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介護施設の食事提供方法3つを徹底解説!メリット・デメリットや課題解決の方法も紹介
2022/11/20

「介護施設ではどのように食事を提供すれば良い?」「人手やコストの負担を減らす方法は?」「入居者が満足する食事を実現するには?」と悩む施設運営者もいるでしょう。
介護施設での食事提供には、直営給食・委託給食・配食サービスの3つの方法があります。各サービスには明確な違いがあるため、特徴と向き・不向きの理解が必要です。
当記事では、3つの食事提供方法のメリット・デメリット、導入時に必要な対応、課題を改善する最適な運営方法まで解説します。
施設の規模や体制にあわせた最適な選択を見つけ、入居者の満足度と運営効率の両方を向上させるヒントをつかみましょう。
目次
介護施設における3つの食事提供方法

介護施設での食事提供には、運営体制や人員、コスト状況に応じて主に3つの方法が採用されています。各方法には特徴があり、施設の業務負担や利用者満足度が変わるため、施設にあわせた方法の選択が重要です。
代表的な3つの提供方法の概要を以下の表にまとめました。
| 提供方法 | 主な特徴 | 
| 直営給食 | ・施設内で自前のスタッフが調理
 ・献立調整や味付けの自由度が高い反面、人件費や管理負担が大きい  | 
| 委託給食 | ・外部の給食会社に調理を委託
 ・衛生・栄養管理を任せられるが、コストや柔軟性に制約がある  | 
| 配食サービス | ・外部業者が調理済みの食事を配送
 ・少人数施設でも導入しやすい一方で、温かみや個別対応に限界がある  | 
3つの提供方法のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
直営給食のメリット・デメリット
直営給食は、介護施設が自前の厨房で調理をします。利用者の嗜好や体調にあわせて献立を調整でき、温かい料理を提供できるのが魅力です。
直営給食のメリット・デメリットを、以下にまとめました。
メリット
- 献立や味付けの自由度が高く、個別対応がしやすい
 - 調理工程を自施設で管理でき、衛生面を把握しやすい
 - 利用者の反応を即座に反映でき、満足度を高められる
 
デメリット
- 厨房運営や人材育成にコストがかかる
 - 人手不足時は品質維持が難しくなる
 - 設備や衛生管理の負担が職員に集中する
 
施設全体で食事の質を重視したい場合には最適な方法ですが、直営給食の維持には安定した人員体制と運営コストの確保が重要です。
委託給食のメリット・デメリット
委託給食とは、施設が調理業務を外部の委託業者に任せる方法です。調理スタッフの確保や厨房設備の負担が軽減するため、施設側は本来のケアに注力できます。
委託給食のメリット・デメリットを、以下にまとめました。
メリット
- 調理・厨房管理を専門の委託業者に任せられ、施設側の負担が軽くなる
 - 衛生管理や栄養管理を委託業者の専門性で担保しやすい
 - 人件費・設備費の負担を抑え、比較的早く導入可能
 
デメリット
- メニュー変更や個別対応の自由度が限定される場合がある
 - 委託費用が継続的に発生し、柔軟なコスト調整がしにくい
 - 業者の変更や協力体制の構築に時間と労力を要する
 
委託業者との連携を構築し、施設の方針や利用者の嗜好を反映できる契約内容を設ければ、食事サービスの質と効率を両立させる基盤が整います。
配食サービスのメリット・デメリット
配食サービスは、外部業者が調理済みの食事を施設へ配送する方法です。厨房を持たない施設や少人数の入居者を抱える事業所で導入しやすく、運営コストを抑えながら衛生的な食事提供を実現できます。
配食サービスのメリット・デメリットを、以下にまとめました。
メリット
- 厨房設備や調理人員が不要で、導入が容易
 - 衛生・栄養基準を満たした安全な食事を安定供給できる
 - 小規模施設でもコストを抑えて運営可能
 
