施設の食事がまずいと言われたら|原因と改善・外部委託

2026/07/27

介護施設や自宅で暮らす高齢者本人、そしてそのご家族から「施設の食事が美味しくない」「味が合わず残してしまう」という声が寄せられることは少なくありません。食事への不満は、調理の技術だけが理由ではありません。本人の健康状態、加齢に伴う体の変化、安全のための調理上の配慮など、いくつもの要因が重なって生まれます。

不満をそのままにしておくと、食欲の低下を招き、低栄養や体力の低下につながることがあります。「口に合わない」「食べたくない」という悩みを和らげるには、まず不満が生まれる仕組みを正しく知り、面会時や毎日の暮らしの中でできる工夫を重ねることが大切です。

本記事では、介護施設や在宅で食事が「まずい」と感じられる主な原因を整理し、食べる楽しみを取り戻すための工夫や、本人の状態に合わせた宅配食の活用方法をわかりやすく解説します。

目次

介護施設の食事が「まずい」「食べたくない」と感じられる主な原因

介護施設の食事は、一般の外食とは違い、利用者の健康維持や誤嚥事故の防止を最優先に設計されています。そのため、味付けや形状、提供方法に制約が生じやすく、それが食味への不満につながる場面があります。

原因①:健康管理に基づく塩分・カロリーの調整

介護施設の食事では、高血圧、心臓病、腎臓病、糖尿病などの慢性疾患が悪化しないよう、塩分や総エネルギー量が計算されています。一般の外食や家庭料理では、旨味を引き立てるために塩分や油脂が多く使われがちですが、管理された食事では塩分の量が抑えられます。

長年、濃い味付けや出汁の効いた料理に親しんできた高齢者にとって、塩分を抑えた料理は「薄味で物足りない」「コクが感じられない」という印象になりやすいです。調味料が控えめな分、素材の味は伝わりやすくなりますが、味の満足感は得にくくなります。

原因②:加齢に伴う味覚・嗅覚の低下と唾液の減少

人は加齢とともに、舌の表面で味を感じる「味蕾(みらい)」の数が減っていきます。特に塩味や甘味を感じ取る力が鈍りやすく、若い頃と同じ濃さでは「味がしない」と感じやすくなります。

さらに、加齢や薬の影響で唾液の分泌が減り、口の中が乾く「ドライマウス」が起きると、食べ物の味成分が味蕾に届きにくくなります。鼻の感覚の衰えから、食欲を刺激する香りを感じ取りにくくなることも、美味しさが伝わりにくくなる一因です。こうした体の変化が重なると、適切に調理された料理でも「美味しくない」と感じられることがあります。

原因③:誤嚥を防ぐための食形態と見た目の変化

高齢者の介護で特に気をつけたいのが、食べ物が気管に入る「誤嚥(ごえん)」や窒息です。介護施設では、噛む力や飲み込む力が低下した方に、食材を細かく刻んだ「きざみ食」、ミキサーでペースト状にした「ミキサー食」、固形にまとめた「ムース食」などが提供されます。

これらの食形態は安全のために有効ですが、調理の過程で食材の原形が失われるため、「何の料理か分からない」という見た目の不満につながることがあります。見た目は食欲と深く関わっているため、彩りや立体感が損なわれると、食べる意欲そのものが下がりやすくなります。噛み応えや喉越しといった食感の楽しさが減ることも、「まずい」と感じる一因です。

原因④:配膳までの時間経過による料理の温度低下

料理の味わいには、適した温度を保つことが欠かせません。温かい料理の温かさ、冷たい料理の冷たさは、それ自体が美味しさを支える要素です。集団給食の現場では衛生基準に沿った加熱や保管が行われますが、多くの入居者へ順番に配膳する間に、どうしても時間が経ってしまう場合があります。

温かい料理が冷めたり、冷たい料理がぬるくなったりすると、油脂が固まったり風味が飛んだりして、本来の美味しさが損なわれます。特に味噌汁やスープ、煮物は、温度が下がると出汁の香りが立ちにくく、「味が薄く冷めていて美味しくない」という評価につながりやすくなります。

原因⑤:献立のマンネリ化と個人の嗜好への対応の限界

多くの施設では、栄養バランスと旬の食材を取り入れたサイクル献立が運用されています。しかし集団給食という性質上、一人ひとりの細かい好き嫌いや食習慣にすべて合わせることは難しいのが実情です。

