訪問介護の特定事業所加算とは 単位数と算定要件について解説

2024/02/22

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介護保険サービスには、サービスの種類ごとに多くの加算があります。

今回は訪問介護サービスで算定できる特定事業所加算について紹介します。

特定事業所加算はいくつかの区分に分けられており、それぞれの算定要件などが異なるため確認しておきましょう。

特定事業所加算とは

訪問介護サービスで算定できる特定事業所加算は、介護人材の確保やサービスの質を高めるための体制を整えた事業所を評価することが目的の加算です。

同じ名称の加算が居宅介護支援にもありますが、算定要件などが異なるため注意が必要です。

訪問介護で算定できる特定事業所加算には(Ⅰ)から(Ⅴ)の区分があり、それぞれの単位数と算定要件が異なります。

特定事業所加算の単位数

特定事業所加算の算定単位数は、(Ⅰ)から(Ⅴ)のそれぞれに対して、所定単位数の一定割合が加算されます。

・特定事業所加算(Ⅰ):所定単位数×20%
・特定事業所加算(Ⅱ):所定単位数×10%
・特定事業所加算(Ⅲ):所定単位数×10%
・特定事業所加算(Ⅳ):所定単位数×5%
・特定事業所加算(Ⅴ):所定単位数×3%

特定事業所加算の算定要件

特定事業所加算の算定要件は「体制要件」「人材要件」「重度者対応要件」に分けて考えることができ、それぞれにいくつかの要件があります。

体制要件

(1)事業所の全ての訪問介護員等に対して、訪問介護員等ごとに研修計画を作成し、その計画に従って研修を実施する。

(2―1)利用者に関する情報またはサービス提供にあたっての留意事項の伝達や訪問介護員等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催する。

(2―2)サービス提供責任者が訪問介護員等に対して、利用者情報等を文書等で確実に伝達してからサービス提供を開始し、終了後は訪問介護員等からの報告を受ける。

(3)事業所の全ての訪問介護員等に対して健康診断等を定期的に実施する。

(4)緊急時等における対応方法を利用者に明示する。

(5)事業所の全てのサービス提供責任者に対して、サービス提供責任者ごとに研修計画を作成し、計画に従って研修を実施する。

人材要件

(6)事業所の訪問介護員等の総数のうち、「介護福祉士の占める割合が30%以上」「介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者の占める割合が50%以上」のいずれかを満たす。

(7)事業所の全てのサービス提供責任者が「実務経験3年以上の介護福祉士」「実務経験5年以上の実務者研修修了者もしくは介護職員基礎研修課程修了者もしくは1級課程修了者」のいずれかを満たす。

(8)サービス担当責任者を常勤により配置し、かつ、規定する基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置している。

(9)事業所の訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の占める割合が30%以上である。

重度者対応要件

(10)前年度又は算定日が属する月の前3月かにおける利用者の総数のうち、要介護4及び5である者、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・Mである者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が20%以上である。

(11)前年度又は算定日が属する月の前3月かにおける利用者の総数のうち、要介護3、4又は5である者、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・Mである者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が60%以上である。

重度者対応要件

特定事業所加算の区分ごとの算定要件

特定事業所加算は(Ⅰ)~(Ⅴ)の5区分において、それぞれ前項の「体制要件」「人材要件」「重度者対応要件」のうち、満たすべき要件が決まっています。

特定事業所加算(Ⅰ)

体制要件:(1)、(2-1)、(2-2)、(3)、(4)
人材要件:(6)、(7)
重度者対応要件:(10)

特定事業所加算(Ⅱ)

体制要件: (1)、(2-1)、(2-2)、(3)、(4)
人材要件: (6)又は(7)のいずれかに適合。
重度者対応要件: なし

特定事業所加算(Ⅲ)

体制要件: (1)、(2-1)、(2-2)、(3)、(4)
人材要件: なし
重度者対応要件:(10)

特定事業所加算(Ⅳ)

体制要件: (2-1)、(2-2)、(3)、(4)、(5)
人材要件: (8)
重度者対応要件:(11)

特定事業所加算(Ⅴ)

体制要件: (1)、(2-1)、(2-2)、(3)、(4)
人材要件: (9)
重度者対応要件:なし

特定事業所加算の注意点とポイント

特定事業所加算の算定要件について注意点と解釈のポイントを挙げます。

算定要件の解釈については指定権者の自治体によって詳細が異なることがあるため、事業所の実際と照らして不明点などがある場合には、自治体に確認しましょう。

特定事業所加算算定全体の注意点

特定事業所加算(Ⅲ)と(Ⅴ)は併算定が可能ですが、それ以外は併算定できません。

また、加算取得の届出後は常に(毎月)要件を満たしている必要があります。要件を満たせなくなった場合には、その時点で廃止届出を提出しなければなりません。

特定事業所加算を算定する場合は、事業所の全ての利用者が対象となります。特定の利用者に対して加算を行わないことはできません。

計画的な研修の実施について

訪問介護員等の研修は必ずしも個別ではなく、個々の経験や勤続年数、所有資格や本人の意向などによってグループ分けし、グループごとに研修を実施しても差し支えないとされています。

原則として対象者の全てがおおむね1年に1回以上の研修が実施され、個別の具体的な研修の目標や内容、研修の期間や記事などを定めることが必要です。

定期的な健康診断の実施について

非常勤等も含めた全ての訪問介護員等について、1年に1回以上、事業者の費用負担によって健康診断を実施することが必要です。

ただし、本人の都合で事業者の実施する健康診断を受けない場合には、他の医師による健康診断の結果等の提出でも差し支えないとされています。

定期的な健康診断の実施について

定期的な会議の開催について

利用者に関する情報またはサービス提供にあたっての留意事項の伝達や訪問介護員等の技術指導を目的とした会議は、おおむね1か月に1回以上実施し、サービス提供責任者の主催によって全ての訪問介護員等の参加が必要です。

ただし、いくつかのグループに分けて開催することは可能で、テレビ電話やウェブ会議などの利用も認められます。

「利用者に関する情報またはサービス提供にあたっての留意事項」とは、利用者のADLや意欲、要望等のほか、家族を含む環境、前回のサービス提供時の状況やサービス提供に必要な内容が含まれます。

伝達方法は、文書の手渡し以外にもFAXやメールも認められています。

定期的な会議の開催について

緊急時等における対応方法について

 

事業所において定められた緊急時の対応方法や緊急時の連絡先・連絡方法の詳細等を明記した文書を、利用者に交付して説明することが必要です。

訪問介護員等の勤続年数について

「勤続年数」は同一法人等での勤務年数を指します。同一法人等での勤務であれば、異なるサービスの施設や事業所であっても通算することが可能です。

また、産前産後休業や病気休暇、育児・介護休業等の取得期間は雇用関係が継続しているので勤続年数に含めることができます。

訪問介護の特定事業所加算のまとめ

訪問介護の特定事業所加算は(Ⅰ)から(Ⅴ)の区分があります。

算定要件は「体制要件」「人材要件」「重度者対応要件」に分けて考えることができ、それぞれの区分ごとに該当する要件が異なるため、事業所の実情をよく確認することが必要です。

特定事業所加算の算定によって事業所の収益向上が望めますが、一方で算定要件を満たすための業務負担や利用者の自己負担が増加するため、算定にあたっては十分に検討しましょう。