握した利用者の居宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成すること。
・入浴計画に基づき、個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境にて、入浴介助を行うこと。

入浴介助加算の注意点

入浴介助加算の算定要件にはいくつかの注意点があります。

・入浴介助には自立した生活支援のための見守り的援助が含まれており、利用者自身の力で安全に入浴するために必要な介助や声かけ、気分の確認なども入浴介助に含まれます。そのため、必ずしも身体に直接触れる介助が行われなかった場合も算定が可能です。
・算定が可能なのは「全身浴」「全身シャワー浴」であり、足浴や手浴など「部分浴」や「部分シャワー浴」、「清拭」は算定できません。
・通所介護計画に入浴の提供が位置付けられていても、利用者の都合で入浴を実施しなかった場合は算定できません。例えば、体調不良などによって訪問当日に全身浴から清拭に変更した場合には算定できません。
・自宅に浴室がない等具体的な入浴場面を想定していない利用者や、本人が希望する場所で入浴をするために心身機能の大幅な改善が必要となる利用者の場合には、次の項目をすべて満たした場合に、当面「通所介護等での入浴の自立を図ること」を目的として算定することができます。

1.事業所の浴室で医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、ケアマネジャー、機能訓練指導員等が利用者の動作を評価する。
2.自立して入浴することができるよう必要な設備(福祉用具等)を事業所に備える。
3.事業所の機能訓練指導員等が共同で、利用者の動作を評価した者と連携し利用者の身体状況や事業所の浴室環境などを踏まえた個別の入浴計画を作成する。
4.個別の入浴計画に基づき、事業所で入浴介助を行う。
5.入浴設備の導入や心身機能の回復等により、事業所以外の場所での入浴が想定できるようになっているかどうか、個別の利用者の状況に照らして確認する。

入浴介助加算の注意点

令和3年度 介護報酬改定による変更点

令和3年(2021年)度の介護報酬改定では、利用者の自立を図ることを目的として、入浴介助加算の見直しが行われました。

具体的な変更点としては、単位数の見直しと、入浴介助加算(Ⅱ)の創設です。

入浴介助加算(Ⅱ)は、利用者が自宅で入浴する際の自立を図る観点から、利用者宅の浴室の環境等を踏まえた個別の計画を作成し、入浴サービスを提供することを評価するものです。

令和3年度の介護報酬改定による変更点をまとめると、次のようになります。

・「入浴介助加算」が「入浴介助加算(Ⅰ)」に名称変更となった。50単位/日から40単位/日に減算された。
・「入浴介助加算(Ⅱ)」が新設された。加算単位は55単位/日となる。(※通所リハビリテーションでは60単位/日)
・加算(I)・(II)の併算定は不可とする。

h2 個別入浴計画について

入浴介助加算(II)では、「利用者の居宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成すること」が求められます。

ただ個別入浴計画書については、具体的に記載すべき項目や様式は定められておらず、通所介護計画書に入浴計画に相当する内容を記載することで入浴計画書として扱うことが可能です。

下記の厚生労働省のホームページに様式が公開されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00034.html

個別入浴計画書

計画書の項目例

個別入浴計画書を作成するにあたっては、利用者の身体状況や入浴環境を踏まえて、各事業所において項目を設定する必要があります。

前期の様式の赤枠内に、必要な情報を記入します。

以下の項目は、記入すべき情報の一例として参考にしてください。

・身体の状況や疾患の有無など、本人の情報
・医学的リスク(例:入浴時の注意事項、医師の指示など)
・自宅の浴室の環境(例:浴槽との段差、浴室までの住居環境など)
・利用者が居宅で入浴ができるかどうかの評価
・利用者自身、または家族の介助による入浴が難しい場合の助言の有無、助言の内容 など

なお、利用者の居宅には、老人ホームなどの高齢者住宅(居室内の浴室を使用する場合のほか、共同の浴室を使用する場合も含む。)や親族の家なども含まれます。

個別入浴計画に基づく入浴介助とは

通所介護において利用者の自立を図るという観点から、利用者が自身の身体機能のみを活用して行うことができる動作については、見守り的援助を実施することとされています。

介助を行う必要がある動作に関しては、利用者の状態に応じた身体介助の実施が求められます。

計画の見直しや浴室環境等の評価に関しては、期間の定めはありません。

利用者の身体状況や環境に変化が認められた場合に、適宜見直しが必要だとされています。

安定した介護経営を

入浴介助加算は、通所介護サービスで利用者の観察を含む介助を提供した場合に加算されます。

令和3年度介護報酬改定により、入浴介助加算(II)が新設されました。利用者の自立を促進することが、改定の主な目的です。

今後は、利用者や家族のニーズを把握し、2つの区分を使い分けることが重要になると考えられます。

安定した介護経営を実現するためには、入浴加算を含めて取れる加算を算定することが大切です。

解釈通知などを参照し、算定要件をきちんと理解して確実に加算の算定をしていきましょう。また各事業所の現状と照らして不明点などがある場合には、指定権者である自治体に確認するようにしましょう。