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高齢者の食事で気をつけたい栄養バランスと冷凍食品の活用法
2025/06/30

高齢者の食事では、栄養バランスに配慮することが欠かせません。特に、低栄養や筋力低下を防ぐためには、エネルギーとたんぱく質の確保が重要なポイントとなります。
高齢になると、「食事量が減ってきた」「飲み込みにくくなった」などの変化が現れやすく、日々の食事提供には細やかな対応が求められます。無理なく栄養バランスを整えるには、市販の介護食や冷凍食品を適切に活用し、提供の効率化と質の両立を図ることがカギとなります。
本記事では、介護現場における食事提供の視点から、高齢者に必要な栄養素や献立の工夫、冷凍介護食の活用術などをわかりやすく解説します。利用者の健康維持と食事満足度の向上を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
目次
高齢者の食事は栄養バランスが大切
1日の食事は朝・昼・夜、「主食・主菜・副菜」とバランスよく食べることが大切です。主食・主菜・副菜にはそれぞれ役割があり、1食ごとに偏りがないように取り入れる必要があります。
それぞれの役割を簡単に解説したのが下記の表です。
役割 | 主な食材 | |
主食 | エネルギーや活力となる | パン・ご飯・うどん・そば |
主菜 | 体をつくる | 肉・魚・卵・大豆 |
副菜 | 体の調子を整える | 野菜・きのこ・海藻・果物 |
1つの食材でたくさんの栄養をとることは難しく、様々な食材を合わせることで体に必要な栄養をバランスよく摂取できます。
高齢者の1日の栄養摂取量の目安は?
1日あたりの栄養摂取量は、年齢や性別によって決まっています。高齢者の食事では、特にエネルギーとたんぱく質が不足しがち毎日の食事のなかで意識して摂取する必要があります。
栄養摂取量の基準が書かれた厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、自立して生活している65歳〜74歳のエネルギーとたんぱく質の1日の摂取基準は次の通りです。
推定エネルギー必要量 | たんぱく質推奨量 | |
男性 | 2,350kcal | 60g |
女性 | 1,850kcal | 50g |
必要なエネルギー量は年齢を重ねるにつれて減りますが、食事の量が減る高齢者は十分にとることが難しくなります。
また、たんぱく質の推奨量は30代や40代と変わりません。高齢者の食事では、エネルギーとたんぱく質をいかに効率よく摂取できるかが重要となります。
出典1:日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント(厚生労働省)
高齢者の栄養不足のリスク
高齢者の栄養不足は健康維持や生活の質に影響するため、日々の食事の管理が大切体力や噛む力、飲み込む力が低下することで食事量が減少し、栄養不足となる可能性が高まります。
高齢者の栄養不足による主なリスクは次の通りです。
- 筋力や体力の低下による転倒・骨折のリスク
- 免疫力の低下による風邪・感染症のリスク
- 口やのどの筋力が衰えることによる誤嚥性肺炎のリスク
- 脳機能の低下による認知症やうつ症状のリスク
バランスの良い食事や適度な運動を心がけ、良い栄養状態と筋力を維持することが大切です。
高齢者が意識すべき栄養バランスの工夫
高齢者の健康を維持するためには、栄養バランスに配慮することが欠かせません。なかでも重要なのが、エネルギーとたんぱく質の十分な摂取です。これらが不足すると、体力の低下や免疫力の低下につながるおそれがあります。
まずはエネルギーとたんぱく質をしっかりと確保しつつ、他の栄養素もバランスよく取り入れた食事を意識していきましょう。
いつもの食事にエネルギーをプラスする
エネルギーは1日の活動の活力となり、健康を維持するために重要です。炭水化物や脂質から摂ることが多く、特に脂質を料理にうまく取り入れることで効率よくエネルギーを摂取できます。
パンにバターを塗る、サラダのドレッシングにマヨネーズを使う、コーヒーに砂糖を入れるといった、通常の食事にエネルギーをプラスした食事方法もおすすめです。
毎食たんぱく質の摂取を意識する
年齢を重ねると筋肉が減少しやすくなります。たんぱく質は筋肉のもととなるほか、傷の治癒や体力の回復にも大切な栄養素です。
たんぱく質には噛む力が必要な食品も多く、食欲の低下や噛む力の低下によって摂取量が少なくなってしまいます。
