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訪問看護に必要な帳票類とは?看護計画書の書き方について
2023/11/15
訪問看護の実施にあたり、いくつかの帳票作成が厚生省令で定められており、訪問看護計画書もそのひとつです。
介護報酬や診療報酬を算定するためには、適切な帳票整備が必要となります。訪問看護師が作成しなくてはならない、訪問看護計画書の書き方とポイントをまとめます。
目次
訪問看護に必要な帳票の種類と作成の流れ
厚生労働省から訪問看護の実施にあたり、必要な帳票類の様式と記載項目が示されています。
訪問看護サービスの開始時には、利用者の主治の医師からの指示書が必要であり、主治の医師の指示は文書で受けなければならないと定められています。
この指示を受ける文書を「訪問看護指示書」といいます。
この「文書で受ける」ということは口頭の指示ではないという意味であり、文書は必ずしも紙の書類である必要はなく、電子署名の付与された電子的な文書でも可とされています。
次に主治の医師の指示をもとに、利用者の担当ケアマネジャーが作成したケアプランの内容に即し、利用者や家族の状態や要望なども考慮しながら「訪問看護計画書」を作成します。
訪問看護の実施ごとに「訪問看護記録」を作成し、主治の医師に対して毎月「訪問看護報告書」を提出します。帳票作成の大まかな流れは次のようになります。
訪問看護指示書(訪問看護開始時)→訪問看護計画書(訪問看護利用開始時、指示やケアプランの変更、更新時等)→訪問看護記録(訪問ごと)→訪問看護報告書(毎月)
これらの帳票のうち訪問看護指示書は主治の医師が作成しますが、その他は訪問看護師が作成する必要があります。
帳票作成の必要性について
帳票の書式は、基本的に厚生労働省が示している模範書式に即し、定められた記載事項をもれなく記載する必要があります。
訪問看護師が作成するこれらの帳票類は、介護報酬・診療報酬の算定に必要であるだけではなく、多職種が協働する訪問医療・介護サービスを効果的に提供するためにも重要となります。
特に主治の医師の指示や利用者の希望、心身の状況等を踏まえて、療養上の目標や目標を達成するための具体的な内容や方法が記されている訪問看護計画書は、訪問看護以外のサービスを提供する事業所に共有されることで、個々の利用者の方の状態や目標達成に向けたサービス提供のための有益な情報となり、多職種が効率よくサービスを実施するために役立つことがあります。
訪問看護計画書について解説
訪問看護計画書は主治の医師の指示をもとに、看護やリハビリテーションの目標や問題点を明確にし、解決策や評価などをまとめた帳票です。
訪問看護計画書は利用者や家族に説明し、その内容について同意を得て利用者に交付しなければなりません。
主治の医師にも提出し、必要に応じてケアマネジャーなど他職種にも提出します。作成担当者は保健師または看護師と定められており、准看護師は訪問看護計画書の作成をすることはできません。
初回訪問時に作成し、以降は基本的にケアプランの更新時に作成します。
その他「利用者の状態に変化があったとき」「主治の医師の指示に変更があったとき」「ケアプランに変更があったとき」等にも作成が必要です。
訪問看護計画書に記載が必要な項目は厚生労働省によって定められており、以下の通りです。
利用者基本情報
利用者の氏名、生年月日、要介護認定の状況、住所を記載します。
看護・リハビリテーションの目標
訪問看護指示書やケアプランの内容を踏まえ、利用者や家族の希望や要望を考慮して目標を設定します。目標は実現が可能で具体的な内容とするようにしましょう。
日付、問題点・解決策、評価
日付は計画作成日または修正日を記載します。次に現在の問題点や、現状が継続することで将来起こる可能性のある問題などを記載します。
複数の問題点が存在するケースでは、優先順位の高いものから数個を絞り込み、ナンバリングしながら記載するようにしましょう。
次に問題点のそれぞれに対する解決策を記載します。
解決策は個別のケアについて看護師の介入を具体的に記載します。評価の欄は、初回の計画作成時は空欄でかまいません。
