介護施設の行事とその目的とは?

2023/09/07

アイキャッチ

介護施設、特に入居系の施設では、1年を通してさまざまな行事が行われています。

行事に合わせて季節感のある飾り付けがされ、レクリエーションや行事食など、みなさんが楽しみにしています。

しかし介護施設で行われる行事の目的は「楽しみ」だけではありません。今回は介護施設で行われる行事について紹介します。

介護施設で行う行事について

日本には季節ごとに年中行事があり、その多くは古来から伝統として受け継がれてきました。

その中でも日本全域で行われているような、誰もが知っている年中行事については、多くの施設で何かしらの催し物が行われているのではないでしょうか。

年中行事は地域によって風習やしきたりなどが異なるものがあったり、昔とは行事そのものの意味合いが変化していることもありますが、そういったことを高齢者から直接聞くことができる機会でもあります。

介護施設で行う行事の目的とは

介護施設で行われる行事には、単調になりがちな生活にメリハリをつけたり、楽しみを提供する他にも、いくつかの目的や効果が期待できます。

利用者には行事のその日だけでなく、準備の段階から参加してもらったり、施設の職員と一緒に練習してもらうこともあり、日常とは異なることをする機会でもあります。

季節を感じる

日本では季節の節目を「節句」と呼び、節句には古くから年中行事が行われてきました。

節句の行事を追っていくだけでも、それぞれの季節を感じることができます。近年の感染症の影響によって外出しづらくなっていることから、特に介護施設で生活している高齢者は季節を肌で感じる機会が減少しています。

年中行事に合わせて施設内を飾り付けたり行事食を提供することは、季節を感じていただく大切な要素のひとつです。

リハビリテーションの効果

行事にはさまざまな要素のリハビリテーションが含まれています。

行事に合った飾り付けの工作、歌を歌ったり、ゲームやレクリエーションなどには全てリハビリテーションの効果が期待できます。

工作では高齢者ひとりひとりの身体機能に合わせて、折り紙を折ったり紙をちぎったりなどの手先を使う作業ができますし、みんなで歌を歌うことは発声や発語だけではなく、食べるための筋力を維持することにも役立ちます。

他にもお正月には書初めをしたり、節分には鬼に向かってボールを投げたりと、職員がさまざまな工夫をすることで、楽しみながらリハビリテーションをする機会となります。

リハビリテーションの効果

行事食の提供

年中行事の多くに、普段は食べないような特別な料理を食べる習わしがあります。

お正月のおせち料理やお雑煮、節分の恵方巻、ひな祭りの桜もちなど、それぞれに意味や由来があり、日本の大切な文化のひとつといえます。

旬の食材を使って、いつもとは異なる料理を提供することで行事を盛り上げ、さらに食器や盛り付けを変えることで食欲がわきます。

行事食の日はいつもよりボリュームが多くても、残食が少なくなることは珍しくありません。

コミュニケーションのきっかけ

行事の準備やレクリエーションを通して、利用者同士や職員とのコミュニケーションが増えます。

いつもはあまり会話のない利用者同士であっても、行事をきっかけに会話が弾んだり、自分の居室にこもりがちな利用者が行事に参加することで他者とのコミュニケーションが生まれることがあり、日常とは異なる人たちとかかわるきっかけとなります。

家族との交流

近年は感染症の影響により中止の傾向が続いている現状がありますが、以前は大きな行事のときには、家族を招待することもありました。

普段は忙しかったり、遠方に住んでいる家族でも大きな行事のときには参加し、利用者だけでなく職員とも交流できるよい機会となっていました。

季節ごとの行事について

介護施設に限らず一般的にも、季節ごとに行われている行事やお祝い事があります。

本来旧暦で行われていた行事を新暦に置き代えて行うものも多く、地域によって時期がずれるものもあります。

体感的にはまだ冬ですが、暦の上では立春(2月4日前後)から春が始まります。

2月の節分では職員が鬼に変装したり、壁に大きな鬼の絵を貼り付けるなど、鬼を的にしてビニールボールやお手玉などを投げるなどのレクリエーションが行われます。

ボールやお手玉を掴む、握る、投げるなどの動作は、主に上体や手指の運動になります。

3月のひな祭りでは、お雛様を飾って「ひなまつり」の歌を歌ったり、折り紙でお雛様を作るなどのレクリエーションが行われます。

ちらし寿司や桜もちなどの行事食も喜ばれます。

暦の上では立夏(5月6日前後)から夏とされます。端午の節句や七夕、夏祭りなどの行事が行われます。

七夕では、利用者も短冊に願い事を書いて笹の葉に吊るします。夏祭りは、年中行事の中でも盛大に行う介護施設は多く、模擬屋台などを作って縁日の雰囲気を演出するなど趣向を凝らした催し物が行われます。

