訪問介護事業所の立ち上げに活用できる助成金・補助金とは

2023/09/07

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訪問介護事業所の立ち上げに際して、助成金を活用すると自己資金に不安があっても開業しやすくなります。

しかし、助成金にはさまざまな種類があり、支給要件が異なります。

訪問介護事業所の立ち上げをご検討中の方のなかには、「どんな助成金が利用できるのか分からない」「補助金の支給要件を知りたい」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、訪問介護の概要をはじめ、事業所の立ち上げにあたって活用できる助成金・補助金の種類や支給要件、支給金額などを紹介します。

訪問介護とはどんなサービス?

訪問介護とは

訪問介護とは、ホームヘルパー等が、要介護者の自宅に伺って日常生活のサポートをするサービスです。

要介護者自身やそのご家族だけでは日常生活を営むことが困難になった場合に利用できます。

そのため、訪問介護を利用できるのは「要介護」「要支援」と認定された人が対象です。

訪問介護のサービスは、身体介護と生活介護に分けられます。

身体介護

身体介護は、利用者の身体に触れて行うサービスです。

具体的には、以下が挙げられます。

・食事介助
・入浴介助
・排せつ介助
・清拭介助
・更衣介助
・移乗介助
・体位交換
・服薬介助

生活介護

生活介護とは、利用者の日常生活を支えるサービスです。

具体的には、以下が挙げられます。

・調理
・掃除
・洗濯
・買い物
・ゴミ出し
・アイロンがけ
・ベッドメイク
・薬の受け取り

訪問介護事業所立ち上げにかかる費用

訪問介護事業所立ち上げの費用は、500万円程度が目安だとされています。

開業するエリアや事業所の規模によって費用は異なりますが、主な内訳は次のとおりです。

①法人設立費用
②人件費
③施設費
④事務所備品購入費
⑤車両費

訪問介護事業所立ち上げ後、収益が得られるまでの2ヶ月分の運転資金があると安心です。

①法人設立費用

訪問介護事業所立ち上げに際しては、法人を設立する必要があります。

法人格の取得費用は法人の形式によって異なりますが、株式会社では約30万円、合同会社や一般社団法人では約10万円です。

法人設立にあたっては社印が必要となり、約3万円以上はかかります。

なお、NPO法人として訪問介護事業所立ち上げを行う場合は、ほぼ費用は発生しません。ただし、手続きに3~4か月ほどの期間を要します。

②人件費

訪問介護事業所立ち上げにあたっては、管理者を除く3名以上の有資格者を、常勤で配置することが求められます。

訪問介護事業の収益の多くは介護報酬が占めます。

介護報酬は翌月請求で、介護報酬が支払われるのはさらにその翌月です。そのため、2~3か月分の人件費を確保しておくと安心です。

③施設費

訪問介護事業所立ち上げのためには、事務所の設置が設備基準としてあります。また、来客のプライバシーに配慮した相談室も必要です。

なお、訪問介護事業所は賃貸契約したりテナント購入したりするほか、自宅の一部を利用することもできます。

どうすれば訪問介護事業所立ち上げのコストが抑えられるか、さまざまな選択肢を検討することが重要です。

④事務所備品購入費

新しく訪問介護事業所立ち上げを行う際には、備品の購入も必要です。

事務作業に必要な、デスクやチェア、IT機器、その他事務用品を用意します。

また、訪問介護事業所では、利用者のケアを行うための衛生管理用品等が不可欠です。

このような備品購入費は意外と費用がかさむため、綿密な資金計画が求められます。

⑤車両費

事業所によっては利用者の自宅まで車両で訪問するケースがあります。そのため、自動車や駐車場の準備も必要です。

訪問介護事業所立ち上げの費用を調達するには

費用を調達するには、まず自己資金が必要です。開業資金だけでなく、当面の運転資金として、2〜3か月分の運転資金を用意しておくと安心です。

訪問介護事業所立ち上げにあたって費用が十分でない場合には、借入という選択肢もあります。

コストシミュレーションに加えて、綿密な返済シミュレーションを行うことが重要です。

そのほか、助成金や補助金について調べることも大切です。訪問介護事業所立ち上げの際に利用できる助成金などがないか、情報収集しておきましょう。

また、このような制度は追加や変更、制度改革が頻繁に行われるため、常にアンテナを張っておくことが必要です。

国や自治体が給付する助成金と補助金について

助成金と補助金はいずれも、国や自治体等が政策の実現に向けて取り組む事業者をサポートするために給付される資金のことです。

返済義務がないことが大きな特徴であり、事業者にとって最大のメリットといえます。

助成金は、雇用および労働環境の整備・改善などによって、一定の要件を満たして申請することで受けられます。

一方、補助金は、国や自治体等が推進する公益性がある事業に対する補助を目的としています。

そのため、申請内容の審査が不可欠であり、結果的に採択されないケースもあります。

訪問介護事業所立ち上げの助成金・補助金

訪問介護事業所立ち上げで利用できる助成金・補助金

訪問介護事業所立ち上げにあたって、利用できる主な助成金は、以下のとおりです。

①IT導入補助金
②人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)
③トライアル雇用奨励金

いずれも地方公共団体などから支給されるもので、基本的に返済の必要はありません。

①IT導入補助金

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者において、自社課題・ニーズに適したクラウドサービスなどのITツールの導入を行った際に申請支援できるものです。

通常枠、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)、デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)の4種類があります。

支給対象となる経費は、以下のとおりです。

・ソフトウェア購入費
・クラウド利用料
・導入関連費
・ハードウェア購入費 など

通常枠では、最大450万円の補助が行われるなど、かなり大きな金額となっています。

IT導入補助金2023

③人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)

人材確保等支援助成金は、介護福祉機器の導入などによって、離職率の低下に取り組み、かつ目標達成した場合に支給されるものです。支給の上限は150万円となっています。

▼助成の対象となる機器

・移動・昇降用リフト(立位補助器、非装着型移乗介助機器を含む)
・装着型移乗介助機器
・体位変換支援機器
・特殊浴槽

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)

④トライアル雇用奨励金

トライアル雇用奨励金とは、職業経験や技能、知識などの諸条件により、安定的な就職が困難な求職者を一定期間試行雇用した場合に助成されるものです。

対象者1人につき、月額4万円が支給されます。

トライアル雇用奨励金

訪問介護事業所立ち上げに助成金を活用しよう

訪問介護事業所立ち上げに際しては、さまざまな開業資金や運転資金が必要です。おおよそ500万円から、訪問介護事業所立ち上げが可能だとされています。

開業時に利用できる助成金や、経営を進めるにあたって活用できる助成金があります。

うまく取り入れることで、費用が大幅に抑えられます。資金調達の際は、自己資金や借入のほか、助成金や補助金という選択肢があることを覚えておきましょう。