介護事業所における食事の課題

2022/11/20

高齢者にとって毎日の食事は大きな楽しみのひとつであると同時に、健康を維持するために欠かせないものです。

しかしひとりひとりの好みや持病、摂食嚥下機能などに対応すると、一律の食事提供とはいかないのが現状です。

介護事業所で高齢者の方々に喜ばれる食事を提供するために、課題となることは何でしょう。

介護事業所とは何か

「介護事業所」とは介護保険法に基づいたサービスを提供している事業所を指します。必ずしも入所施設とは限らず、訪問介護や通所介護も含まれます。

介護事業所の種類によって、提供する食事の回数や提供方法は異なることがあり、利用対象となる高齢者に適した食事の提供が必要となります。

介護事業所での給食業務

介護事業所で食事を提供する場合、その給食業務の方法は、自施設で直営する「直営給食」と外部の給食会社に委託する「委託給食」、調理済みの料理が配達される「配食サービス」などがあります。

それぞれにメリットとデメリットがあり、食事の提供回数や食数、施設の設備や人員配置などによって、適した方法は異なります。

直営給食

直営給食は、調理師や調理員、栄養士など給食業務にかかわる職員を施設が直接雇用し、施設内(状況によっては同一敷地内)の給食設備で食事を調理して提供する方法です。

調理を担当する職員と喫食者が直接コミュニケーションをとりやすく、喫食者の嗜好や要望、健康状態などを速やかに食事に反映させ、きめ細かな対応をすることができます。

その反面、給食をそれ以外の生活の場面と切り離して考えることが難しくなり、給食業務にかかわる職員の業務量が増加することがあります。

食材の調達は施設と業者が直接契約することが必要であり、食材の発注量が少ない場合には食材コストも割高になることがあります。

委託給食

委託給食は、外部の給食会社に給食業務を委託し、施設内(状況によっては同一敷地内)の給食設備で食事を調理して提供する方法です。

給食業務にかかわる職員は給食会社の社員であり、施設で採用や職員の育成などをする必要はありません。

業務内容の詳細は施設と給食会社の契約によっても異なりますが、多くの場合は食材の発注や在庫管理、調理全般、給食設備の衛生管理などは給食会社に任せることができ、人件費や食材コストは比較的低く抑えることができます。

調理を担当する職員は別会社の社員であるため、喫食者や施設からの要望に全て応えることができなかったり、調理員の交代などによって食事の質に差が出ることもあります。

配食サービス

配食事業者の工場などで調理された料理が、お弁当やレトルトパック、冷凍などの状態で介護事業所に配送される方法です。

状況によっては給食設備や給食業務にかかわる職員を施設に配置する必要がなく、温めたり器に盛りつけたりする作業のみで、職種にかかわらず誰でも食事を提供することができます。

配食事業者によっても異なりますが、朝食だけの配送や10食以下の少ない食数、1回の食事に複数の献立が選べるなど、注文に融通が利く場合もあります。

調理済みであるため1食当たりの価格は比較的高くなりますが、給食業務にかかわる人件費や光熱費などは削減できます。

献立はおかずだけの提供である配食事業者も多く、その場合はごはんやおかゆなどの主食を施設で用意する必要があります。

食事の課題

介護事業所で食事を提供するにあたっては、さまざまなことが課題となる可能性があり、給食業務の方法や施設を利用する方の心身の状態によっても異なります。

しかし食事に関する基本的な事柄ほど、解決が難しい課題であることが多く、喫食者の満足感を高めるために何が必要なのかを考える必要があります。

現代の生活では、「食事はおいしいのが当たり前」と捉えられることが多くなっています。

しかし、個人の感じる「おいしさ」は生まれ育った環境や食体験によっても異なり、どんなに腕のいい料理人でも100人全員を満足させるのは至難の業です。

さらに介護事業所によっては食材料費にも制限があり、必ずしもいつも新鮮で高品質の食材が使用できないケースも多く、複数の調理員が交代で調理することで味にばらつきがあり、統一が難しいこともあります。

しかし食事は、食べる環境によって「おいしさ」の感じ方が変化することもあるため、味についての満足感を高めるためには単純に「味つけ」だけを評価するのではなく、食事の提供方法や食事の環境を含めて、広く検討することが必要です。

安全性

食事を提供するにあたっては、最も重要な課題のひとつです。食中毒や異物混入などの事故は喫食者の命にかかわることもあるため、絶対にあってはならないといえます。

これらの事故を防止するために重要なことは、

・調理を担当する職員の衛生管理に対する知識向上
・衛生管理のマニュアル化
・衛生的な環境が保てる調理設備
・必要十分な人員と無理のない勤務体制

などが挙げられます。

近年では感染症予防のため、調理員の体調管理についても重要視されるようになっています。

新型コロナウイルス感染症はもちろん、ノロウイルスやインフルエンザウイルスなどの感染症についても感染拡大を未然に防ぐために、給食業務にかかわる職員やその家族に体調不良が生じた場合は、無理に出勤せず受診することが大切です。

そのためには休みをとりやすい環境と、十分な人員の確保が必要となります。

個人対応

嗜好による好き嫌いの他に、食物アレルギーのある方への除去食や疾患による栄養量の調整、摂食嚥下機能に合わせた食事形態の調整など、ひとりひとりに合った食事の提供が求められるようになっています。

特に食物アレルギーのある方への対応は、給食業務において非常に大きな業務負担となるだけではなく、万が一の場合には、喫食者の健康に大きな悪影響を及ぼしかねない非常に責任の重い食事提供となるため、対応が可能かどうかをしっかりと検討しておく必要があります。

摂食嚥下機能に低下が認められる方に対しては、ひとりひとりの摂食嚥下機能に応じた食事形態の調整が必要です。

適切な食事形態に調整するためには、通常の調理技術に加えて摂食嚥下についての基礎的な知識や、ゲル化剤などの使用方法についても習得が必要となることがあります。

他にも、食事の楽しみのひとつに「自分で選ぶ」ことがあります。

嫌いなものを避けるだけではなく、いくつかの献立の中から食べたいものを選べることは食事の満足感を高めます。

しかし、1回の食事で作る料理の数が増えることは給食業務の負担となるだけではなく、食品ロスが増える可能性もあります。

人員の確保

給食業務にかかわる職員の人員配置については、給食業務の方法や施設の種類によっても異なりますが、調理師や栄養士、管理栄養士などの有資格者の配置が必要なことがあります。

また食事は365日提供しなければならないため休日は交代でとり、1日3食を提供する場合にはシフト制の勤務が必要となるので、一定数の人員確保が必要となります。

コスト

自営給食または委託給食の場合には、食数に応じた給食設備を設置する必要があります。

大量調理に必要な業務用の機器には高額なものもあり、安全な食事提供のためには定期的なメンテナンスや交換が必要となります。

日常の給食業務にかかるコストには人件費、食材料費、光熱費、洗剤などの消耗品費、鍋や調理器具、食器類などの備品費などがあります。

食材料費は季節や天候などによる価格変動もあり、食事提供の方法や提供回数、食数などに応じたコスト管理が必要です。

介護事業所における食事の課題は?

介護事業所での食事提供は、施設を利用する方の状態や食事の提供回数、食数などによって給食業務の方法を検討する必要があります。

介護事業所における食事の提供にはさまざまな課題が存在し、介護事業所の種類によっても優先するべき課題は異なりますが、ひとつひとつの課題を解決していくことは、高齢者の楽しみと健康を守ることにつながります。