訪問看護は開業しやすい?独立開業の流れと必要な準備とは

2023/09/07

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超高齢化社会である日本において介護事業所のニーズが高まる中、訪問看護の独立開業を検討中の方は多いのではないでしょうか。

訪問介護や訪問介護の存在は、なるべく自宅で最期を迎えたいという高齢者が多いことからも、今後の発展が望まれる分野です。

他の介護事業者と比較して、訪問看護は設備投資等の負担が少ないことから、独立開業しやすいと考えられます。

そこで今回は、訪問看護の概要をはじめ、独立開業までの流れや訪問看護ステーションの指定基準などを解説します。

訪問看護とはどんなサービス?

訪問看護とは

訪問看護とは、「病気や加齢によって身体が不自由になっても、住み慣れた家で暮らしたい」「人生の最期を自宅で迎えたい」と望まれる利用者の自宅等を訪問し、必要なサービスを提供するものです。

利用者の状態に合わせて、訪問した看護師などが、食事や排泄、清潔の管理・援助、ターミナルケア、褥瘡の処置、カテーテル管理、訪問看護の一環として行われるリハビリテーションなどを行います。

事業所を開設できる法人は、医療法人をはじめ、社会福祉法人やNPO法人、株式会社、有限会社など多岐にわたります。

一般的には、介護保険に係る指定と医療保険に係る指定を受けて運営します。

訪問看護を独立開業するときの流れ

訪問看護で独立するにあたって、訪問看護ステーションの立ち上げまでの流れは以下のとおりです。

①法人の設立

独立して開業する場合、まずは法人の設立が必要です。これは、訪問看護事業に携わるためには、所轄官庁から介護保険・医療保険の「指定」を受けなければならないためです。

法人を設立するには、法務局で商業・法人登記申請を行います。独立する場合は、株式会社や合同会社として設立するケースが一般的です。

②事務所の契約

次に、訪問看護事業を行うための主たる事務所とする物件を契約します。

介護保険法の設備に関する基準に、事務所の広さについて具体的には定められていませんが、以下の要件を満たすことが必要です。

・事業の運営を行うために必要な広さがあること
・利用申込の受付、相談等に対応するのに適切なスペースがあること

③従業員の採用活動

訪問看護の従業員を採用することも、大切な準備の一つです。保健師や、看護師または准看護師の雇用が必要です。

訪問看護ステーションの場合は、人員に関する基準が「保健師、看護師または准看護師を常勤換算方法で2.5人以上配置すること」とされています。

事業所の指定申請をするまでに、少なくとも3人以上の採用が求められます。

④事務所の設備・備品の準備

事務所の設置後は、必要な設備・備品等を調達していきます。

必要な設備・備品は以下のとおりです。

・応接セット
・事務机・椅子
・パソコン・タブレット
・プリンター・コピー機
・電話・FAX設備
・書棚・書庫
・ロッカー
・文具等の事務消耗品
・衛生用品 など

⑤指定申請

物理的な準備が完了したら、都道府県等へ指定申請を行います。申請書および添付書類の準備が必要です。(※必要書類については後述)

指定申請の期限や必要書類については都道府県によって異なりますので、早めに確認しておきましょう。

独立開業までのスケジュール管理のためにも、きちんと把握しておくと安心です。

⑥審査・決定

提出した指定申請書・添付書類に基づいて、指定権者である都道府県または市によって審査が行われます。

必要に応じて実地調査等が行われ、問題なければ指定通知書が届きます。

⑦開業

指定通知書を受け取ったら、いよいよ開業となります。

開業予定日を確定して、その日に合わせて営業活動を行う必要があります。

営業先としては、居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、医療機関等が挙げられます。

訪問看護の指定申請の際に必要な書類とは

指定申請の際に必要な書類とは

指定申請のために必要な書類の一例は、以下のとおりです。申請先の都道府県や市によって異なる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