次回以降は実際にサービスを提供した結果、問題点の改善状況や、サービス継続や変更の必要性について記載します。
衛生材料などが必要な処置の有無
処置の内容と、使用する衛生材料について記載します。衛生材料については種類やサイズ、必要量などを具体的に記載しましょう。
備考
備考欄には、それぞれの項目に記載しきれない留意事項や特記事項を記載します。
主治の医師の指示や特に配慮すべき処置内容、利用者や家族からの要望など、訪問看護師間はもちろん、ケアマネジャーや他事業所のサービス提供スタッフにも情報を共有したい事柄などを記載しましょう。
作成者名
訪問看護計画書を作成した人の氏名を記載します。リハビリ専門職等と共同で作成した場合には、作成者全員の氏名を記載します。
日付、事業所名、管理者名
訪問看護計画書作成日、事業所名、管理者氏名の記載が必要です。
その他の帳票類について解説
訪問看護計画書の他にも、訪問看護師が作成する帳票があります。
訪問看護記録書Ⅰ・Ⅱ
訪問看護記録書にはⅠとⅡがあります。
訪問看護記録書Ⅰはフェイスシートと呼ばれることもあり、利用者の氏名、生年月日などの基本情報と、主治医や家族の情報、緊急連絡先などが記載されます。
訪問看護記録書Ⅱは、実際に居宅を訪問して実施したサービスなどの内容を記録するものです。
訪問したときの利用者の状態、バイタルサイン等と、実施した看護内容を記載します。
訪問ごとに毎回作成する必要があるので、電子端末などを利用して、その都度作成できるようにしておくと効率よく作成できます。
訪問看護報告書
訪問看護報告書は、明確な作成頻度については定められていませんが、少なくとも月に1回作成して、利用者の主治の医師に提出するのが望ましいとされています。
主治の医師に対しての提出期限も定められていませんが、毎月月末までの情報を、翌月のできるだけ早期に提出するのが理想的です。
訪問日や病状の経過、看護の内容、家庭での介護の状況等を具体的かつ簡潔に記載し、訪問看護計画書と同様に事業所名と管理者氏名の記載が必要です。
また2021年度からは、理学療法士等のリハビリ専門職が訪問してサービス提供を行った場合には別紙に詳細を記載し、訪問看護報告書に添付が必要となりました。
訪問看護計画書作成のポイント
記載が必要な項目は厚生労働省で定められているため、それらの項目についてもれなく記載することが最低限求められますが、その他にもいくつかのポイントがあります。
目標の設定について
目標は利用者や家族と面談の上、できるだけ具体的に達成が可能な目標を設定しましょう。
目標はあくまでも利用者が達成する目標であるため、利用者の立場で記載することが必要です。
例えば「短距離の歩行」ではどの程度の距離かがわかりません。利用者の状態に応じて、「ベッドからトイレまでの歩行」や「玄関から駐車場の車までの歩行」等、具体的に設定し、「~したい」「~しない」等のように、利用者の言葉として記載できることが理想的です。
問題点の記載について
訪問看護の利用者には複数の問題を抱えているケースも少なくありませんが、訪問看護師が優先的に介入が必要である問題を絞り込み、優先順位をつけて記載しましょう。
問題点の順位に迷うこともありますが、訪問看護の介入によって利用者の状態や家族の考え方が変化していくこともあるため、適宜見直して調整していく方が現実的といえます。
評価について
訪問看護師の介入後、利用者の状態についてアセスメントを行い、その結果によって現在のプラン(計画)を継続するかどうかを記載します。
プランを継続するにあたって、その理由も端的に記しておきましょう。
プランの継続によって問題点の解決が見込まれない、または悪化しているような場合には、訪問看護計画の見直し・変更が必要となる場合があります。
訪問看護に必要な帳票類とは?
いずれの帳票も厚生労働省から模範書式が示されており、記載が必要な項目が定められています。
必要事項にもれがなく、正確に記載されていることは、介護報酬・診療報酬の算定には必須です。訪問看護に特化した電子カルテやソフトを利用すれば、書式は整っており、必要事項を入力するだけで済みますし、事務所以外でもタブレット端末などを使用して入力することができ、書類作成の業務を効率化することができます。