例えば、魚料理を好む方に肉料理が続く、甘めの味を好む方に辛めの味付けが出るなど、地域の食文化や個人の好みとのずれが生じます。長く入居している場合は、似た献立が続くことで飽きが生まれやすく、毎日の食事の楽しみが薄れてしまうこともあります。

食事を残す・食べないことで生じる身体的リスク

提供される食事を「口に合わない」と拒んだり、残す量が増えたりする状態を放置すると、高齢者の身体機能や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。

低栄養状態と体重の減少

食事の量が減って最も心配されるのが「低栄養(栄養失調)」です。十分なエネルギーと栄養素が確保できない状態が続くと、体重が減り、免疫機能の低下や感染症リスクの上昇を招きます。

厚生労働省の「令和5年国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の低栄養傾向の者(BMI20以下)の割合は、男性で12.2%、女性で22.4%でした。年齢階級別では、男女とも85歳以上で最も高くなっています。「健康日本21(第三次)」では、65歳以上の低栄養傾向の割合を13%以下に抑えることが目標に掲げられており、高齢期の栄養維持は重要な課題です。

引用元:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」

区分 男性(BMI20以下) 女性(BMI20以下)
65歳以上(全体) 12.2% 22.4%
85歳以上 男女ともに割合が最も高い(加齢とともに低栄養リスクが増大)
健康日本21(第三次)目標値 13.0%以下(65歳以上)

筋力の低下とフレイルの進行

食事量が減り、手軽に食べられる炭水化物に偏った食事が続くと、筋肉を保つために必要な「たんぱく質」が不足します。骨格筋量が減るサルコペニアや、心身の活力が落ちるフレイルが進むと、転倒や骨折のリスクが高まり、寝たきりにつながることもあります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、高齢者のフレイル予防の観点から、65歳以上のたんぱく質の目標量の下限が15%エネルギーに設定されています。この下限は2020年版で13%から引き上げられ、最新の2025年版でも維持されています。毎日の食事で十分なたんぱく質を続けて摂ることが、高齢者の生活機能を保つうえで大切です。

引用元:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書

食欲不振の悪循環と生活の質(QOL)の低下

食事を拒んで栄養が不足すると、消化器官の働きが落ち、脳の空腹・満腹中枢の伝達にも乱れが生じます。その結果、お腹が空かずにさらに食べなくなる「食欲不振の悪循環」に陥ります。

高齢者にとって食事は、栄養補給の手段にとどまらず、一日のなかで大きな楽しみであり、人との交流を生む大切な時間です。食べる楽しみが失われると、活力や意欲が下がり、認知機能の低下や気持ちの閉じこもりを招くこともあります。生活の質を高く保つためにも、「美味しく食べられる食事環境」を整えることは重要です。

高齢者に求められる食事の条件とユニバーサルデザインフード(UDF)

高齢者に安全で満足度の高い食事を届けるには、本人の噛む力・飲み込む力に合った「食形態」を選ぶことが欠かせません。噛む力や飲み込む力が低下した方向けには、規格化された食品基準があります。

食事形態の種類と特徴(常食・きざみ食・やわらか食・ミキサー食)

介護の現場や家庭で提供される食事形態は、身体機能の段階に応じて分けられています。それぞれの特徴を正しく理解し、配慮しすぎて噛む刺激を奪ったり、逆に硬すぎて誤嚥を招いたりしないよう気をつけることが大切です。

  • 常食(普通食):特別な加工をせず、一般の家庭と同じ硬さや大きさで調理した食事。
  • きざみ食:一口大に噛み切ることが難しい方向けに、食材を数ミリ〜1センチ程度に刻んだ食事。
  • やわらか食(ソフト食):見た目は原形を保ちながら、箸や舌で簡単に潰せる硬さに調理した食事。
  • ミキサー食・ペースト食:食材をミキサーにかけて液状にし、飲み込みやすく仕上げた食事。

日本介護食品協議会が定める「UDF区分」

高齢者向け食品を選ぶ客観的な目安として、日本介護食品協議会が定めた「ユニバーサルデザインフード(UDF)」の区分規格が広く使われています。「かたさ」や「粘度」に応じて4つの区分に分かれ、パッケージのロゴマークと区分表を確認することで、本人の状態に合った食品を選べます。

