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入浴拒否はなぜおこる?認知症の方に気持ちよく勧める方法とは?
2022/11/28
認知症が進んでくると、私たちが当たり前に思っていることに強い拒否反応を示されることがあります。
たとえば、介護する側からすれば、入浴してさっぱりと気持ちよくすごしていただきたいと思いますね。
今回はなぜ認知症の方が入浴を拒否されるのかを知り、気持ちよく入浴していただくためにできる工夫をご紹介します。
目次
入浴がなぜ楽しくなくなる?
認知症になると、以下のようにさまざまな障害が生じ、その結果、入浴を拒否されることがあります。
前回入浴したのがいつなのかがわからなくなる
認知症になると記憶があいまいになり、つい先ほどのこと、昨日のことを憶えておくことが難しくなっています。
そのため、「前に入ったのはいつだったかなぁ…いや、今日はもう入ったはず…」と勘違いしてしまう方もあります。
下にご紹介するように、入浴に対してさまざまな不安要素、ネガティブな要素が入り混じり、その結果、入浴を拒否してしまうことがあります。
入浴が面倒になる
入浴するためには居室から浴室まで移動して、衣服を脱ぐ必要があります。
若くて健康な世代だと、何も考えずにボタンを外し、ファスナーを下ろして脱衣することができるでしょう。
しかし、認知症になると、居室から浴室までのルートを考えること、お手洗いに行き、用を足してお尻を拭き、水を流し、下着をつけること、さらに脱衣室で衣服を脱ぐこと…。
これら一つ一つに対し、やり方を考えて行動しなければならなくなります。
そのため、入浴に至るまでの工程に対し、面倒くささを感じてしまいお風呂に入りたくない、と思ってしまうことがあります。
入浴を介助されることが恥ずかしい
当然のことながら、入浴時は裸になりますね。その上で、体や髪を洗い、入浴後は体を拭きあげるために、介助が付くことがあります。
脱衣の時に汚れてしまっている下着をおろしてもらったり、入浴中には陰部の洗浄をしてもらったりすることに、恥ずかしさ、情けなさを感じる方もいらっしゃいます。
介助者が何気なく失禁の話をしてしまったり、脱衣を急かしたりするほか、異性の介助者がついたために恥ずかしくなり、心が傷ついてしまいます。
そのため、入浴は恥ずかしいもの、と、ネガティブなイメージが心に刻まれてしまい、それが入浴拒否へとつながっている場合があります。
入浴のペースが合わない
銭湯や温泉に行くと、髪から洗う方、体から洗う方、先に湯船に浸かる方…さまざまな入り方があることが分かりますね。
同じ家族、ご夫婦の間でも違っているかもしれません。
また、湯船に浸かっている時間は?お湯の温度は?これらは個々で多少なりとも違い、自分なりのルーティンがあるものです。
長年続けた自分の入り方と家族や介護施設で決められた入り方が違うと、それだけで億劫になってしまいます。
入浴そのものの意味が分からなくなる
あまり汗をかかない気候が良いころには特に、体が汚れていることが分からず、入浴は不要だと感じてしまうことがあります。
においや皮膚の感覚が鈍ってくることも加わり、体が汚れていることや夏のあせも、冬の皮膚の乾燥に気づきにくくなります。
また、入浴すると冷えた体を温めることができる、と、行為と成果の結び付けが難しくなり、入浴のメリットが分からなくなることから、拒否されている場合があります。
家族に迷惑をかけたくないと思っている
ご自身の身の回りの世話に不自由が出てきた場合、自分の配偶者や子供に入浴介助を依頼するのをためらっておられることがあります。
日頃からご家族が介護と仕事や育児を平行して行っている場合、高齢者様は申し訳ない気持ちや情けない気持ちを感じておられることがあります。
入浴に介助が必要であれば、濡れた浴室で体を洗ってもらうことや、洗い場から湯船への移動などに介助をするご家族が濡れてしまったり、ちょっとした一言が心に刺さってしまったりして、入浴を拒否してしまう方もいらっしゃいます。
入浴を楽しんでもらうために
このように、認知症になってしまった方は入浴そのものに対して負のイメージを持っていたり、入浴そのものの価値が分からなくなったりしていることがあります。
先ずは、高齢者様を焦らさない、入浴を強要しないことが何よりも大切です。
