検食とは?安心安全な施設を選ぶポイント

2023/09/06

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高齢者様が入居する施設入居を考えることになった時、選ぶポイントは様々ですね。

中でも、3度の食事に関してはしっかりと選びたいところです。

介護食がどのようなものであるか、行事食は用意されているのか…。意外に気づきにくいポイントに、衛生管理について、というものがあります。

今回は食の安全を守るために大切な衛生管理の一つ、検食について、ご紹介します。

検食とは?

検食とは、老人ホームや学校の給食室、集団給食施設などで食事の安全性を確保するために行われているものです。

普段あまりに耳にしない言葉ではありますが、実際にはどのようなことを行っているのでしょうか。

その日の食の安全を守るための検食

その日の食の安全を守るための検食

給食、というと、時々耳にするのが集団食中毒ですね。

また、学校給食では何らかの食物アレルギーがある子どもが、アレルゲンを除去されていない料理を誤って口にしたために、重篤なアレルギー症状に見舞われてしまったという痛ましいニュースを耳にすることもあります。

検食は、このような事故を未然に防ぎ、喫食者の健康を守るために行われています。

検食にかかわる法律

保育園では児童福祉法、学校では、学校給食法、病院は入院時食事療養など(医師や管理栄養士または栄養士が検食を行う場合がある)があります。

各施設では、これらの法に基づき、検食を行っています。

特別養護老人ホームなどの高齢者施設は、老人福祉法により、基本的には担当の管理栄養士または栄養士、施設長による毎食の検食が求められています。

さらに、有料老人ホームについては、自治体が定めた条例などで検食がなされています。

高齢者施設での介護食の検食とは

では、検食とはいったいどのようなことを行うのでしょうか?

高齢者施設における検食

実際の検食では、まず、目視で異物の混入がないかどうかの確認を行います。

また、レシピ通りの食材が使われているかどうか、加熱はきちんとできているか、異臭はしないか、味はどうかなどがチェックされます。

さらに、高齢者様が食べやすい大きさや柔らかさ、味付けになっているかどうか、きちんとした盛り付けができているか、などが確認されます。

嚥下障害がある方のメニューについては、ユニバーサルフードの基準などを参考に、とろみづけや裏ごしなどがきちんとされているか、持病による食事制限がある方には、医師や管理栄養士の指示通りの除去などがなされているかどうかの確認も行います。

これらは利用者が食事を始める30分前には終了しておく必要があります。

自治体や施設により検査項目には若干の違いがありますが、上記のようなことについて厳格な確認が行われ、検食簿という書類に日々記録されています。

保健所からの要請を受け、定期的に提出する必要があります。

食中毒事故発生時の原因究明のための検食

これとは別に、万が一の事態に備えた「検食」があります。

正式には「検査用保存食」といい、基本的には調理に使用した食材や調味料すべてにおいて、また、調理した状態の全種類の料理を保存しておく必要があります。

原材料については洗浄や殺菌は行わず、入荷した状態のもの、調理済みの食品に関しては配膳用の器に盛りつけたものを、衛生的に管理された容器や保存用のビニール袋に、毎食分それぞれ50g以上を入れて密封し、日付をつけてー20℃以下で2週間以上冷凍保存しておきます。

検食を取り分ける際に2次汚染があってはならないため、アルコールや熱で除菌した調理用具、容器を使用して取り分け、保存されます。

また、どのように調理したのか、検食のとりわけ方法や量、保存温度や日時、担当者名をも含めて記録した帳簿は、一年間保存する必要があります。

食中毒事故発生時の対応と検食

では、検食はどのように活用されるのでしょうか?

食中毒事故が発生したら

万が一、検食中に異物混入や加熱不良などが発見されたり、利用者の多くに食中毒と思われる症状が発生したりした場合、施設側は直ちに調理、食事の提供を中止しなくてはなりません。

提供した食事を速やかに回収するとともに管轄の保健所に連絡を取り、必要に応じてかかりつけ医や救急病院での診察を要請します。

食中毒の原因菌の潜伏期間は、約30分から長いもので10日前後に及びます。

万が一集団食中毒などが発生した場合、検食の状態を記録した帳簿と該当すると思われる日の検食用保存食を保健所に提出、調査を行います。

その結果、速やかに原因菌を特定、治療することができるようになるのです。

まとめ

高齢になったご家族が施設への入居を考えるとき、食事サービスの内容について、多くの方が確認されることでしょう。

その裏で、施設側は利用者を守り、食事を楽しんでもらうため、日々衛生管理に努め、検食をはじめ、調理師や管理栄養士の体調管理、健康診断などを行っています。

さらに、不測の事態に備えて、保健所への連絡から利用者への対応を速やかに行うためのシュミレーション・マニュアル作りがなされているのです。

私たちがさまざまなシーンで外食や給食をいただくときには、調理にかかわる施設やスタッフの、このような尽力にも思いを馳せてみてくださいね。