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介護施設における検食とは?目的や法的義務・具体的な方法を徹底解説
2025/10/27

「介護施設で検食は本当に必要?」「誰がどのように実施するのか知りたい」「保存食の量や期間はどのくらい?」と疑問を持つ方もいるでしょう。
検食は、利用者の安全を守るためにすべての介護施設で欠かせない取り組みです。味や温度などを確認する試食と、万一に備える保存食の両方を正しく実施しなければなりません。
当記事では、検食の目的や法的義務、具体的な実施方法、記録のポイント、注意すべき食材と対応策まで解説します。
衛生管理を徹底することは、入居者の健康を守るだけでなく、施設全体の信頼にも直結する重要な対応です。安全で安心な食事提供体制を築くための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
目次
介護施設における検食とは?

検食とは、介護施設などで提供する食事の安全性や品質を確認するために、職員が事前に試食・保存して点検する衛生管理の手法です。介護施設における検食の基本を理解することは、食中毒などのリスクを防ぎ、安全な食事提供を実現するためにも欠かせません。
介護施設における検食の目的・種類について、以下2つの観点で解説します。
- 検食の目的
- 検食の種類
詳しく見ていきましょう。
検食の目的
介護施設における検食は、提供する食事の安全性を日常的に確認し、利用者の健康被害を未然に防ぐことを目的としています。
調理後の料理を職員が実際に食べ、味・温度・見た目・香り・硬さなどを自分の感覚で確かめる方法が基本です。味見による感覚的な確認を通して、異物混入や調理ミスを早期に発見できます。
さらに、食中毒などの事故が発生した際に備えて、検食で残したサンプルを一定期間保存し、科学的に原因を特定できるようにすることも重要です。
検食は、日々の味見による安全確認と、万一に備えた科学的な検証の両面から施設の衛生管理を支え、利用者と家族の信頼を守る仕組みといえます。
検食の種類
介護施設でおこなう検食は、「試食」と「保存食」の2種類に分けられます。
試食は、提供前に職員が実際に食べて味・温度・見た目などを確認し、誤配や調理ミスを防ぐための予防的な検食です。
一方、保存食は提供した料理を一定量・一定期間保存する取り組みを指します。食中毒や異物混入などの事故が発生した際に、行政や保健所による原因調査に備えるためのものです。
保存食によって、実際に配膳された食事の状態を検証でき、調理過程や衛生管理の妥当性を裏付ける証拠となります。
試食は事前の安全確認、保存食は万一の証拠保全として機能し、双方を徹底することで利用者の安全と施設の信頼性を守れるのです。
介護施設における検食の法的義務と対象施設

介護施設における検食の法的な位置づけを、以下2つの観点で整理します。
- 検食を定める法律・ガイドライン
- 検食が必要な介護施設
法的基準を理解することで、施設運営上のリスクを防ぎ、行政監査にも対応できる体制づくりを進めましょう。
検食を定める法律・ガイドライン
介護施設で実施される検食には、いくつかの法律やガイドラインが根拠として関係しています。
主な法律・ガイドラインと関係性は、以下のとおりです。
- 食品衛生法:飲食物を提供するすべての施設に対し、安全管理と衛生確保を義務付け
出典1: 法令検索 - 大量調理施設衛生管理マニュアル(厚生労働省):検食の保存方法や保存期間、試食の実施手順などを明確に提示
出典2: 大量調理施設衛生管理マニュアル
- 介護保険法・介護福祉法関連通知:介護施設の運営基準において、衛生管理責任者の配置や食事提供体制の安全確保を明示
出典3: 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準
上記の法令や指針により、検食は福祉施設における衛生管理の中心的な役割を担っています。
また、検食が利用者の健康を守る法的根拠として位置付けられているのです。
検食が必要な介護施設
介護施設における検食は、提供人数にかかわらず、すべての施設で実施すべき重要な衛生管理項目です。
提供前に味や温度などを確認する「予防的検食」は、全施設で義務的におこなう必要があります。
一方、調理数が多い施設では厚生労働省が定める「大量調理施設衛生管理マニュアル」に基づき、以下の「検査用保存食」の実施が必要です。
- 1回あたり300食以上、または1日あたり750食以上を提供する施設が対象
- 各食品を約50gずつ、−20℃以下で2週間以上保存することを推奨
中小規模の施設は形式上、上記の基準外とされていますが、保健所や自治体は何人からと区別することなく同様の運用を推奨しています。
行政監査や利用者安全の両面から、提供人数に関係なく検食を実施することが不可欠です。
介護施設における検食の具体的方法

