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有料老人ホームの食事は何にこだわるべき?メニュー内容や介護現場での改善ポイント
2025/12/26

有料老人ホームでの毎日の食事は、単に栄養を摂取する行為に留まらず、日々の生活の楽しみの一つとなります。加齢に伴い身体的な制約が増えるからこそ、食事の満足度が日常生活の質(QOL)に大きく影響することは少なくありません。そのため、費用や介護体制と同様に、「食」へのこだわりが入居先を決めるポイントになっています。
本記事では、有料老人ホームで提供される食事の基本的なサービス内容から、施設が競争力を高めるために行う工夫まで、有料老人ホームの食事に対する考え方を詳しく解説します。

目次
有料老人ホームで提供する食事の基本

有料老人ホームの食事は、栄養摂取という役割に加え、体内リズムを整え、精神的な満足感をもたらす重要な要素です。朝・昼・夕の1日3食と、午後の休憩時間に合わせておやつが提供されます。
また、管理栄養士が監修した栄養バランスの取れた献立が考案・提供されるのが一般的です。高齢者の健康維持を目的に、塩分やカロリーへの配慮がなされており、1日あたり1,400kcalから1,600kcal程度を目安に1日の献立が考えられています。
関連記事:介護施設で提供される介護食とは?目的や必要になる理由など詳しく解説
食事の調理場所と提供方法

有料老人ホームの食事提供方法は、大きく「施設内の厨房での調理」と「外部業者への委託」の2つに分かれます。各食事提供法の特徴について解説していきましょう。
施設内の厨房での調理
有料老人ホーム内で食事を調理する形態には、施設内の厨房で調理師を雇う「直営給食」、給食会社が調理職員を派遣して調理する「委託給食」の2つがあります。これらの提供体制は、出来立ての温かい食事を提供できるのが大きなメリットです。調理直後に料理を提供できるため、風味や美味しさを保ちやすく、入居者にきちんと美味しさを実感してもらえます。
また、調理スタッフが施設内にいるため、入居者一人ひとりの要望や食事形態への細やかな対応がしやすいのもメリットの一つです。手間と人件費はかかりますが、食事の質や入居者の満足度向上につながるでしょう。
外部業者への委託
食事の調理を外部の給食会社などに委託する場合、「配食サービス」「調理済み冷凍食」といったサービスを利用するのが一般的です。これらのサービスを利用することで、施設内の業務やコストを大きく削減できるというメリットがあります。
一方で、調理済みの食材を施設内で解凍・湯煎をして提供したり、調理されたお弁当をそのまま提供したりするので、どうしても出来立ての風味や味とは異なることもあるでしょう。試食などを通して、入居者に美味しいと思ってもらえるサービスを探すことが重要です。
施設の料金帯と食事内容の目安

有料老人ホームは、特別養護老人ホームなどとは異なり、部屋代や食事代金に関する自由度が比較的高いです。そこで、施設の利用料金と食事内容の関係や料金帯ごとの食事の特徴について解説します。
月額費用と食事内容の関係
有料老人ホームの月額費用は、主に部屋代、介護費、食費の3種類の費用で構成されています。食費は、1日3食提供された場合、月額3万円から6万円程度が相場です。介護費は他の有料老人ホームでも大きく変わらないため、一般的に利用料金が高くなるほど提供される部屋や食事の質も高くなる傾向があります。
食費による差は、使用する食材の質、メニューの多彩さ、イベントの充実度に現れることが多いです。例えば、食事代が高額になるほど高級な食材を使った食事が提供されたり、選択肢が豊富になったりします。食事へのこだわりが強い有料老人ホームほど、食費は高めに設定されていることが多いです。
料金帯別の特徴・イメージ
有料老人ホームの利用料金は、食費の価格設定による影響が大きく現れます。利用料金を大きく3つの価格帯に分けて、それぞれの価格帯で提供される食事内容の特徴やイメージを一覧表で見ていきましょう。
| 料金帯 | 食事内容の特徴・イメージ |
| 高価格帯 | 専門シェフやホテル料理長との連携、産地直送の魚介や銘柄肉など、高品質な食材を使用。朝夕の選択メニュー(セレクト食)が充実しており、ライブキッチンやコース料理なども体験できる。 |
| 中価格帯 | 施設内厨房での手作りを重視。管理栄養士監修で栄養バランスに配慮、旬や季節の行事食(イベント食)を定期的に提供、介護食や治療食に幅広く対応している。 |
| 標準価格帯 | 外部委託を利用することもあり、コスト効率を重視。健康維持のための栄養バランスを確保し、嚥下状態に合わせた介護食を提供している。 |
一般的に高価格帯の食事は、高級感があり外食のような食事を有料老人ホーム内で毎日食べられるというイメージです。ただし、高価格帯の食事は通常食に近く、嚥下状態に問題のない方を対象にしていることが多くなっています。
また、食費が安いからといって、入居者が食事の美味しさに妥協しているわけではありません。どの有料老人ホームでも、入居者は美味しい食事を求めています。施設側は食費の価格帯に限らず、コスト内で美味しさにこだわった食事を提供しましょう。
食事のこだわりを打ち出す有料老人ホームの特徴

