通所介護事業所として指定を受けるために必要な人員基準とは

2023/12/27

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通所介護は、要介護の高齢者が事業所に通ってサービスを受け、家にこもりきりになることを防いだり、孤立感の緩和や心身機能の維持、家族の介護負担軽減など、さまざまな目的を持っています。

通所介護の事業所が運営を継続するためには最低限確保していなければならない職種や人数を定めた人員基準があります。

通所介護事業所として指定を受けるために必要な人員基準について確認しましょう。

通所介護とは

通所介護はデイサービスとも呼ばれ、要介護認定を受けた利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるように、通所介護の事業所などに通い、食事や入浴などの日常生活の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを提供するものです。

事業所と自宅の送迎もあります。

通所介護とは

通所介護と地域密着型通所介護

通所介護のうち、定員が18人以下であり、原則として事業所が所在する市区町村に居住している(住民票がある)人が利用できるものを地域密着型通所介護といいます。

どちらも要介護1以上の介護認定を受けた高齢者が利用でき、提供するサービスに大きな違いはありません。

人員基準についても同様です。

通所介護の人員基準

通所介護サービスを提供するには、厚生労働省が定めた人員基準を満たしている必要があります。

人員基準では配置すべき職種と人数について以下のように定められていますが、要件には複雑な部分もあるため、事業所の現状と照らして不明な部分については、指定権者である自治体に確認してみましょう。

管理者

通所介護の管理者とは事業所の責任者のことです。

主な仕事は、利用者や介護サービスの管理、職員管理、運営管理、収支の管理、その他さまざまな事務があります。

人員配置や勤怠管理も管理者の仕事であり、管理者は人員基準について把握しておく必要があります。

管理者には特に必要な資格要件はありません。常勤専従で1名の配置が必要ですが、管理者の業務に支障がなければ、他の職種と兼務が可能です。

生活相談員

通所介護の生活相談員の主な仕事は、利用者やその家族の相談援助、病院や居宅介護事業所など、外部との連絡調整などが挙げられます。

生活相談員は、社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主治、介護福祉士のどの資格が必要ですが、保有資格の詳細については指定権者の自治体によって異なることがあるため、事業所の所在地の自治体に確認しましょう。

サービスの提供時間に専従で1名以上の配置が必要とされていますが、介護職員又は生活相談員のどちらか1名以上が常勤であることとされており、必ずしも生活相談員が常勤である必要はなく、生活相談員と介護職員の兼務も可能です。

生活相談員

看護職員

看護職員は、看護師又は准看護師の資格が必要です。基本的には単位ごとに専従で1名以上の配置が必要ですが、常勤の必要はありません。

看護職員として業務にあたる時間帯は専従である必要がありますが、必ずしもサービス提供時間帯を通じて専従である必要はなく、「提供時間帯を通じて密接かつ適切な連携を図る」とされています。

「密接な連携」とは、すぐに駆けつけることができる体制や適切な指示ができる連絡体制が確保できている状態です。

さらに看護職員は、病院や診療所、訪問看護ステーションなどとの連携によって確保することも可能とされています。

その場合は「営業日ごとに利用者の健康状態の確認を行うこと」や「専従配置以外の時間は密接かつ適切な連携を図ること」などが求められています。

また定員が10人以下の地域密着型通所介護の場合は、看護職員又は介護職員のいずれか常時1名以上の配置があれば可とされています。

介護職員

必要な資格要件はなく、管理者や生活相談員と兼務が可能です。

人員基準は利用者数が15人以下の場合は1名以上、15人を超える場合は「(利用者の人数-15)÷5+1」の式で算出した人数以上の配置が必要となります。

介護職員

機能訓練指導員

機能訓練指導員は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格が必要で、利用者の人数に関係なく1名以上の配置が必要です。

看護職員との兼務が可能です。

人員基準について注意が必要な場合

通所介護サービスにはいくつかの種類があります。

いずれの通所介護サービスも配置が必要な職種は同じですが、認知症対応型通所介護と宿泊サービスを提供するお泊りデイサービスについては、配置の詳細に注意が必要な部分があります。

認知症対応型通所介護

認知症対応型通所介護は、認知症(急性を除く)の高齢者に対して、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行い、高齢者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びにその家族の身体的及び精神的負担の軽減を図ることを目的として行う通所介護です。

必要な人員配置において管理者は、「厚生労働大臣が定める研修を修了しているものが常勤専従」であることが必要となります。

「厚生労働大臣が定める研修」とは、厚生労働省の認知症介護実践者等養成事業として都道府県又は指定都市が実施する認知症対応型サービス事業者管理者研修で、内容は実施主体によって異なることがあるため、詳細は事業所が所在する自治体に確認が必要です。

また介護職員・看護職員については「単位ごとに専従で1人以上+サービス提供時間に応じて1人以上(常勤換算方式)。

ただし看護職員については、必ずしも配置しなければならないものではない。」とされています。

詳細は指定権者である自治体によって異なることがあるため、確認が必要です。

お泊りデイサービス

お泊りデイサービスは、日中の通所介護サービスを受けた後、そのまま宿泊サービスを受けることができるサービスです。

日中の通所介護サービスは介護保険適用ですが、お泊りデイサービスは保険適用外のサービスとなります。

夜勤の職員が必要となるため、厚生労働省では「指定通所介護事業所等の設備を利用し夜間及び深夜に指定通所介護等以外のサービスを提供する場合の事業の人員、設備及び運営に関する指針について」の中で、人員について以下のように指針を示しています。

第2 人員に関する指針
1 
従業者の員数及び資格

宿泊サービス事業者が、宿泊サービス事業者ごとに置くべき従業者(以下「宿泊サービス従業者」という。)の員数及び資格は次のとおりとすること。

(1)宿泊サービス従業者は、宿泊サービスの提供内容に応じ必要数を確保することとし、宿泊サービスの提供を行う時間帯(以下「提供時間帯」という。)を通じて、夜勤職員として介護職員又は看護職員(看護師又は准看護師をいう。)を常時1人以上確保すること。

(2)宿泊サービス従業者のうち介護職員については、介護福祉士の資格を有する者、実務者研修又は介護職員初任者研修を修了した者であることが望ましいこと。
なお、それ以外の介護職員に合っても、介護等に対する知識及び経験を有する者であること。

(3)食事の提供を行う場合は、食事の介助等に必要な員数を確保すること。

(4)緊急時に対応するための職員の配置又は提供時間帯を通じた連絡体制の整備を行うこと。
なお、詳細については指定権者である自治体によって異なることがあるため、不明点は確認が必要です。

通所介護の人員基準について

通所介護に必要な職種は管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員です。配置の要件などはそれぞれに定められていますが、通所介護の種類や事業所の実情によって詳細が異なることがあります。

人員基準を満たしていない場合は、減算や行政指導・行政処分の対象となる場合があるため、不明点は指定権者である自治体に確認しましょう。