訪問看護サービスを提供する、訪問看護ステーションの人員基準について

2023/12/27

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病院や介護施設などでは、入院患者又は入所定員数に対して、それぞれ必要な職種や人数が定められています。

これは適正な医療や介護を提供し、サービスの質を保つために設けられています。

訪問看護サービスにおいても介護保険法で人員基準が定められていますが、病院や診療所が行う訪問看護サービスと単独の事業所として行う場合とでは、人員基準が異なります。

今回は単独の事業所として訪問看護サービスを提供する、訪問看護ステーションの人員基準について確認します。

訪問看護サービスの人員基準とは

訪問看護サービスの人員基準は国や都道府県、又は市が定める「訪問看護事業所で確保するべき従業員の資格や員数」についての規定です。

定められた人員基準に違反して運営を続けた場合には、行政の指導や処分が行われることがあります。

訪問看護事業所としての指定が取り消される事例もあるため、注意が必要です。

訪問看護ステーションに必要な職種と人数

訪問看護サービスの提供には、以下の有資格者の配置が必要です。

管理者

管理者は保健師または看護師であり、適切なサービス提供を行うために必要な知識や技能があることとされていますが、やむを得ない理由がある場合には、保健師・看護師以外も可能とされています。

専従かつ常勤で1人の配置が必要ですが、管理者の業務に支障がない場合には、訪問看護ステーションの他の職務や、同じ敷地内にある他の事業所や施設などの職務に就くことができます。

看護職員

「看護職員」は保健師、看護師、准看護師で、サービスの提供にあたる保健師、看護師又は准看護師を、常勤換算で2.5名以上配置していることが必要です。

さらにこの保健師、看護師又は准看護師のうち1名は常勤でなければなりません。

リハビリ専門職

「リハビリ専門職」は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などで、訪問看護ステーションの実情に応じた適当数を配置しますが、必須ではないので配置しないことも可能です。

リハビリ専門職

訪問看護ステーションの常勤換算とは

人員基準の中に「常勤換算」という言葉があります。厚生労働省では常勤について「指定訪問看護事業者の当該指定にかかる訪問看護事業を行う事業所(以下「指定訪問看護ステーション」という。)における勤務時間が、当該指定訪問看護ステーションにおいて定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数(週当たり32時間を下回る場合には32時間を基本とする。)に達していることをいうものである。」と定めています。

訪問看護ステーションごとに定められた、常勤職員の週当たりの勤務時間数を基準に、非常勤職員の勤務時間を常勤職員の人数に置き換えることを常勤換算といいます。

訪問看護ステーションの常勤換算の計算方法

アルバイトやパートタイマーなど非常勤職員の看護職員を、常勤の何人分であるかを算出します。

1週間の所定労働時間をもとに算出しますが、所定労働時間は各訪問看護ステーションの就業規則に定められている時間です。

例えば常勤職員の所定労働時間が週に40時間であった場合、1日4時間で週5日のパート職員は4時間×5日=20時間/週なので、常勤職員の0.5人分と数えます。常勤換算は次の式で算出できます。

「看護職員の勤務延実数÷常勤看護職員の所定勤務時間数=常勤換算数」

ただし、育児・介護休業法において短時間勤務制度を使用している場合や、男女雇用機会均等法による母性健康管理措置として勤務時間の短縮などを利用している看護職員については、30時間以上の勤務で常勤として換算することが可能とされています。

人員基準に違反した場合に起こること

さまざまな事情によって、看護職員が突然退職せざるを得ない状況が起こることがあります。

代替職員の採用が順調にいかず、人員基準が満たせない可能性があると分かった時点で、指定権者の自治体(都道府県又は市)に報告しましょう。

そのときの事業所の状況や各自治体によって対応は異なることがあるため、指定権者の指示に従いましょう。

再び人員基準を満たせた場合の対応についてもあらかじめ確認しておき、採用活動を継続しましょう。

人員基準違反による行政処分

必要な報告や連絡をしないまま訪問看護サービスを継続した場合には、行政指導や行政処分が行われることがあります。

人員基準違反による行政処分

勧告、命令

法令で定められた適正な運営をするように促す注意喚起のことで、「勧告」は行政指導のひとつであり強制力はなく、命令は強制力があります。

勧告や命令に従わない場合には、訪問看護ステーションの所在する自治体のホームページなどで、事業所の名前や場所、指導や処分の内容等が掲載されることがあります。

効力の停止、指定取り消し

効力の停止には「全部の停止」と「一部の停止」があります。

一部の停止では、新規利用者の受け入れを禁止されるなど、事業の一部が一定期間禁止されることで、停止の内容によっては訪問看護サービスの提供を継続できる場合もあり、停止期間が終了すれば事業を再開できます。

全部の停止の場合は事業の全てを停止する必要があるため、利用者を他の訪問看護事業所に変更しなくてはなりません。

停止期間が終了して事業を再開したときに、全ての利用者が戻ってくるとは限らないため、廃業につながる可能性もあります。

指定取り消しの処分を受けると、介護給付を受けて訪問看護サービスを提供することができなくなるため、事業の継続は不可能となります。

指定取り消しの処分を受けると、基本的に5年間は再度指定を受けることはできないとされており、最も重い処分です。

実際に人員基準違反によって指定を取り消されている訪問看護ステーションもあるので、看護職員の確保は死活問題といえます。

訪問看護ステーションにおける人員基準の例外

中山間地域や離島などにおいてはサービス利用者の確保が難しく、看護職員の離職によって訪問看護ステーションの休止や廃止があることから、以前から訪問看護ステーションの人員基準については見直しが求められています。

現行の介護保険制度においては、サービスの確保が著しく困難な離島等の地域では、指定権者が必要と認める場合に限り、通常の人員基準を満たさない場合であっても訪問看護サービスを提供できることとなっています。

ただし、あくまでも地域的な事情による基準緩和であり、個々の事業所の事情による人員不足に対応するものではありません。

訪問看護ステーションにおける人員基準の例外

介護保険法を確認

前記の人員基準の例外については、介護保険法第四十二条に示されています。

第四十二条 市町村は、次に掲げる場合には、居宅要介護被保険者に対し、特例居宅介護サービス費を支給する。

二 居宅要介護被保険者が、指定居宅サービス以外の居宅サービス又はこれに相当するサービス(指定居宅サービスの事業に係る第七十四条第一項の都道府県の条例で定める基準及び同項の都道府県の条例で定める員数並びに同条第二項に規定する指定居宅サービスの事業の設備及び運営に関する基準のうち、都道府県の条例で定めるものを満たすと認められる事業を行う事業所により行われるものに限る。

次号及び次項において「基準該当サービス」という。)を受けた場合において、必要があると認めるとき。

三 指定居宅サービス及び基準該当居宅サービスの確保が著しくい困難である離島その他の地域であって厚生労働大臣が定める基準に該当するものに住所を有する居宅要介護被保険者が、指定居宅サービス及び基準該当居宅サービス以外の居宅サービス又はこれに相当するサービスを受けた場合において、必要があると認めるとき。

訪問看護ステーションの人員基準について

訪問看護ステーションが指定を受けるためには人員基準を満たすことが必要であり、健全に事業を継続するためには、常に人員を確保していることが必要です。

さらに、利用者へのサービスの質を高めたり、訪問看護師が働きやすい環境を整えるためには、人員基準以上の人員確保が必要となることもあります。

訪問看護ステーションの経営者や管理者は人員基準について把握し、該当する法令や条例についても目を通しておくようにしましょう。