引用元:日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフードとは」

UDF区分 かむ力の目安 飲み込む力の目安 形状・調理例の目安
区分1:容易にかめる 硬いものや大きいものはやや食べづらい 普通に飲み込める 普通のごはん〜やわらかごはん、厚焼き玉子、焼き魚
区分2:歯ぐきでつぶせる 硬いものや大きいものは食べづらい ものによっては飲み込みづらいことがある やわらかごはん〜全がゆ、だし巻き卵、煮魚、煮込みハンバーグ
区分3:舌でつぶせる 細かくてやわらかければ食べられる 水やお茶が飲み込みづらいことがある 全がゆ、スクランブルエッグ、ほぐし煮、はんぺん煮
区分4:かまなくてよい 固形物は小さくても食べづらい 水やお茶が飲み込みづらい ペーストがゆ、やわらかい茶碗蒸し、白身魚のうらごし、ムース

おいしく食べてもらうための具体策とご家庭・面会での工夫

食事への不満を和らげ、少しでも食欲を回復してもらうために、調理の工夫や環境の調整など、ご家庭や面会時に実践できる方法を紹介します。

味付けと香りの工夫(出汁・香味野菜・とろみの活用)

減塩をしながら満足感を高めるには、「出汁(だし)」の使い方が効果的です。鰹節、昆布、煮干し、椎茸などの旨味成分を強く抽出した出汁を使うと、塩分が少なくても深い味わいを感じやすくなります。

また、柚子、すだち、生姜、シソ、ネギなどの香味野菜や薬味を添えると、香りの刺激で嗅覚から食欲を引き出せます。ポン酢やレモン汁の適度な酸味は、唾液の分泌を促して口の乾燥を防ぎ、味の広がりを助けます。パサつきやすい肉や魚には、あんかけや片栗粉で「とろみ」を付けると、まとまりが良くなり滑らかな喉越しになります。

盛り付けと彩りの工夫(見た目で食欲を引き出す)

料理の見た目は、食欲に直接影響します。彩りの基本として、「赤・黄・緑・黒・白」の5色を意識して食材を配置すると、料理全体が鮮やかになります。例えば、緑の葉物野菜に赤いニンジンや黄色の卵を添えるだけで、彩りが増します。

食器の選び方も工夫の一つです。白い器に白いおかゆを盛ると境界が分かりにくくなるため、コントラストのはっきりした和食器や、手が震えても食べやすい深めの器を使うと、自分で食べやすくなります。大皿に盛るのではなく、小鉢に少しずつ取り分けて品数を多く見せる工夫も、視覚的な満足感を高めます。

食形態の見直し(きざみ食からやわらか食・ムース食へ)

刻んだだけの「きざみ食」は、食材が口の中で散らばりやすく、誤嚥を招くおそれがあるほか、見た目が崩れて「美味しくなさそう」と感じられることがあります。「きざみ食が美味しくない」と言われた場合は、見た目の原形を保ちながら舌や歯ぐきで潰せる「やわらか食(ソフト食)」や「ムース食」への変更を検討するとよいでしょう。

食材を柔らかく煮込んだうえで形を整えたやわらか食は、口の中で滑らかに崩れるため、見た目の楽しさと食べやすさを両立できます。食形態を選び直すことで、噛む負担が軽くなり、残す量の減少につながります。

面会時の差し入れ・持ち込みのルールと注意点

施設に入居中のご家族へ料理やお菓子を持ち込む際は、施設の衛生・安全ルールを必ず守る必要があります。多くの施設では、持ち込みに事前の申告が求められます。

常温で傷みやすい生もの(刺身、生クリーム、水分の多い和菓子など)は避け、誤嚥のおそれがある固い煎餅や粘り気の強い餅、ナッツ類は控えるのが基本です。一口サイズの柔らかいゼリーやプリン、バナナ、柔らかく蒸したカステラなどが、比較的安全な差し入れの候補になります。持ち込んだ食品は面会時間内に食べ切れる量にとどめ、残った場合は持ち帰りましょう。

ケアマネジャーや管理栄養士など専門職への相談

食事の悩みや不満を抱え込まず、施設の担当スタッフ、ケアマネジャー、在宅介護を支える管理栄養士などの専門職へ早めに相談することが大切です。

「味が薄いと言っている」「量が多すぎて残す」「特定の食材を嫌がる」といった具体的な内容を伝えると、調理方法の変更、調味料の別添え、栄養補給食品の追加、主食の量の調整など、柔軟な対応を提案してもらえることが多くあります。言語聴覚士(ST)による嚥下機能の評価を受け、今の食形態が本人に合っているかを見直すこともできます。

家庭や施設で活用できる「宅配食・冷凍制限食」という選択肢

「手作りの介護食を用意する負担が大きい」「施設や在宅での味付けに変化をつけたい」という悩みには、管理栄養士が監修した高齢者向けの宅配食・冷凍制限食を取り入れる方法があります。