・指定居宅サービス事業所・指定介護予防サービス事業所指定申請書
訪問看護・介護予防訪問看護事業所の指定にかかわる記載事項
登記簿謄本
従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
就業規則の写し
資格証の写し
雇用契約書の写し
事業所の平面図
事業所の外観及び内部の様子がわかる写真
運営規程
苦情対応の体制がわかる書類
衛生管理体制がわかる書類
誓約書
介護給付費算定に係る体制等に関する届出書

 

訪問看護の事業計画書の作成も必要

訪問看護ステーションで事業計画書を作成する主な目的は、次のとおりです。

・事業の見通しを立てる
・金融機関からの融資を受ける
・指定申請を行う

訪問看護事業で独立するにあたって、まずはビジョンを明確にすることが必要です。その際、事業計画書を用いると考えが整理しやすくなります。

今後の見通しが可視化できると、従業員にも経営ビジョンが共有しやすい点でも有効です。

また、金融機関から融資を受ける際には事業計画書の提出が求められます。融資のための事業計画書は基本的にフォーマットが指定されます。

さらに、指定申請を行う際にも事業計画書が必要です。以下のような内容を盛り込むことが一般的です。

・創業の動機・経緯
・経営者の経歴・プロフィール等
事業内容
従業員の状況
取引先等の情報
事業の見通し、収支計画 など

 

訪問看護ステーションの指定基準

訪問看護の独立にあたって、訪問看護ステーションを開業するには、以下の指定基準を満たす必要があります。

①人員基準
②設置基準
③運営基準

指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準

①人員基準

訪問看護の人員基準とは、国や指定権者(都道府県または市)が定める基準です。具体的には、次のような決まりがあります。

・サービスの提供にあたる保健師、看護師又は准看護師を常勤換算方法(※)で2.5名以上配置
・上記の保健師、看護師又は准看護師のうち1名は常勤
・保健師又は看護師である管理者を1名配置
・理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を実情に応じた適当数配置

※看護ステーションにおいて、4週間の勤務延べ時間数を、常勤が勤務すべき時間数で割った数字のこと。常勤が勤務すべき時間は、各ステーションによって異なる。

②設備基準

訪問看護の設備基準として、事務室の準備などが求められます。

次の5つのポイントを押さえておくとよいでしょう。

・事務所

事務作業などを行うための訪問看護専用の事務室の準備が必要です。

面積などについて明確な基準はありませんが、複数のデスクや棚、ロッカーなどが置けるスペースは確保する必要があります。

・相談室

利用申込みの受付や相談に対応するために、相談室の設置が望まれます。

事務所の一角をパーティションなどで区切ったり、独立した部屋を設置したりして、他の部屋と分けることが大切です。

・独立洗面台

介護・看護に携わることを考えると、特に衛生面への配慮が必要です。

・鍵付きの書庫

個人情報の取り扱いが多いため、鍵付きの書庫を設置することが求められます。

・防火対策

指定を受けるためにも、法令に適合した安心・安全な建物であることを示すため、消火器やスプリンクラーの位置を確認しておくことが重要です。

③運営基準

介護保険法に基づき、訪問看護の運営基準も設けられています。

・内容及び手続きの説明及び同意
・提供拒否の禁止
・提供困難時の対応
・受給資格等の確認
・心身の状況等の把握
・保健医療サービス及び福祉サービス提供者との連携
・身分を証する書類の携行
・利用料 など

サービスの提供にあたって、作成すべき書類や、説明が必要な内容など、遵守しなくてはいけない基準は多岐にわたります。

訪問看護の独立を決意したら、早めの準備を

今回は、訪問看護事業での独立について、開業までの流れや必要書類、訪問看護ステーションの指定基準などを紹介しました。

訪問看護事業は、金銭的には比較的独立しやすい分野ではありますが、開業に向けて準備することは多岐にわたります。

経営者としては、独立に向けて何に注力すべきかを考え、準備を進めていくことが重要です。

必要に応じて、書類作成等は外部サービスを活用するといった方法も考えられます。

いずれにせよ、やるべきことを明らかにして、早めの準備を進めていきましょう。