毎日の食事が飽きず、楽しみになるよう、施設の食事メニューを豊かにするなど、様々な工夫を凝らしています。食事へのこだわりが強い有料老人ホームの特徴から、改善・真似できる点を確認していきましょう。
メニューの自由度が高い
食事への満足度を高めるために、有料老人ホームの食事メニューの自由度を高める取り組みや工夫を行う施設が増えています。例えば、複数のメニューから好きなものを選べるセレクト食は、食事ごとに和食と洋食、肉と魚、ご飯とパンといった選択肢を設けましょう。その結果、食事のマンネリ化を防ぎ、利用者がその日の気分に合わせて食事を選択する楽しみを提供します。
また、朝食、昼食、夕食に加えカフェや夜のバータイムなど、好きな時間に食事ができるサービスを提供する施設も増えています。3食のみ提供している施設では、入居者の満足度向上のため、こうした自由度の高い食事提供体制を整えるのが良いでしょう。
調理へのこだわりが強い
食事の質を追求する施設は、質の高い食事を提供するため、使用する食材や調理技術へのこだわりが強いです。例えば、メニューに旬の食材を取り入れることで、食材を通じて四季の移り変わりを感じられるようにしています。A5クラスの和牛ステーキ、京野菜や鎌倉野菜などのブランド野菜、有名産地米といった高級な食材を使用している有料老人ホームも多いです。
また、ホテルや料亭などで経験を積んだ専門シェフが調理を担当したり、オープンキッチンやライブキッチンを設けたりする有料老人ホームも少なくありません。ただ食べるだけでなく、調理中の香りや活気を通して、入居者の食欲を刺激できるように工夫してみましょう。
特別メニューに力を入れている
食事に力を入れている有料老人ホームでは、日々の生活に変化や目新しさを演出するため、特別な食事の企画が充実しているのも特徴の1つです。季節の行事に合わせた行事食(おせち料理やちらし寿司など)や、毎月1度のお楽しみデーといった特別食が定期的に提供されています。
また、誕生日には入居者の好きな食事を提供したり、バイキングやブッフェなどを設けたりして、食事をイベントとして楽しめるような取り組みをする施設も多いです。特別なときの食事だからこそ、力を入れてより特別感のあるメニューを考えるようにしましょう。
関連記事:高齢者の食欲不振とは?8つの原因と改善方法を徹底解説
五感で楽しめるよう演出している
食事は味覚だけでなく、視覚や嗅覚も含めた五感で楽しむものです。形態が異なる介護食であっても「おいしそう」と感じられるよう、通常食と同じように彩りや盛り付けには細やかな工夫を凝らしている施設もあります。
さらに、食事の特別感や彩りを加えるため、あえてプラスチック製ではなく陶器を使うなど、食器やカトラリーにもこだわることも多いです。食べ始める前から食事を楽しめるよう、様々な演出・工夫を行い食卓を盛り上げましょう。
健康・安全面から見た「良い食事」の条件

