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介護職員処遇改善加算とは?対象サービスや加算要件をわかりやすく解説
2024/02/22
介護職員処遇改善加算は、介護職員の労働環境や賃金について改善を図ることを目的とする加算です。職員の安定的な処遇改善をすることは、経営の安定にもつながります。
介護職員処遇改善加算の申請にあたっては要件を満たし、サービスの種類ごとの加算率に応じて計算する必要があります。
今回は、介護職員処遇改善加算の概要をはじめ、対象サービスや取得手順、計算方法などをわかりやすく解説します。
目次
介護職員処遇改善加算とは
介護職員処遇改善加算は、介護職員の安定的な処遇改善を図るための環境整備に加え、賃金の改善を目指すための加算です。
この場合の職員とは、利用者に対して直接介護サービスを提供する人のことを指します。
なおこの制度は、2011年度までは「介護職員処遇改善交付金」として実施されていました。
2012年度からは「介護職員処遇改善加算」として介護報酬の加算制度に移行されました。また、その後の介護報酬改定において、算定要件や単位数が随時見直されてきました。
そして2021年度の介護報酬改定においては、職場環境等要件に関して、職場環境改善の実効性の観点から見直しが行われています。
介護職員処遇改善加算の対象について
介護職員処遇改善加算の対象となるサービスおよび対象者について解説します。
介護職員処遇改善加算の対象となるサービス
介護職員処遇改善加算の対象となる介護サービスは、以下のとおりです。
・訪問介護 ・訪問入浴介護 ・通所介護 ・通所リハビリテーション ・短期入所生活介護 ・短期入所療養介護 ・特定施設入居者生活介護 ・介護老人福祉施設 ・介護老人保健施設 ・介護療養型医療施設 ・介護医療院 ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ・夜間対応型訪問介護 ・地域密着型通所介護 ・>認知症対応型通所介護 ・小規模多機能型居宅介護 ・認知症対応型共同生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ・看護小規模多機能型居宅介護 |
介護職員処遇改善加算は、直接介護をしている職員が対象とされているため、訪問看護や福祉用具貸与、介護予防などの、介護従事者がいない事業所は対象となります。
介護職員処遇改善加算の対象者
介護職員処遇改善加算の対象者は、「介護職に従事する介護職員」とされています。
直接的に利用者と関わる介護従事者については、基本的にほぼすべての人が対象です。
なお、看護師や生活相談員、栄養士、事業所の管理者、事務職員などは対象外となりますが、介護業務を兼任している場合には対象者に該当します。
賃金改善に関して、職員は資格の有無や雇用形態に関係なく受け取ることができます。
ただし、分配については事業所に一任されているため、対象者であっても支給されないケースもあります。
介護職員処遇改善加算の目的
介護職員処遇改善加算の目的について、厚生労働省によって以下のように定義されています。
介護職員の安定的な処遇改善を図るための環境整備とともに、介護職員の賃金改善に 充てることを目的に創設された加算 |
超高齢社会に突入した日本において、介護需要が高まり、介護職員への負担は今後さらに増加すると考えられます。
そのような実態があるにもかかわらず、他業種と比較して介護職員の給与水準は依然として低い傾向にあります。
また重労働であることからも、賃金改善とともに環境整備が必要です。
介護職員のための制度ではありますが、このような取り組みによってサービスの質が向上すれば、それは利用者の利益にもつながります。
また、利用者の満足度が高まることは、事業所の安定経営や成長にも貢献します。
介護職員処遇改善加算の算定要件
介護職員処遇改善加算では、キャリアアップ制度や職場環境の改善へ十分に取り組めていない事業所でも取得しやすいように、いくつかの要件が設定されていることが特徴です。「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」について解説します。
キャリアパス要件
画像引用:厚生労働省『処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)』
介護職員処遇改善加算を得るためには、キャリアパス要件として3つの項目を満たす必要があります。
①職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること ②資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること ③経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること |
