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高齢者がなりやすい低栄養素とは?低栄養予防のポイントを徹底解説
2025/10/17

ご家族やご自身で、最近疲れやすくなった、あるいは服がゆるくなったと感じることはありませんか?それは単なる「年のせい」ではなく、シニアの活力や健康を静かに蝕む「低栄養」のサインかもしれません。
本記事では、低栄養がもたらすリスクから原因、ご家庭でできるチェック方法、具体的な食事の工夫まで、専門家の視点でわかりやすく解説します。あなたと大切なご家族の、健康で自立した未来を守るための一歩を、ここから踏み出しましょう。
目次
ちょっと痩せたかな?—低栄養がもたらす健康への影響

まず低栄養とは、体を動かすエネルギーや、体を作るたんぱく質が不足している状態を指します。厚生労働省の最新調査(令和5年)では、65歳以上のシニアのうち低栄養傾向にある方は男性で12.2%、女性で22.4%にものぼります。特に85歳以上で割合が高くなるこの数字は、過去10年間で大きな改善が見られていません。この事実は、低栄養が日本の高齢社会における深刻な健康課題であり、一般的な健康情報だけでは解決が難しいことを示しています。
低栄養を「少し痩せてきただけ」と軽視してはいけません。低栄養は、シニアの健康を根底から揺るがす、さまざまな問題の引き金になります。一度陥ると、ドミノ倒しのように次々と深刻な健康障害を引き起こす危険性があります。
フレイル(虚弱)の悪循環:低栄養がすべての始まり
フレイルとは、加齢により心身の機能が低下し、要介護状態に陥りやすい「虚弱」な状態です。このフレイルを引き起こす中心的なメカニズムが「フレイル・サイクル」と呼ばれる悪循環であり、その最初のドミノが「低栄養」です。
悪循環の流れ
- 低栄養:食事量が減り、特にたんぱく質が不足する。
- 筋肉量の減少(サルコペニア):筋肉が分解され始める。
- 筋力・身体活動の低下:歩行や活動が困難になる。
- エネルギー消費量の減少:活動量が減るため、消費カロリーも減少する。
- 食欲不振:空腹を感じにくくなり、さらに食事量が減る。
- さらなる低栄養:栄養不足が深刻化し、サイクルが加速する。
低栄養は一度陥ると自力で抜け出すのが難しい悪循環を生みます。そのため、早めの対策がとても重要です。
低栄養がもたらす具体的なリスク
- 筋力低下と転倒・骨折リスクの増大
筋肉量が減ることで体を支えにくくなり、転倒のリスクが高まります。特に大腿骨の骨折は寝たきりの原因となることもあります。 - 免疫力の低下
栄養不足で免疫細胞の材料が不足し、風邪や感染症にかかりやすく、治りにくくなります。 - 傷や床ずれの治りが遅れる
皮膚や組織の修復に必要な栄養素が不足し、怪我や床ずれの回復が遅くなります。 - 認知機能・気力への影響
脳にも栄養が必要です。不足すると集中力・記憶力が低下し、気力や活力も落ちます。
なぜシニアは低栄養になりやすいのか

シニアになると、体の機能や生活環境の変化により、必要な栄養を十分に摂ることが難しくなることがあります。加齢や口の健康、社会的な状況、心の状態など、さまざまな要因が絡み合うことで、低栄養のリスクが高まります。ここでは、なぜシニアは低栄養になりやすいのか、その主な理由を4つのポイントに分けて解説します。
1. 加齢による身体の変化
年齢を重ねると、味覚や嗅覚が低下し、食事の楽しみが減ってしまうことで、栄養バランスが崩れやすくなります。また、食欲や消化機能も低下し、少量でも満腹感を感じやすくなるため、必要なエネルギーや栄養を十分に摂りにくくなります。さらに、慢性疾患の影響や服用している薬によって、吐き気や口の渇き、味覚の変化が起こり、食欲不振につながることもあります。
2. お口の健康(オーラルフレイル)
加齢に伴い、噛む力が弱くなると、固い食品を避けるようになり、たんぱく質や野菜の摂取量が減りがちです。さらに、飲み込む力も低下すると、むせやすくなって食事自体を避けるようになるケースもあります。こうした「オーラルフレイル(口の虚弱)」が進むと、食事量や栄養の偏りを引き起こす原因となります。
3. 生活環境・社会的つながり
一人暮らしや孤食の機会が増えると、食事を簡単に済ませてしまい、栄養バランスが崩れやすくなります。また、買い物や調理の負担から炭水化物中心の食生活になりやすく、経済的な制約によって栄養価の高い食材を十分に購入できない場合もあります。こうした生活環境の変化が、低栄養を進行させる一因になります。
4. 心の状態
うつ病や身近な人の喪失など、精神的なダメージを受けると、食事の楽しみが減り、食欲不振を引き起こすことがあります。さらに、認知症が進行すると、食べ物を認識できなかったり、箸の使い方がわからなくなったりして、食事を拒むこともあります。心の健康は、食生活の維持に深く関わっており、精神的なケアも低栄養対策に欠かせません。
低栄養リスクチェックリスト
以下の質問に該当する場合はチェックしてください。上記チェックで1つでも当てはまる場合は、低栄養のリスクありです。2つ以上該当する場合は、早めに専門家に相談しましょう。
低栄養を予防・改善する食事のポイント

年齢を重ねると、食欲や消化力の変化により、必要な栄養を十分に摂ることが難しくなることがあります。でも、ちょっとした工夫で毎日の食事を栄養バランスよく、そして楽しくすることは可能です。ここでは、元気で健康な体を支えるための、簡単に取り入れられる食事のポイントを5つご紹介します。
1. たんぱく質を意識的にとる
体重1kgあたり1gを目安に、例えば50kgの方なら1日に50g程度を目標にしましょう。肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などをバランスよく取り入れ、消化しやすい柔らかい食品やミンチ、すり身なども活用することで、効率よくたんぱく質を摂取できます。
2. エネルギー不足を補う
主食だけでなく、さつまいもやかぼちゃなどの副食で食事に変化をつけましょう。間食にはヨーグルト、ナッツ、チーズなどを取り入れると、1日の必要なエネルギーを無理なく補えます。
3. 野菜・果物でビタミン・ミネラルを補う
1日350g以上を目安に、彩り豊かに食卓に並べることが大切です。柔らかく煮る、刻む、ペーストにするなど工夫すると、食べやすさも向上します。
4. 水分補給も忘れずに
1日1.5~2Lを目安に、飲みやすいお茶やスープでも構いません。のどが渇く前にこまめに摂ることで、脱水や低栄養の予防につながります。
5. 食べる楽しみを大切に
見た目や香りを工夫して食欲を刺激し、家族や友人と一緒に食卓を囲むことで、食事の時間をより楽しくしましょう。食べる楽しみを意識することが、無理なくバランスの良い食生活を続けるポイントです。
まとめ
低栄養は気づきにくいですが、早めのチェックと食事・生活の工夫で予防・改善できます。まずはチェックリストを使って、自分や家族のリスクを確認しましょう。必要に応じて医師や栄養士に相談することが安全で確実です。




