介護におけるケアプランデータ連携システムのメリット・デメリットとは?

2024/02/22

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ケアプランデータ連携システムとは、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所とのケアプランのやりとりをオンラインで完結できるシステムです。

厚生労働省によって導入が推奨されていますが、利用率は4.6%(2023年11月6日時点)に留まっています。

この記事では、ケアプランデータ連携システムを導入するメリット・デメリットについて詳しく解説します。

ケアプランデータ連携システムとは?

ケアプランデータ連携システムは、介護サービス事業所と居宅介護支援事業所間で毎月やり取りされるケアプランの一部(サービス提供票等)のデータを連携させることで、事業所間のデータのやり取りを効率化するためのシステムです。

これまで対面またはFAXで行っていた業務をオンラインで完結することができるため、時間や費用の削減に繋がります。稼働前に行われたアンケートでは、居宅介護支援事業所で85%以上、サービス提供事業者で80%以上がケアプランデータ連携システムについて「とても利用したいと思う」「少し利用したいと思う」と回答し、利用の意向が示されました。

しかし、2023年4月に本稼働して以降、2023年11月6日時点で利用率は4.6%と爆発的な普及には至っていません。

利用普及の障壁として考えられるのは、導入に費用がかかることや、ケアプランデータ連携システムによって情報を交換する相手先との足並みが揃わないことなどが挙げられます。

また、ケアプランデータ連携システムの導入は義務化されておらず、地域によっては独自の連携システムを活用しているケースもあり、ケアプランデータ連携システムは業務効率化に向けた選択肢の1つに過ぎません。

ところが、今回の令和6年度介護報酬改定では「居宅介護支援費(Ⅱ)」の算定要件についてケアプランデータ連携システムを活用して業務効率化を図ることでケアマネジャーの担当件数を「50件」にまで引き上げることが決定しています。

逓減制の緩和を適用するかどうかは事業所判断によりますが、適用を考える事業所が増えると、今後はケアプランデータ連携システム自体も普及していくことが予測されます。

都道府県の利用申請状況及び事業所数からみたケアプランデータ連携システムの導入割合

都道府県の利用申請状況及び事業所数からみたケアプランデータ連携システムの導入割合

 

介護支援専門員1人当たりの取扱件数(報酬)
※令和6年度介護診療報酬改定抜粋

【概要】

居宅介護支援事業所を取り巻く環境の変化を踏まえ、ケアマネジメントの質を確保しつつ、業務効率化を進め人材を有効活用するため、居宅介護支援費について、以下の見直しを行う。【告示改正】

ア 居宅介護支援費(Ⅰ)(ⅰ)の取扱件数について、現行の「40 未満」を「45未満」に改めるとともに、居宅介護支援費(Ⅰ)(ⅱ)の取扱件数について、現行の「40 以上 60 未満」を「45 以上 60 未満」に改める。

イ 居宅介護支援費(Ⅱ)の要件について、ケアプランデータ連携システムを活用し、かつ、事務職員を配置している場合に改めるとともに、居宅介護支援費(Ⅱ)(ⅰ)の取扱件数について、現行の「45 未満」を「50 未満」に改め、居宅介護支援費(Ⅱ)(ⅱ)の取扱件数について、現行の「45 以上 60 未満」から「50 以上 60 未満」に改める。

ウ 居宅介護支援費の算定に当たっての取扱件数の算出に当たり、指定介護予防支援の提供を受ける利用者数については、3分の1を乗じて件数に加えることとする。

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ケアプランデータ連携システムを利用するメリットは?

