【品質向上とコスト削減を両立】冷凍介護食で変わる介護施設の食事サービス

2025/06/30

介護施設における食事サービスは、利用者の健康維持はもちろん、QOL(生活の質)にも深く関わる重要な要素です。栄養バランスの取れた食事を提供し、「食べる楽しみ」を支えることは、利用者の心身の安定に直結します。

しかし、慢性的な人手不足や厳しいコスト管理のなかで、毎日3食すべてを安定した品質で提供するのは、現場にとって大きな負担となっています。

こうした課題の解決策として、近年注目されているのが調理済み冷凍介護食の導入です。管理栄養士や調理師の常駐が難しい施設でも、栄養バランスの取れた食事を安定して提供でき、食品ロスや水道光熱費の削減にもつながります。

本記事では、以下の3つの視点から、冷凍介護食がもたらす効果を解説します:

  • 介護施設における冷凍介護食の導入メリット
  • 利用者ニーズに応じたメニューの選択肢
  • 品質維持のための管理方法と現場での工夫

 

食事サービスの質と効率を両立したいとお考えの施設経営者・運営担当者の皆さまは、ぜひ最後までご覧ください。

介護施設の食事サービスを改善する冷凍食品のメリット

介護施設で冷凍食品を利用すると、コスト管理などの多くの問題が解決できます。ここでは冷凍介護食の導入によるメリットについて解説しますので、ぜひお役立てください。

人手不足でも安定的に食事提供できる

冷凍介護食を導入すれば、限られた人員でも安定して高品質な食事を提供することが可能になります。

介護現場では、慢性的な人手不足が続いており、管理栄養士や調理師の確保に苦慮している施設も少なくありません。

実際、公益財団法人介護労働安定センターの令和5年度「介護労働実態調査」によると、全体の64.7%の事業所が「人員が不足している」と回答し、うち34.0%は「大いに不足」「不足」と深刻な状態を示しています。

出典1:令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について(公益財団法人介護労働安定センター)

冷凍介護食は、湯せんやスチーム加熱によって簡単に調理でき、盛り付け後すぐに提供可能です。調理工程がシンプルであるため、調理経験のない介護職員でも対応できる点は大きな強みです。

人手不足の影響を最小限に抑えながら、一定水準の食事品質を維持できる冷凍介護食は、安定したサービス提供体制の構築に貢献する有効な手段といえるでしょう。

人件費・光熱費の削減で運営コストを最適化

調理済み冷凍介護食は、湯せんやスチーム加熱のみで提供可能なため、厨房業務にかかる人件費や光熱費を削減できます。管理栄養士や調理師を常時配置せずとも対応可能になるため、特に小規模施設や人員配置に制約のある運営体制においては、高い導入効果が期待されます。

さらに、調理工程の簡略化により、大型の厨房設備や下処理機器などの導入・維持も最小限で済みます。初期投資の圧縮はもちろん、清掃・点検といった日常的なメンテナンス業務の負担も軽減されるため、厨房を含む施設全体のオペレーション効率が向上します。

人件費やエネルギーコストの削減効果と合わせて見ると、トータルではコスト最適化につながるケースが大半です。単なる節約ではなく、安定供給と品質維持を両立する投資対効果の高い選択肢といえるでしょう。

長期保存と柔軟対応により、食品ロスを最小化

冷凍介護食のもう一つの大きなメリットは、長期保存が可能であることにより、食品ロスを大幅に削減できる点です。一般的に冷凍パック食品の保存期間は数か月程度はあるため、仕入れや在庫管理の柔軟性が高まります。

特に、当日の欠食や摂取量の変動といった突発的な状況に対しても、再調理や廃棄の必要なく対応できるため、廃棄率を抑制可能です。消費者庁の調査では、特別養護老人ホームにおいて冷凍食品の導入後、食品ロスが5年間で約30%減少したという報告もあります。

食品ロスの削減は、単なるコスト圧縮にとどまらず、持続可能な施設運営(SDGs対応)という観点からも評価されるべきポイントです。冷凍介護食の導入は、経済性と社会的責任の両立を目指す施設にとって、戦略的な運営改善策の一つといえるでしょう。

出典2:「急速凍結」を活用し食べ残しゼロへ 高齢者ひとりひとりに寄添った新しい食事提供方法で食品ロス削減の取組み(社会福祉法人 正和会)