高齢者の食事には、魚・卵・大豆製品・乳製品などの良質なたんぱく質を毎食に取り入れることが大切。肉や魚は食べやすい大きさにカットして食べる、やわらかく食べやすい卵料理は1日1回取り入れる、乳製品でたんぱく質を補うといった工夫が必要です。
骨の健康を支えるカルシウムとビタミンDの摂取を意識する
高齢者にとって、骨の健康を保つことは転倒や骨折のリスクを下げるうえで非常に重要です。そのためには、カルシウムとビタミンDの両方を意識して摂取することが大切です。
カルシウムは骨の主要な構成成分であり、牛乳やチーズ、豆腐、小魚などに多く含まれています。ただし、カルシウムだけを摂っても体内で十分に活用されないことがあるため、吸収を助けるビタミンDの存在も欠かせません。
ビタミンDは、魚やきのこ類に多く含まれており、さらに日光を浴びることでも体内で合成されます。天気のよい日には、無理のない範囲で散歩などを取り入れるのもよいでしょう。
野菜を取り入れる工夫と日々の献立への活かし方
高齢者の健康維持には、ビタミン・ミネラル・食物繊維を豊富に含む野菜の摂取が欠かせません。しかし、「噛みにくい」「飲み込みにくい」といった理由から、野菜の摂取量が不足しがちなのも現場でよく見られる課題です。
そこで、提供の際には加熱や刻み、ペースト化などの調理工夫が有効です。特に煮物やスープ、あんかけ、和え物などに形を変えて取り入れることで、自然に摂取量を増やすことができます。また、冷凍野菜やレトルトの野菜加工品を活用することで、調理の負担を抑えつつ安定した提供が可能になります。
季節の野菜を取り入れた彩り豊かな副菜や汁物は、見た目の楽しさにもつながり、食欲の向上にも寄与します。無理なく野菜を取り入れることで、日々の食事からの栄養補給をより効果的に行いましょう。
おすすめの高齢者向け食事メニュー
高齢者の食事は、1日の活動や消化吸収に合わせてメニューを考えることが大切です。より効率よく栄養を摂取するためのメニューを紹介します。
朝食は活力をつけるためにと炭水化物とたんぱく質を補給
朝は活動を始める時間。1日の活力となる食事がおすすめです。消化機能は活性化していないので、炭水化物とたんぱく質を中心とした食材を選ぶと良いでしょう。
おすすめの朝食メニュー
主食 | パン |
主菜 | スクランブルエッグ |
副菜 | 温野菜サラダ |
副菜 | バナナヨーグルト |
昼食は脂の多い食事でエネルギーを摂取
お昼は腸も活発になり、消化吸収がよくなります。昼食のタイミングでエネルギーを摂取しやすい脂質を取り入れると良いでしょう。
おすすめの昼食メニュー
主食 | ご飯 |
主菜 | さばの煮つけ |
副菜 | ほうれん草と人参としめじのソテー |
副菜 | りんご |
汁物 | わかめのすまし汁 |
夕食は吸収しやすいカルシウムを取り入れよう
夜は朝や昼と比べて活動量が少ないので、消化に良い食事がおすすめです。塩分や脂質を抑えたメニューを選びましょう。
牛乳やチーズなどの乳製品は、たんぱく質とカルシウムを一度に摂れる便利な食材で、高齢者の食事に積極的に取り入れたい食品です。なお、骨代謝は夜間に活発になるともいわれており、夕食での摂取を意識するのも一つの工夫です。
おすすめの夕食メニュー
主食 | ご飯 |
主菜 | 豆腐ハンバーグ |
副菜 | ブロッコリーとツナの和え物 |
副菜 | 野菜の煮びたし |
汁物 | 具だくさん味噌汁 |
飲み物 | 牛乳 |
冷凍食品をうまく活用する方法
冷凍食品のメリット。上手に活用して、栄養バランスの良い健康的な食事を目指しましょう。
最近では、魚や肉、野菜などをバランスよく組み合わせた冷凍食品が多く、高齢者の食事にも活用しやすくなっています。
施設で使いやすい大容量タイプもあれば、個包装のものを少しずつ解凍して使えるタイプもあり、状況に応じた柔軟な使い方ができるのが冷凍食品の魅力です。
上手に取り入れることで、調理の負担を軽減しながら、栄養バランスのとれた食事の提供が可能になります。
プラス1品で彩りのあるメニュー
冷凍食品は、食事のメニューに1品だけ追加したい時に役に立ちます。毎食複数のメニューを作るのは大変です。調理が難しい日や足りない栄養を補うためにも積極的に利用しましょう。
食卓に並ぶメニューの量が多いだけでも、食事が楽しみな時間となります。少しでも楽しく食事ができるよう、プラス1品として取り入れることがおすすめです。
アレンジをひと手間加える
冷凍食品は、そのままでも便利ですが、ちょっとしたアレンジを加えることで、まったく違う一品に仕上げることができます。少しの工夫で、毎日のメニューに変化をつけやすくなり、食卓の満足度もアップします。