デメリット
- 提供時間が限定され、温かい状態での提供が難しい
 - 嚥下食など個別対応に制約がある
 - メニューの自由度が低く、味のマンネリ化が起こりやすい
 
施設の規模や人員体制にあわせ、委託業者との連携で品質維持を図ることが重要です。
介護施設で食事提供するのに必要な対応

介護施設で安全かつ適切に食事を提供するには、法律や衛生基準に基づいた事前準備が求められます。施設運営者は、行政への申請や人員配置、設備要件を整えたうえで、安心して食事を提供できる体制を構築しなければなりません。
介護施設で食事提供を始めるうえで欠かせない、以下3つの対応について解説します。
- 保健所への届出・許可申請
 - 食品衛生責任者を配置
 - 規定を満たすスペースの食堂を確保
 
各対応内容と注意点について、詳しく見ていきましょう。
保健所への届出・許可申請
施設が自ら調理をおこなうか、外部に委託するかによって手続きの種類と主体が異なります。
介護施設内で調理をおこなう直営給食では、管轄の保健所へ営業に関する届出が必要です。ただし、1回の提供食数が20食程度未満の施設は、届出をしなくても問題ありません。
※参考:HACCPに沿った衛生管理の制度化について(厚生労働省)
一方で、調理業務を外部の委託業者に任せる委託給食では、受託事業者が飲食店営業許可を保健所に申請し、許可を取得する必要があります。なお、介護施設側は申請や届出をする必要がありません。
介護施設での食事提供を開始する前に適切な形態を確認し、必要であれば速やかに申請を進めることが重要です。
食品衛生責任者を配置
介護施設で食事提供する際には、衛生管理体制の基盤として、必ず食品衛生責任者を配置しなければなりません。食品営業の許可や届出が必要な施設では、施設ごとに専任の責任者を定め、責任者が衛生管理の指揮をとる義務があります。
責任者を選任することで、調理・提供場面における衛生事故予防や記録管理の徹底が可能になり、施設運営の安全性を確保可能です。なお、食品衛生責任者の配置にあたっては、以下の条件のいずれかを満たしている必要があります。
- 調理師、栄養士、製菓衛生師など一定の資格を有している
 - 地方自治体が実施する「食品衛生責任者養成講習会」を修了している
 
食品衛生責任者を配置することで、施設での食事提供が法令準拠かつ安心の体制となるでしょう。
規定を満たすスペースの食堂を確保
施設で食事提供するには、定められた面積基準を満たした食堂などの共用スペース確保が不可欠です。たとえば、通所介護(デイサービス)や特別養護老人ホームでは、食堂と機能訓練室を合計して利用定員1人あたり3㎡以上の面積が必須とされています。
※参考:法令検索
上記のように設定された基準をクリアできない場合、施設内で快適かつ安全に食事提供を継続することは困難です。面積基準を確実に満たすためには、次のような準備も求められます。
- 食堂と機能訓練室を兼用する場合でも合計面積要件をクリア
 - 食堂には職員も同席できる余裕を持たせる設計
 - 利用者の動線を確保し、車椅子利用者が円滑に移動できること
 
面積基準を満たした食堂の用意は、入居者の食事時間を快適にするだけでなく、安全に食事を提供するための基本です。
介護施設が食事提供で抱える5つの課題

介護施設が食事提供で抱える以下の課題について解説します。
- 課題1:味付けの薄さとメニューのマンネリ化
 - 課題2:深刻化する厨房の人手不足とスタッフの高齢化
 - 課題3:食材費・光熱費の高騰によるコスト圧迫
 - 課題4:HACCP義務化で厳格化する衛生管理の負担
 - 課題5:きざみ食・ソフト食など複雑化する個別対応(食事形態)
 
