緊急時訪問看護加算について。介護サービスの種類・単位数・算定要件について

2023/12/27

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訪問看護ステーションなどを運営するなかで、加算・減算の内容をきちんと把握したうえで、介護保険請求を適切に行うことは重要です。

利益や今後の事業展開にもかかわってくるものだと考え、チェックしておく必要があります。

今回は、介護保険の「緊急時訪問看護加算」に焦点を当てて、対象の介護サービスや単位数、算定要件などについて解説します。

これからこの分野のビジネスに参入しようという方、改めて加算の内容を確認したいという方はぜひご一読ください。

緊急時訪問看護加算とは

「緊急時訪問看護加算」とは、24時間365日利用者さまやそのご家族からの連絡による看護に関する相談に応じたり、訪問したりするなど、緊急時に対応できる体制が構築されている場合に算定できる加算のことです。

介護保険において、中重度の要介護者の在宅生活を支える体制をさらに整備することを目的として設けられたものです。

24時間体制のある訪問看護事業所の体制、24時間対応体制のある訪問看護事業所からの緊急時訪問について評価されます。

緊急時訪問看護加算が算定できる介護サービスとは

緊急時訪問看護加算が算定できる介護サービスの種類

緊急時訪問看護加算が算定できる介護サービスには、以下が挙げられます。

①訪問看護ステーション
②定期巡回・随時対応型訪問介護看護
③看護小規模多機能型居宅介護

①訪問看護ステーション

「訪問看護」は、看護師などが居宅等を訪問して、主治医の指示のもと医療ケアや診療補助などを行うサービスのことです。

②定期巡回・随時対応型訪問介護看護

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、定期巡回訪問または、随時通報を受け利用者の居宅を訪問して医療ケアや診療補助を行うサービスのことです。

訪問するのは、介護福祉士や看護師などです。訪問介護と訪問看護を一体的に行う場合と、双方が連携しながら行う場合とがあります。

③看護小規模多機能型居宅介護

「看護小規模多機能型居宅介護」は、訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせたもので、看護・介護サービスを一体的に提供します。

訪問看護や訪問介護、「通い」、「泊まり」などのサービスを提供します。

例えば、退院から在宅生活への移行や、がんの末期や看取り期、病状不安定期における在宅生活の継続、ご家族の負担軽減などを目的として行われます。

緊急時加算が行われるのはどんなケース?

訪問看護の緊急時加算が行われるのはどんなケース?

ここでは、訪問看護の緊急時加算について、利用者がどのような状況にあるときに活用されるのかを解説します。

・転倒、転落してしまったとき
・体調の変化
・ 介護や処置に不安を感じたとき
・医療機器のトラブルがあったとき

転倒、転落してしまったとき

よくあるトラブルのひとつに、転倒や転落事故があります。とくに在宅療養をする利用者さまの活動範囲が広くなるため、リスクが高まります。

転倒や転落をしたときに、利用者さま自身で起き上がれなかったり、ご家族の力ではベッドに戻すことができなかったりすることがあります。

そういったケースでは、訪問看護師のサポートが求められます。

体調の変化

訪問看護の利用者さまは、さまざまな疾患を抱えています。いつもと症状の出方が異なると、不安を感じる方も少なくありません。

急な体調の変化で違和感を覚えるケースもあるでしょう。

このような場合にも、訪問看護師が状態観察を行い、主治医と連携しながら症状に応じたケアを行います。

緊急受診が必要だと判断されれば、救急要請をして救急隊や医療機関への引継ぎを行うこともあります。

 介護や処置に不安を感じた時

在宅療養を行う場合、介護や簡単な医療処置をご家族が担っているケースが少なくありません。

すると、対応に困ったり処置方法などを忘れてしまったりすることも考えられます。

こういったケースでは、訪問看護ステーションで相談を受け付けます。24時間いつでも無料で電話相談できるので、困った時・いざというときの相談窓口として活用できる場所となります。

