FIMとは?18個の評価項目と評価のメリットを解説

2023/09/06

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FIMは、ADL(日常生活動作)の評価方法の一つです。最も信頼性があり、妥当性も有するとされています。

ADLは、高齢者の身体能力や日常生活レベルを図るための重要な指標であり、介護にかかわる人であれば理解しておきたい言葉です。

また、FIMは医学的な知識がなくても採点可能で、ADLを評価したり、変化を確認したりするのに有効な方法です。

今回は、FIMとは何かをはじめ、18個の評価項目やその内容、FIMを導入することのメリットを解説します。

『FIM』とは?

FIMとは、”Functional Independence Measure”の略語で、1983年に開発されたADL評価法のことです。

日本語でいうと、「機能的自立度評価法」となります。

FIMによって、患者さまや利用者さまのADL(日常生活動作)の介護量を測定することができます。

ADL評価の中でも、信頼性・妥当性が高いとされる方法です。

また、医学的な知識がない人でも採点しやすいので、医療現場だけでなく介護現場でも広く活用されています。

『ADL』とは?

ADLとは、”Activities of Daily Living”の略で、「日常生活動作」を意味します。

また、日常生活動作とは、日常生活を送るために最低限必要となる日常的な動作のことです。

具体的には、起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容といった動作を指します。

高齢者および障害者の身体能力や日常生活レベルを図るための指標として用いられています。

介護現場などでは、一つひとつのADL動作について、「できる/できない」、「どのような介助が、どのくらい必要か」、「できるADL」「しているADL」などの項目により評価していきます。

なお、FIMでは基本的に「しているADL」について評価を行います。

FIMの評価項目とは

FIMの評価項目とは、運動項目+認知項目の計18項目です。各項目について、1〜7点をつけて7段階で評価していきます。

コミュニケーションや社会的認知などの認知項目も含まれており、日常生活で行っている動作を評価したり、そのなかでの変化を確認したりするのに最適な評価方法です。

FIMの特徴とは

FIMの特徴をまとめると、以下のとおりです。

評価項目 計18項目(運動項目×13・認知項目×5)
FIMの採点方法 1点〜7点の7段階で評価
得点 満点:126点/最低点:18点
対象年齢 7歳以上
対象疾患 すべての病気・障害

なお、運動項目については、セルフケア・排泄コントロール・移乗・移動の能力を評価します。認知項目では、コミュニケーション能力・社会的認知の能力を評価することが特徴です。

18個の評価項目について、次項で解説します。

FIMの18個の評価項目

FIMの評価項目は、計18項目で構成されています。

運動項目(13項目) セルフケア 食事
整容
清拭
更衣上半身
更衣下半身
トイレ動作
排泄コントロール 排尿管理
排便管理
移乗 ベッド・椅子・車椅子移乗
トイレ移乗
浴槽・シャワー移乗
移動 歩行・車椅子
階段
認知項目(5項目) コミュニケーション 理解
表出
社会的認知 社会的交流
問題解決
記憶

 

各項目の評価範囲とは

各項目の評価範囲とは

ここでは、18の評価項目について、それぞれの評価範囲を解説します。より正しく評価を行うには、まずは評価の対象となる部分を理解しておく必要があります。

セルフケア

①食事
食事が適切に用意された状態で、「適切な食器・道具を使って」「食べ物を口に運ぶ動作から」「咀嚼し、嚥下する」までの3つの工程を評価します。

②整容
整容の評価は、次の5つの項目を評価します。
・口腔ケア
・整髪
・手洗い
・洗顔
・髭剃り、または化粧

③清拭
清拭の評価は、身体を胸部・右上肢・左上肢・腹部・右大腿部・左大腿部・右下腿部・左下腿部・陰部・お尻の10箇所にわけて、「身体を洗う」「すすぐ」「乾かす(拭く)」で評価します。