食事提供を継続的に改善するためにも、上記の課題を把握しましょう。
課題1:味付けの薄さとメニューのマンネリ化
介護施設では、高齢者の味覚変化や減塩対応が求められるため、料理の味付けが薄くなりがちです。加齢による味覚低下により、従来の調味では満足感を得にくく、食欲低下につながることもあります。
栄養バランスを重視するあまり、同じような献立が続くことでメニューが単調になり、入居者の食の楽しみが失われるのは避けるべきです。施設によっては、調理スタッフの工夫や行事食で変化をつけています。しかし、味付けの工夫と献立の多様化を両立させるには、栄養管理と現場力の両面での改善が必要です。
課題2:深刻化する厨房の人手不足とスタッフの高齢化
介護施設では、人手不足とスタッフの高齢化により、利用者への食事提供時間の管理と法令遵守が困難な状況です。食品衛生法などの法律では、衛生的な調理環境を維持し、決められた時間内に安全な食事を提供することが求められています。
しかし、調理スタッフの採用が難しく、経験豊富な職員の高齢化も進んでいるのが現状です。体力の衰えや作業効率の低下により提供時間が遅れたり、衛生基準の維持が難しくなったりする事例もあります。
高齢者の生活リズムを守りつつ安定した提供体制を維持するには、人材育成や外部委託など柔軟な仕組みづくりが欠かせません。
課題3:食材費・光熱費の高騰によるコスト圧迫
介護施設では、食材費と光熱費の高騰が食事提供コストを大きく圧迫しています。とくに野菜・肉・魚といった生鮮食品の価格上昇が続いており、エネルギー料金や輸送費の値上がりも重なる状況です。
限られた介護報酬内で運営する施設では、食材の質を維持しながらコストを抑えることが難しくなっています。そのため、献立の見直しや仕入れルートの再検討を迫られている状況です。
さらに、光熱費の上昇により調理工程の効率化も課題となっています。結果として、施設は利用者に満足してもらえる食事と持続可能なコスト管理の両立が求められており、経営面でも工夫が欠かせません。
課題4:HACCP義務化で厳格化する衛生管理の負担
介護施設では、HACCP(ハサップ)の義務化によって衛生管理の業務負担が増加しています。HACCPは、食中毒や異物混入を防ぐ衛生管理手法であり、計画の策定・実行・記録といった3工程の継続的な実施が必要です。
上記の実行により、調理スタッフは日々の作業に加えて、温度管理や記録表の作成などの細かな事務作業に追われています。とくに小規模施設では、専任スタッフを置けず、現場の調理担当が兼務する例も多く見られる状況です。
衛生意識の向上という効果がある一方、人的・時間的コストの増加は避けられないため、実効性を維持する体制づくりが欠かせません。
課題5:きざみ食・ソフト食など複雑化する個別対応(食事形態)
介護施設では、入居者の嚥下機能や健康状態にあわせた多様な食事形態への対応が必要です。一般的な常食だけでなく、きざみ食やソフト食、ミキサー食などを個別に調理する必要があり、厨房業務が複雑化しています。
代表的な食事形態と対象者を、以下の表にまとめました。
| 食事形態 | 特徴 | 主な対象者 | 
| 常食 | 通常の固さの食事 | 咀嚼・嚥下に問題のない方 | 
| 軟菜食 | 食材を軟らかく加熱し食べやすく加工した食事 | 咀嚼力がやや低下した方 | 
| きざみ食 | 食材を細かく刻み飲み込みやすくした食事 | 咀嚼力が弱くなった方 | 
| ソフト食(ムース食) | 形は保ちながらもスプーンでつぶせる軟らかい食事 | 嚥下に不安がある方 | 
| ミキサー食 | ペースト状にして飲み込みを容易にした食事 | 嚥下障害がある方 | 
形態ごとに調理工程や盛り付け方、提供時間も異なるため、職員の負担は増加しています。また、誤嚥防止や栄養バランスの確保にも高度な判断が必要です。多様なニーズに応えるには、栄養士と調理スタッフの連携強化が欠かせません。
【課題別】介護施設の食事提供を改善する最適解