本人の状態に合わせて選べる2つのコース

宅配食サービスでは、本人の噛む力や味の好みに合わせて、複数のコースが用意されています。状態に応じて選べます。

  • やわらか食(介護食コース):噛む力や飲み込む力に不安がある方向け。食材の原形や彩りを残しながら、歯ぐきや舌で潰せる柔らかさに仕上げています。
  • 普通食(バランス栄養コース):味の満足感や品数の豊富さを重視する方向け。カロリーや塩分に配慮しながら、出汁や調味料の工夫で満足感のある味付けにしています。

いずれのコースも冷凍で定期配送されるため、電子レンジで温めるだけで食事が整います。毎日の調理時間を減らしながら、栄養バランスの取れた食事を続けやすくなります。

宅配食を選ぶ際の比較ポイント

多くの宅配食サービスから本人に合うものを選ぶには、比較の基準を決めておくと迷いにくくなります。

比較基準 チェックすべきポイント 選ぶときのアドバイス
食形態の適合性 本人の噛む力・飲み込む力に合った硬さか UDF区分や商品説明で硬さを確認する
栄養価の管理体制 管理栄養士による計算・監修があるか たんぱく質・塩分・エネルギー量が明記されたものを選ぶ
続けやすさと利便性 配送ペースや冷凍庫の保管スペースに無理がないか 容器のサイズを確認し、必要な食数を注文する
味付けとメニュー数 飽きずに続けられる品数・メニュー変更があるか 試食や少量セットから始めて好みを確認する

よくある質問(FAQ)

Q1. 介護施設の食事のカロリーや塩分の目安はどのくらいですか?

介護施設で提供される標準的な食事は、1日あたり1,400〜1,600kcal前後を目安に設定されることが一般的です。塩分は、厚生労働省の目標に沿って1日6.0〜7.5g未満(1食あたり2.0〜2.5g程度)を目安に調理されます。本人の体格や性別、活動量、高血圧や腎疾患などの既往に応じて、カロリーや塩分は個別に調整されます。

Q2. 介護施設に入居中でも個人の宅配食を利用できますか?

施設の方針や管理体制によって異なります。衛生管理や食中毒の予防、施設給食の契約の関係から、外部の宅配食の持ち込みを禁止している施設がある一方、本人の食欲不振の解消や制限食への対応として、温め・配膳をサポートしてくれる施設もあります。利用を希望する場合は、事前に施設の相談員やケアマネジャーへ相談しましょう。

Q3. 介護施設の食事代(費用の相場)はどのくらいですか?

介護施設の食事代の相場は、朝・昼・夕の3食とおやつを含めて、1か月(30日換算)で約4万〜6万円程度です。1食あたりの目安は、朝食が300〜400円、昼食・夕食がそれぞれ500〜700円程度のケースが多く見られます。居住形態や所得に応じて、食費・居住費の負担を軽くする「補足給付」が適用される場合もあります。

Q4. 認知症で食事を拒否する場合はどのように対応すべきですか?

認知症による食事拒否の背景には、「目の前のものを食べ物と認識できない」「お腹が空いていない」「食器やスプーンの使い方が分からない」「口の中や歯が痛い」など、さまざまな要因があります。無理に食べさせようとせず、声をかけて一緒に食卓に着く、料理の匂いを嗅いでもらう、手で持って食べられるおにぎりやサンドイッチに変えるといった工夫が有効です。体調不良や虫歯の有無もあわせて確認しましょう。

まとめ:本人の状態に合った食事で健やかな毎日を

介護施設の食事が「まずい」と感じられる背景には、塩分やカロリーの管理、誤嚥を防ぐための食形態の変更、加齢に伴う体の変化など、さまざまな要因があります。不満をそのままにすると、低栄養やフレイルの進行を招き、健康や生活の質を下げてしまうおそれがあります。

出汁や香りの活用、盛り付けの工夫といった家庭でできる工夫や、専門職への相談を通じて環境を整えることが、改善の第一歩です。あわせて、手軽に栄養バランスの取れた美味しい食事を用意する方法として、管理栄養士が監修する宅配食を取り入れることも、有効な選択肢になります。

本人の好みやお口の状態に合った食事を選び、毎日の「食べる楽しみ」と健やかな暮らしを守りましょう。

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※本記事は一般的な健康・栄養情報の提供を目的としており、特定の医療行為や効果を保証するものではありません。個別の医療上の判断や食事療法については、主治医または管理栄養士などの専門職にご相談ください。

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