有料老人ホームなど介護施設の食事は「美味しい」だけではなく、「健康的」かつ「安全」であることも欠かせません。健康・安全面から見た「良い食事」とはどのようなものなのか、有料老人ホームの食事で目指すことを解説します。
栄養バランス・持病への適切な対応
健康面から見た「良い食事」の条件は、管理栄養士が監修し、高齢者の健康に合わせた、たんぱく質、エネルギー、ビタミンなどをバランスよく含む献立であることです。さらに、糖尿病、腎臓病、高血圧など、持病がある方に対しては、医師の指示に基づいて、治療食や制限食(塩分制限、カロリー制限など)を提供できる体制が整っていることも重要になります。
専門知識を持った管理栄養士や栄養士、調理師が在籍し、栄養士と調理師が連携して、利用者の状態に応じた食事を提供することが、入居者の健康維持に欠かせません。健康管理への対応力が不十分だと感じる場合は、日頃から連携ができる体制を整えることが大切です。
嚥下機能へ配慮する
加齢に伴う咀嚼(噛む力)や嚥下(飲み込む力)の低下は、誤嚥性肺炎のリスクを高めるため、一人ひとりの食べる力に合わせた適切な食事形態の提供が必須です。食材を柔らかく調理した軟菜食、細かく刻んだきざみ食、舌で潰せるソフト食などの介護食から、最適な形態の食事を提供できなければ「良い食事」とはいえません。
また、介護食でも食欲がわくよう、見た目も楽しめる工夫も重要です。例えば、見た目を通常食に近づけるための工夫を行っている施設もあります。冷凍のムース食であっても、電子レンジではなく蒸し器で解凍してふっくらと仕上げ、見た目を良くするといった工夫も良いでしょう。
関連記事:高齢者がむせる4つの原因とは?6つの対策や嚥下障害について解説
利用者が入居前後にチェックする食事のポイント

有料老人ホームの食事は、入居後の満足度を大きく左右するため、入居希望者はまずい食事が提供されていないかなど、入念に食事内容をチェックしましょう。入居希望者が入居前に確認することが多い、食事のチェックポイントについて解説します。
資料で食事内容を確認される
入居希望者は、週間や月間の献立表から、献立のバリエーション、季節感、同じメニューの頻度などを確認します。飽きないメニューになっているか、メインや副菜が美味しそうかなど、細かな部分までチェックされるでしょう。さらに、献立表は食事のモチベーションを高めるため、本人が読んで理解できるかという点もチェックされることが少なくありません。
また、イベント食の内容や頻度なども、入居する施設を決める重要なポイントになります。特に、イベント食は介護食の場合どのように提供されるのか知りたい方も多いです。写真などで具体的に説明できるように準備しておき、入居希望者の疑問や不安を解消できるようにしておきましょう。
体験食でチェックされる点
有料老人ホームの食事が厳しくチェックされるのは、提供される食事を実際に見たり食べたりするときです。入居希望者は、昼食どきの見学や体験食(試食)を通して、いつもの食事を確認します。特に、体験食では、食事の味付けや温度、ボリューム感などを厳しくチェックされるでしょう。
さらに、盛り付けや食器に配慮が見られるか、他の入居者が楽しく食事をしている雰囲気かなども見られます。スタッフの配膳や介助の仕方などもチェックされるため、普段から入居者以外の方に見られているような意識で食事を提供することが大切です。
朝食の内容への注目度が高い
朝食は、一日のうちで時間的・人員的な制約が大きく、調理体制が手薄になります。その結果、他の時間帯の食事よりも、比較的簡素になりがちです。朝食にどれだけ力を入れているかによって、施設の食事に対するこだわりが判断されてしまいます
納豆や漬物といった簡単に用意できる献立だけでなく、手の込んだ温かい献立を提供するようにして、入居者の満足度向上に取り組むことが新しい入居者の獲得にもつながるでしょう。
解決すべき家族がよく抱く疑問