衛生管理の徹底によって食中毒リスクを軽減

冷凍介護食は、調理後すぐに急速冷却され、氷点下で保管されることで、細菌の増殖を抑えやすい状態で提供されるという特長があります。加熱直後の食材を低温で素早く処理することで、品質と衛生の両面が安定しやすくなります。

特に高齢者は免疫力が低下しやすく、食中毒による体調悪化が深刻な事態につながるケースも少なくありません。そのため、日常的に提供される食事の衛生管理レベルは、施設運営において重要な基盤となります。

株式会社東邦微生物研究所の調査によれば、細菌は30〜40℃の範囲で最も繁殖しやすく、調理後の迅速な冷却が安全性の確保に不可欠とされています。冷凍介護食は、そうした温度管理の要点を押さえて製造・保管されるため、一定の衛生水準を保ちやすいのが特長です。

出典3:最近増殖と温度管理について(株式会社 東邦微生物病研究所)

食事の品質を一定に保ちやすい仕組み

介護施設の現場では、調理担当者による味付けのばらつきや、盛り付けの見た目の差が利用者の満足度に影響することがあります。毎回同じ味・見た目を安定して提供することは、施設の信頼感や満足度の維持に直結します。

冷凍介護食は、あらかじめ調理・加工された状態で提供されるため、味付けや食材のカット形状などが標準化されている点が特徴です。再加熱・盛り付けの手順もシンプルであるため、オペレーションの属人化を防ぎながら、一定品質の提供が可能になります。

なお、最近では企業間競争の影響もあり、栄養バランスや味の面でも改良が進んでおり、従来の冷凍食品に比べて満足度の高い商品も増えてきています。調理品質の安定化に課題を感じている施設では、こうした製品の活用が有効な選択肢となるでしょう。

利用者の状態や個別ニーズに対応した食事提供の工夫

介護施設においては、利用者一人ひとりの身体状況や嗜好、アレルギーの有無に配慮した食事提供が求められます。また、行事や季節に応じたメニューの工夫も、日々の満足度に大きく影響します。

冷凍介護食の中には、こうした多様なニーズに対応した商品も登場しており、施設側の業務負担を軽減しつつ、きめ細やかな対応を実現しやすい環境が整いつつあります。

嚥下機能が低下した利用者への対応

嚥下機能(食べ物を飲み込む力)が低下している利用者には、やわらかく加工された食事の提供が必要です。個別にペースト状やムース状に加工する作業は、調理スタッフにとって大きな負担となる場合があります。

最近では、解凍するだけで提供可能なムース状の冷凍介護食も一部で開発・販売されており、こうした製品を活用することで調理工程を省力化できます。また、通常食に近い見た目や盛り付けが可能なものもあり、食欲の維持や心理的満足にも配慮された設計となっています。

すべての施設で自前対応が難しい中、こうした既製品を上手に活用することで、業務負担の軽減と利用者満足の両立が図れる可能性があります。

アレルギー対応の効率化とリスク管理

食物アレルギーのある利用者への食事対応は、非常に神経を使う業務の一つです。使用する食材の選定や調味料の管理、調理器具の分離など、通常の厨房業務よりも一段階高い安全管理が求められます。

一方で、多くの冷凍食品にはアレルゲンの表示が明確に記載されており、事前に利用者ごとの制限に合わせて商品を選定することで、提供時の判断や調理の手間を大幅に削減することが可能です。

あくまで「アレルギー対応をすべて冷凍食品に任せられる」というわけではありませんが、手作業での調理よりも選択肢を可視化・管理しやすくなるという点で、業務効率と安全性の両面からメリットがあります。

嗜好の違いに対する柔軟な対応がしやすくなる可能性も

冷凍介護食の中には、複数メニューの中から事前に選択できる仕組みや、調理後にアレンジが加えられるものも存在します。全員に同じメニューを提供する運用が多い一方で、一部の施設では「選べる食事」へのニーズに応じた工夫も始まっています。

たとえば、常食とやわらか食の選択肢を準備したり、同じ主菜で味付け違いを選べる商品を取り入れたりすることで、「少しでも好みに寄り添いたい」という運営方針に柔軟に対応できる余地が生まれます。

