緊急時訪問看護加算の算定要件や留意点などを詳しく解説!

2023/09/08

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在宅療養や在宅介護では深夜や休日などに体調変化があったとき、このまま様子をみていてよいのか救急車を呼ぶべきか、ご本人はもちろん家族もとても不安な時間を過ごすことがあります。

「いつでも看護師さんが来てくれる」というのは、在宅療養や介護においてとても心強いことです。

実際に訪問看護における緊急時訪問看護加算を算定している訪問看護事業所は令和1年12月時点で82.7%という調査結果があり、需要の高さを反映しているともいえます。

訪問看護における緊急時訪問看護加算について確認しましょう。

緊急時訪問看護加算とは

介護保険において、中重度の要介護者の在宅生活を支える体制をさらに整備するために、24時間体制のある訪問看護事業所の体制について、また、24時間対応体制のある訪問看護事業所からの緊急時訪問を評価することを目的とした加算です。

具体的には、24時間365日利用者又はその家族等からの電話等により看護に関する相談に応えたり、必要に応じて訪問するなど、緊急時に対応できる体制がある場合に算定できる加算です。

緊急時訪問看護加算が算定できる介護サービスの種類

緊急時訪問看護加算が算定できる介護サービス事業者は次の種別です。

訪問看護ステーション、保健医療機関の訪問看護

訪問看護は看護師などが居宅を訪問して、主治医の指示により疾患や障がいに応じた医療ケアや診療補助などを行うサービスです。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

定期巡回訪問、または、随時通報を受け利用者の居宅を訪問し、介護福祉士などによる介護や生活援助、看護師などによる医療ケアや診療補助を行うサービスです。

訪問介護と訪問看護が一体的に行う場合と連携しながら行う場合があります。

看護小規模多機能型居宅介護

訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせ、看護と介護を一体的に提供するためのサービスです。

「通い」「泊り」「訪問看護」「訪問介護」のサービスを提供し、退院から在宅生活への移行や、がんの末期、看取り期、病状不安定期における在宅生活の継続、家族に対するレスパイトケアや負担軽減などを目的としています。

看護小規模多機能型居宅介護

緊急時訪問看護加算の算定要件と留意点

2021(令和3)年度介護報酬改定では、緊急時訪問看護加算について変更はありませんでした。単位数や算定要件などの詳細について確認しましょう。

介護サービス事業所の種別と単位数

指定訪問看護ステーションは574単位/月、保健医療機関(病院や診療所の訪問看護)は315単位/月、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は315単位/月、看護小規模多機能型居宅介護は574単位/月が算定できます。

緊急時訪問看護加算の算定要件

・利用者やその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制であること。
・計画していた訪問以外の緊急時訪問ができる体制であること。
・都道府県(市町村)に届け出ていること。
・利用者やその家族等に緊急時訪問看護加算の算定について書面で説明し、同意を得ていること。

緊急時訪問看護加算の算定要件

緊急訪問看護加算算定時の留意点

・緊急訪問看護加算は、その月の1回目に訪問した訪問看護の所定単位数に加算します。

・訪問看護の緊急時訪問看護加算、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の緊急時訪問加算、看護小規模多機能型居宅介護の緊急時訪問看護加算、医療保険における訪問看護の24時間対応体制加算は、1人の利用者に対して1か所の事業所しか算定できません。
そのため、他の事業所から緊急時訪問看護加算にかかる訪問看護を受けていないかどうかを確認する必要があります。

・実際に緊急時訪問を行った場合、その所要時間に応じた所定単位数を算定します。
そして居宅サービス計画を変更する手続きが必要となります。

・その月の1回目の緊急時訪問では、早朝・夜間、深夜の時間帯に訪問した場合であっても、早朝・夜間、深夜加算は算定できません。
ただし、同月の2回目以降の緊急時訪問については、早朝・夜間、深夜の時間帯に訪問した場合、早朝・夜間、深夜加算を算定できます。

緊急訪問看護加算、24時間対応体制加算との違いは?

