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食事介助の姿勢と方法 楽しく召し上がっていただく為には?
2023/07/25
高齢になったご家族が、持病や筋力の低下などにより食事に介助が必要になったときや、長時間食卓の椅子に座っていることが難しくなったときには、食事が進まなくなったり、誤嚥してむせてしまったりすることがあります。
家族や介護者としては、ご本人が食事を楽しめるように配慮しながらも、安全を確保することが必要です。
今回は、食事介助についてご紹介します。
高齢者が安全に、かつ食事を楽しく召し上がっていただくための姿勢や方法についてご説明します。
目次
食事介助とは?
食事介助は、介護福祉法における「三大介護(介助)」の中の1つです。
三大介護(介助)とは、3つの身体介護サービスを指します。
・食事介助
・入浴介助
・排泄介助
食事介助は、ひとりで食事をとることが難しい方が食事をして栄養をとり、誤嚥などを起こさないようにするためのケアを行うことです。
要介助者一人ひとりの身体状態に合った食事を適切な食器で提供したり、座席や座位を調整したりすることも重要です。
そのほか、夏場に水分補給を管理することも、食事介助に含まれます。
食事介助の基本的な考え方
食事介助の基本的な考えとして、重要なポイントが2つあります。
・食事を楽しんでもらうこと
・自分から食べたいという思う気持ちを促すこと
高齢になると、さまざまな要因により、食べづらくなったり、好きなものを自由に食べられなくなったりと、できないことや食べられないものが増えます。食事を楽しむことは、高齢者のQOLにつながり、健康寿命にも影響します。
食事介助に求められること
食事介助においては、ただ食事をする、栄養を摂取することを目的とするのではなく、いかに食事にポジティブイメージを持ってもらうかが重要です。
そのため介護者には、食事へのモチベーションが高められるようなケアが求められます。
具体的には、前向きな声かけや、食事が楽しい時間になるような環境づくり、食べやすい工夫などが必要です。
食事を楽しんでもらうための工夫
食事が楽しくなるための工夫としては、以下が挙げられます。
・握力が落ちている⇒少ない力でも持てる箸やスプーンを用意する
・固いものが噛めない⇒小さく刻んだり、やわらかく調理したりする
・味覚が衰えている⇒料理の味や風味などを具体的に説明する など
また基本的なこととして、部屋やテーブルの上を清潔にすること、会話をするなどして楽しい雰囲気づくりをすることも必要です。
食事介助の流れ
ここでは、食事介助の基本的な流れについて解説します。安全かつ楽しく食事をしてもらうためには準備も必要です。
食事介助のための7つの準備
適切な食事介助をするために必要な準備は、以下の7つです。
①体調チェック ②排泄 ③手洗い ④姿勢 ⑤環境 ⑥口腔ケア・口腔体操 ⑦声かけ |
まず、熱は無いか、呼吸は乱れてないかをはじめ、いつもと変わったところはないか確認します。
そして、排泄や手洗いを済ませます。
食事をする際は、誤嚥予防の観点からも、正しい姿勢が不可欠です。
テーブルや椅子の高さを本人の体に合ったものを選んで、食べやすい姿勢が取れるように配慮します。
ベッドの上で食事をする方の場合は、本人の希望に応じてリクライニングを調節するなどして適切な体勢を取れるようにサポートします。
周囲の環境への配慮も必要です。食事をする場所は清潔に保ちましょう。
食事をとる前には、口腔ケアで口の中を清潔にして、口腔体操をしてだ液の分泌を促すことも大切です。
食事中には、声かけをすることでメニューをイメージしやすいようにするなど、食欲が少しでも湧くような配慮が重要です。
食事介助の4ステップ
食事介助をするときに大切な4つのステップは、以下のとおりです。
①同じ目線になるよう隣に座る ②食事前に水分を摂ってもらう ③順番に配慮しながら食事をしてもらう ④食後のケアを行う |
立ったままの食事介助は、威圧感を与えやすいほか、上から介助することで自然にあごが上がりやすくなり誤嚥の原因となります。
要介助者と同じ目線となるように、隣か斜め前あたりに座ることがポイントです。
食事前には、水分を摂ることが必要です。口の中を潤すことで、飲み込みがスムーズになります。
食事中は、順番に配慮することが重要です。水分を多く含むものから食べ始め、主食や副食、水分と交互にバランスよく食べ進めていけるようサポートする必要があります。