もちろん、すべての施設が個別提供を実現できるわけではありませんが、冷凍介護食を活用することで提供形態に一定の選択肢が持てるようになることは、今後の運営改善の可能性の一つです。

冷凍介護食を安全に活用するための保管と運用管理のポイント

冷凍介護食は、あらかじめ下処理・加熱調理を終えた食材を急速冷凍しており、衛生面でも優れた食品形態です。とはいえ、保管環境や取り扱い方法に不備があれば、食品としての安全性や品質が損なわれる可能性もあるため、現場での適切な管理が不可欠です。

農林水産省では、冷凍食品の保存管理において以下の5点を基本とすることを推奨しています。

  1. -18度以下の冷凍室で保存する。低温を保つことで細菌の繁殖や品質劣化を防ぎ、長期保存が可能になります。
  2. 冷凍庫内はできるだけ隙間なく詰める。冷凍食品同士がお互いを冷やし合うため、8~9割程度まで収納すると効率的です。
  3. 扉の開閉は手早く。頻繁な開閉は庫内温度の上昇を招くため、食材の出し入れはできるだけ迅速に。
  4. 開封後は再密封し、できるだけ早く消費する。食品の乾燥や酸化を防ぐため、空気を抜いて再封し、早めに使い切ることが大切です。
  5. 一度解凍した食品は再冷凍しない。品質の低下や食感の変化が起こるほか、衛生リスクが高まるため再冷凍は避けましょう。

 

出典4:冷凍食品豆知識と製造工場レポート(農林水産省)

介護施設では、調理専門の職員が常駐していないケースも多く、冷凍介護食の取り扱いが介護職員の業務に組み込まれている現場も少なくありません。そのため、こうした基本的な管理知識をスタッフ全員が共有しておくことが、安全な食事提供の継続に欠かせない要素となります。

特に新しい職員やパートスタッフにもわかりやすく伝えるためには、マニュアルの整備や、定期的な研修・OJTの機会を設けることが効果的です。単に“冷凍だから安心”ではなく、**現場で守るべきルールとして意識を共有することが重要です。

食事の質と運営効率の両立が、利用者満足と施設評価の向上につながる

介護施設の食事に対して、利用者から「美味しくない」「飽きる」といった声が上がる背景には、調理担当者ごとの味付けの違いや、まとめ調理による食感・風味の均一化などがあります。また、長年慣れ親しんできた家庭の味とのギャップが、満足度に影響することも少なくありません。

こうした課題に対し、調理済み冷凍介護食を導入することで、味・品質の安定化が図れ、クレーム対応や厨房内の調整に追われるリスクを軽減することができます。特に食材の下処理や味付けが工場レベルで標準化されている製品であれば、毎回の味のばらつきを抑える効果が期待できます。

さらに、湯せんやスチーム加熱で完結する調理工程により、少人数の厨房でも対応しやすくなり、人員配置の柔軟性や業務効率の向上にもつながります。人件費や食品ロスの削減といったコスト面での効果もあわせて、施設全体の運営最適化にも寄与する点は大きなメリットです。

アレルギー対応やムース食、やわらか食への配慮についても、個別対応が求められる場面において、専用の冷凍製品を活用することで準備の手間を軽減できる可能性があります。ただし、対応の可否は製品によって異なるため、導入にあたってはラインナップの確認が必要です。

このように、冷凍介護食の導入は、食事の質の向上と運営の効率化の両立を可能にし、最終的には利用者の満足度や施設の信頼性向上にもつながる選択肢として注目されています。

冷凍介護食の活用は、施設運営と食事の質を両立させる一手に

介護施設における食事提供には、品質・人手・コスト・衛生管理といった多面的な課題が存在します。調理済み冷凍介護食は、それらの課題に対し、現場の負担を減らしつつ、一定の食事品質を安定的に提供できる手段として注目されています。

とくに人手不足や栄養士・調理師の確保が難しい施設では、厨房業務の簡略化や人件費の圧縮といった効果も見込めるため、食事サービスの再設計に取り組む上で、有力な選択肢の一つとなるでしょう。

また、ムース食やアレルギー対応食など、製品ラインナップを選べば特別な配慮が必要な利用者への対応も柔軟に設計可能です。結果として、利用者の満足度や施設評価の向上にもつながるはずです。

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