訪問介護事業所を開業するには?立ち上げの流れについて解説

2023/11/15

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超高齢社会の日本において、訪問介護のサービスはなくてはならないものです。

新規で訪問介護事業所を立ち上げるためにはさまざまな基準を満たし、自治体の指定を受けることが必要であり、その準備は多岐にわたります。

訪問介護事業所を開業するまでに必要な準備の流れをみてみましょう。

訪問介護サービスとは

訪問介護のサービスには大きく分けて、身体介護・生活援助・通院時の乗降車介助があります。

身体介護

身体介護は利用者の身体に直接触れて行うサービスと、利用者の自立支援と重度化を防ぐために利用者と一緒に行うサービス、専門の知識や技術を持って行う、利用者の日常生活上必要なサービスのことです。

具体的には食事介助、入浴介助、排泄介助、更衣介助などがあります。

身体介護

生活援助

利用者本人や家族が実施するのが困難な家事などを代わりに行うことです。具体的には掃除や洗濯、買い物や調理などがあります。

通院時の乗車・降車介助

要介護者の通院を援助することです。通院の際の乗車と降車、送迎の他、移動の介助や受診の手続きなども含まれますが、費用は自己負担であり、要支援1・2の場合は利用できません。

通院時の乗車・降車介助

訪問介護でできないこと

訪問介護でできるサービスは基本的に、利用者本人に対して必要であり、日常生活を送るうえで必要な行為だけです。また医療行為にあたるものは行うことができません。

訪問介護事業所の開業を決めたら

訪問介護事業所を開業する際に都道府県または市町村に指定申請をしますが、指定申請の方法や要件は各自治体によって異なることがあります。

また法人登記が必要ですが、法人にも種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

さらに資金調達においても、開業後数か月分の経費を見込んでおく必要があるため、事業規模を具体的に想定する必要があります。

このように、実際に開業に向けて動き出すまでに、検討しておきたいこともあります。

コンセプト

訪問介護事業に限りませんが、事業を始めようとするときは事業のコンセプトを明確にしておくことが大切です。

「どこで行うか」「どのような目的があるのか」「どのような人を対象とするか」「どのようなサービスを実施するのか」など、「どのような訪問介護事業所にしたいのか」を明確にしておきましょう。

情報収集

開業後も健全な経営を継続するためには、利用者の継続的な確保が必要です。

開業予定地域の要介護高齢者の需要や、競合する事業所の数などの情報を集めた上で、具体的な開業予定地を検討しましょう。

また利用者の確保と同時に、職員が確保できることも重要です。

管轄のハローワークや求人サイトなどを参考に、求職者の状況や既存の事業所の給与や待遇なども把握しておくとよいでしょう。

事業計画書の作成

事業計画書は金融機関などから融資を受けたり、指定申請にも使用します。

それぞれ目的に応じて書式が指定されることもありますが、事業計画書を作成することで資金調達や返済計画、収支の見込み、事業のコンセプトや提供したいサービスの強みなどを具体的に確認することができます。

訪問看護事業所を開業する資金調達

訪問介護事業所を開業するために準備しなければならない資金は開業時に必要な開業資金と、開業後に必要となる運転資金に分けて考えることができます。

資金調達

開業資金

開業資金は開業するためにかかるお金で、あくまでも一時的に必要なものです。

法人の設立費用や物件の購入・賃貸費、車両や事務所の備品、事務用品、通信機器やそれに伴う工事など、実際に仕事が始められるようにするために必要な費用です。

法人の種類や物件の場所など、何を選ぶかによって開業資金は大きく変動する可能性があります。

運転資金

運転資金は事業開始後、業務を継続するために必要な経費のことです。順調に開業できたとしても、介護報酬の受け取りには約2か月を要するため、その間の経費については開業時に準備しておく必要があります。