盆踊りの練習などを行うことで、準備の段階から利用者が楽しみながら体を動かす機会ができます。

夏

暦の上では立秋(8月7日前後)から秋とされます。介護施設にとって重陽の節句や敬老の日は重要な行事といえます。

お赤飯や栗ご飯、紅白まんじゅうなど長寿を祝う行事食が提供され、介護施設によっては体調に影響のない利用者には「菊酒」が提供されることもあるでしょう。

デイサービスなどでは運動会が実施されることもあります。

利用者の運動機能に合わせて道具を職員が手作りしたり、独自のルールで行われる競技は職員も一緒になって体を動かし、みんなで盛り上がる行事です。

暦の上では立冬(11月7日前後)からが冬です。1年の締めくくりと新しい年を迎える年末年始は、クリスマス、大みそか、お正月と、介護施設のみならず日本中がいつもとは違う雰囲気となります。

クリスマス会や忘年会などが盛大に行われたり、お正月には書初めやかるた、福笑いなどのレクリエーションで楽しみながら心身の機能維持に役立ちます。

近年は感染症の影響により減少していますが、初詣に出かけることもありました。

そのほかの行事について

大きな年中行事以外にも、介護施設ではいろいろな行事が行われています。

お誕生会

月ごとに誕生者をお祝いします。お誕生日ケーキを用意したり、プレゼントを用意する介護施設もあります。

米寿、卒寿、百寿などの長寿のお祝いをすることもあります。

七草粥・鏡開き

お正月に続く食事を伴う行事です。1月7日には、いつもは常食の方にも七草粥を提供したり、1月11日は鏡餅を使って、おやつにお汁粉を提供したりします。

お餅が食べにくい方には米粉や白玉粉にお豆腐を加えるなどの工夫をしたお餅風なものを作ったり、市販の介護食用の伸びないお餅などを利用して、安全に配慮したうえで提供することがあります。

お花見

近年は感染症の影響により、車で出かけるようなお花見の行事は減少傾向ですが、介護施設の敷地内や近所で桜が咲くと、お花見に出かけることがあります。

高齢者にとって短時間でも日光に当たり、外気に触れることは大切です。

桜だけでなく紫陽花やつつじ、ひまわりや紅葉など、季節ごとのお花見をすることもあります。

お花見

お彼岸・お盆

介護施設の中でも看取りを実施している施設では特に、お彼岸やお盆を重要な行事としていることがあります。

春と秋のお彼岸にはぼたもち(おはぎ)をおやつに提供したり、お盆には盆棚を飾る介護施設もあります。

土用の丑

うなぎが好きな高齢者は多いのですが、高価な食材なので頻繁には提供できません。

せめて夏場の土用の丑の日には行事食として、うなぎを提供したいと考えている介護施設は少なくないと思います。

冬至

地域によっても異なるようですが、多くの地域では、冬至にはかぼちゃを食べてゆず湯に入るという風習があります。

献立の中にかぼちゃの煮物を加えたり、ゆずを浮かべたお風呂を用意したりします。

介護施設の行事のまとめ

ここに挙げた以外にも、介護施設ではさまざまな行事が行われています。

行事は催し物として楽しみなだけではなく、季節を感じたり、リハビリテーションや他者とのコミュニケーションが生まれる大切な機会となっています。

忙しい日常から、忘れられてしまう年中行事や風習もありますが、高齢者の方から地域に伝わる古い習わしについて直接聞くことができるのも介護施設の特徴です。

介護施設で行われる行事は利用者の方々はもちろん、働く職員にとっても大切なものといえるのではないでしょうか。