なお、一口の量はティースプーン1杯分程度が目安です。
食後には口腔内を清潔にすることが大切です。
口の中に残渣物がないか確認したうえで、歯磨きや入れ歯の洗浄を行います。
また、何をどれだけ食べたのか記録を残しておきましょう。
食事介助が必要となる主な原因と対策
食事介助が必要となるきっかけとして、例えば以下のようなケースが挙げられます。
・噛むことが難しくなってきた
・飲み込むことが難しくなってきた
・だ液の分泌量が減ってきた
・のどの渇きに鈍感になってきた
・味や匂いがわかりづらくなってきた
・食事をとる20分程度の間、食卓の椅子に腰かけることが難しくなってきた
・はしやスプーンを使って食事を口に運ぶことが難しくなってきた
このように、食事介助が必要となるきっかけはさまざまです。
多くの場合、何か一つの原因によるというよりは、いくつかの原因が複合的に重なっています。
噛むこと・飲み込むことが難しい場合の対策
噛むことや飲み込むことが困難な方の場合は、調理方法に気をつけたり、介護用のお弁当を注文したりして、その方の状態にあった柔らかい料理を用意することがポイントです。
例えば、水溶き片栗粉や市販のとろみ食品などを利用して料理にとろみをつけて、口の中でまとまりやすく、誤嚥を起こさないようにするなどの配慮が必要です。
一般的に、次のようなものは食べづらさがあるので、調理の工夫が求められます。
・大きいもの
・固いもの
・ホクホクしているもの
・乾燥しているもの
・みそ汁やお茶など、サラサラとした液体状のもの
一人ひとりの健康状態や身体状態に合わせて、食事の柔らかさやとろみ具合、食材の切り方などは異なります。
かかりつけの医師や管理栄養士などに相談して、調整するとよいでしょう。
食べ物を口に運ぶことが難しい場合の対策
脳梗塞や事故、病気、老化などで手を動かすことが難しくなると、箸やスプーン、フォークを持つことが困難になります。
大きな食材を自分で小さくほぐしたり、取り分けたりすることが困難なので、料理をあらかじめ一口大に切っておいたり、介助者が口に運んであげたりすることがポイントです。
手の力が弱くなった方向けのカトラリーも販売されているので、使いやすいものを適宜選んでみるのもおすすめです。
また、飲み物が入ったコップは意外に重いものです。
高齢になるとのどの渇きを覚えにくくなるので、声かけを行い、水分もしっかりと取れるような配慮が求められます。
食事介助には、正しい姿勢が必要
食事介助においては、食事が困難となっている原因をふまえた対策が必要ですが、共通していえることが、正しい姿勢の大切さです。
姿勢が悪いと誤嚥しやすくなってしまい、むせてしまうだけでなく、最悪の場合には誤嚥性肺炎を引き起こして重篤な状態に陥ってしまう可能性があります。
また、崩れた姿勢でいると、せっかく食べようと思った料理をこぼしやすくなります。
衣服が汚れてしまうことを嫌う方は特に、こぼしてしまうことがご自身のプライドにかかわり、食べること自体を拒否することにもつながりかねません。
とくに、脳梗塞を患ったり、事故や病気で椅子に座り続けていることが負担になったりしている方の場合は要注意です。
食事をとる時にどうしても体が斜めに傾いていきやすいので、腰などに負担がかかって食事を楽しむことができなくなってしまいます。正しい姿勢がとれるように十分配慮しましょう。
食事中に正しい姿勢を保つためのポイント
食事を楽しむためにも、正しい姿勢を保つことは非常に重要です。
ここからは、どのようにすると食事中に正しい姿勢を保つことができるのか解説します。
テーブルで食事ができる場合
普段は横になって過ごすことが多い場合でも、30分程度椅子に腰かけていることができる方の場合には、椅子に腰かけて食事をとるように促しましょう。
<椅子に腰かけて食事をとるための方法>
そのためには、しっかりと腰かけた状態で膝が90度に曲がり、かかとから足裏全体が床につくような高さの椅子が必要です。
左右にバランスが崩れやすい方の場合は、肘あてがあるものを選ぶのもおすすめです。
車いすでテーブルにつく場合も同様に、足置きは上に跳ね上げ、床に直接足がつくようにしておきましょう。
腰からずり落ちたような体勢にならないようにするためには、クッションなどを利用して、骨盤がしっかりと立っている状態を保つように調整することが必要です。
<椅子からずり落ちそうになる場合は?>
