訪問看護事業者が守るべき”人員基準”について。違反するとどうなる?

2023/11/17

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訪問看護事業者が訪問看護ステーションを運営する際、遵守すべき基準が定められています。そのうちの一つが人員基準です。

人員基準については、資格と人数に関する規定となります。

訪問看護ステーションの経営者のなかには、人材の確保・定着に課題を抱えているケースも多いのではないでしょうか。

この記事では、訪問看護における人員基準をはじめ、人員基準を満たせなかった場合の罰則、職員の定着を図るための取り組みについて解説します。

訪問看護ステーションの”人員基準”とは

訪問看護の人員基準とは、国や指定権者(都道府県あるいは市)による「訪問看護事業所で確保するべき従業員の資格や員数」に関する規定です。

訪問看護事業所として、利用者の尊厳保持や日常生活における自立支援のための適切なサービスを提供するのに必要とされる職種・員数等が定められています。

そのため、事業者が最低限として満たすべき基準ということになります。

人員基準の具体的な内容については、次項で解説します。

訪問看護ステーションにおける人員基準の職種・人数

訪問看護ステーションに定められる人員基準は、「看護職員」「理学療法士等」「管理者」となっています。必要な人数とともに解説します。

「常勤換算」とは、常勤の職員を「1」とするとき、非常勤の職員が常勤の何人分であるのか求める計算方法です。

「職員の勤務延べ時間数」÷「常勤職員の所定勤務時間数」=常勤換算数

看護職員

看護職員の資格は、以下のとおりです。

・保健師
・看護師
・准看護師
・助産師(※健康保険法に基づく指定のみを受ける場合)

看護職員については、常勤換算で2.5人以上の配置が必要です。そのうち1人は常勤での配置が求められます。

理学療法士等

理学療法士等のリハビリ専門職は、以下が該当します。

・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士

訪問看護ステーションの運営状況に応じて、適切な数の配置が必要です。不要と判断できれば配置しなくても構いません。

管理者

管理者の資格・経験は、以下のとおりです。

・保健師または看護師(※やむを得ない理由があると認められれば、保健師・看護師以外でも可。)
・適切なサービス提供を行うために必要な知識や技能があること。(医療機関、訪問看護、訪問指導に関する業務など)

管理者については、専従かつ常勤で1人の配置が必要となります。

管理者の業務に支障がなければ、訪問看護ステーションの他職種や、同じ敷地内にある別の事業所・施設などの職務に就くなどの兼任が可能です。

訪問看護ステーション以外の人員基準

訪問看護ステーション以外にも、以下のように人員基準が設けられています。訪問看護を行う施設には、病院・診療所、サテライト事業所が挙げられます。

病院・診療所

病院・診療所における訪問看護において、人員基準は「看護職員」のみです。人数の定めはなく「実情に応じた適当数」の配置が求められます。

なお、在宅療養支援診療所で訪問診療を行う場合には、「医師」の配置だけが定められています。施設によっても基準の詳細は異なります。

サテライト事業所

訪問看護ステーションのサテライト事業所については、訪問看護の「出張所」という扱いなので、人数および管理者設置の基準は設けられていません。

訪問看護ステーションの本部とサテライト事業所をあわせて、人員基準を満たしていればOKということです。

ただし、もう一つステーションを開設する場合には、そのステーションのみで換算する必要があります。事業の拡大にあたっては、各施設のスタッフの必要数や勤務時間についてきちんと確認しておくことが重要です。