では、お元気だったころのように入浴を楽しんでもらうには、どのように対応すればよいのかを考えてみましょう。
楽しかったお風呂の記憶を辿ってみる
さまざまな理由で入浴を拒否されることがある認知症の高齢者様でも、若くてお元気なころから入浴が嫌いだった、という方は少ないことでしょう。
入浴に誘ってみて拒否された場合は、一旦、入浴に関するワードを遠ざけましょう。
気持ちが落ち着いたところで、過去にお風呂や温泉で気持ちよかった話などを持ち出し、「気持ちよさそうですね。行ってみたい温泉はどちらですか?」といった声掛けからお風呂に対する楽しい思い出やお風呂が気持ちよいという記憶を呼び出してみましょう。
また、お風呂に入ったらシャンプーが先なのか、体を洗うのが先なのか…など、聞いてみてもよいですね。
高齢者様のお風呂に対する拒否感が柔らかくほぐれたところで、入ってみませんか?と誘ってみましょう。
浴室の環境を整える
脱衣室まで誘うことができても、脱衣室や浴室が寒かったり、湯気で蒸し暑かったりすると、その不快さから入浴を拒否されることもあります。
ヒートショック予防のためにも、浴室暖房などで浴室を温め、居室との温度差をできるだけ少なくしておきましょう。
湯気が多すぎるとのぼせてしまうこともありますので、暑すぎる、または湯気が多すぎる場合は換気して、浴室内を快適な温度、湿度に調整しましょう。
また、好きな香りの入浴剤を入れておくのもよいですね。
足湯などから少しずつ勧めていく
このように浴室の環境が整っていたとしても、脱衣して入っていただくことが難しい、ということがあります。
温かく、入浴剤の良い香りがする中で、先ずは足だけ、手だけをたらいでお湯につけ、気持ちよさを体感してもらっても良いですね。
暫く手や足だけを温め、お湯の気持ちよさを感じていただいたところで、「全身浸かるともっと気持ち良いですよ」などと、本格的な入浴を誘ってみましょう。
入浴中はプライベートな時間を優先する
お風呂に入っていただければ、自分でできることは自分で行い、シャンプーなどの順番は、高齢者様の意思を尊重しましょう。
まずは高齢者様の威厳を保つことが大切です。
かけ湯やシャンプーなど、一つずつ工程を確認しながら、先ずはご自身でチャレンジしていただきます。
少し時間がかかったとしても、ご自分でできる範囲は行っていただくことで、リハビリにもなります。
ご自身でシャンプーなどをなさっている時はあまりそばに寄らず少し離れたところから見守り、自分ではどうしてもできない部分のみを介助します。
介助をする場合は、「背中は人に流してもらった方が気持ちよいですよ」などと声をかけてから、お手伝いに入りましょう。
湯船に浸かっている時間も近くでずっと見守り続けるのではなく、危険がない範囲で離れて見守り、一人で静かに温まれる時間を用意してあげましょう。
環境を変えてみる
ご自宅のお風呂で、湯船の高さが高いと、跨ぎにくいことや、家族の支えが必要になるといった理由で、入浴を拒否されていることがあります。
ですが、リフォームするとなると大変ですね。
そのような時には、環境を変えてみるのもおススメです。
例えば、デイサービスに行った先で入浴サービスを受けられるのであれば、温泉旅行に行くような気分でトライしてもよいですね。
環境が違うお風呂で、しかも高齢者様が入りやすい作りになっていれば、案外すんなりと、「入浴してみよう」という気持ちになってくれることがありますよ。
ちょっとしたきっかけで入浴に対するマイナスイメージを拭うことができれば、少しずつ、自宅での入浴にも前向きになっていただけるかもしれませんね。
認知症の入浴拒否のまとめ
認知症を患った高齢者様にとって、入浴は、私たちが想像するよりももっと手間がかかり、大変な作業なのかもしれません。
また、今このテレビ番組が楽しいから、お昼寝をしたい気分だから、と、気持ちが入浴に向いていないタイミングということもあるでしょう。
そのような時に、介護する側のタイミングで入浴のお声がけをしても、気持ちが乗らず拒否されていることも考えられますね。
介護する側が否定的な言葉をかけたり急かせたりしてしまうと、嫌な体験が積み重ねられてしまいます。
入浴は大切ですが、必須ではありません。
入浴を拒否された日は無理強いせず、温かいおしぼりで清拭するなどして、気持ちをゆっくりと保てるようにしてあげてくださいね。