個別機能訓練加算について基礎から解説【要件から計画書の作成方法まで】

2022/11/28

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個別機能訓練加算とは、高齢者の状況に応じた個別の機能訓練を行った場合に算定できる介護サービス加算のことです。

デイサービスやショートステイ、特別養護老人ホーム、特定施設入居者生活介護において、所定の算定要件を満たした場合に加算できます。

2021年度の介護保険報酬改定では、個別機能訓練加算についても見直しが行われました。

本記事では、個別機能訓練加算について、その概要や算定要件から、個別機能訓練加算計画書の書き方に至るまで基本的な内容を解説します。

個別機能訓練加算について

個別機能訓練加算とは、対象となる介護サービス形態において一定の要件を満たし、高齢者に応じた機能訓練を行った場合に算定される介護サービス加算のことです。

具体的には「機能訓練指導員を配置する」「利用者のアセスメントをもとに必要な個別機能訓練を行うための計画書を作成する」「計画に基づいた機能訓練を実施する」ことで算定要件を満たした場合に加算されます。

高齢者が住み慣れた地域で、いつまでも元気で生き生きとした在宅生活が送れることを目的としています。

それを実現するために、身体機能や生活能力の維持または向上を目指す機能訓練を実施するというわけです。

個別機能訓練加算の見直し

令和3年度の介護保険報酬改定による個別機能訓練加算の見直し

令和3年(2021年)度の介護保険報酬改定では、個別機能訓練加算についても評価の新設と単位数の見直しが行われました。

個別機能訓練加算に関する改定は、介護報酬改定のうち「自立支援・重度化防止の取り組みの推進」を図ることを目的としたものです。

令和3年度以前の個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱでは、訓練項目が「身体機能の向上」と「生活機能の向上」に分かれていましたが、新設された個別機能訓練加算Ⅰでは、どちらの訓練内容も含まれています。

個別機能訓練加算Ⅱは、名称としては引き継がれていますが、内容的には全く新しいものです。両者の特徴については、次項で解説します。

個別機能訓練加算ⅠとⅡ

個別機能訓練加算Ⅰは、利用者の身体機能(座る、立つ、歩くなどの日常生活における基本動作)を維持・改善することを目的として取り組む個別の運動プログラムです。

単位数は、1日あたり46単位です。

一方、個別機能訓練加算Ⅱは、利用者にADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)への機能訓練や、社会参加などの働きかけにより充実した生活の支援を行います。

このような支援は、利用者のQOL(生活の質)を高め、人間らしく生きることにもつながります。

単位数は、1日あたり56単位です。

介護サービス形態ごとの算定要件

対象となる介護サービス形態には、次の4つが挙げられます。

・デイサービス
・ショートステイ
・特別養護老人ホーム(特養)
・特定施設入居者生活介護(特定施設)

介護サービス形態ごとに算定要件が異なります。

それぞれの概要や算定要件について、以下で詳しく解説します。

デイサービス

デイサービスの個別機能訓練加算には、個別機能訓練加算I・Ⅱの2種類があります。

個別機能訓練加算Ⅰを算定している者が、個別機能訓練加算Ⅱの訓練も別途実施した場合には、同一日であっても個別機能訓練加算Ⅱが算定可能です。

理学療法士等の配置基準が、個別機能訓練加算Ⅰでは「常勤専従」、Ⅱでは「専従」になる点で異なります。

ショートステイ

ショートステイ(短期入所介護)の個別機能訓練加算については、専従の機能訓練指導員を配置して利用者の居宅を訪問すること、個別機能訓練計画を作成してそれをもとに機能訓練指導員が機能訓練を適切に提供することが算定要件です。

1日あたり56単位加算できます。

継続して算定する場合には、3か月に1回以上は利用者の居宅を訪問し、状況把握や説明、同意などを行うことも算定要件となります。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホーム(特養、介護老人福祉施設)とは、社会福祉法人や自治体や社会福祉法人などが主な運営者で、要介護4と要介護5の人が利用できる施設です。

特養においては、理学療法士など特養で働く機能訓練指導員の職務に従事する常勤が1名以上いること、また共同して個別機能訓練計画を作成して計画的に機能訓練を実施することが算定要件となります。

1日あたり12単位加算できます。

特定施設入居者生活介護

特定施設入居者生活介護(特定施設)とは、民間企業が運営する有料老人ホームです。

特定施設においては、理学療法士など機能訓練指導員の職務に従事する常勤が1名以上いること、また共同して個別機能訓練計画を作成して計画的に機能訓練を実施することが算定要件となります。

1日あたり12単位加算できます。

個別機能訓練計画書の書き方

個別機能訓練加算の算定を実施するには、個別機能訓練計画書の作成が必須です。

利用者やその家族に対して、個別機能訓練計画の内容を分かりやすく説明したうえで、同意を得るためにも欠かせないものです。

ここでは、個別機能訓練計画書を作成する目的や書き方について解説します。

個別機能訓練計画書を作成する目的

介護サービスを利用しながら、住み慣れた居宅や地域でできるだけ長く過ごすことを実現させるのが、個別機能訓練を実施する目的です。

そして、その計画を記録するのが個別機能訓練計画書です。

計画を記録として残すことに加えて、利用者や家族へ説明して同意を得るために利用するといった役割も担っています。

個別機能訓練計画書の内容は、ケアマネジャーが作成する居宅サービス計画と、施設ごとの計画(通所介護計画、短期入所生活介護計画など)と連動させて、整合性が保持されている必要があります。

そのため個別機能訓練計画書は、多職種で立案、作成されるのが特徴です。

個別機能訓練計画書の3つの項目

個別機能訓練計画書に記載する項目は、「基本情報」「目標設定」「プログラム立案」の3つです。

項目 記載する内容
基本情報 ・本人や家族の希望・要望
日常生活自立度
病名、合併症
運動時のリスク
生活課題
住宅環境 など
目標設定 生活においてどのような目標を達成したいのか(短期・長期)
プログラム立案 ・訓練の実施により、どのような変化をもたらしたのか
今後どのような課題があるのか など

各項目は記入して終わりではありません。

利用者や家族に分かりやすく説明して同意を得る必要があるため、誰が見てもわかるようにすることを意識して作成しなければなりません。

個別機能訓練加算の重要度が高まる

個別機能訓練加算とは、対象の介護サービス形態において一定の要件を満たし、利用者に応じた機能訓練を行った場合に算定される介護サービス加算のことです。

令和3年度の介護保険報酬改定では、「自立支援・重度化防止の取り組みの推進」を図ることを背景に、個別機能訓練加算についても見直しが行われました。

在宅においても積極的な機能訓練が求められるなど、利用者のニーズが高まっていることからも、個別機能訓練加算は、安定した通所介護事業所の経営を可能にするために必要な条件となりつつあります。