訪問介護事業所を開業するには?必要な準備と開業までの流れについて

2023/09/08

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訪問介護事業所を開業しようとするとき、まず何から始めればよいのでしょうか?

開業までの時間や費用のムダを無くし、その後の経営を安定させるためにも理解しておかなければならないことがあります。

訪問看護事業所を開業するために知っておくべきことと、開業までの流れについて考えてみましょう。

訪問介護とはどんなサービス?

訪問介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した生活を送ることができるように、訪問介護員(ホームヘルパー)などが自宅を訪問して、身体介護や生活援助をするものです。「ホームヘルプ」とも呼ばれます。

訪問介護のサービス内容

訪問介護では要介護1~5の方を対象に、居宅で日常生活の介助を行います。

具体的には食事や排泄、入浴など身体に触れて行う身体介護、掃除や洗濯、買い物、調理などの家事を行う生活援助の他、通院など必要な外出にかかわる介助などを行うこともあります。

要支援1・2の方には介護予防訪問介護として、要介護状態になることを予防したり、現在の状態よりも悪化しないようにすることを目的とした支援を行います。

訪問介護は利用者本人を対象としたサービスであり、生活を送るうえで必要な行為を援助するものであるため、日常的に必要ではない行為や利用者本人以外の人に対する援助、医療行為にあたるものは介護保険サービスとして提供しません。

訪問介護のサービス内容

訪問介護事業所の収入源

介護事業所の収入は基本的に9割の介護給付と1割の利用者の自己負担で成り立っており、負担割合は利用者の収入によって変わることがあります。

身体介護、生活援助のそれぞれに基本料金が単位で示されており、基本的に1単位は10円で計算されますが、地域によって単価は異なることがあります。

介護サービスの内容が一定の要件を満たしている場合には、基本単位に加算が上乗せされることがあります。

訪問介護事業所の指定基準について

指定基準とは、介護保険法に基づいて指定訪問介護事業者が守るべきルールで、厚生労働省令の「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」として示されています。

人員基準、設備基準、運営基準の3つに分けられており、これらの基準は開設後も満たしていなければなりません。

また厚生労働省令に基づき、各自治体では地域の特性に応じて条例などで独自の基準を設けていることもあるため、事前に訪問介護事業所を開設する地域の自治体に確認しておく必要があります。

人員基準

「管理者」「サービス提供責任者」「訪問介護員」それぞれの人員基準を満たすことが必要です。

まず「管理者」は訪問介護事業所の責任者で、管理の職務に従事する者です。

常勤で1名の配置が必要であり、管理者として特別な資格要件はありませんが、必要な資格要件を満たしている場合には、サービス提供責任者との兼務が可能です。

「サービス提供責任者」は常勤専従で1人以上の配置が必要です。

介護福祉士、ヘルパー1級、介護職員基礎研修課程修了者、実務者研修修了者のいずれかの資格が必要であり、利用者数が40名を超えると増員が必要となります。

管理者または訪問介護員との兼務が可能です。

「訪問介護員」は、介護福祉士、実務者研修修了者、初任者研修修了者、ヘルパー1または2級、基礎研修修了者、生活援助従事者研修修了者、看護師、准看護師などの資格が必要で、勤務形態に制約はありませんが常勤換算で2.5人以上が必要です。

これらの人員基準は最低限のものであり、利用者の人数やその他の緩和要件などによっても異なります。

人員基準

設備基準

「建物」「事務スペース」「相談スペース」「感染対策」「備品」などについて基準が設けられています。

「建物」の形態は戸建てでもアパートなどでも可能ですが、基本的には車いすの使用に不便がないことが必要であり、エレベーターなどの設備や駐車場などの検討も必要です。

「事務スペース」は10畳前後、「相談スペース」は3畳程度のイメージといわれますが、必要な備品が置ける広さと間取りなどにも配慮が必要です。

「感染対策」では、トイレ以外に職員が手指を消毒するための洗面台が必要であり、感染対策に必要な石けんや消毒液などの備品と、それらを設置するためのスペースが必要です。

「備品」は業務に必要なさまざまな備品が含まれます。詳細については実際の建物や立地などによっても異なるため、自治体に確認してみましょう。

運営基準

運営基準は訪問介護サービスの提供にあたり、必要な書類の整備や利用者や家族に説明しなければならない内容、運営規定や運営方針、責務など、多岐にわたって省令で定められています。

開業時だけでなく、開業後も継続して満たすべきものでもあるため、実際に省令を読み文言を確認してみましょう。

訪問介護事業所を開業するまでの流れ

指定基準を把握したうえで、訪問介護事業所を開業する都道府県のホームページを確認することをおすすめします。

省令で定められた基準に加えて、各都道府県の条例で定められた基準があるほか、指定申請についての手引きなどが示されています。

申請窓口や申請の方法なども自治体ごとに異なることがあり、東京都では申請前に管理者が研修を受けることが必要なので、初めに自治体に確認しておくとよいでしょう。

事前相談ができることもあるので、利用すると不明点などの解決に役立ちます。

法人格の取得

介護保険の事業所は、個人事業主として開業することはできないので、法人格を取得しなければなりません。

法人には「営利法人」と「非営利法人」があります。

営利法人には株式会社と合同会社があり、非営利法人には一般社団法人、社会福祉法人、NPO法人などがあります。

設立にあたっては、非営利法人は税制面で優遇される可能性がありますが、審査基準や書類の準備などが比較的厳しいといわれます。

それぞれに手続きが異なるため、専門家に相談してみるのもよいかもしれません。

場所・人員・備品の確保

指定基準を踏まえて、事業所を開設する場所と人員を確保し備品を整えます。

事業所は建物の立地や間取りなどによって必要な備品など変わってくる可能性もありますし、申請時には人員も満たしている必要があるため、最低の人員は雇用している状態が必要です。

設備基準については、図面などを持参すると具体的な相談を受けている自治体もあるので活用しましょう。

申請書類

都道府県のホームページから必要書類をダウンロードすることができます。

添付書類などは自治体によっても異なることがあるので事前に確認が必要です。書類の内容や書類の作成方法などは都道府県のホームページ内で説明されていることもあるので確認してみましょう。

申請手数料などに収入証紙などが必要な場合もあります。

申請書類

申請する

必要な書類がそろったら申請しますが、申請後に問題が明らかになった場合、是正のために指定が遅れてしまったり、申請を取り下げる事態になる可能性もあります。

少しでも不明点がある場合にはその都度相談しながら準備を進める方が、結果的に早期の開業につながるといえます。

書類の提出先や提出日を確認し、余裕をもったスケジュールで書類を作成しましょう。自治体によっては申請日の予約が必要な場合もあるので確認しておきましょう

訪問介護事業所を開業するには?

訪問介護事業所を開業するためには、さまざまな準備が必要です。

指定基準を把握したうえで開業予定の地域の都道府県ホームページを確認することをおすすめします。

多くの都道府県で事前の相談を受け付けているので、不明点がある場合はその都度解決しながら準備を進めていきましょう。