訪問介護事業所の営業 利用者獲得につながる効果的な方法とは?

2023/09/08

アイキャッチ

2022年の厚生労働省の調査では、訪問介護事業所数は増加を続けており、過去最多を更新しているということです。

今後も数十年に渡って続く超高齢社会の日本において、訪問介護はなくてはならい介護サービスであり、高齢者の増加に伴って需要が増すと予想されます。

しかし近年は、新型ウイルス感染症の影響などもあり、廃業に追い込まれる訪問介護事業所があることも事実です。

安定した経営のためには欠かせない、新規利用者を獲得するために有効な営業方法についてまとめます。

訪問介護とはどんなサービス?

訪問介護とは、ホームヘルパーなどの訪問介護員が利用者の自宅を訪問して、入浴や排せつ、食事などの身体介助や、調理、洗濯、掃除などの生活援助を行う介護サービスです。

要介護1~5の認定を受けている方には訪問介護、要支援1・2の認定を受けた方には介護予防訪問介護というサービスを提供します。

訪問介護は、利用者である介護認定を受けた方本人を対象に、できるだけ自立した生活を送るためのサポートであり、日常的に必要ではない行為や医療行為、本人以外の人(家族など)に対するサービスはできません。

訪問介護事業所に営業が必要な理由

介護保険制度では、ケアマネジャーが作成したケアプランの内容に沿って、必要な介護サービスを提供する介護事業者と利用者の契約によって介護サービスが提供されます。

平均寿命が延びて高齢者数が増加している今、訪問介護はますます需要が拡大するといわれていますが、それでも営業が必要なのには理由があります。

介護保険制度の仕組み

介護保険のサービスは基本的に、収入源の9割が介護給付、1割が利用者の自己負担であり、サービスごとに請求できる介護報酬が決められているので、単価を自由に設定することができません。

そのため、事業所の利益を出すには利用者の数を確保する必要があり、利用者である高齢者やその家族に選ばれなければなりません。

訪問介護事業所の増加

厚生労働省の調査では、令和2年10月1日現在、居宅サービス事業所の中では訪問介護事業所が最も多く、前年よりも250か所増加しています。

現在はいろいろな介護サービス事業者に営利法人(会社)も参入しており、さらに今後は訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型サービスの新設も検討されていることから、訪問介護事業所にも影響があると予想されています。

利用者の入れ替わり

在宅で介護サービスを受けながら生活されている方も、疾患や心身機能の変化によって在宅での生活が困難となって入院や介護施設に入所されたり、亡くなられる方もいらっしゃいます。

利用者が入れ替わることを想定して、新規の利用者を獲得していくことが必要です。

どこに営業すればいいのか?

訪問介護サービスを利用する方は要介護認定を受けている方であり、担当のケアマネジャーが作成するケアプランの内容に沿って介護サービスが提供されます。

ケアマネジャーがその方に適した介護サービス事業所を紹介することも多いので、営業の対象となるのは利用者ご本人だけではなく、ケアマネジャーも営業の対象といえます。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは市町村が設置主体であり、地域の高齢者を支える総合相談窓口です。

保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーが在籍しており、高齢者やその家族からの相談や要支援者の介護予防ケアマネジメント作成、高齢者の権利擁護、地域課題の解決などを行っています。

また要介護認定の申請を代行することもでき、地域の高齢者の実情を把握している機関といえます。

地域包括支援センター

居宅介護支援事業所

居宅介護支援事業所はケアマネジャーが要介護認定者に対して居宅サービス計画書(ケアプラン)を作成し、介護サービスの調整を行う事業所です。

ケアマネジャーが直接要介護者やその家族と面談し、現状のアセスメントを行って課題を抽出し、その方に必要な介護保険サービスの種類や内容、回数や料金なども含めて提案します。

ケアマネジャーは公正中立な立場であるため、ひとつの介護事業所だけに偏って利用者に紹介することはなく、利用者の心身の状態や利用環境などを考慮したうえで介護事業所を紹介します。

