介護ビジネスを始めるなら今?需要の推移と介護難民の問題

2023/12/27

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介護需要が年々高まっているのは、もはや言うまでもないことでしょう。

超高齢社会に突入した日本では、介護を必要とする高齢者が多いにもかかわらず、介護施設や介護従事者が少ないことが課題となっています。

今回は、改めて確認しておきたい介護需要の推移と介護難民の問題について解説します。

また、これから介護業界に新規参入したい方、事業拡大を目指す方向けに、ビジネス成功のためのポイントを紹介します。

日本の高齢化率と介護需要の推移

まずは、日本の少子高齢化問題や介護需要の推移について確認してみましょう。

高齢化率

内閣府の『令和5年度版高齢社会白書』によると、日本の高齢化率は29% で、高齢化が進んでいます。高齢化率とは、総人口に占める 65歳以上人口の割合のことです。

また高齢者の人口について、65〜74歳は 1,687万人で総人口に占める割合は13.5%、75歳以上は 1,936万人で総人口に占める割合は15.5%となっています。

このような状況にもかかわらず、介護施設や介護職に就く人材が少ないことから、介護難民の増加が見込まれます。

介護需要の推移

厚生労働省の『令和4年度 介護給付費等実態統計の概況』によると、年間受給者数 (2022年5月審査分から2023年4月審査分)における介護予防サービスおよび介護サービスの年間累計受給者数をみると、65,857.7千人となっています。そのうち介護予防サービス受給者数は 10,352.0 千人、介護サービス受給者数は55,528.2 千人です。

高齢化社会に伴う介護難民とは

高齢化率の高まりに伴い、介護需要の推移も高まっています。その一方で介護施設や人材介護難民は不足しています。

このような背景から、介護サービスが受けられず困っている人が存在します。それがいわゆる「介護難民」にあたる人です。

介護難民は、在宅介護をしてくれる人がいないだけではなく、病院や介護施設でも受け入れてもらえず、介護サービスが受けられない状態です。

要介護者に家族がいる場合、その子や孫といった若い家族が仕事を休職もしくは退職して、介護に専念せざるを得ない状態になるケースがあります。

すると、家族全体が経済的に困窮する事態になることが懸念されます。

また、高齢化社会の推移が高くなるにつれて、今後は独居高齢者の世帯や高齢者夫婦のみの世帯が増えると考えられます。

そのため、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」、認知症患者が認知症患者を介護する 「認認介護」が増えていくと予測されています。

これらも、介護に関する大きな課題です。

すでに、特別養護老人ホームなどの介護施設では入居待ちの要介護者が数十万人単位でいることから、介護難民は今後ますます増えていくと考えられます。

介護需要が高まっているのにもかかわらず、それに対応できていない実態があります。

介護難民が増加する3つの理由

介護難民が増加する理由

介護難民はなぜこのように増加しているのか、介護需要が高まっているのかを確認しておきましょう。主な原因は、以下の3つです。

①要介護・要支援認定者数が増えている
②介護施設・人材が足りない
③介護職の収入が低い

①要介護・要支援認定者数が増えている

内閣府の『令和5年度版高齢社会白書』から、日本の総人口は減少している一方で、65歳以上の高齢者は年々増加傾向にあることがわかります。

要介護・要支援認定者の人数の推移を見ると、2000年には218万人だったのが2017年には622万人となり17年間で約3倍に増えています。

団塊の世代である約800万人の人々がこれから介護サービスを必要とするステージとなるため、要介護・要支援認定者は今後さらに増加し、介護需要はさらに高まる見込みです。

②介護施設・人材が足りない

現在、介護需要に対して、介護サービス事業所の数が少ないことや、介護職に就く人材が少ないことが課題となっています。

厚生労働省『介護人材と介護福祉士の在り方』をみると、2025年には介護職員は最大約250万人必要になると予測されているにもかかわらず、2019ということでした。

実際、介護施設の経営者の多くが危機感を覚えており、全国の半数以上の介護施設において「介護職員が足りない」と回答しています。

③介護職の収入が低い

介護需要の推移に合わせて早急に介護職員を増やす必要がありますが、介護職は収入が低くハードだというイメージがあることから、介護職に就く人が増えにくいことが現状です。

これは、日本全体の問題ですが、介護サービス事業所の経営者にとっても頭を悩ませる課題といえます。

介護需要の問題は特に首都圏・都市部で深刻化

介護需要の推移について、特に都市部での問題が深刻化しています。

東京や大阪などでは、高度成長期に都市部へ職を求めて移住した人たちが高齢世代となっています。そのため、現在都市部では高齢者人口が急増している状態です。

ところが都市部では土地の確保が難しく、新たに施設を建てるのが困難な状況です。

そのようなことから、介護需要の推移にあわせて介護施設や人材の確保ができていないことが実態としてあります。

なお、その一方で地方には高齢者を受け入れる余裕がある介護施設が多いといった、都市部とのギャップも問題のひとつです。

2025年問題から2040年問題へ

2025年問題から2040年問題へ

介護需要の推移や介護難民の問題に関して、ここでは「2025年問題」や新たに懸念される「2040年問題」について解説します。

2025年問題

「2025年問題」とは、約800万人の団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年に生じる、介護に関する諸問題を指します。