普段離れて生活する家族だからこそ、入居前には様々な不安や疑問を抱えています。家族が安心して介護を任せられるよう、疑問を解決しておきましょう。
外食や持ち込みはできる?
外食は、持病で塩分などを制限されていない場合は、自由に行える施設が一般的です。ただし、施設が食事を用意してしまうと、食べていなくても料金が発生してしまうことがあります。家族から外食の希望があった場合は、費用のことも説明し、施設内できちんと対応するようにしましょう。
また、飲食物の持ち込みは、健康に影響がないものであれば可能な施設が多いです。しかし、夏場の生物など食中毒や健康を害するリスクがある場合は、持ち込みを禁止するのが良いでしょう。あらかじめ持ち込み可能な基準を定め、しっかりと周知しておき、家族も不安なく持ち込みができる環境を整えることが大切です。
もし、外食や持ち込みの理由が施設の食事が合わないといった理由の場合は、食事のメニューや内容を見直し、より食べたくなる食事に改善しましょう。
好き嫌いにはどこまで対応してくれる?
健康のためだからと、嫌いなものも食べないといけない食事は、入居者にとっては食事が苦痛に感じてしまうでしょう。アレルギーや治療食だけでなく、入居者の食べ物の好き嫌いにも配慮することが入居者の満足度向上につながります。入居前に個人の嗜好を確認し、代替品の有無や提案をしておくのがおすすめです。
また、定期的に嗜好調査を行うなど、常に入居者の希望を献立に反映するよう工夫を凝らしましょう。栄養士が入居者一人ひとりに直接要望を聞くなど、様々な工夫を通して毎日美味しく食べられる食事を提供してください。
嚥下機能の低下で食べられなくなってきたらどうなる?
加齢や体調の変化で咀嚼や嚥下能力が弱くなると、食べられないだけでなく誤嚥などのリスクも高まります。嚥下状態に合わせた介護食を提供できる体制を整えておくことが大切です。きざみ食やミキサー食など、柔軟に対応できると、入居者の安全を守りながら美味しい食事を楽しんでもらえます。
さらに、適切な食事形態を提供できるよう、職員や栄養士が嚥下機能を評価することも重要です。本人の希望だけを重視するのではなく、食べている様子や食べ残しなどから推測し、食べやすい形態の食事を提供しましょう。
有料老人ホームの食事をアピールするときのコツ
高齢化が進む中で介護事業における競争環境は激化しており、「食事へのこだわり」は他の有料老人ホームとの差別化を図るための重要なポイントです。食事内容やこだわりをアピールすることで、新規入居者の獲得を行っている施設も増えてきています。
有料老人ホームが食事をアピールするときのコツは、メニューのバリエーションや食材の品質、調理技術などを最大限に活用していることを具体的に示すことです。使用している食材や盛り付けへのこだわりなどを取り上げ、入居者が楽しく・美味しく食べられる食事を提供していることをアピールしましょう。
さらに、「高齢者の食事はこうあるべき」という意識にとらわれず、一人ひとりの状態に合わせた形態変更や好き嫌いへの細やかな個別対応を行っていることも、大きなアピール材料となります。常にひと手間をかけている、日々工夫をしているという点をホームページなどに記載し、しっかりと入居希望者へ伝えましょう。
まとめ
有料老人ホームの食事は、入居者の健康維持だけでなく、日々の生活の質(QOL)を大きく左右する重要な要素です。一人ひとりに美味しい食事を楽しんでもらうためにも、メニューの種類を増やしたり、介護食・治療食への対応力を整えたりして、美味しさと楽しさを両立した食事を提供するようにしましょう。
また、食事へのこだわりは他の有料老人ホームとの差別化になり、新規入居者の獲得にもつながります。パンフレットやホームページなどに、食事へのこだわりや工夫を具体的に記載して、しっかりとアピールしましょう。満足度向上と集客、2つの視点を大切にし、有料老人ホームでの日々の食事を充実させましょう。
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