そのためケアマネジャーには、訪問介護事業所の特徴や得意分野をアピールし、人員配置や営業日時、受け入れ状況などを詳細に伝えて、日ごろから信頼関係を築いておくことが重要です。

医療機関

現在は退院して在宅で生活するために、切れ目なく介護や医療のサービスを受けられるように、多職種が連携して情報を共有し、連絡や調整を行う仕組みがあります。

総合病院には入退院支援室などと呼ばれる部門があり、看護師やソーシャルワーカーなどが在籍しており、ケアマネジャーと連絡を取り合っていることがあります。

また地域の診療所なども、退院後にかかりつけ医となることがあるため、訪問介護事業所の場所や特徴を知っておいてもらい、信頼関係を築いておくことは有効です。

地域の住民

民生委員や認知症サポーター、シニアサークルの集まり、町内会などにも挨拶をしてき、訪問介護事業所について知っておいてもらうことで、いざというときに利用につながる可能性があります。

わかりやすいチラシやパンフレットなどを配布すると、家族にも見てもらうことができます。

地域の高齢者の活動については、地域包括支援センターで情報が得られることがあります。

地域の住民

どんな営業方法があるのか?

いくつかの営業方法があり、それぞれにメリットもデメリットもあるといえます。

医療や介護にかかわる職場は、現在も感染症予防のために部外者の出入りを制限しているところもあり、またどのような職場も忙しく働いているので、時間を取ってもらうのが難しいこともあるので工夫が必要です。

訪問営業

実際に対面で営業することは、お互いの信頼関係を構築するためには欠かせない方法です。

しかしケアマネジャーは外出していることも多く、ゆっくりと時間をとって話すことが難しいこともあります。

滞在時間を短縮するために、チラシやパンフレットなどの営業ツールを活用しましょう。

チラシやパンフレットには訪問介護事業所名、所在地や電話番号、営業日時などの基本事項の他に、他事業所との違いや強みがアピールできることも重要です。

伝えたい情報が多いと文字数が多くなりがちですが、高齢者の方が見ることも考慮して、文字のサイズやフォント、配色なども工夫し、写真やイラストを効果的に利用しましょう。

また定期的に訪問することも、信頼関係築くために有効です。

SNS・ホームページ

インターネットを利用してSNSや公式ホームページなどを作成することで、事業所の雰囲気などが伝わりやすかったり、短期間で広範囲に情報を発信することができます。

比較的若い年齢層が利用するイメージがありますが、現在は高齢者でもスマートフォンを利用している人は少なくありません。

これらの情報発信にはスピードも重要な要素であるため、常に最新の、信頼できる情報を掲載することが求められます。

SNS・ホームページ

電話・FAX

営業を受ける側からすると、あまり歓迎される方法ではないかもしれません。

特に新規の営業先の場合は、門前払いの可能性は高いと考えられます。しかし電話での営業は、ある程度関係性が構築できてからは有効なこともあります。

知っている人からの電話であれば、話を聞いてくれる可能性も高く、電話で約束をしてから改めて訪問することもできます。

FAXを使った営業では、業者に依頼して多くの営業先に一斉送信する方法がありますが、受信側の用紙とトナーを使用するため、一定の割合でクレームや受信拒否などもあるようです。

従業員の確保と介護サービスの質の向上

これは直接的な営業ではありませんが、医療・介護関係者からの信頼を得たり、継続的に経営を安定させるためには必要なことです。

新規の依頼があったときに訪問介護員が不足していて受け入れられなかったり、利用者の方からクレームがあったりすると、利用者の獲得ができないだけではなく、自信をもって営業をすることができなくなってしまいます。

事業所の人員確保や業務の効率化、介護の知識・技術の向上など、内部の環境を整えることも欠かせません。

訪問介護事業所の効果的な営業方法とは?

訪問介護事業所は、コンスタントに新規の利用者を獲得していかなければなりません。

そのためにいくつかの営業方法がありますが、やはり地域の医療・介護関係者との信頼関係を構築することが、最も効果的な営業ともいえます。

アピールできるような訪問介護事業所の強みを作り、営業ツールを活用しながら、事業所の認知度を広めていきましょう。