④更衣上半身 ⑤更衣下半身
更衣の評価範囲は、衣類を「脱ぐ」「着る」ことです。

⑥トイレ動作
トイレ動作の評価範囲は、「衣類の着脱」「陰部を清潔にする」ことです。尿器を使用してベッド上で排泄している場合は、ベッド上での動作を評価します。

排泄コントロール

⑦排尿管理 ⑧排便管理
排泄については、失敗する頻度と介助量の両方を採点したうえで、低い方の点数をつけることがポイントです。

なお、日中と夜間で点数が異なる場合にも、低い方の点数をつけます。

移乗

⑨ベッド・椅子・車椅子の移乗 ⑩トイレの移乗 ⑪浴槽・シャワーの移乗
移乗の評価範囲は、ベッド・トイレ・浴槽において、それぞれの座面から「立ち上がる」「方向転換する」「座る」までの、乗り移る動作を評価します。

移動

⑫歩行・車椅子
移動については、歩行または車椅子について行います。どちらか、頻繁に行う方で採点することがポイントです。

⑬階段
FIMの評価は基本的に「しているADL」を用いて採点しますが、階段の場合は、病環境によって日常的に階段昇降をしないケースがあります。

このようなケースでは、評価を行うときだけの「できるADL」で採点してもよいとされています。

コミュニケーション

⑭理解
理解の評価範囲は、相手の指示や会話に対して、「どの程度理解しているか」「どの程度の介助が必要か」によって評価します。

⑮表出
表出の評価範囲は、自分の欲求や考えが、相手に対して「どの程度伝わっているか」「話を聞き取るために、どの程度の配慮が必要か」によって評価します。

社会的認知

⑯社会的交流
社会的交流の評価範囲は、家族やスタッフ、ほかの利用者等と適切に交流しているか、または集団へ参加しているかなどを評価します。

⑰問題解決
問題解決については、日常生活において金銭的、社会的、個人的な問題を解決できるか否かを評価します。

⑱記憶
記憶の評価範囲は、頻繁に出会う人・毎日の日課・他人からの依頼の3つの課題についての記憶の有無を評価します。

メリットとデメリット

信頼性と妥当性が高いとされるFIMには、そのほかにもさまざまなメリットがあります。

またその一方で、実施にあたってはデメリットについても理解しておくことが必要です。

FIMのメリット

FIMを利用すると、ADLの自立度および介護量を、点数で把握できることがメリットです。

またADLの能力について、他職種との共通語として情報共有がしやすく、本人とそのご家族に分かりやすく説明できることもメリットとして挙げられます。

FIMを通じて現状の生活課題を知ることにより、治療・ケアの計画の指標となります。現状の能力を知ることにより、効果判定の指標となります。

そのほか、研究や発表のときに、データの集約として活用しやすいこともメリットの一つです。

FIMのデメリット

FIMでは、全18項目を1〜7点の7段階で採点するため、評価が難しく経験が必要となることがデメリットです。

実際の現場で、何度もFIMを用いて評価することに慣れていくことが重要です。

また、評価項目が多岐にわたるため、時間がかかることもデメリットとして挙げられます。

FIMの精度を高めるには

FIMを用いてより正しく評価するためには、まずFIMの各項目の採点方法を理解する必要があります。

そして、実際の現場で点数をつけ、他のスタッフとの採点をチェックし合い、相違点を話し合います。

その内容をふまえつつ、FIMの採点基準を振り返ることがポイントです。

このような手順を何度も繰り返すうちに、より正しくスムーズに評価が行えるようになります。

FIMでよりよい介護を

FIMで高齢者にとってよりよい介護を

FIMは、高齢者の能力を詳細に評価することができ、変化に注目して効果判定できる評価方法です。

ADLについてより正確に評価できる一方で、評価項目が多いため慣れるまでに時間を要するといった課題もあります。

ただし、スタッフ間で知識を共有したり、現場で繰り返し取り組んだりすることで、一人ひとりにとってより効果的なリハビリを提供することが可能です。

高齢者にとってより良い介護を提供するために、FIMは有効な方法といえます。