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給食業者は介護施設の目的に合わせて選ぶ
2023/09/07
現在は介護施設の多くが、給食業務を外部の給食業者に委託しています。
全国的に展開している大手の給食業者や地域の特性などを活かせる比較的小規模の給食業者、さらに近年では他業種から参入した給食業者もあるようです。
新たに給食業務を委託するとき、委託する給食業者を変更するとき、いずれの場合も、介護施設を利用する高齢者の特徴や介護施設の目的に合った給食業者を選ぶことができれば、喫食者の満足度が向上するだけではなく、コストの削減や業務の効率化などさまざまなメリットが期待できます。
目次
給食とは
給食とは、特定多数の人に対して給食室や給食センターなど専門の施設で調理された食事を提供すること、またはその食事を指します。
給食は学校、病院、福祉施設、事業所などさまざまな場所で実施されており、対象施設ごとに単に食事を提供するという以外にも、食育や食事療法、健康管理などの目的も担っています。
介護施設の食事の意義
介護施設にもいろいろな種類がありますが、一般的には日常生活を送るうえで何かしらの援助や介助を必要とする、高齢者を対象とした施設を指します。
特別養護老人ホームなどの介護保険施設では2005年(平成17年)10月から、食費は介護保険給付の対象外となった一方で栄養ケアマネジメント加算が新設され、入所者ひとりひとりの栄養状態や健康状態に応じた食事提供が重要視されるようになりました。
さらに介護施設で生活する高齢者にとって食事は大きな楽しみであり、QOLの維持・向上のためにも重要な意義を持つと捉えられるようになっています。
介護施設の食事の特徴
いつでも好きなものを食べることができる在宅の高齢者とは異なり、介護施設で生活を送る高齢者にとっては、施設で提供される給食が食事のほぼ全てといえます。
毎日のことであるだけに「食べたいときに食べたいものが出てこない」「味付けが嗜好に合わない」など、不満の原因となることも多くあります。
しかし不自由さがある反面、栄養バランスが整っており、衛生面の配慮や摂食嚥下機能に応じた安全な食事が提供されることは、疾患や障害を持つ高齢者にとっては大きなメリットであるといえます。
また栄養士・管理栄養士、調理師など給食業務にかかわる職員だけではなく、看護師や介護職員、理学療法士、歯科衛生士など他職種の協働によって、加齢に伴う喫食量の低下や消化吸収能力の低下など、さまざまな心身機能の低下が原因となって引き起こされる低栄養を適切に予防・改善することができます。
介護施設における給食提供の課題
介護施設の食事で問題となることは、具体的にどのようなことがあるでしょうか。
全ての問題を一度に解決することは難しくても、課題が明らかになっていれば優先順位をつけて、解決に向けて取り組むことができます。
利用者・入居者の満足度
誰にとっても食事は日々の楽しみのひとつですから、好きなもの、おいしいものを食べたいと思うのは当然です。
しかし介護施設では、いつも食べたいものが出てくるとは限りません。
味が良いことはもちろん、献立のバリエーションが豊富で食べ飽きないこと、見た目が良いこと、食べやすいこと、食事の時間が楽しいことなど、提供される食事そのもの以外でも食事の満足度は変化します。
介護施設の食事の満足度を低下させている要因は何なのか、食事以外にも目を向けて観察してみることも必要です。
個人対応
高血圧や糖尿病、腎臓疾患など食事療法が必要な慢性疾患をもつ高齢者は非常に多いのが現状です。
そのような高齢者には医師の指示に従った食事療法が必要とされることがあります。
食物アレルギーがある方も同様に、アレルゲンを除去した食事提供が必要となることもあります。
さらに喫食量が低下している高齢者には低栄養を予防するために、日に3食の食事以外にも補食を提供したり、好き嫌いを考慮する必要があることもあります。
このように一律の食事提供ではなく、ひとりひとりの体調や疾患、嗜好などに対応した食事提供が求められるようになっています。
食事形態の調整
介護施設を利用する高齢者は特に、疾患や加齢に伴う摂食嚥下機能の低下がある方も多くなっています。