業務の効率化を図ることができる

現状ではサービスの実績を手入力するため、かかる手間が大きく、転記ミスがあると請求が返戻されることもあり事務負担が大きいという課題がありました。

しかし、ケアプランデータ連携システムを導入することで、紙への記載時間や転記ミスの削減、事務負担の軽減・効率化が可能となります。

これにより、ケアプランのやり取りに関わる業務時間を約3分の1に抑えられるという研究結果もあります。

費用効果

「介護分野の生産性向上に向けたICTの更なる活用に関する調査研究」の調査結果によると、これまでは事業所の約90%が印刷媒体での共有をしており、1か月に消費している文書量の平均は約702枚にものぼりました。

ケアプランデータ連携システムは、オンライン上でデータのやりとりを行うため、事業所がケアプランを送付するために掛けていた費用(人件費、印刷費、郵送費、交通費、通信費等)を削減することができます。

居宅介護支援事業所と訪問介護事業所などのサービス提供事業所間におけるケアプランのデータ連携にかかる費用削減効果について、アンケート調査等から試算を行った結果、年間で約81万6,000円もの費用を削減できる見込みとなっています。

なお、人件費を考慮しない場合でも年間で約7万2,000円の削減効果がある見込みです。

ケアプランデータ連携システムを導入するデメリットは?

利用料金がかかる

ケアプランデータ連携システムの利用には1事業所あたり年間21,000円(税込)の利用料金がかかります。

また、利用登録に必要な電子証明書発行手数料が3年間で13,200円(税込)かかります。

さらに、システムの導入にはインターネットが使用できるパソコン(Windows10以降)と厚生労働省のケアプラン標準仕様に準拠した介護ソフトが必要です。

介護ソフトの利用には1か月あたり5,000~30,000円の料金が発生します。

導入に諸経費や維持費がかかることはデメリットになりますが、介護ソフトやWi-Fi機器の購入などICTの導入に係る費用が対象となる補助金制度が活用できます。

また、国民健康保険中央会のケアプランデータ連携システムヘルプデスクサポートサイトでは、データ連携によって削減できる金額と、削減時間を簡単にシミュレーションすることが可能です。

クライアントの利用登録が必要

システムの利用には、双方がケアプランデータ連携システムの利用登録をする必要があるため、普及率が向上するまでは、クライアントによって紙媒体とデータを使い分ける必要が生じる可能性があります。

片方はシステムを活用し、片方は従来の紙媒体でのやり取りはできないので注意しましょう。

システムの定着に時間がかかる

従来の紙媒体の業務が習慣化されている従業員にとっては、新しいシステム操作を覚えることに時間がかかる可能性があります。しかも「令和3年度介護労働実態調査」によると、ケアマネジャーの平均年齢は53.3歳です。

50代以降の方は、まだパソコンが広く普及していない時代から働いていた人が多く、パソコンに対する苦手意識が高い傾向にあります。

しかし、ケアプランデータ連携システムの操作は、計画書(1表、2表) や提供票データ(6表、7表)といった CSVファイルなどを、ドラッグ&ドロップするだけであり、パソコン操作が不慣れな方であっても簡単に利用できるという特徴があります。

まとめ

ケアプランデータ連携システムは、介護事業所の文書作成に要する負担を大幅に軽減することが期待されています。

ケアプランデータ連携システムを導入すると業務の負担が軽減されるため利用者の支援に時間をかけることができ、ケアの質の向上につながることが期待されます。

介護分野の生産性向上を図り、いきいきと働ける職場を実現するためには、ICTを介護現場のインフラとして活用することが重要です。

参考:

国民健康保険中央会 保健福祉部 介護保険課,『ケアプランデータ連携システム』の周知広報について
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/20231206_chuokai.pdf

厚生労働省, 令和6年度介護診療報酬改定における改定事項について
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001195264.pdf

国民健康保険中央会,ケアプランデータ連携システムヘルプデスクサポートサイト
https://www.careplan-renkei-support.jp/message/index.html

三菱総合研究所, 令和2年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)介護分野の生産性向上に向けたICTの更なる活用に関する調査研究
https://pubpjt.mri.co.jp/pjt_related/roujinhoken/jql43u000000004c-att/R2_129_3_gaiyou.pdf