介護現場で求められる研修とは?認知症専門ケア加算について

2023/02/02

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超高齢社会にある日本では、介護現場における認知症高齢者に対するケアは急務といえます。

そこで平成30年度介護報酬改定により新設されたのが、認知症専門ケア加算です。

認知症専門ケア加算とは、認知症介護の専門知識を有する職員が介護サービスを提供した場合に算定できる加算です。

認知症介護について一定の経験があることや、国や自治体が実施する専門研修を修了することが、職員の要件となります。

今回は、認知症専門ケア加算の概要から加算要件、認知症ケアの研修について解説します。

介護報酬の認知症専門ケア加算

「認知症専門ケア加算」とは、認知症介護において、国や自治体が実施あるいは指定の認知症ケアに関する専門研修を修了した職員が、介護サービスを提供した場合に算定できる加算のことです。

この加算は、平成30年度の介護報酬改定で新設されました。 この改定では、認知症の人への対応の強化として、以下のような内容が盛り込まれています。

・看護職員を手厚く配置しているグループホームに対する評価を設ける。
・どのサービスでも認知症の方に適切なサービスが提供されるように、認知症高齢者への専門的なケアを評価する加算や、若年性認知症の方の受け入れを評価する加算について、現在加算が設けられていないサービス(ショートステイ、小多機、看多機、特定施設等)にも創設する。

引用:厚生労働省『平成30年度介護報酬改定の主な事項について

認知症専門ケア加算が求められる背景

認知症専門ケア加算が新設されたのは、国内で急増する認知症高齢者への対策を強化することが目的としてあります。

高齢者が認知症になっても可能な限り、慣れ親しんだ土地で自分らしく生活し続けるためにも、認知症介護における手厚いケアが必要とされます。

そのような背景から介護現場でも、認知症介護に関する豊富な経験や深い知識を持つ職員による、一人ひとりの状況に応じた適切な介護や医療の提供が急務とされているのです。

令和3年度の介護報酬改定

令和3年度の介護報酬改定では、介護サービス全般の認知症への対応力を向上させるため、加算対象サービスに「訪問介護」「訪問入浴介護」「夜間対応型訪問介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が追加されました。

また、加算の算定要件の一つ「認知症ケアに関する専門的研修」の対象とされる研修等が見直されました。

「認知症看護に係る適切な研修」が対象として追加されています。

該当する介護サービス

認知症専門ケア加算に該当する介護サービス

認知症専門ケア加算とは、認知症高齢者に対する専門的なケアの提供体制に対する評価ですが、対象となる介護サービスは、以下のとおりです。

・認知症対応型共同生活介護
・介護老人福祉施設
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設
・地域密着型介護福祉施設
・入所者生活介護
・訪問介護

認知症専門ケア加算の単位数

認知症専門ケア加算は、認知症介護について一定の経験を有し、国や自治体が実施又は指定する認知症ケアに関する専門研修を修了した者が介護サービスを提供することについて評価されます。

その際、算定できる単位数は以下のとおりです。

認知症専門ケア加算(Ⅰ) 3単位/日
認知症専門ケア加算(Ⅱ) 4単位/日

認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定要件

・利用者の総数のうち、日常生活自立度Ⅲ(※)以上の利用者が1/2以上を占めること。
・認知症介護実践リーダー研修修了者を、認知症高齢者の人数に応じて配置して、チームとして専門的な認知症ケアを実施していること。
・従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達または技術的指導に係る会議を定期的に開催していること。

※日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする。

対象者の人数 認知症介護実践リーダー研修修了者の配置人数
20人未満 1以上
20人以上 1に、対象者が19人を超えて10またはその端数を増すごとに1を加えた数以上

認知症専門ケア加算(Ⅱ)の算定要件

認知症専門ケア加算(Ⅱ)の算定要件

・認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定要件を満たしていること。
・認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、施設全体の認知症ケアの指導等を実施していること。
・介護・看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施していること。

認知症ケアに関する研修とは

認知症専門ケア加算の要件を満たすためには、認知症ケアに関する研修修了者の配置が必要です。

その研修には、「認知症介護実践リーダー研修」と「認知症介護指導者養成研修」が挙げられます。

認知症介護実践リーダー研修

認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件を満たすためには、認知症介護実践リーダー研修修了者の配置が必要です。研修は各都道府県の指定事業所で実施されます。

講義をはじめ、演習、他施設実習、自施設実習が研修内容です。講義と演習で8〜10日間程度、他施設実習は3〜5日間程度です。

自施設実習では、4週間程度の間に自分が設定した課題に取り組みます。

認知症介護実践リーダー研修の受講資格

認知症介護実践リーダー研修を受講するには、次の3つの条件を満たす必要があります。

①介護業務に5年以上携わって実務経験を積んでいる。
②チームのリーダーとなることが予定されている。
③認知症介護実践者研修を修了してから1年以上たっている。

受講申し込みの時期や研修スケジュールは地域によって異なるため、各都道府県の介護保険課HPなどで要確認です。

認知症介護指導者養成研修

認知症介護指導者養成研修の修了者を配置することで、認知症専門ケア加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の要件を満たせます。

この研修は、認知症介護における研修のなかで最高位とされるものです。

修了者は、自他施設や事業所において研修の企画立案を行うことや、介護に係る指導的役割を担うことも求められます。

認知症介護指導者養成研修の受講資格

次の5つの条件を満たす必要があります。
①医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士もしくは精神保健福祉士のいずれかの資格を持っている、またはそれに準ずる。
②以下のいずれかに該当し、相当の実務経験を持つ。
・介護保険施設、事業所に従事している
・福祉系大学や養成学校などで指導的立場にある
・民間企業で認知症介護の教育に携わっている

③認知症介護実践リーダー研修を修了している。
④認知症介護基礎研修または認知症介護実践者研修の企画、立案、または講師を担う予定がある。
⑤地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている。

介護職員の質向上のためにも

認知症高齢者は今後も増加の一途をたどることが見込まれています。

それを見据えて介護現場では、今後より一層高度な認知症ケアの実施が求められます。

認知症高齢者の介護にはチームケアが必須です。認知症ケア加算の算定を目指すことで、介護事業所および介護職員の質を向上させていきましょう。

これからのニーズに応えることができるうえ、事業所独自の専門性の高さをアピールすることにもつながります。