具体的な運転資金には、人件費、家賃、光熱費、通信費、宣伝費など継続して発生する費用です。

訪問看護事業所の開業準備

開業までのスケジュールを順調に進めていくためには、さまざまな準備を並行して進めなければならないこともあります。

ひとつひとつ確認しながら進めていきましょう。特に指定申請には運営や設備、人員などについて指定基準を満たす必要があります。

事前に厚生労働省や開業予定の自治体のホームページなどで指定基準を確認しておきましょう。

法人設立

訪問介護事業所の開業には法人格が必要です。

法人格とは法的行為の主体としての「人格」(法的人格)で、法律によって権利能力が認められ、目的の範囲で行為を認められたものです。

法人格には、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、一般社団法人、一般財団法人、特定非営利活動法人(NPO)、社会福祉法人など、さまざまな種類があり、それぞれに取得のしやすさや取得にかかる費用、税制や利益分配などの仕組みが異なります。

物件契約

訪問介護事業所の事務所となる物件を用意します。周辺環境や立地条件も大切ですが、指定申請のためには設備基準を満たしていることが必要です。

事務室や相談室の他、感染症予防のための手洗い設備やトイレなどについても基準が定められており、それらを満たす必要があります。

詳細は各自治体によっても異なることがあるため、不明点があれば建築平面図などを用意し、自治体の担当窓口に相談してみましょう。

備品の調達

日常の業務に必要な備品と感染予防を含めた衛生に関する設備や備品が必要です。

具体的には、事務室と相談室に必要数の机といす、電話やFAX、パソコンなど通信機器と必要な通信設備、プリンター、鍵付きの金庫・書類保管庫、書棚、手指洗浄用の洗面台と専用の石けん、消毒液、ペーパータオルなどがあります。

職員の採用

訪問介護には人員の基準が明確に定められており、必要な人員を確保する必要があります。

管理者と訪問介護員、サービス提供責任者の配置が必要であり、それぞれに資格要件や配置人数が定められています。

詳細は各自治体によって異なることがあるため、開業予定の自治体のホームページや担当窓口などで確認しましょう。

訪問看護事業所の指定申請

開業予定日に合わせて指定申請を行います。

書類作成やその他の添付書類を準備し、基本的には都道府県の担当窓口に申請しますが、自治体によっては市町村に権限が委譲されている地域もあるので確認が必要です。

スケジュール確認

自治体によって随時受付をしているとは限らず、期間が設定されている場合もあります。

また、事前に説明会や研修会などの参加が必要なこともあるため、それらを加味したうえで申請を行います。

また書類の不備などにより審査に支障があった場合は、開業予定日に指定が間に合わない可能性もあります。

開業予定日が遅れることがないように、余裕を持ったスケジュールを立てるようにしましょう。

指定基準の確認

運営基準、設備基準、人員基準は介護保険法に基づき厚生労働省令で定められていますが、詳細は自治体によっても異なることがあります。

それぞれ相違が無いか十分に確認の上で申請に臨みましょう。

申請書類作成

作成しなくてはならない書類や添付書類については、自治体のホームページなどで確認することができます。

また必要書類の書式や見本などが掲載されていることがあるので参考にしましょう。相談窓口が設けられている場合もあります。

指定申請の注意点

指定申請にあたって、物件や職員については指定基準を満たした状態であることが必要です。さらに指定基準は自治体で異なる場合があるため、確認が必要です。

自治体によっては受付期間が決められていたり、事前に研修会などに参加が必要なこともあるため、それらの期間を見込んでおく必要があります。

書類などに不備があると開業予定日に間に合わない可能性もあるため、余裕を持ったスケジュールを立てるようにしましょう。

開業後は6年ごとに指定の更新が必要です。

訪問介護事業所を立ち上げる流れについて

訪問介護事業を開業するにあたり、事前に準備しなくてはならないことは多岐にわたります。

順調に開業予定日を迎えるために、事業計画書を作成して事業の見通しや資金について明確にし、指定基準などは開業予定地域の自治体のホームページなどで十分に確認をしましょう。