たとえば、冷凍ポテトにチーズをのせて焼けば「ポテトのチーズ焼き」に、冷凍餃子に野菜のあんをかければ「餃子の野菜あんかけ」としてボリュームのある一皿に早変わりします。こうした工夫で、冷凍食品を飽きずにおいしく楽しめます。
調理の工夫や専用商品で、食事形態に柔軟に対応
高齢者は、加齢とともに噛む力や飲み込む力が弱くなり、やわらかい食事や刻み食などへの対応が必要になります。しかし、毎食すべてを調理で対応しようとすると、煮込み時間がかかったり、メニューが限られてしまったりと、現場では大きな負担となります。
最近では、きざみ食やソフト食に対応した冷凍食品も登場しており、必要に応じて取り入れることで、栄養面と調理効率のバランスがとりやすくなっています。ただし、一般的な冷凍食品は必ずしも高齢者向けに設計されているわけではないため、食事形態の調整が必要な方には、専用の介護食を選ぶことが重要です。
また、すべての料理を分けるのではなく、主菜だけは介護食、副菜は家族と同じものを使うといった工夫をすることで、同じ食卓を囲む一体感を保ちやすくなります。本人の満足感や食事への意欲を引き出すきっかけにもつながるでしょう。
高齢者の栄養不足に対する具体的な対策
高齢者は加齢によって食欲が低下したり、調理や咀嚼に負担を感じたりすることで、必要な栄養素が不足しがちです。特に施設では、限られた時間と人員の中で、毎日の食事にどれだけ栄養バランスを持たせられるかが大きな課題となります。
そこで最近では、調理の手間を省きつつ、効率よく栄養を補える食品やメニューの工夫が注目されています。ここでは、施設の現場でも無理なく実践できる具体的な対策を4つ紹介します。
食事の回数を分けて摂取をサポートする
高齢者の中には、一度に多くの量を食べることが難しい方も少なくありません。朝・昼・夕の3食に加えて、10時や15時の間食として牛乳・ヨーグルト・果物などを取り入れることで、無理なく栄養を補うことができます。
施設では、1回あたりの食事量を減らし、その分回数を増やす献立設計やおやつ時間の見直しも有効です。消化の負担を減らしつつ、生活リズムの安定や認知機能の維持にもつながる可能性があります。
食べやすさを工夫して、摂取量の向上を図る
噛む力や飲み込む力が弱くなってくると、食事が進まなくなることがあります。こうしたケースでは、調理の工夫で食べやすさを高めることが重要です。
たとえば、食材を小さく切る、長く煮込む、とろみを加えるなどの調整が効果的です。とろみをつける際は、味が薄まらないように出汁やスープを活用するなど、風味への配慮も忘れずに行いましょう。
栄養補助食品や市販品を適切に取り入れる
食事だけで必要な栄養素を満たすことが難しい場合には、市販の栄養補助食品を活用するのも一つの方法です。特にたんぱく質は、肉や魚からだけで摂ろうとすると量が多くなり、かえって食べ残しにつながることもあります。
ゼリー・プリン・ドリンクタイプなど、少量でエネルギーやたんぱく質が補える商品を間食として取り入れることで、無理のない栄養補給が可能になります。
冷凍食品を活用して提供の効率と栄養バランスを両立
「冷凍食品は高齢者には不向き」といった印象を持たれることもありますが、最近では管理栄養士が監修した冷凍の介護食も多く登場しており、実用性が高まっています。
湯せんや電子レンジで温めるだけで食べられる完全調理済みの冷凍食品は、提供の手間を減らしながら、バランスの取れた食事を実現するための有力な選択肢です。調理負担の軽減と栄養確保を両立させるうえで、現場での活用を検討してみる価値は十分にあります。
施設の取り組みで高齢者の健康を支える
今回は、高齢者の栄養バランスを整えるための具体的な工夫や対策についてご紹介しました。加齢に伴う食欲や咀嚼力の低下などに対応しながら、健康的な食生活を支えるには、日々の献立や食事提供における細やかな配慮が欠かせません。
とはいえ、限られた人員や時間の中で、毎日すべてを手作りで対応するのは現場にとって大きな負担です。だからこそ、効率的かつ栄養価の高い選択肢をうまく取り入れることが重要です。
そこで、施設の皆さまにご活用いただきたいのが、完全調理済み冷凍パック『こだわりシェフ』です。
管理栄養士が監修し栄養バランスに配慮した設計で、介護施設向けに最適化された食事を提供しています。さらに、プロのシェフも開発に携わっており、「しっかり食べたくなる味わい」にこだわっている点も好評をいただいています。
現在、6人前の無料サンプルをご用意していますので、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。施設の食事提供をサポートする一助となれば幸いです。