任用要件と賃金体系については、就業規則などの書面で周知しておくことが必要です。条件を明示することで、介護職員が自分の将来像を描きモチベーションアップしやすくなります。
また、職場内外でさまざまな研修の機会を提供することは、人材育成において不可欠です
。このような研修や資格取得の機会を設けて、それらへの積極的な参加が評価されるような仕組みづくりも求められます。
介護職員処遇改善加算はI〜Ⅲに分けられており、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)は最も厳しい基準で、加算要件①〜③すべてに取り組んでいる必要があります。
介護職員処遇改善加算(Ⅱ)では、加算要件①・②のすべてを満たすことが必要です。
介護職員処遇改善加算(Ⅲ)の取得にあたっては、①もしくは②のいずれかを満たすことが求められます。
職場環境等要件
画像引用:厚生労働省『処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)』
職場環境等要件は、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のすべてにおいて必須の要件です。
働きやすい職場環境を整えることは、加算の取得にかかわらず必要な取り組みだと考えられます。事業所や職員、さらに利用者の利益につながるためです。
介護職員処遇改善加算の種類と報酬額について
ここでは、改めて介護職員処遇改善加算の種類をまとめています。単位数とともにご確認ください。
なお、加算創設時には介護職員処遇改善加算(Ⅳ)・(Ⅴ)がありましたが、2021年に廃止となっているため記載していません。
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)
【要件】
・キャリアパス要件①・②・③のすべての要件を満たすこと
・職場環境等要件を満たすこと
【報酬】
介護職員1人当たり月額37,000円相当の報酬が上乗せされる
介護職員処遇改善加算(Ⅱ)
【要件】
・キャリアパス要件①・②のすべての要件を満たすこと
・職場環境等要件を満たすこと
【報酬】
介護職員1人当たり月額27,000円相当の報酬が上乗せされる
介護職員処遇改善加算(Ⅲ)
【要件】
・キャリアパス要件①または②の要件を満たすこと
・職場環境等要件を満たすこと
【報酬】
介護職員1人当たり月額15,000円円相当の報酬が上乗せされる
介護職員処遇改善加算を取得する流れ
ここでは、事業者が介護職員処遇改善加算を取得する手順について簡単に解説します。
①介護職員処遇改善計画書の提出
介護職員処遇改善計画書と必要書類(就業規則、給与規定など)を、都道府県などへ届出を行います。
そのうえで、その計画書の内容に取り組み、管轄の自治体へ報告書を提出します。
②加算の請求・支払い
計画書に基づく取り組みを実施していると承認されると、介護報酬として「給料の上乗せ費用」が支給されることとなります。
③処遇改善実績報告書を提出
介護報酬を活用して賃金改善を実施したら、その旨を都道府県などへ処遇改善実績報告書として提出します。
介護職員処遇改善加算の注意点
介護職員処遇改善加算の取得にあたっては、以下の注意点があることも知っておきましょう。
事業所によって加算率が異なる
すべての介護事業所において、同じ金額の報酬が得られる仕組みになっているわけではありません。
介護サービスの種類によって異なる加算率が設定されているため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。
報酬がもらえない事業所もある
先に少し触れていますが、介護職員処遇改善加算は介護職員を対象とする加算です。そのため、介護従事者が配置されていない事業所が加算対象となりません。
以下の事業所が対象外となります。
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
・居宅療養管理指導
・居宅介護支援
・介護予防支援
処遇改善実績報告書の提出を忘れずに!
介護報酬を活用して賃金改善を行った後は、処遇改善実績報告書の提出が必要です。
報告書を提出しなかったり、要件を満たせていなかったりした場合には、支給された報酬の返還が求められるので注意しましょう。
処遇改善実績報告書の提出を忘れずに!
介護報酬を活用して賃金改善を実施したら、その旨を都道府県などへ処遇改善実績報告書として提出します。
職場全体で取り組むことで介護職員処遇改善加算を取得しましょう
介護事業所にとっての最終的な目標は、すべての要件を満たして高い報酬を得ることだと思います。
しかし、この加算はあくまでも介護職員が高いモチベーションで仕事に打ち込める環境を整備するためのものです。
職員の成長は、事業所の成長にもつながります。ひいては、利用者の利益になるものだと考えられます。
事業所全体で雇用環境の改善意識を持てるように取り組んでいくことが重要です。