上体の角度が浅く、顎が上を向いた状態だと誤嚥しやすくなるため、注意が必要です。
どうしても椅子からずり落ちそうになる方の場合は、10センチ程度の高さがあるクッションを太ももの上に乗せ、下腹からクッションにもたれかけられるようにすると、顎をひいた姿勢を取りやすくなります。
肩から首にかけてクッションを入れることも有効です。
ベッドで食事をとる場合
テーブルに移動することが難しい方の食事は、ベッドでとることになります。
この場合、体の状態に合わせながらリクライニングでの調整が必要です。
<リクライニングで調整する方法>
まず、ベッドを水平な状態に整えて、ベッドの切り替え部分(ベッド中央の折曲がる部分)にお尻の尾てい骨の部分が来るように、調整します。
そのあと、軽く足側を折りあげて膝を曲げてから、上体を起こします。
足を先にあげておくことで、上体を上げるときにずり落ちることが少なくなるので、楽に姿勢を作ることができます。
このとき、体が左右に傾きやすい方の場合には、倒れていきやすい方にもクッションを入れて支えます。
薄くて幅がある座布団のようなクッションを、段差をつけて二つ折りにするなどして、薄い方を少し体の下に挟み込むようにすると、クッションが体に押されて落ちてしまうのを防ぐことができます。
一般的には角度が40度から60度になっていることが望ましいとされていますが、ご本人の体調に合わせて、医師やケアマネージャーと相談しながら角度や姿勢を見極めることがポイントです。
<ベッドで食事をとるときの注意点>
ベッドでの食事は、椅子に座るよりも角度が浅いため、顎が上をむきやすくなります。
上を向いた状態で食べ物を飲み込むと誤嚥する可能性があるので、顔が正面を向き、顎を引くことができるように肩から頭にかけてクッションや枕を入れて、顔の角度を調整する必要があります。
なお、体の下に挟み込むクッション、頭の後ろに入れるクッションなど、半分に折り曲げて使用するものは、折り返した短い辺はベッド側になるようにしてあげましょう。
折り返した端の部分が体側になっていると、辺の縫い代など固い部分が皮膚に触れるため、痛みや違和感を覚え、食事が楽しめなくなることがあるため注意が必要です。
上手に食事介助をすすめるためのポイント
せっかく姿勢を正したところで、高齢者様の食欲が無かったり、介助者がバタバタと忙しくしたりしていると、食事時間が楽しいものではなくなってしまいます。
そのためにも、食事を楽しむための環境を整えていきましょう。
介助者の姿勢
食事をするご本人の姿勢も大切ですが、介助をする側の姿勢にも注意が必要です。
食事介助をする方が立ったままでは、威圧感を与えてしまったり、気持ちが焦ってゆっくりと食べられなくなったりすることがあります。
椅子に腰かけて、目の高さがあまり変わらないようにして、できるだけゆったりとした気持ちが持てるように整えることが重要なポイントです。
食事前の環境を整える
食事時間になっても高齢者様の食欲がない、お腹はすいているにもかかわらず、食事に時間がかかるといったことがあります。
食が進まない原因としては、以下のようなことが考えられます。
・目が覚めていない
・テレビなどに夢中になってしまう
・口の中が気持ち悪い
まだ目が覚めておらず胃腸が動いていない場合には、食事時間の1時間半から1時間位前には起こすようにして、可能な範囲で体を動かすとよいでしょう。
寝たきりでない場合は、テーブルを拭いたり調理・配膳を手伝ってもらったりする方法も有効です。
テレビが好きな方もいらっしゃいますが、できれば食事中はテレビを消して食事に集中できるようにしましょう。
食事を楽しめない原因の一つに「口の中が気持ち悪い」という場合がありますが、食事時間直前に歯磨き粉や液体歯磨きを使用すると、歯磨き粉の香りで味が分かりにくくなります。
食事の30分ほど前には、歯磨きやうがいを済ませておきましょう。
また、食べ始める前にお茶を飲んだり、汁物から食べ始めたりすると口の中が湿り、スムーズに飲み込むことができるようになります。
食事介助のついてまとめ
今回は、高齢者様が食事をとる時の姿勢の取り方について解説しました。
食事介助で最も大切なのは、食べることを楽しめる環境づくりにあります。
楽しんで食事をしてもらうには、安全確保が不可欠です。正しい姿勢で食事をとることは誤嚥を防ぐなど、安全にもつながります。
適切な食事介助の方法を知り、「おいしいね、楽しいね」などと思っていただけるようになることが、介助者には求められます。