具体的な医療ケアや処置を行うだけでなく、利用者さまやそのご家族から相談に乗ることもサービスの一環なのです。

医療機器のトラブルがあった時

在宅療養を行う利用者さまは、膀胱留置カテーテルや在宅酸素療法、人工肛門、人工膀胱、人工呼吸器などの医療機器を常時利用しながら生活している場合もあります。

在宅療養では利用者さまあるいはそのご家族が主に管理したり使用したりすることが多くなります。

訪問看護においては、機器管理やトラブルの対応をサポートする役割も担います。

緊急時訪問看護加算の単位数・加算額

2021年度の介護報酬改定では、緊急時訪問看護加算の単位数や算定要件について変更はありませんでした。

緊急時訪問看護加算の単位数について、指定訪問看護ステーションの場合は「574単位/1月」となります。また、加算額は「2,650円/1日」です。

原則として、緊急時訪問看護加算を算定している場合には、夜間・早朝、深夜の加算は算定不可とされています。

ただし、当該月の2回目以降の緊急訪問が夜間・早朝、深夜の時間帯の場合には、夜間、深夜、早朝加算に算定が可能です。

介護保険における「夜間・早朝」「深夜」の加算について
午後6時〜翌午前8時までの時間帯に、指定訪問看護サービスを提供した場合に加算を算定できる
夜間・早朝:所定単位数の25%
・深夜:所定単位数の50%

緊急時訪問看護加算の算定要件

緊急時訪問看護加算の算定要件は、以下のとおりです。

・利用者やその家族からの相談や連絡に24時間対応することができる体制であること
利用者やその家族等に緊急時訪問看護加算の算定について書面で説明し、同意を得ていること(24時間連絡ができる担当者名や連絡先等、緊急時の注意事項、往診担当医、訪問看護の担当者名等について)
計画的に訪問すること以外の、緊急時訪問に対応できる体制であること
継続診療加算を算定している利用者の主治医が対応できない夜間等、連携先の意思から指示を受けて行う緊急訪問であること
各都道府県に届出をして受理されていること

同日に他の訪問看護事業所が訪問に入っていた場合、訪問看護基本療養費の算定はできず、緊急訪問看護加算のみの算定になります。

緊急時訪問看護加算の留意点

緊急時訪問看護加算に関して、以下のような留意点もあります。

・その月の1回目に訪問した訪問看護の所定単位数に加算する
実際に緊急時の訪問看護を行った場合は、その所要時間に応じた単位数を算定する
1人の利用者につき1か所の訪問看護事業所のみが算定されるため、他の事業所からの緊急時訪問看護加算を受けていないかどうか確認しなければならない
緊急時訪問看護を行った場合、居宅サービス計画の変更手続きが必要となる
その月の1回目の緊急時訪問で、早朝、夜間、深夜の時間帯に訪問した場合には算定できない。
→ただし、同じ月の2回目以降の緊急時訪問に関しては算定可能

24時間対応体制加算との違い

24時間対応体制加算は、その内容や目的としては緊急時訪問看護加算と同様です。医療保険か介護保険かという点で異なります。加算額は「6,400円/月」です。

24時間対応体制加算の算定要件は、以下のとおりです。

・利用者やその家族から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制を整えていること
必要に応じて緊急時訪問看護を行う体制があること
算定の際に利用者の同意を得て、必要事項(訪問看護ステーションの名称、所在地、電話番号、緊急時の連絡先等)を記載した文書を渡していること
利用者やその家族からの連絡・相談に応じた場合や、緊急時訪問看護を行った場合に、日時と内容、対応状況を訪問看護記録書に記録すること
対応体制に係る届け出を、地方厚生(支)局へ提出していること

公的に訪問看護を受ける場合、医療保険と介護保険のどちらかが適用になります。そのため、緊急時訪問看護加算と24時間対応体制加算を併用することはできません。

緊急時訪問看護は利用者の強い味方

今回は、訪問看護の緊急時訪問看護加算について解説しました。

訪問看護は、24時間365日利用者さまとそのご家族をサポートするためのサービスです。

訪問看護事業所は、利用者さまの困りごとに寄り添い、物理的にも精神的にも支えとなるサービスを提供する点で非常にやりがいのある分野といえます。

算定要件や留意点を適切に加算を行うことは、収益につながるため十分に確認しておきましょう。