似たような名称や内容の加算に「緊急訪問看護加算」「精神科緊急訪問看護加算」「24時間対応体制加算」があります。

これらはいずれも介護保険ではなく医療保険における加算です。これらの加算と緊急時訪問看護加算の違いを確認しておきましょう。

緊急訪問看護加算

緊急訪問看護加算は、訪問看護ステーションが主治医からの指示などによって計画外の訪問を行ったときに2,650円/日が算定できます。算定要件と留意点は以下の通りです。

緊急訪問看護加算の算定要件

・主治医から指示を受けて行う計画外の訪問、または継続診療加算を算定している利用者の主治医が対応していない夜間などにおける連携先の保健医療機関の医師から指示を受けて行う緊急の訪問であること。

・主治医が診療所または在宅療養支援病院の保険医であること。

・診療所または在宅療養支援病院が、24時間往診及び指定訪問看護により対応できる体制を確保していること。

・24時間連絡を受ける連絡担当者の氏名、連絡先電話番号等、担当日、緊急時の注意事項、往診担当医、訪問看護担当者の氏名などを利用者に文書で提供していること。

算定時の留意点

・同一日に複数の訪問看護ステーションから訪問看護を受けている利用者に、緊急の訪問看護を行った場合は、緊急訪問看護加算のみ算定します。
この場合、24時間対応体制加算の届け出をしていること、過去1か月間以内に訪問看護を実施していることが要件となります。

・緊急の訪問を行った場合には、速やかに主治医に報告します。
また、必要に応じて特別訪問看護指示書の校風を受け、訪問看護計画の見直しを行います。

精神科緊急訪問看護加算

精神科緊急訪問看護加算は、精神疾患を有している利用者に対して、訪問看護ステーションが主治医からの指示などによって計画外の訪問を行ったときに2,650円/日が算定できます。

算定要件と留意点は以下の通りです。

精神科緊急訪問看護加算の算定要件

・主治医から指示を受けて行う計画外の訪問、または継続診療加算を算定している利用者の主治医が対応していない夜間等における連絡先の保健医療機関の医師から指示を受けて行う緊急の訪問であること。

・主治医が診療所または在宅療養支援病院の保険医であること。

・診療所または在宅療養支援病院が、24時間往診及び指定訪問看護により対応できる体制を確保していること。

・24時間連絡を受ける連絡担当者の氏名、連絡先電話番号、担当日、緊急時の注意事項、往診担当医、訪問看護担当者の氏名などを利用者に文書で提供していること。

算定時の留意点

・同一日に複数の訪問看護ステーションから訪問看護を受けている利用者に、緊急の訪問看護を行った場合は、精神科緊急訪問看護加算のみを算定します。

この場合は、24時間対応体制加算の届け出をしていること、過去1月以内に訪問看護を実施していることが要件となります。

・緊急の訪問を行った場合には、速やかに主治医に報告します。また、必要に応じて精神科特別訪問看護指示書の交付を受け、訪問看護計画の見直しを行います。

24時間対応体制加算

24時間対応体制加算は、必要に応じて緊急の訪問や、夜間や休日などにおける利用者や家族等の電話などによる相談や連絡に対応できる体制を整備していることで6,400円/月が算定できます。

名称は異なりますが、内容は介護保険の緊急時訪問看護加算とほぼ同じと理解できます。

24時間対応体制加算

24時間対応体制加算の算定要件

・利用者やその家族から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制を整えていること。

・必要に応じて緊急時に訪問看護を行う体制があること。

・地方厚生(支)局長に届け出ていること。

・利用者に対して訪問看護ステーションの体制を説明し、同意を得ること。
また説明にあたって、訪問看護ステーションの名称、所在地、電話番号、時間外や緊急時の連絡方法を記載した文書を交付すること。

・利用者やその家族からの連絡・相談に応じた場合や緊急時訪問看護を行った場合、その日時と内容、対応状況を訪問看護記録書に記録すること。

算定時の留意点

・24時間対応体制加算は、1人の利用者に対して1つの訪問看護ステーションだけが算定できます。
そのため、他の訪問看護ステーションから24時間対応体制加算にかかる指定訪問看護を受けていないか確認する必要があります。

・24時間対応体制加算は、1人の利用者に対して介護保険の緊急時訪問看護加算と同月に算定できません。
そのため、他の訪問看護ステーションから緊急時訪問看護加算を算定する訪問看護を受けていないかも確認する必要があります。

・医療資源の少ない地域に所在する訪問看護ステーションでは、2つの訪問看護ステーションが連携することによって24時間対応体制加算の要件を満たすことで届け出ることができます。
この場合でも、24時間対応体制加算は1つの訪問看護ステーションにおいてのみ算定できます。

訪問看護で算定できる、緊急時訪問看護加算について

緊急時訪問看護加算は介護保険において、24時間体制のある訪問看護事業所の体制について、また、24時間対応体制のある訪問看護事業所からの緊急時訪問を評価することを目的とした加算です。

医療保険にも名称や内容が似ている加算がありますが、原則として医療保険と介護保険の併用はできません。

どちらを算定するかは、算定要件や留意点、利用者の疾患や医師の指示内容によっても異なるため注意が必要です。