介護施設で実施する検食の方法を、以下4つに分けて解説します。
- 検食の実施者
- 試食検食の手順と評価項目|提供前の味・温度チェック
- 検査用保存食の取り方|原材料50g+調理済み50gを2週間保存
- 検食簿の記録方法|日時・担当者・結果を残すポイント
誰がどのように検食をするのか、どのような点を確認すれば安全性を担保できるのかを詳しく見ていきましょう。
検食の実施者
介護施設における検食の実施者は、法律や厚生労働省の基準により定められています。
介護老人保健施設では、医師または管理栄養士等が毎食前に検食をおこない、その所見を検食簿に記載することが欠かせません。食事内容の安全性や味付け、温度、形態を最終確認し、入所者に安心して提供できる状態であるかを判断するためです。
現場では、調理担当者以外の立場である管理栄養士や施設長が客観的な視点で検食をおこなうことが望ましいとされています。医師が常勤している施設では、健康管理の一環として味付けや塩分量を確認する場合もあるのです。
検食を適切に実施する体制整備は、施設の衛生管理とリスクマネジメントの根幹を支える重要な取り組みといえます。
試食検食の手順と評価項目|提供前の味・温度チェック
食事を提供する前に実施する試食検食では、給食責任者が実際に料理を食べ、五感を使って状態を確認します。
主なチェック項目は、以下のとおりです。
- 味:塩分・甘味・酸味などが適切か
- 色・見た目:焦げや変色がないか
- 匂い:異臭や腐敗臭がないか
- 温度:主菜は十分に加熱され、冷菜は冷えているか
- 異物:髪の毛や金属片などの混入がないか
検食は提供の30分前までに実施するのが基本です。検食で異常があれば食事の提供を中止し、代替食を準備する時間を確保するため、時間に余裕を持たせています。
検食結果は「検食簿」に記録し、施設の衛生管理の証拠として保管が必要です。
検食による事前確認により、介護施設は入居者の安全を守り、事故を未然に防止できます。
検査用保存食の取り方|原材料50g+調理済み50gを2週間保存
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、原材料と調理済み食品を50gずつ採取し、合計100gを密封して−20℃以下で2週間以上保存すると定められています。
保存のポイントは、次のとおりです。
- 主食・主菜・副菜・汁物・デザートなど、すべての提供メニューが対象
- 使用した肉・魚・野菜などの主な原材料も同様に保存
- 採取した容器には、採取日・食事区分・メニュー名・採取者名を明記
- 専用冷凍庫で他の食品と分けて保管し、温度は−20℃以下を維持
- 冷凍庫の温度を毎日確認して記録
上記の取り組みにより、介護施設は科学的な証拠に基づく衛生管理を実施し、入居者の安全と信頼を守れます。
検食簿の記録方法|日時・担当者・結果を残すポイント
検食簿では検食を実施した日時や献立名、担当者名に加え、味・温度・硬さ・見た目などの評価結果を具体的に記載します。
検食簿は、介護施設における食事提供の安全を証明する重要な記録書です。
「異常なし」などの簡潔な記述だけでなく、実際に確認した内容を詳細に残すことが求められます。
検食簿への記載項目例は、次のとおりです。
- 実施日時と食事区分(朝・昼・夕)
- 献立名と実施者(医師・管理栄養士など)
- 味や温度、香り、食感に関するコメント
- 異常の有無と、異常時の対応内容
検食簿は保健所の監査や行政指導でも確認されるため、正確で継続的な記録が不可欠です。
丁寧なコメントを残すことで、施設の衛生管理体制を明確に示し、入居者の安心と信頼を守れます。
介護施設における検食で注意が必要な食材と対応方法

介護施設の検食では、食材の種類によって衛生上のリスクが大きく異なります。
食中毒の主な原因となるのは、食肉・魚介類・卵・加熱不足の惣菜類などです。上記の食材は中心温度を75℃以上・1分以上加熱することが基本で、加熱不足は最も危険な要因となるでしょう。
食中毒を防止する対策として、以下の方法が挙げられます。
- 調理後30分以内に検食を実施し、温度・匂い・見た目を確認する
- 残食・再加熱を避け、提供時間を短くする
- 生野菜や刺身など加熱が難しい食品は提供を控える
また、高齢者施設や障がい者施設向けに、プロ料理人と管理栄養士が監修した完全調理済み冷凍パック食を提供するこだわりシェフなどもおすすめです。あらかじめ加熱処理済みのメニューを採用することで、細菌汚染リスクを大幅に低減できます。
安全性を最優先にした検食体制の構築が、利用者の健康を守る第一歩です。
介護施設の検食とは入居者を守るのに欠かせない対応
介護施設で実施される検食には、利用者の健康を守るための重要な役割があります。
検食とは、食事の安全性を確認する「試食」と、万一の事故に備える「保存食」の両面から、衛生管理を強化する取り組みです。検食は食品衛生法や大量調理施設衛生管理マニュアルなどに基づき、医師や管理栄養士が中心となって実施されます。
味・温度・見た目・異物の有無を確認し、結果を検食簿に詳細に記録することが重要です。
適切な検食を継続すれば、食中毒の防止だけでなく、行政監査や家族からの信頼向上にもつながります。法律やガイドラインを踏まえた検食体制を整え、安全で安心な食事提供を実現しましょう。