安全に食事を摂るために、ひとりひとりの食べる機能に合った食事形態に調整して食事を提供することが求められます。
さらに近年は、「きざむ」「ペーストにする」などによって損なわれてしまう料理の見た目を、ゲル化剤などを使って再形成したり、食材そのものを科学的な調理方法によってやわらかくするなど、工業的に生産された食品を利用して食事形態を調整し提供する方法も多くあります。
人員不足
介護業界は常に職員不足の状態にあるといっても過言ではありません。
それは介護職員に限らず、給食提供にかかわる管理栄養士・栄養士、調理師なども同じです。
介護施設の給食が直営方式の場合は特に、管理栄養士や栄養士の他に調理スタッフを一定数確保しなくてはならないため、求人や採用、育成にも費用と時間が必要となります。
コスト
給食業務の全てを自施設で行うとすると、人件費、厨房設備費とその維持費、調理にかかる水道光熱費、食材料費、消耗品費など、その他にもさまざまなコストがかかります。
そもそも利用者の食費でそれらの全てを賄うのは困難ですし、近年の水道光熱費や食材料の価格上昇などを食費に反映させることも難しいのが現状です。
衛生管理
集団給食施設においてはHACCPに沿った衛生管理が義務化されています。
HACCPは飲食に起因する人の健康を害する恐れのある食中毒や異物混入などの要因を防止するためのシステムで、衛生管理の点検と手順の記録化やマニュアル化が必要となります。
給食業者に求める「目的」は何か
給食業者は、それぞれに得意分野を持っていることがあります。
介護施設が食事に求める目的に応えられる給食業者を選ぶことができれば、現状の食事の課題解決につなげることができます。
介護施設の種類に適した食事提供ができる
介護施設の種類によって食事の内容や提供回数、食数などが異なり、高齢者が負担する食費にも差があります。
食費が高額であれば食材料費にも余裕が持てますし、食事の提供回数や食数が少なく、食事の内容や食事形態が単一であれば調理業務は簡素化されますが、それにかかるコストは割高になる可能性もあります。
介護施設の状況に合った食事提供ができるかどうかを検討する必要があります。
利用者・入居者の特徴に合った食事提供ができる
比較的健康で活動量の多い高齢者と、介護度が高く、摂食嚥下機能にも問題がある高齢者では、提供する食事が異なります。
また認知症がある高齢者の場合も、提供する食事には工夫や配慮が必要となります。栄養量だけではなく食事形態や提供方法など、介護施設の利用者や入居者の特徴に合った食事を提供できるかどうかは重要です。
施設の考え方を理解できる
食事には多くの目的があります。健康管理、安全性、おいしさ・楽しさ、心身機能の維持・増進など、介護施設が食事に対して何を重要視するかによってコスト配分が異なってきます。
また食事にかかわる作業を、高齢者に生活の一部として担っていただくような場合には、給食業者にも施設の考え方を理解してもらったうえで協働できることが理想的です。
委託形態と連携
給食業務の全般を委託する全面委託か、給食業務の一部を委託する部分委託か、調理済みの食品を利用する配食サービスかで、給食業者とのかかわり方が異なります。
委託内容の詳細は介護施設と給食業者の契約によって決定しますが、いずれの場合も介護施設と給食業者の連携がとれることは大切です。
介護施設の設備や人員
厨房設備の有無や規模、ユニットにあるキッチン設備、介護施設側の給食業務にかかわる人員(栄養士・管理栄養士、調理員など)だけではなく、委託形態によっては介護職員の人員配置も考慮に入れておかないと、施設側の職員に給食業務の負担が出る可能性があります。
コスト削減による弊害がないこと
多くの場合で直営給食よりも委託給食の方がコストが削減できると考えられますが、費用面だけに注目してしまうと、給食業者を導入後、実際の食事提供に問題が発生することがあります。
実際の食事提供の一部始終についてオペレーションを想定しながら、コストについても検討することが必要です。
給食業者は介護施設の目的に合わせて選ぶ
現状の給食業務や提供している食事の課題によって、給食業者に求める目的が明確になります。
介護施設側がどのような食事提供をしたいのか目的が明確であれば、給食業者との交渉や連携もしやすく、食事についての課題解決に役立つ給食業者を選ぶことができると考えられます。