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介護施設の食事、給食業者に委託するメリットとデメリット
2023/09/07
毎日の食事は生きるために必要なものであると同時に楽しみであり、人と人とのコミュニケーションが自然と生まれる場面でもあります。
以前は自施設の厨房で調理をする直営給食が一般的でしたが、現在は給食業務を委託する施設が多くなっています。
食事を給食業者に委託するメリットとデメリットについて紹介します。
目次
給食を委託している介護施設の割合
東京都の令和元年の調査では、給食を外部の給食会社に委託している割合は、特別養護老人ホームが64.8%(そのうち部分委託は13.1%)、老人保健施設は76.5%(そのうち部分委託は15.3%)、有料老人ホームでは73.9%(そのうち部分委託は9.9%)軽費老人ホームは59.6%(そのうち部分委託は20.2%)と、委託している割合が高くなっています。
一方で認知症グループホームは11.2%(そのうち部分委託は5.9%)となっています。
介護施設の給食委託状況は、提供食数や入居されている方の心身の特徴の他、施設の理念などによっても異なると考えられます。
給食の直営と委託の違い
介護施設の給食業務は、大きく分けて直営給食と委託給食に分けられます。
直営給食は、介護施設が厨房設備を有し、栄養士や管理栄養士、調理師など食事提供にかかわる職員を介護施設自ら採用して給食を実施する方法です。
食材の発注から食事の提供まで全ての工程を自施設の職員が行うため、費用や業務内容について詳細が把握できますが、人材の採用や教育、厨房の清掃や衛生管理など業務量が多くコストもかかります。
一方委託給食は、食事の提供にかかる業務の全てまたは一部を、外部の給食会社に委託する方法です。
委託給食の種類について
委託給食には給食業務全般を委託する全面委託、給食業務の一部を委託する部分委託があります。
委託する業務内容や方式は介護施設や給食会社によっても異なり、近年増加しているのは介護施設に対応した配食サービスです。
<全面委託>
給食にかかる業務の全般を給食会社に委託するもので、委託給食の主流といえます。
1日3食の食事を食材の調達から調理、盛り付け、食器洗浄など、一連の食事提供業務を給食会社が行います。
多くの場合で、給食会社に調理師や栄養士、管理栄養士などの専門職が在籍し、給食提供の業務を行います。
<部分委託>
給食業務の一部を給食会社に委託するものです。委託する業務の内容は、介護施設の状況に応じて給食会社との契約によって異なります。
献立作成や食材調達は介護施設側で行い調理業務を委託するケースや、1日3食のうちの1~2食を委託するケースなど、介護施設の実情に合わせていろいろな委託形態が考えられます。
<配食サービス>
近年増加の傾向にあるのが介護施設に対応した配食サービスです。
給食会社の工場やセントラルキッチンなどで作った調理済みの食材を配送する方法で、部分委託のひとつと考えることができます。
調理済みの食材が冷凍や冷蔵の状態で配送され、施設内で再加熱して提供しますが、設備や人員、提供食数など、それぞれの介護施設の実情に合わせて、調理済み食材の配送のみのケースや、給食会社の職員によって盛り付けや再加熱を行うケース、再加熱用の機材をレンタルするケースなどもあるようです。
委託給食のメリットについて
介護施設の食事を外部の給食会社に委託することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
食材料費のコストダウン
多くの給食会社は独自の食材調達ルートを持ち、大量に仕入れることで食材料費を安く抑えることができます。
生鮮食品も悪天候などによる価格変動の影響が比較的少なく、安定して食材を確保できるメリットもあります。
人材管理を任せることができる
給食業務にかかわるスタッフの採用や教育、退職者が出たときの求人などは給食会社側で行うので、人材管理を任せることができます。
急にスタッフが休まなければならないようなときにも、必要に応じてヘルプスタッフが派遣されることもあります。
衛生管理が徹底されている
現在は、全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が制度化されています。
事業者の規模によって必要な対応は異なることがありますが、給食会社はHACCPに基づく衛生管理を実施しており、スタッフの衛生教育や清掃、消毒、食品の取り扱いなどの周知徹底を図っています。
