ユニットケアとは?従来型との違いやメリット・デメリットについて

2023/07/25

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厚生労働省では、ユニットケアが高齢者の尊厳を守ることにつながると考え、2025年までに特別養護老人ホームの定員のうち、7割をユニット型にすることを目標としています。

徐々に広がりつつあるユニットケアですが、これまでの施設と何が違うのでしょうか?

今回は、ユニットケアとは何かを解説します。

ユニットケアとは

ユニットケアは2001年に本格的に始まった、特別養護老人ホームなどの入所施設における介護スタイルのことです。

10人前後の利用者を1つのユニットとして共同生活をしながら、個人の生活リズムに応じた生活が送れるようにサポートするものです。

ユニットケアの定義

国はユニットケアを、「居宅に近い居住環境の下で、居宅における生活に近い日常の生活の中でケアを行うこと、すなわち生活単位と介護単位を一致させたケア」と定義しています。

さらにユニットケアの提供については「入居者が相互に社会関係を築き、自律的な日常生活を営むことを支援する」としています。

つまり「入居者がその有する能力に応じて、自らの生活様式及び生活習慣に沿って自律的な日常生活を営むことができるようにするため・・・(一部省略)入居者の日常生活を支援」し、「各ユニットにおいて入居者がそれぞれの役割を持って生活を営むことができるよう配慮」することとしています。

ユニットケアの歴史

1994年(平成6)年、ある特別養護老人ホームで、数十人の高齢者が集団で食事を摂っている様子に疑問を持った施設長が、「ごく普通の家庭の食卓にこそ意味がある」と考え、少人数の入所者と一緒に買い物に行き、一緒に食事を作って一緒に食べるという試みを始めました。

さらに「住み慣れた地域で暮らす」ために民家を借り上げて、利用者に過ごしてもらうなどの取り組みを重ね、定員50名の施設を4グループに分け、グループごとに職員を配置して利用者とともに生活するケアを取り入れました。

これがユニットケアの始まりといわれています。

ユニットケアの要素

ユニットケアの実践はハード(環境)とソフト(サポート)を両輪に、さらに施設運営のシステム(仕組み)作りが大きな要素となっています。

ハード

ユニットケアに必要なハードの要素は施設の環境です。

ユニットケアの理念である「普通の暮らし」を実現するために、個室と共有スペースなどが必要とされます。

しかし決して特別な構造や設備が必要なわけではなく、一般的な住宅のように、個室では個人の家具や生活用品を利用し、好きなカレンダーや写真、趣味の小物などを飾るなどして、個人の好きな空間を作ることもできます。

また、リビングや廊下、窓からの景色などにも配慮してもらえます。さらにリビングなどの共有スペースの利用によって入居者同士やスタッフとの関係を築くことは、社会性を保つことに役立ちます。

ソフト

入居者のそれまでの生活を継続するために必要なサポートを実践することがユニットケアの基本です。

どのような暮らしをしてきたかを理解し、その生活リズムを実践できるように入居者が主体のケアを考え、施設の日課に入所者の生活を当てはめるのではなく、入居者それぞれが望む生活を支えることが大切です。

また人は他者との関係によって社会とのつながりを感じるため、入居者同士や職員とのコミュニケーションを円滑にしていくことも職員の役割のひとつです。

ユニットケア

システム

入居者中心の生活を支援するためには、職員が一丸となって機能する仕組みづくりが重要です。

施設の設備や環境を整えたうえで、各職員が施設の運営に対する理念を理解し、それらを実践するために各分野の専門職が協力し、効率よく力を発揮できる組織力が求められます。

従来型施設との違い

特別養護老人ホームに対しては、施設整備に関する補助金が設けられています。

また、ユニットケア型の特別養護老人ホームについては介護報酬が算定できることもあります。

このように制度化が進んでいくユニットケアですが、ユニットケアと従来型の施設との違いはどのようなところにあるのでしょうか。

施設の構造

目に見える大きな違いのひとつが、建物の構造や入居者の生活する部屋です。

ユニット型は基本的に全室が個室で、各個室が周囲を囲むように共有リビングが配置されています。

従来型の施設では、多床室が廊下に沿って横並び配置されていることが多いため、ユニット型の間取りは一般住宅に近い構造といえます。

中央にリビングのような共有スペースが配置されていることで、入居者同士のコミュニケーション生まれやすいといった研究結果があり、施設内においても社会性を維持することが可能となります。