【訪問看護ステーションにおけるその他の基準とは?】

訪問看護ステーションでは、人員基準を満たす必要があります。そのほか、訪問看護については、「設備基準」や「運営基準」に関する規定が設けられています。

訪問看護の設備基準

訪問看護の設備基準とは、国や指定権者が定める「訪問看護事業所で確保するべき設備や備品」についての規定です。具体的には、以下の定めがあります。

・事業の運営を行うために必要な広さのある専用の事務室を設けること
・訪問看護の提供に必要な設備および備品等を備えること

訪問看護の運営基準

介護保険法に基づく訪問看護の運営基準では、利用者にサービスを提供するにあたって作成すべき書類や、説明・確認すべき内容などが定められています。

訪問看護の運営基準には、以下のような内容が含まれます。

・内容および手続きの説明と同意
・サービス提供拒否の禁止
・サービス提供困難時の対応
・受給資格等の確認
・要介護認定の申請を援助
・心身の状況等の把握
・居宅介護支援事業者等との連携
・法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
・居宅サービス計画に沿ったサービスの提供 など

訪問看護ステーションで人員配置基準に違反した場合

訪問看護ステーションで人員配置基準に違反した場合は?

訪問看護ステーションの経営にあたっては、人員基準を満たさなければなりません。

ただし、職員が急に退職等したりすることで、予期せぬかたちで違反となってしまうケースもあるので注意が必要です。

どのようなペナルティが科されるかはケースバイケースとなります。人員基準について違反することが判明した時点で、指定権者に報告しましょう。

その際、以下について確認する必要があります。

・報告書を提出したほうがよいか
・事業所は運営可能か
・サービス提供を継続してもよいか
・報酬に関するペナルティの有無

行政へ報告や相談をせずに、人員基準を満たしていない状態を放置し続けた場合には、行政指導や行政処分が行われる可能性もあるので、早めの対処が不可欠です。

人員不足をふせぐための対策

人員不足をふせぐための対策

人員基準を満たすためには、人材の確保や定着が必要です。ここでは、人員不足にならないための対策について紹介します。

①待遇面の見直し

1つ目の対策は、従業員の待遇面の見直しです。

訪問看護事業で離職に至った理由として最も多いのが、賃金が安いことです。日本の平均年収よりも概ね低い傾向にあるということです。

訪問看護では一人で対応するケースが多いことからも、業務負担を感じやすい傾向にあります。業務内容が給与に見合っていないと感じると、離職につながりやすくなります。

②業務の効率化

2つ目の対策は、業務効率化です。

一人あたりの負荷が多くなりがちな訪問看護では、そのなかでも特定の従業員に対する負担が大きくなっているケースも少なくありません。

業務負荷だけでなく、移動負荷にも偏りがあると、不満を感じやすくなります。

属人化させないためにも、適切なスケジュール管理をしたり、事務作業の効率化を図ったりすることで、個人の負担や責任を分散させましょう。

③スタッフとのコミュニケーション

3つ目の対策は、スタッフとのコミュニケーションをとる機会を設けることです。

経営者が意図して人員基準に違反することはないでしょう。つまり基準に違反してしまうケースというのは、従業員の急な離職だと考えられます。

日常的にスタッフと積極的なコミュニケーションをとることを意識したり、定期的に面談の機会を設けたりすることで、信頼関係を構築しておくことが大切です。

すると、事前の相談なしに離職するといった不測の事態は避けられるでしょう。

④スキルアップできる環境づくり

4つ目の対策は、スタッフがスキルアップできる環境を構築することです。

訪問看護では一人での訪問が基本となるため、他のスタッフから学ぶ機会が少ない環境となります。だれもがあらゆる利用者さまに対応できるよう、スキルアップできる環境づくりに取り組む必要があります。

スキルアップのための具体的な方法は、以下のとおりです。

・勉強会を実施する
・外部の研修に参加する
・スタッフ間で評価し合う機会を設ける

人員配置基準を守るにはスタッフの離職防止が不可欠

訪問看護ステーションの人員基準については、看護職員をはじめ、理学療法士等や管理者の人員に定めがあります。

看護職員は、常勤換算方法で2.5人以上確保する必要があります。

スタッフの急な離職により、人員基準に違反してしまうことにならないよう、日頃からの対策が必要です。

基本的にはスタッフの確保と定着化を図ることです。スタッフにとって働きやすい環境、成長を感じられる環境を構築することで、離職を防ぎましょう。