介護施設では、課題にあわせた食事提供方法の選択が、運営の効率化と入居者満足の両立に直結します。味付けや人手不足、コスト、衛生、個別対応といった多様な課題に対しては、以下のような方法が効果的です。
| 課題 | 提供方法 | 理由 | 
| 味付け・メニュー | 配食サービス | 味付けが均一で、サービスによっては季節ごとに変化のある献立を提供可能 | 
| 人手不足 | 委託給食
 配食サービス  | 
厨房スタッフを新たに確保せず運営可能 | 
| コスト圧迫 | 配食サービス | 光熱費や食材ロスを抑え、安定したコスト管理が可能 | 
| 衛生管理 | 配食サービス | HACCP基準に基づく衛生体制が整っており、リスクを最小化可能 | 
| 個別対応 | 直営給食
 委託給食  | 
利用者の嚥下・咀嚼機能に応じた柔軟な調理対応が可能 | 
施設の運営状況や人員体制により最適解は異なりますが、配食サービスは多くの課題を包括的に解消しやすい方法です。対して、個別対応力を重視する施設では、直営給食や委託給食の活用が適しています。
課題の優先度を明確にし、現場負担と利用者満足のバランスをとることが重要です。
介護施設の入居者に食事提供する際の注意点

介護施設の食事提供では、入居者の健康状態や嚥下機能にあわせて注意が必要です。本章では、介護施設の入居者に対して気をつけたい食事提供での注意点を解説します。
- 「きざみ食」が抱える誤嚥リスク
 - 糖尿病食・腎臓病食など治療食への対応
 
安全な食事提供のため、詳しく見ていきましょう。
「きざみ食」が抱える誤嚥リスク
きざみ食は咀嚼しやすいよう細かく刻んだ食事形態ですが、誤嚥リスクを高めることがあります。細かく刻むことで食材同士が口の中でまとまりにくくなるため、嚥下時に気道へ入りやすくなるのです。とくに高齢者や嚥下機能が低下している入居者では、むせ込みや肺炎の原因になるため気をつけなければなりません。
そのため、近年ではより安全性の高いソフト食やムース食への移行が推奨されています。ソフト食やムース食は、見た目や味を保ちながらも、飲み込みやすいよう加工されており、栄養維持と誤嚥防止の両立が可能です。介護施設では入居者の嚥下能力を評価し、適切な食事形態を選択する必要があります。
糖尿病食・腎臓病食など治療食への対応
糖尿病食や腎臓病食などの治療食への対応は、福祉施設の専門性と信頼性を高めるうえで欠かせません。治療食は、医師の指示をもとに、入居者一人ひとりの疾患や栄養状態にあわせて調整する必要があります。食事内容は疾患によって異なるため、以下のように目的と管理ポイントを整理しておくとわかりやすいでしょう。
| 治療食 | 主な目的 | 管理ポイント | 
| 糖尿病食 | 血糖値の安定化 | 炭水化物・脂質・たんぱく質の比率管理 | 
| 腎臓病食 | 腎機能の維持 | 塩分・たんぱく質・水分の制限 | 
福祉施設では管理栄養士と看護職員が連携し、医師の意向を反映した食事提供体制を整えることが重要です。
治療食をふまえた食事提供体制の整備は、入居者の健康維持と生活の質の両立を支える基盤といえます。
介護施設の食事提供を改善するなら配食サービスは有効な一手
介護施設での食事提供は、入居者の健康と満足度を左右する重要な業務です。直営給食・委託給食・配食サービスの3つの方法には、それぞれメリット・デメリットがあり、施設の規模や体制に応じて最適な選択が求められます。
安定した運営には、衛生管理や人材確保、コスト面などの課題を把握し、行政基準や栄養管理をふまえた体制整備が欠かせません。食事形態や治療食など個別対応にも柔軟に取り組むことで、利用者の生活の質をさらに高められるでしょう。
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