費用

ユニット型の施設と従来型の多床室とでは居住費が異なります。

実際にかかる賃料は所得に応じた利用者負担段階によって異なりますが、多床室とユニット型個室では、2~4万円程度ユニット型個室の方が高くなります。

職員配置

特別養護老人ホームの人員配置基準は従来型の施設もユニット型の施設も同じで、常勤換算方法で入所者3人に対して看護職員または介護職員1人を配置することになっています。

ユニット型の場合にはこの人員配置に加え、日中は1ユニットに常時1人以上の介護職員か看護職員を配置し、夜間は2ユニットに1人上の介護職員か看護職員を配置、さらにユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置することとなっています。

職員配置

ユニットケアのメリット

従来型の介護は決まった時間に大勢の高齢者をケアしなくてはならないため、どうしても施設の日課に高齢者の生活を合わせることで効率化を図ることが必要でした。

ユニット単位で少人数のケアを行う理想的とも思えるユニットケアですが、やはりメリットとデメリットがあります。

メリット1:個別ケアの実現

ひとりひとりの生活に応じた個別ケアができることが、ユニットケアの最大のメリットといえます。

自分の個室で趣味の時間を過ごすこともできますし、リビングでほかの入居者とおしゃべりをして過ごすこともできます。

また介護職員はユニットごとに固定配置されるため職員との信頼関係も築きやすく、職員の目が行き届きやすいといえます。

メリット2:他者との交流

従来型の多床室では完全なプライベート空間がなく、ベッド周囲をプライベートカーテンで仕切ることで1人の空間を確保します。

お互いに視界を遮り、あえて物音を聞かないようにすることでプライバシーを守ろうとするため、むしろお互いのコミュニケーションがとりにくい環境となってしまうことがあります。

しかし個室によってプライベートな時間が確保されていることで精神面に余裕が生まれ、積極的に他者と交流しようという意欲が高まって、社会性を保つことに役立つと考えられています。

メリット3:ADLの能力の維持・認知症症状の軽減

ユニットケアでは普通の暮らしを継続するという観点から、日常生活の中でできることは自分で行い、難しいことは職員と一緒に行います。

こうすることでADL(日常生活動作)の能力の維持に役立ちます。

朝起床後、更衣や整容などを自分の部屋で行ってからリビングに出て行ったり、食事の準備を職員と一緒にしたりと、自分の家では当たり前にやっていたような行動を行い続けることは、心身の機能を維持するために有効です。

また認知症の方の場合、環境の変化によって症状が悪化することがありますが、少人数でいつも同じ人、同じ職員がいることで不安が和らぎ、認知症の進行を抑える可能性もあると考えられています。

ユニットケアのデメリット

ユニットケアにもデメリットはあります。ユニットケアの特徴である個室や、少人数単位のケアがデメリットとなる可能性があります。

デメリット1:人間関係

もともと人付き合いが苦手な人にとっては、個室があって少人数の単位で生活できることはメリットでもあるように思えます。

しかし、いったん人間関係のトラブルが起こると、限られた人たちと限られた空間の中で生活することに居心地が悪いと感じてしまうことがあります。

人間関係の問題は必ずしも入居者同士とは限らず、職員との関係性が良好でない場合にも、日常生活に支障をきたしてしまうかもしれません。

デメリット2:孤独感

個室があることでプライバシーが保たれる一方、孤独を感じる人もいます。

いつも誰かが近くにいることで安心感があるという人にとっては、個室や少人数のケアよりも、多床室でいつも身近に人の気配が感じられる方が良い場合もあります。

孤独感

デメリット3:費用

従来型の多床室と比較すると、ユニットケアでは居住費が高くなるため、月々の費用が高くなります。

ユニットケアとは

ユニットケアは、それまでの普通の暮らしを継続することを目的として、10人程度の少人数を1ユニットとして固定された職員がケアを行う介護スタイルです。

個室があることでプライバシーが確保され、共有スペースで他の入居者や職員とのかかわりを持つことができます。

従来型の多床室と比較すると費用が高額となることもあり、それぞれメリットもデメリットもあるので、特徴を理解しておくことが大切です。