災害時の対応策がある
多くの給食会社では、災害時の食事提供についても対策が講じられています。
災害時用の備蓄食を備えていたり、施設が被災して食事提供が困難となった場合には、近隣の事業所同士で協力をしたり、独自の物流ルートによって食材を確保するなど、食事の提供を継続できるような仕組みを整えています。
委託給食のデメリットについて
給食業務を専門にしている給食会社ではありますが、やはりいくつかのデメリットが生じることもあります。
食べている人と作る人のコミュニケーションがとりにくい
委託の契約内容によっても異なりますが、多くの場合で給食会社の職員は厨房内での調理業務が主であり、喫食者と直接コミュニケーションをとる機会は少ないと考えられます。
喫食者は食事を作っている人の顔が見えることで安心感を持つことができますし、調理をする職員も、食べている人とコミュニケーションがあることで調理業務への意欲向上にもつながります。
特に介護施設では、高齢者のこれまでの生活環境によって食嗜好はさまざまであり、心身の状態によっても適した食事が異なります。
食事についての感想や要望が直接やり取りできることは軽微な不満の解消に役立ち、大きな苦情につながりにくくなります。
料理の味が不安定
特に大量調理では、調理指示書に従って調理を行っても、ちょっとした火加減や水加減で料理の仕上がりが変化します。
給食会社では複数のスタッフが調理を行うことが多く、同じ料理であっても作る人によって味が異なることがあります。
特に新しい調理スタッフが入ったときなどは、味にばらつきが出ることもあります。
厨房設備の管理が必要
大量調理を行う厨房は特殊な設備や調理器具があり、安全に使用していくための管理が必要です。
多くの場合で日常的な清掃や手入れは実際に使用している給食会社のスタッフが行いますが、定期的な点検やメンテナンス、不調時の修理などは施設側で行うことが必要です。
急な対応が難しい
急な食数の変更や食事内容の変更があった場合、施設側から給食会社の職員に指示が速やかに連絡されなかったり、詳細な情報が伝わりにくいなどの理由で、食事の急な対応が難しいことがあります。
配食サービスのメリットとデメリット
介護施設でも導入が増加している配食サービスにも、メリットとデメリットがあります。
特別な厨房設備が不要
食数が多くなければ、厨房設備や特別な調理器具は必要ありません。調理済みの食材を温めて盛り付けるだけであれば、家庭用のキッチンでも可能です。
ただし、提供食数が多い場合には専用の加熱・保温機など大掛かりな設備が必要となることもあります。
調理員が不要
温めるだけで提供でき調理作業が必要ないので、調理専門の職員は必要なく誰でも食事の用意ができます。
しかし介護職員にとっては、食事の準備や後片付けが通常の業務に加わり、業務量が増えることにもなります。
少ない食数から利用できる
給食会社によっても異なりますが、10食以下の少ない食数から利用できることが多く、小規模の介護施設や、開設したばかりで入居者が少ない介護施設でも利用が可能です。
調理にかかる経費のコストダウン
食事提供に必要な職員の人件費が不要になるだけではなく、調理に必要な水道高熱費がコストダウンできます。
急なメニュー変更が難しい
注文した調理済み食材が事前に届くため、急なメニューの変更や食数の増加には対応が難しいことがあります。
しかし多くの場合、真空冷凍・冷蔵パックで配送されるため、未使用分は冷凍庫や冷蔵庫で保管が可能です。
1日の食材費は高くなる可能性がある
調理済みであることと、1食単位での発注調整が難しいこともあり、食材料費だけをみると高くなることがあります。
しかし、給食会社によっては1パックの入数を変えるなどの工夫で発注のロスを調整したり、発注食数が増えると1食単価が下がることもあります。
冷蔵庫・冷凍庫など保管場所が必要
多くの場合、真空冷凍パックなどで配送されるため、使用時までは冷凍庫または冷蔵庫で保管する必要があります。
特別な調理器具は必要ありませんが、冷凍冷蔵庫は十分な容量を確保する必要があります。
最適な方法で満足度の高い食事提供を
現在多くの給食会社が存在し、それぞれ委託できる業務の内容や方法もさまざまです。
介護施設の種類や入居者の方々の心身の特徴、設備や人員配置など、施設の実情に合った内容で給食業務を委託できれば、食事提供にかかわるコストや業務量を軽減することもできます。
介護施設に合った最適な方法によって、満足度の高い食事提供を目指しましょう。