2025年には、65歳以上の高齢者を含めると国民の約30%が高齢者となります。

高齢化率・介護需要の推移が上昇するのに対して、医療費や介護費の増大、介護人材不足など、さまざまな問題が予測されています。

政府は「2025年問題」としてこれまで対策してきましたが、2025年がいよいよ目前となった今、政府は新たに2040年を見据えた指針を発表しました。

2040年問題

2040年には、第二次ベビーブームに生まれたいわゆる「団塊ジュニア世代」が65〜70歳になります。

65歳以上の高齢者人口は35%以上になると予想されています。

2025年からの推移を見ると、15年間で30%から35%となり、高齢化率はピークとなります。

その一方で、経済を支える現役世代が急減して労働力不足は深刻となることから、社会保障財源はさらにひっ迫すると考えられます。

介護難民の急増も予測されるなど、これらの問題を総称したのが「2040年問題」です。

介護需要の高まりは事業者にとってビジネスチャンス?

厚生労働省の資料『第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』によると、2025年度に必要な介護職員は約243万人だということです。

2019年度の介護職員数は約211万人なので、2025年度には約32万人の介護職員が不足する計算となります。

さらに2040年度には280万人の介護職員が必要と予測されていることから、約69万人の人材を確保しなくてはならないと考えられます。

年度 65歳以上の高齢者人口 必要な介護職員数 介護職員の不足数
2019 3,588万人 211万人
2025 3,677万人 243万人 32万人
2040 3,921万人 280万人 69万人

このように介護需要が高まり続けていることを考えると、ビジネスチャンスと捉えることもできます。

ニーズがあり、それを提供できれば成功につながりやすいためです。

またターゲットである高齢者の推移も今後高まり続けることをふまえると、ビジネスを軌道に乗せられれば、急に頓挫するといったこともまずないでしょう。

介護ビジネス成功のカギは人材確保!大事な5つのポイント

介護ビジネスを成功に導くには、まず介護人材の確保が不可欠です。そのために求められる取り組みは、以下のとおりです。

①介護職員の待遇改善
②職員がスキルアップできる環境整備
③介護ロボットの導入
④外国人介護職員の採用

①介護職員の待遇改善

政府では、2019年に「介護職員等特定処遇改善加算」を発表するなど、これまで介護職員の待遇改善を図るための施策に着手してきました。

具体的には、介護職員の処遇改善を進める、経験・技能のある職員の処遇改善を図る、柔軟な運用を認めるなどです。

介護ビジネスへ参入するにあたっては、介護職員の待遇について考慮する必要があります。人材の定着がビジネス成功の秘訣でもあります。

特に介護職では経験やスキルを有する人材が必要です。優秀な人材が離職しないような環境づくりが求められます。

職員の待遇については、給与面だけでなく、昇給・昇格が期待できる環境、働きやすい職場環境の整備が必要です。

②職員がスキルアップできる環境整備

経験やスキルのある介護職員を中心に処遇を改善していくことで、事業所の質を高める必要があります。

サービスの質向上により、利用者さまを集めることにつながります。

そのためには、職員がスキルアップできる環境をつくることも重要です。講習会を開いたり資格取得に際して援助したりなどの取り組みが求められます。

スキルアップできると職員のモチベーションアップにもつながる点でも効果的です。

③介護ロボットの導入

人材不足の対策として有効なのが、介護ロボットの導入です。これは、国を挙げて行われている施策のひとつでもあります。

介護ロボットの導入により、スタッフの負担が軽減されます。

また、介護の動作をサポートするようないわゆる「介護ロボット」だけでなく、IT機器やシステムの導入によって環境を改善する方法も有効です。

④外国人介護職員の採用

外国人の介護職員を採用することも、ひとつの方法です。

政府でも外国人の介護職員を増やすことを目的として、2017年から在留資格に「介護」を加えるなどの施策を講じています。

外国人を職員として採用する際、言葉や文化の壁を超えるための対応が必要ですが、すでに多くの外国人職員が活躍している事業所もあるため、前例を参考にしながら積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

右肩上がりの介護需要の推移!介護ビジネスを成功させるチャンス

今回解説してきたように、介護需要の推移は上昇し続けています。今後もその状態が見込まれ、介護難民は増えていくと予測されます。

すでに介護ビジネスに取り組んでいる人、またこれから参入しようとしている人にとってはビジネスチャンスと考えられます。

介護ビジネスを成功させるために重要なことのひとつが、人材確保です。

介護サービスの形態はさまざまですが、多くの場合人材の定着を図ることが課題となります。

職員の待遇改善やスキルアップできる環境づくり、介護ロボットや外国人職員の採用などにより体制を整えることが可能です。